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役務契約の実施に当たり、競争性があり、競馬の公正確保上特段の支障がないものは、競争の利益を享受するため契約方式を見直すなど契約事務を適切に実施するよう是正改善の処置を求めたもの


役務契約の実施に当たり、競争性があり、競馬の公正確保上特段の支障がないものは、競争の利益を享受するため契約方式を見直すなど契約事務を適切に実施するよう是正改善の処置を求めたもの

科目
一般勘定
(項)競馬事業費
(項)競走事業費
(項)業務管理費
部局等
日本中央競馬会本部、10競馬場
契約の概要
競馬の開催に必要となる清掃・警備等の業務の委託等を行うもの
検査対象とした契約件数及び契約金額
2,571件
1634億8751万余円
(平成18事業年度)
競争契約へ移行することが可能であると認められる契約件数及び契約金額
141件
76億4496万円
(平成18事業年度)
随意契約を競争契約と随意契約とに区分することなどにより競争性を高める必要がある契約件数及び契約金額
38件
89億3013万円
(平成18事業年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 役務契約の実施における契約事務の適正化について

(平成19年10月30日付け 日本中央競馬会理事長あて)

  標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 日本中央競馬会の概要

(1) 貴会の契約制度

 貴会は、競馬法(昭和23年法律第158号)及び日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)に基づき、日本で唯一の中央競馬を行う法人として設立され、公正・中立な競馬施行のため、国の監督の下で札幌競馬場等10競馬場(注1) において年間36回(288日以内)の競馬を開催している。そして、競馬開催や競馬場建設等のため、多額の経費を要して工事や役務の契約を行っている。
 日本中央競馬会会計規程(昭和29年規約第2号)第45条によると、「契約をする場合においては、すべて公告して競争に付さなければならない」とされており、一般競争契約が原則となっているが、同条ただし書きにおいて、「事業経営上競争に付することが不利、又は困難であると認める場合、その他理事長が定める場合においては、指名競争に付し、又は随意契約をすることができる」とされている。そして、日本中央競馬会会計事務細則(昭和29年理事長達第10号)第23条第1項第1号から第12号において、随意契約によることができる場合としては、「契約の性質又は目的が、競争を許さないとき」など、国とほぼ同様の内容を定めている。

 札幌競馬場等10競馬場  札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場


(2) 閣議決定により要請されている事業運営の効率化・透明化等への取組

 貴会では、平成13年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」(以下「整理合理化計画」という。)において、貴会が講ずべき措置として、中央競馬関係事業については、「管理経費・競走事業費の削減など更なる事業の効率化を図る。その一環として、公正確保と両立させつつ、一般競争入札等の範囲を大幅に拡大するとともに、関係会社(注2) 等に対する委託費等を削減する」とされていた。そして、17年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」においては、「競争性のある契約のうち競馬の公正・中立性の確保上支障のない契約については、そのすべての契約を、平成22年までのできる限り早い時期に競争入札に移行させる」とされるとともに、貴会の経営の効率化等の観点から、「子会社・関係会社(注2) の組織・事業の再編・統廃合を実施する」などとされている。

 子会社・関係会社  子会社とは、貴会がその会社の株式を所有することなどにより、議決権の過半数を実質的に所有している会社をいう。また、関係会社とは、貴会における関連会社をいい、同様の理由により、貴会(子会社を含む)が議決権の100分の20以上、100分の50以下を実質的に所有し、かつ、貴会が人事、資金、技術、取引等の関係を通じて財務及び営業の方針に対して重要な影響を与えることができる会社をいう。


(3) 契約の適正化に対する国の取組

 国においては、18年2月、公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議において「公共調達の適正化に向けた取り組みについて」がまとめられ、これを受けて各府省等では、17年度に締結した随意契約のうち所管公益法人等との間で締結したものについて随意契約の理由(以下「随契理由」という。)の妥当性の点検を行い、18年6月にその結果及び見直し計画を公表するなどしている。
 「公共調達の適正化に向けた取り組みについて」によれば、単に当該業務に精通していることのみをもって「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」であるとして、これを随契理由とすることは、仕様書、作業マニュアルの作成等により競争が可能であると考えられることから、不適切であるとされている。また、契約金額の相当部分が再委託先に支払われていたり、契約の目的となる事務・事業の大半を再委託先が実施していたりするなど、随意契約の相手方が当該事務・事業を実施する能力が十分でない場合には、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」として随意契約を行うことは適切ではないことに留意するとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 貴会においては、整理合理化計画及び行政改革の重要方針に基づき、中央競馬関係事業の効率化の一環として、競争入札の範囲を大幅に拡大するとともに、子会社及び関係会社(以下、これらを「子会社等」という。)に対する委託費等を削減することなどが求められている。
 そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、整理合理化計画及び行政改革の重要方針の趣旨に沿った一般競争契約及び指名競争契約(以下、両契約を合わせて「競争契約」という。)への移行等の措置が、その期限とされている22年までのできる限り早い時期に向けて計画的に実施されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、貴会本部、中山競馬場等3競馬場(注3) 及び栗東トレーニング・センターにおいて、会計実地検査を行った。また、18事業年度に、貴会本部、10競馬場、7附属機関が締結した予定価格が250万円以上及び単価契約による支払総額が250万円以上の契約2,571件、契約金額1634億8751万余円を対象として、契約書、仕様書、その他契約関係書類、契約状況に関する調書等の書類により検査するとともに、随契理由について報告を求め、その報告内容を業務内容別に分類して分析を行うなどの方法により検査を行った。

