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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 関西国際空港株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

空港内駐車場における放置車両について、適切な管理及び処分を図るよう改善させたもの


空港内駐車場における放置車両について、適切な管理及び処分を図るよう改善させたもの

科目
(款)空港事業営業収益
(項)施設使用料収入
部局等
関西国際空港株式会社本社
駐車場事業の概要
関西国際空港を利用する旅客等の利便に供するなどのため、関西国際空港株式会社が自ら設置した有料駐車場を運営するもの
放置車両の累計台数
61台(平成9年度〜18年度)
適切な管理等を行った場合の上記放置車両に係る駐車料金相当額(試算額)
3214万円

1 放置車両の概要

 関西国際空港株式会社(以下「関空会社」という。)では、旅客等の利便に供するなどのため、有料駐車場として、第1駐車場、第2駐車場、第3駐車場及び第4駐車場(以下、これらを合わせて「空港内駐車場」という。)を設置している。
 空港内駐車場の管理について、関空会社では、駐車場法(昭和32年法律第106号)に基づき、供用時間や駐車料金等に関する事項を関西国際空港株式会社一般駐車場管理規程(平成6年規程第23号。以下「管理規程」という。)で定め、これを駐車場内に明示して利用者に示している。そして、管理規程によれば、事前に届出のあった場合を除き、同一の車両を引き続き20日を超えて駐車してはならないとされていて、駐車開始後20日を経過しても引取り又は連絡がない車両(以下「放置車両」という。)については、空港内駐車場の運営管理業務の受託会社に示した関西国際空港駐車場業務作業実施要領(平成6年制定。以下「実施要領」という。)において、次のように取り扱うこととしている。
〔1〕 放置車両の発見処理
 放置車両を発見した場合は、受託会社が当該車両の詳細について「放置車両報告書」に記載し、その後の車両の処理は関空会社が行う。
〔2〕 警察に対する確認
 関空会社が警察署に報告して、当該車両が盗難車でないかの確認を行う。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 駐車場法によれば、駐車場管理者は、利用者の保護を図るなどのため、駐車場管理規程を定め、これを都道府県知事に届け出なければならないとされていて、関空会社は管理規程を定め、大阪府知事に届け出ている。また、駐車場法では、駐車場に駐車する自動車の保管に関し、善良な管理者の注意を怠らなかったことを証明する場合を除いては、損害賠償責任を免かれることができない旨規定されている。一方、近年、一般の駐車場管理者が運営する駐車場において、車両の引取りに現れない、若しくは引取りを拒否するという問題が顕在化してきているため、17年1月、適切なルールに則った駐車場運営と駐車場利用者の利益の保護に資することを目的として、駐車場法を所管している国土交通省都市・地域整備局が「駐車場管理規程例」(以下「管理規程例」という。)を作成し、公表している。
 本院は、これらのことなどを踏まえ、9年度から18年度までに入車した放置車両61台を対象として、関空会社本社において会計実地検査を行った。そして、経済性等の観点から、放置車両の管理及び処分は適切なものになっているかなどに着眼して、放置車両報告書等の書類により検査した。

(検査の結果)

 放置車両の記録が保存されていた9年度から18年度までの放置車両の累計は61台となっていた。そして、19年3月末現在、空港内駐車場内の保管場所(従業員用駐車スペース)に保管中のものが46台、処分されていたものが15台となっていた。

(1) 車両調査の状況

 関空会社では、管理規程等に特段の定めはないものの、16年度から、運輸支局等に登録名義人等所要の事項を照会し、判明した登録名義人等に通知書の送付を行うなどして車両の引取りなどについて協議することとしている。そして、放置車両報告書等により把握することができたのは46台となっていた。
 そして、警察に対する確認は、24台について、入車後、平均11.3箇月(最長33.1箇月)経過してから行っていた。また、登録名義人等の調査は、46台について、入車後、平均52.4箇月(最長109.6箇月)経過してから行っていたが、連絡が取れない状況であった。

(2) 放置車両の移動及び処分等の状況

 空港内駐車場に保管中の車両46台及び処分した車両15台、計61台の平均駐車日数は61.4箇月(最長113.1箇月)となっていた。
 そして、処分については、関空会社では管理規程等で定めがなかったことから、17年度までは行っていなかったが、19年3月末に、15台をすべて廃棄の方法により処分しており、入車から処分までの期間は、平均68.1箇月(最長109.5箇月)となっていた。なお、これら15台の処分費用は約10万円と見積もられたが、鉄くずとしての売却益相当額約10万円と相殺していて費用は発生していなかった。

(3) 放置車両の処分方法の検討等

 管理規程例によれば、「期限を定めて車両の引取りの催告をしたにもかかわらず、その期限内に引取りがなされないときは、催告をした日から3カ月を経過した後、利用者に通知し又は駐車場において掲示して予告した上で、公正な第三者を立ち会わせて車両の売却、廃