 中山競馬場等3競馬場  中山、東京、京都各競馬場


(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 随意契約の実施状況

ア 競争契約の拡大状況

 貴会における契約全体に占める随意契約の金額の割合は、16年6月に農林水産省が特殊法人等改革推進本部参与会議へ報告した「特殊法人等整理合理化計画の措置状況について」によると、整理合理化計画策定前の12事業年度においては74.0%であったとされている。本院において予定価格が250万円以上の契約(単価契約による支払総額が250万円以上の契約を含む。)について検査したところ、次 のとおり、18事業年度においては上記の割合は79.9%となっており、調査対象とした契約の範囲は異なるものの、整理合理化計画の期限とされていた17年度末までに競争契約の大幅な拡大がなされたとは認められない状況となっている。

図 契約方式別の割合

図契約方式別の割合


イ 契約種類別の随意契約の実施状況

 18事業年度に貴会が締結した契約の種類別に随意契約の金額の割合を算出すると、表1のとおり、物品等の製造又は購入が62.0%、工事が14.5%であるのに対し、物品等の賃借及び役務についてはそれぞれ99.9%、84.2%と極めて高かった。

表1 契約種類別の割合
(単位:百万円、%)
契約種類
契約方式
物品等の製造又は購入
物品等の賃借
工事
役務
金額
割合
金額
割合
金額
割合
金額
割合
金額
一般競争契約(a)
指名競争契約(b)
4,754
304
35.6
2.2
40
0.0
6,121
9,799
32.8
52.5
8,136
3,682
10.8
4.9
19,052
13,786
競争契約(a+b)
5,058
37.9
40
0.0
15,921
85.4
11,818
15.7
32,838
随意契約
8,270
62.0
56,640
99.9
2,715
14.5
63,022
84.2
130,648
合計
13,329
100
56,680
100
18,636
100
74,841
100
163,487
(注)
 割合は、小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目を合計しても100にならない場合がある。また、金額は百万円未満を切り捨てているため、各項目の数値を合計しても合計欄の数値と一致しない場合がある。以下同じ。


 このため、物品等の賃借及び役務の契約について、随意契約の実施状況を業務内容別にみると、表2のとおり、土地建物の賃借等及び設備の保守管理業務等はすべて随意契約となっていた。また、機械・装置のリース、印刷業務、警備業務、清掃業務及び入場券発売業務等においても随意契約の金額の割合は90%以上と著しく高い状況となっていた。

表2 物品等の賃借及び役務の業務内容別契約額
(単位:百万円)
契約種類
業務内容
一般競争契約
指名競争契約
随意契約
随意契約の占める割合(%)
 
うち子会社等
割合(%)
物品等の賃借
土地建物の賃借等
37,715
659
1.7
37,715
100
機械・装置のリース
5
18,154
18,145
99.9
18,159
99.9
備品等のリース
35
770
268
34.8
805
95.6
小計
40
56,640
19,073
33.6
56,680
99.9
役務
システム等の運用保守業務
13,430
11,704
87.1
13,430
100
設備の保守管理業務
9,265
4,876
52.6
9,265
100
馬場の保守管理業務
23
6,292
6,089
96.7
6,315
99.6
印刷業務
7
1,183
1,169
98.8
1,190
99.3
警備業務
123
7,760
4,545
58.5
7,884
98.4
清掃業務
381
7,330
7,279
99.3
7,712
95.0
入場券発売業務
4
60
2
3.3
64
92.8
案内業務
91
783
509
65.0
875
89.5
テレビ・ラジオ中継等
35
2,971
6,773
813
12.0
9,780
69.2
その他施設の保守管理業務
372
780
169
21.6
1,153
67.6
広報・イベント業務
2,030
677
3,835
882
22.9
6,543
58.6
ハイヤーの借上げ等
231
19
250
501
49.9
競走馬の輸送
4,259
6
1,132
518
45.7
5,398
20.9
その他
579
2
4,142
2,297
55.4
4,724
87.6
小計
8,136
3,682
63,022
40,859
64.8
74,841
84.2
合計
8,176
3,682
119,662
59,932
50.0
131,521
90.9

ウ 子会社等との随意契約等の実施状況

(ア) 子会社等との契約状況

 貴会の子会社は、日本トータリゼータ株式会社、共栄商事株式会社(以下「共栄商事」という。)、日本競馬施設株式会社(以下「競馬施設会社」という。)、日本レーシングリース株式会社、競馬セキュリティサービス株式会社(以下「セキュリティサービス」という。)、株式会社中央競馬ピーアール・センター、日本馬匹輸送自動車株式会社、株式会社ターフ・メディア・システム、日本スターティング・システム株式会社、競馬飼糧株式会社、新和サービス株式会社の計11社、関係会社は株式会社ワイリスの1社となっている(19年8月末現在)。
 そして、18事業年度における子会社等の売上高は表3のとおり、合計で95,667百万円となっている。

表3 子会社等における取引金額等
(単位:百万円、%)
子会社等
資本金
事業内容
売上高
貴会との取引金額
役員数
従業員数
 
割合
日本トータリゼータ株式会社
100
電算機等のリース及び保守
28,060
27,387
97.6
8人(うち非常勤1人)[農林水産省0人、貴会4人]
474人
共栄商事
61
競馬場等の清掃等
14,104
11,389
80.7
6人(うち非常勤1人)[農林水産省0人、貴会5人]
157人
競馬施設会社
48
競馬施設の保守管理等
10,805
10,449
96.7
8人(うち非常勤2人)[農林水産省0人、貴会6人]
260人
日本レーシングリース株式会社
400
各種機器のリース
17,093
5,348
31.2
7人(うち非常勤1人)[農林水産省1人、貴会5人]
22人
セキュリティサービス
100
ウインズ等の警備等
5,415
4,993
92.2
5人(うち非常勤2人)[農林水産省0人、貴会4人]
148人
株式会社中央競馬ピーアール・センター
20
競馬に関する図書等の出版等
7,702
4,477
58.1
5人(うち非常勤2人)[農林水産省1人、貴会3人]
115人
日本馬匹輸送自動車株式会社
36
競走馬の輸送
2,177
2,147
98.6
6人(うち非常勤1人)[農林水産省0人、貴会4人]
90人
株式会社ターフ・メディア・システム
100
電話投票方式の加入者管理等
4,917
1,858
37.7
6人(うち非常勤1人)[農林水産省1人、貴会4人]
41人
日本スターティング・システム株式会社
10
発走補助業務等
1,594
1,563
98.0
5人(うち非常勤3人)[農林水産省0人、貴会4人]
71人
競馬飼糧株式会社
10
飼糧等の輸入・販売等
2,971
619
20.8
6人(うち非常勤3人)[農林水産省0人、貴会5人]
60人
新和サービス株式会社
10
損害保険代理業に関する業務等
125
27
21.6
5人(うち非常勤3人)[農林水産省1人、貴会4人]
6人
株式会社ワイリス
10
ウインズ米子の建物等の賃借等
704
676
96.0
7人(うち非常勤6人)[農林水産省0人、貴会3人]
2人
計 12社
95,667
70,933
74.1
74人(うち非常勤26人)[農林水産省4人、貴会51人]
 
注(1)
 平成18年1月に子会社となった会社は、共栄商事、競馬施設会社、日本レーシングリース株式会社、セキュリティサービス、株式会社中央競馬ピーアール・センター、競馬飼糧株式会社、新和サービス株式会社の7社である。なお、19年10月には、日本トータリゼータ株式会社、日本レーシングリース株式会社及び株式会社ターフ・メディア・システムの3社が合併してJRAシステムサービス株式会社に、また、共栄商事、競馬施設会社、競馬飼糧株式会社及び新和サービス株式会社の4社が合併してJRAファシリティーズ株式会社になっている。
注(2)
 役員数、従業員数は平成18年10月現在の人数であり、役員数の[ ]書きの前職は監督官庁及び貴会の人数を記載している。
注(3)
 貴会との取引金額は貴会から徴取した資料による消費税抜きの金額を計上しており、一方、本院の調査した金額は消費税相当額が含まれているなどのため、両者の金額は一致しない。

 18事業年度における貴会と子会社等との契約金額は718億1159万余円で、貴会の契約金額全体(1634億8751万余円)の43.9%を占めている。
 そして、貴会と子会社等との契約のうち随意契約により締結している契約金額は681億2797万余円で、このうち物品等の賃借は190億7328万余円、役務は408億5937万余円、計599億3266万余円となり、貴会の随意契約を締結した物品等の賃借及び役務の契約金額全体の50.0%を占めている(表2参照)
 随意契約により締結している契約のうち、リース契約や土地建物の賃借契約などを除いた契約(計392件)の落札比率(契約金額の予定価格に対する割合をいう。)についてみると、その平均は99.5%と極めて高い状況であり、このうち、100%となっていたものは全体の3分の1を占めていた。

(イ) 子会社等による再委託の状況

 貴会との取引金額が多い上位5社のうち、日本トータリゼータ株式会社及び日本レーシングリース株式会社の2社との契約は、機械・装置のリース契約等が大半を占めているが、これらの契約内容は、再委託(下請を含む。以下同じ。)になじまないものであるため、この2社を除いた上位3社である共栄商事、セキュリティサービス及び競馬施設会社に関して、随意契約を締結している物品等の賃借及び役務の契約計220件について調査した。その結果、業務の一部を再委託している件数の割合はそれぞれ94.1%、35.7%、98.0%となっていた。
 そして、上記3社との契約における予定価格の積算額のうち再委託している作業に係る人件費等の積上額(以下「再委託経費」という。)の占める割合について、中山競馬場等3競馬場及び栗東トレーニング・センターが契約した35件について本院で試算したところ、共栄商事との契約15件の積算額(4,871,319千円)のうち再委託経費(3,563,381千円)の占める割合は83.9%、セキュリティサービスとの契約6件の積算額(1,122,359千円)のうち再委託経費(861,120千円)の占める割合は76.7%、競馬施設会社との契約14件の積算額(3,851,799千円)のうち再委託経費(2,301,812千円)の占める割合は68.2%となっており、子会社等は大半の業務を再委託先に実施させて、自らは再委託先との連絡調整、監督等の業務のみを行っているものが多数見受けられた。

エ 随契理由

 物品等の賃借及び役務の契約において随意契約の割合が高いことから、これらの契約の18事業年度の契約実績(契約件数1,451件、契約金額1196億6282万余円)についてその随契理由について調査したところ、次のとおりであった。
 随契理由として具体的に記載されている文言を分類すると、表4のとおり、契約件数が多数となっていて開発メーカーと密接な関係のある機械・装置のリース契約に関しては、「秘密性、安全性の保持」(496件)、「リース物件の所有者による保守」(352件)などが相対的に件数の多いものとなるが、機械・装置のリース契約を除けば、その理由の多いものは、「契約実績、経験を有する」(386件)、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」(329件)などとなっていた。

表4 随意契約(契約件数1,451件)の理由別分類
(単位:件)
具体的な理由の分類
業務内容
件数
秘密性、安全性の保持
機械・装置のリース
496
577
(81)
備品等のリース
32
システム等の運用保守業務
11
設備の保守管理業務
11
馬場の保守管理業務
9
ハイヤーの借上げ等
6
清掃業務
4
警備業務
1
案内業務
1
その他施設の保守管理業務
1
その他
5
契約実績、経験を有する
警備業務
117
407
(386)
広報・イベント業務
68
清掃業務
49
システム等の運用保守業務
32
案内業務
31
機械・装置のリース
21
設備の保守管理業務
16
入場券発売業務
12
その他施設の保守管理業務
8
ハイヤーの借上げ等
6
馬場の保守管理業務
5
テレビ・ラジオ中継等
3
印刷業務
2
その他
37
リース物件の所有者による保守
機械・装置のリース
352
352
(0)
専門的又は高度な知識、知見、技術を有する
警備業務
94
330
(329)
清掃業務
53
システム等の運用保守業務
37
設備の保守管理業務
33
馬場の保守管理業務
25
案内業務
24
広報・イベント業務
13
その他施設の保守管理業務
7
入場券発売業務
2
印刷業務
2
機械・装置のリース
1
テレビ・ラジオ中継等
1
その他
38
複数年度の使用を前提とした物件の賃借等
土地建物の賃借等
118
162
(162)
その他施設の保守管理業務
42
備品等のリース
1
その他
1
一元的な管理をする必要がある
機械・装置のリース
144
144
(0)
当該代理店以外実施不可
テレビ・ラジオ中継等
82
111
(111)
広報・イベント業務
29
連絡体制を有している
警備業務
9
17
(17)
清掃業務
2
広報・イベント業務
2
その他施設の保守管理業務
1
ハイヤーの借上げ等
1
システム等の運用保守業務
1
その他
1
継続して事業を実施する必要がある
競走馬の輸送
7
16
(16)
システム等の運用保守業務
5
広報・イベント業務
1
その他
3
安定的な納入
機械・装置のリース
12
12
(0)
法令、協定等に基づいている
その他施設の保守管理業務
2
7
(7)
馬場の保守管理業務
1
設備の保守管理業務
1
その他
3
特殊な施設・設備を有する
広報・イベント業務
2
6
(6)
システム等の運用保守業務
1
テレビ・ラジオ中継等
1
印刷業務
1
その他
1
特許権、著作権等を有している
その他
3
3
(3)
その他
広報・イベント業務
44
149
(148)
ハイヤーの借上げ等
29
テレビ・ラジオ中継等
14
システム等の運用保守業務
12
備品等のリース
11
競走馬の輸送
7
清掃業務
3
警備業務
2
機械・装置のリース
1
設備の保守管理業務
1
その他施設の保守管理業務
1
その他
24
計 (契約件数1,451件)
 
2,293
(1,266)
注(1)
 複数の理由を記述しているものについては重複して計上しているため、契約件数とは一致しない。
注(2)
 表中の( )内の数値は、機械・装置リース契約に係る件数を除いたものである。

 行政改革の重要方針によれば、競馬の公正・中立性の確保上支障のないことが競争入札へ移行する上での前提条件となっている。
 貴会では、従来から競馬の公正確保に最大限の努力を払っているとしており、例えば、競走馬については禁止薬物の使用の有無を確認するための理化学検査、健康な状態にあることを確認するための馬体検査など、騎手については、騎乗予定日前日から調整ルームに入室させ外部との接触を断つことなどを実施している。しかし、貴会では、契約を締結するに当たって、競馬の公正確保のためにどのような内容の業務やどのような場所で実施する業務について随意契約とするかについての具体的な取扱いを定めておらず、個々の契約についてそれぞれ判断しているとしている。
 公正確保が随契理由の一つとなっている契約は1,451件中652件あり、これらの契約を本院において業務内容別に分類すると、機械・装置のリース契約が511件中476件、警備業務契約が133件中61件、清掃業務契約が59件中44件などとなっており、同種の業務でも公正確保を随契理由として掲げているものと、掲げていないものがあった。

(2) 随契理由が適切とは認められないもの

 貴会本部及び競馬場で随意契約を締結しているものを対象に、随契理由の妥当性について検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

ア 警備業務

 警備業務については、従来、貴会が雇用する従事員が実施してきたが、従事員の削減により自ら実施することが困難となったため、すべての競馬場で実施場所により、表5のとおり区分して業者に委託しており、18事業年度における本件業務の契約実績は、計129件で契約金額は計76億5821万余円となっている。これらの契約はすべて随意契約であり、その相手方は子会社のセキュリティサービス又は民間会社(計36社)である。

表5 警備業務の契約実績等
(単位:件、千円)
実施場所
業務
すべて随意契約
業務内容
件数
金額
契約先
競馬場内
〔1〕滞在馬特別警備
11
185,947
セキュリティサービス
厩舎門警備による不審者の排除、出走予定馬に対する薬物投与等の監視、厩舎を基点とする巡回等の業務
〔2〕出走馬特別警備
10
100,995
セキュリティサービス
厩舎や調整ルームへの不審者、不法侵入者の排除、競走馬に対する薬物投与等の監視等の業務
〔3〕常駐警備
10
1,434,575
セキュリティサービス
厩舎地区及び構内の巡回、厩舎地区における不審者等の排除、事務所玄関受付、平日払戻の来場者への案内等の業務
〔4〕開催警備
12
1,607,532
セキュリティサービス
馬場、下見所内への侵入防止・排除、装鞍所内への出入口管理、来場者への安全誘導、不法行為者に対する警戒等の業務
小計
43
3,329,050
セキュリティサービス
競馬場周辺
〔5〕交通警備
1
55,087
セキュリティサービス
通行車両の案内・誘導及び交通規制等の車両整理、来場者の安全誘導等の業務
ウインズ館内
〔6〕開催警備
47
2,954,941
セキュリティサービス等25社
来場者の案内誘導、不法行為者に対する警戒、案内所及び発売機前案内等の業務
〔7〕平日払戻警備
13
115,780
セキュリティサービス等10社
来場者の案内誘導、払戻金の警戒等の業務
小計
60
3,070,722
セキュリティサービス等27社
ウインズ周辺
〔8〕交通警備
25
1,203,358
民間会社18社
来場者及び通行人の案内誘導、不法駐車の予防及び排除等の業務
合計
129
7,658,218
子会社1社、民間会社36社
注(1)
 ウインズとは、競馬場の場外の勝馬投票券発売所又は払戻金交付所の通称である。
注(2)
 競馬場内の開催警備業務の契約12件のうち11件(契約金額計15億6530万余円)は、競馬場周辺の交通警備業務を含めた契約となっている。また、ウインズ館内の開催警備業務の契約件数47件のうち23件(契約金額計17億6755万余円)は、ウインズ周辺の交通警備業務を含めた契約となっている。

 これらの契約において随契理由として多いものは、契約実績、経験を有しているとしているものが114件、専門的又は高度な知識、知見、技術を有するとしているものが91件であり、公正確保は61件にとどまっていた。
 これらの契約のうち、競馬場内の〔1〕滞在馬特別警備及び〔2〕出走馬特別警備は、競走馬が滞在する厩舎地区等の競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区を警備区域としており、その業務内容は、出走予定馬に対する薬物投与等不正行為の監視、厩舎への不審者、不法侵入者の排除などが主体となっている。
 そこで、上記の〔1〕滞在馬特別警備及び〔2〕出走馬特別警備を除く警備業務に係る契約について随契理由が妥当であるか検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(ア) 競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められるもの

(ウインズ館内の開催警備業務、平日払戻警備業務及びウインズ周辺の交通警備業務(契約件数85件、契約金額42億7408万余円))


 ウインズ館内の〔6〕開催警備、〔7〕平日払戻警備及び〔8〕ウインズ周辺の交通警備の警備区域は、ウインズの館内及びその周辺となっており、前記のとおり、厩舎地区等の競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区ではなく、業務の全体を競争契約に移行しても公正確保上特段の支障がないものと認められる。
 また、これらの警備業務の業務内容は、来場者等の案内誘導、不法行為者に対する警戒等を行うもので、特別な体制や任務を必要とするものでなく、貴会においても多数の民間会社との契約実績もあることから、入札への参加資格要件として他団体等での実績等を考慮するとともに資格審査を十分に行ったり、仕様書に業務内容を明示するとともに具体的な作業方法を記載したマニュアルを整備したりするなどにより、現在契約の相手方となっている多数の民間会社の他にも、その対象を広げて競争入札を行うことは可能であると認められる。

<事例1>  ウインズ周辺の交通警備業務

 中山競馬場では、平成18事業年度にウインズ錦糸町の交通警備業務を契約金額73,374,090円で民間の警備会社と随意契約を締結している。この業務は、競馬開催日におけるウインズの周辺を警備区域とするもので、その業務内容は、19事業年度から一般競争契約に移行した競馬場周辺の交通警備に類似しており、来場者及び通行人の案内誘導、不法駐車の予防及び排除などが主体となっている。

(イ) 競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる業務と特段の支障がない業務とに区分するなどにより、随意契約としていた業務の一部を競争契約に移行できると認められるもの

(競馬場内の常駐警備業務及び開催警備業務(契約件数22件、契約金額30億4210万余円))


 競馬場における〔3〕常駐警備及び〔4〕開催警備の警備区域には、厩舎地区や下見所などが含まれていて、騎手、調教師等の競馬関係者や競走馬と接する機会があるが、それ以外の構内通用門、事務所玄関及び入場門の区域やパークウインズ(注4) 時においては接する機会はない。
 したがって、〔3〕常駐警備及び〔4〕開催警備については、競走馬が滞在する厩舎地区などの競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区を精査するなどすれば、当該業務について、競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる部分と特段の支障がない部分に区分することが可能であると認められる。
 そして、これらの警備業務は、競馬場構内の巡回や馬場、下見所内への侵入防止等であり、上記(ア)の業務と同様、特別な体制や任務を必要とするものではないことから、入札への参加資格要件として他団体等での実績等を考慮するとともに資格審査を十分に行ったり、仕様書に業務内容を明示するとともに具体的な作業方法を記載したマニュアルを整備したりするなどにより、競争入札を行うことは可能であると認められる。

 パークウインズ  競馬が開催されていない競馬場で、勝馬投票券の発売・払戻を行うこと


<事例2>  競馬場内の開催警備業務

 函館競馬場では、平成18事業年度に開催警備業務を契約金額22,181,404円でセキュリティサービスと随意契約を締結している。この業務は競馬開催日における競馬場内の警備業務及びその周辺の交通警備業務を行うもので、その警備区域についてみると、競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区である下見所及び装鞍所等とその必要がないスタンド及び競馬場周辺等となっている。

イ 案内業務及び入場門改札業務

 案内業務及び入場門改札業務については、警備業務と同様に、従事員の削減により自ら実施することが困難となったため、すべての競馬場で表6のとおり区分して業者に委託しており、18事業年度の本件業務における契約実績は、計38件で契約金額は計8億6215万余円となっている。これらの契約のうち、競馬場の入場門改札業務(2件)及びウインズ館内の案内業務(3件)については一般競争契約を締結しているが、その他の案内業務及び入場門改札業務(計33件)については、子会社のセキュリティサービス又は民間会社(計6社)と随意契約を締結している。

表6 案内業務及び入場門改札業務の契約実績等
(単位:件、千円)
実施場所
業務
契約金額
うち随意契約
業務内容
件数
金額
件数
金額
契約先
競馬場内
〔1〕案内
11
432,761
11
432,761
セキュリティサービス等2社
場内施設に関する案内や勝馬投票券購入・払戻し方法の説明・案内等の業務
〔2〕入場門改札
5
63,044
3
51,994
セキュリティサービス
入場門における入場券の半券の回収、入場者の集計等の業務
ウインズ館内
〔3〕案内
22
366,353
19
299,037
セキュリティサービス等7社
上記の〔1〕と同様の業務
合計
38
862,159
33
783,793
子会社1社、民間会社6社
(注)
 競馬場の案内業務の契約11件のうち2件(契約金額計1億7587万余円)は、入場門改札業務を含めた契約となっている。


 これらの33件の契約において随契理由として多いものは、契約実績、経験を有しているとしているものが31件、専門的又は高度な知識、知見、技術を有するとしているものが24件となっていて、公正確保は8件にすぎなかった。
 これらの業務は、一般の入場者が立ち入ることのできるファンエリア等が業務区域となっており、競馬関係者や競走馬と接する機会はないことから、業務の全体を競争契約に移行しても公正確保上特段の支障がないものと認められる。
 また、その主たる業務内容は、場内施設に関する案内や勝馬投票券購入・払戻し方法の説明・案内などや入場門における入場券の半券の回収、入場者の集計等で、特殊な業務ではない。そして、貴会においても民間会社との契約実績もあることから、警備業務と同様、具体的な作業方法を記載したマニュアルを整備するなどにより、現在契約の相手方となっている民間会社の他にも、その対象を広げて競争入札を行うことは可能である。現に、18事業年度に随意契約としていた入場門改札業務は19事業年度から一般競争契約に移行しているが、公正確保上の問題等は特に生じていない。
 したがって、案内業務(契約件数30件、契約金額7億3179万余円)は、競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められる。

ウ 清掃業務

 清掃業務については、すべての競馬場で実施場所等により表7のとおり区分して業者に委託しており、18事業年度における本件業務の契約実績は、計87件で契約金額は計68億1348万余円となっている。これらの契約のうち、35件については一般競争契約を締結しているが、52件については、子会社の共栄商事又は民間会社等(計2社)と随意契約を締結している。

表7 清掃業務の契約実績等
(単位:件、千円)
実施場所
業務
契約金額
うち随意契約
業務内容
件数
金額
件数
金額
契約先
競馬場内
〔1〕総合清掃
15
4,719,457
15
4,719,457
共栄商事
厩舎地区における馬房内等の清掃、スタンド内の床面掃き掃除、勝馬投票券、新聞紙等の収集処分、投票カード回収処理等の業務
〔2〕事務所等清掃
13
58,301
 
事務所内の床面、カーペット等の清掃、ガラス清掃等の業務
〔3〕スタンドガラス清掃
15
99,667
 
スタンドガラスの清掃の業務
小計
43
4,877,425
15
4,719,457
共栄商事
競馬場周辺
〔4〕清掃
15
193,941
10
157,844
共栄商事
道路及び歩道に散乱している勝馬投票券、新聞紙、煙草の吸殻等の収集処分等の業務
ウインズ館内
〔5〕清掃
15
1,254,704
13
1,238,613
共栄商事等3社
館内の床面掃き掃除、勝馬投票券、新聞紙等の収集処分、投票カード回収処理等の業務
ウインズ周辺
〔6〕清掃
14
487,409
14
487,409
共栄商事等2社
上記の〔4〕と同様の業務
合計
87
6,813,481
52
6,603,324
子会社1社、民間会社等2社
注(1)
 競馬場内の総合清掃業務の契約15件のうち1件(契約金額10億9819万余円)は、競馬場周辺の清掃業務を含めた契約となっている。
注(2)
 契約実績のうち、競馬場内の〔2〕事務所等清掃及び〔3〕スタンドガラス清掃計28件は平成11事業年度以降順次、〔4〕競馬場周辺の清掃のうち5件は、19事業年度からすべての競馬場で一般競争契約を行うことを前提として、試行的に、18年10月から、〔5〕ウインズ館内の清掃のうちガラス清掃計2件は15事業年度からそれぞれ一般競争契約に移行している。

 これらの52件の契約において、随契理由として多いものは、専門的又は高度な知識、知見、技術を有するとしているものが48件、契約実績、経験を有しているとしているものが43件であり、公正確保は39件となっていた。
 そこで、これらの契約について随契理由が妥当であるか検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(ア) 競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められるもの(ウインズ館内の清掃業務(契約件数13件、契約金額12億3861万余円))
 〔5〕ウインズ館内の清掃は、競馬開催日におけるウインズの館内を業務区域としており、競馬関係者や競走馬と接する機会はないことから、業務の全体を競争契約に移行しても、公正確保上特段の支障がないものと認められる。
 また、この業務の業務内容は、館内の床面の掃き掃除や勝馬投票券、新聞紙等の収集処分等で、ウインズでしか使用しない特殊な作業機械を使用するものではなく、競馬開催に係る専門的な知識・技量を必要とするものではない。この種の業務を受託する民間業者が多数存在していることから、警備業務と同様、具体的な作業方法を記載したマニュアルを整備するなどにより、現在契約の相手方となっている民間会社の他にも、その対象を広げて競争入札を行うことは可能であると認められる。
(イ) 競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる業務と特段の支障がない業務とを区分するなどにより、随意契約としていた業務の一部を競争契約に移行できると認められるもの(競馬場内の総合清掃業務(契約件数15件、契約金額47億1945万余円))  
 競馬場内の〔1〕総合清掃の清掃区域には、厩舎地区や下見所などが含まれていて、騎手、調教師等の競馬関係者や競走馬と接する機会があるが、それ以外のスタンドのファンエリア等の区域においては接する機会はない。
 したがって、競馬場内の〔1〕総合清掃については、競走馬が滞在する厩舎地区など競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区を精査するなどすれば、当該業務について、競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる部分と特段の支障がない部分に区分することが可能であると認められる。
 そして、スタンドのファンエリア等の清掃の業務内容は、床面の掃き掃除や勝馬投票券、新聞紙等の収集処分等で〔5〕ウインズ館内の清掃と同様のものであり、競馬場でしか使用しない特殊な作業機械を使用するものではなく、競馬開催に係る専門的な知識・技量を必要とするものではない。この種の業務を受託する民間業者が多数存在していることから、警備業務と同様、具体的な作業方法を記載したマニュアルを整備するなどにより、競争入札を行うことは可能であると認められる。

 なお、〔4〕競馬場周辺の清掃及び〔6〕ウインズ周辺の清掃については、19事業年度から一般競争契約に移行しており、20事業年度から〔1〕競馬場内の総合清掃のうち厩舎地区等を除いたファンエリア部分の清掃が、また、21事業年度から〔5〕ウインズ館内の清掃が、それぞれ競争契約に移行されるとしているが、詳細については公表されていない。

エ 入場券等の発売業務

 競馬場への入場者に対し入場券及び指定席入場券を発売する業務については、従事員の削減により人員が不足する競馬場では派遣労働者を充てている。そして、18事業年度において、新潟競馬場等5競馬場では、6件の労働者派遣について子会社のセキュリティサービス又は民間会社(計3社)と、契約金額計3089万余円で随意契約を締結している。
 入場券等の発売業務において、随契理由として多いものは、契約実績、経験を有しているとしているものが6件であり、公正確保は1件もなかった。
 入場券等の発売業務に係る契約について、その主たる業務内容をみると、入場券等の発売のほか軽微な問い合わせに対応するなど特別な専門的知識を必要とする業務ではなく、また、上記の5競馬場では、本件入場券等の発売業務とは別に、貴会の関連公益法人である財団法人日本中央競馬会弘済会と開催支援業務契約を締結し、指定席券発売所用釣銭の準備及び発売金管理・集計、発売所内における派遣労働者への業務指示及び監督等に係る業務を実施させており、このような体制の中で実施される本件業務は、他の労働者派遣事業を行う者でも業務指示及び監督等を徹底すれば十分履行が可能であると認められる。
 したがって、入場券等の発売業務については、競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められる。

オ 設備の保守管理業務

 電気、通信、空調等の設備の保守管理業務については、すべての競馬場で実施場所等により表8のとおり区分して業者に委託しており、18事業年度における本件業務の契約実績は、計26件で契約金額は計35億5848万余円となっている。これらの契約はすべて随意契約であり、その相手方は子会社の競馬施設会社又は共栄商事である。

表8 設備の保守管理業務の契約実績等
(単位:件、千円)
実施場所
業務
すべて随意契約
業務内容
件数
金額
契約先
競馬場
〔1〕設備総合管理
9
2,016,207
競馬施設会社
厩舎地区を含む場内の設備の維持管理、外注業務による電気、通信、空調等の設備の機能確認、定期点検等の管理の業務
〔2〕競馬開催に伴う電気その他設備の保守管理
10
172,706
競馬施設会社及び共栄商事
競馬開催日における電気、給排水等の設備の機能確認や突発的な故障等に対する設備の保守・点検等の業務
ウインズ
〔3〕不動産総合管理
7
1,369,574
共栄商事
ウインズ館内の電気、空調等の日常点検、定期点検等設備の保守管理、平日払戻日の清掃等の業務
合計
26
3,558,488
子会社2社

 これらの契約において随契理由として多いものは、専門的又は高度な知識、知見、技術を有するとしているものが24件、契約実績、経験を有しているとしているものが14件であり、公正確保は12件にとどまっていた。
 これらの契約のうち、競馬場の〔1〕設備総合管理及び〔2〕競馬開催に伴う電気その他設備の保守管理については、競馬開催時の業務が含まれており、この場合、常に競走馬が滞在している状態での業務となる。また、定期点検も含めた設備の保守管理業務を年間を通して委託しているため、この開催時の業務のみを別契約として区分することも困難である。
 一方、ウインズの〔3〕不動産総合管理は、ウインズ館内を業務区域としており、競馬関係者や競走馬と接する機会はないことから、業務の全体を競争契約に移行しても公正確保上特段の支障がないものと認められる。
 また、その主たる業務内容は、管理人が随時ウインズ内外を巡視したり、電気、空調設備等の日常点検などを行ったりするもので、特殊な業務ではなく、業務を受託する業者は多数存在していることから、警備業務と同様、具体的な作業内容を記載したマニュアルを整備するなどにより、競争入札を行うことは可能であると認められる。

カ レーシングプログラム及び成績表の印刷製本発送等業務

 貴会では、競馬場来場者用出馬表(以下「レーシングプログラム」という。)及び成績表を競馬場やウインズへの来場者に配布しており、これらの印刷製本発送等業務を共栄商事に随意契約により委託しており、18事業年度の契約金額は11億6857万余円となっている。
 貴会本部では、本件業務の随契理由として、共栄商事は競馬開催に関する豊富な知識と経験を有し、各競馬場等に営業所を配置していることなどから、本件業務の遂行が確実に行える業者であるためとしている。
 しかし、成績表は、前週に開催された競馬の競走成績を取りまとめた小冊子で、開催終了後当日中に貴会から共栄商事に送られる開催日ごとの競走成績のデータをほとんど加工することなく版下を作成し、開催日翌日の午後までに全部数(約140万部)を共栄商事の下請会社1社が印刷、製本し、水曜日までに競馬場等へ納入されるよう発送しているものである。
 したがって、成績表の印刷製本については、全国的な組織を有していなくても実施可能であることなどから、レーシングプログラムの印刷製本業務と分離することにより、競争契約を行うことは可能であると認められる。
 また、レーシングプログラムの印刷製本発送等業務のうち印刷製本業務はその作業が開催日前日の夕方から当日早朝までに限定されるなど時間的な制約があるものの、その発送業務については、発送する目的地が決まっていること、一般の運送業者が全国に多数存在することなどから、競争契約を行うことは可能であると認められる。

(3) 競争契約の範囲の拡大への取組について

 貴会では、整理合理化計画及び行政改革の重要方針に基づくなどして、11事業年度から18事業年度までに、競馬場内等の事務所部分及びスタンドガラスの清掃業務、競走馬の輸送業務、競馬場周辺の清掃業務(5競馬場での試行)、貴会の手帳、ファン配布用カレンダーの製作等の業務を一般競争契約に移行している。この結果、18事業年度におけるこれらの移行した業務に係る契約件数は100件で、契約金額の総額は55億1722万余円となっているが、この額は契約全体(計1634億8751万余円)の中で3.3%程度にすぎない。
 また、上記のとおり、18事業年度に5競馬場で一般競争契約が試行された競馬場周辺の清掃業務については、19事業年度においてはすべての競馬場で一般競争契約が導入され、このほか、ウインズ周辺の清掃業務及び競馬場周辺の交通警備業務もすべての競馬場において一般競争契約に移行し、この結果、19事業年度に競争契約に移行した業務は、計93件で契約金額は計34億0171万余円となっているが、依然として契約全体での割合は低率なものとなっている。そして、現時点において貴会が20事業年度以降、競争契約に移行する予定のものは、競馬場内のファンエリア清掃、ウインズ館内の清掃、販売用カレンダーの製作などとしているが、これらの見直しについての具体的な計画は策定されておらず公表も行われていない。

(是正改善を必要とする事態)

 貴会が締結している随意契約のうち、ウインズの警備、清掃業務等141件(契約金額76億4496万余円)については、競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められる。また、競馬場内の警備、清掃業務等38件(契約金額89億3013万余円)については、業務全体を一体として随意契約としていたが、競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる業務と特段の支障がない業務とを区分するなどにより、随意契約としていた業務の一部を競争契約へ移行することが可能であると認められる。このように多くの契約において、競争性が確保されておらず競争の利益を享受できないものとなっており、是正改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 契約事務の執行に当たり、競争性を確保することの重要性についての認識が十分でなく、競争性の確保を図るための検討が十分でなかったこと、特に、競争契約を実施した場合に競馬の公正確保上の支障が生ずるかどうかについての検討が十分でなかったため、公正確保上特段の支障がない業務についても公正確保を理由に随意契約としていたこと
イ 公正確保を必要とする部分があることなどをもって業務の全体を随意契約としていたこと

3 本院が求める是正改善の処置

 本院が貴会における随意契約の締結状況等について検査したところ、随意契約の契約金額はいまだに多額に上っており、その約2分の1が貴会と子会社等との契約で、この中には大半の業務を再委託しているものが多く見受けられた。
 そして、随契理由についてみると、競馬の公正確保のほか、契約実績、経験を有していること、専門的又は高度な知識、知見、技術を有していることとしているものが多数見受けられたが、その中には競争契約に移行することが可能であると認められるものなどが見受けられた。
 一方、国においては、各省庁所管の公益法人等に対する随意契約が多額に上っている事態が透明性の観点等から問題とされ、既に大幅な見直し計画が策定され、この内容についても公表が行われ、競争入札への移行が実施されているところである。
 したがって、貴会においては、競争契約への移行の期限が22年とされてはいるものの、国に準じて直ちに競争契約へ移行が可能であるかどうかについて検討し、競争契約に移行可能なものは速やかに移行するとともに、検討に時間を要するものについてはその検討内容や進ちょく状況を公表するなどして契約の競争性及び透明性を高める必要があり、前記の是正改善を必要とする事態については、その契約の競争性を高め、競争の利益を享受できるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 貴会が締結している随意契約のうち、子会社等と締結している契約も含め、競馬の公正確保上特段の支障がないと認められるウインズの警備、清掃業務等については、施設や業務の状況を踏まえ、競争契約への移行を図ること
イ 貴会が締結している随意契約のうち、競馬場内の警備、清掃業務等については、競争契約を実施した場合の競馬の公正確保上の支障の有無や対応策を検討し、支障がないものについては移行の時期や手順を明確にすること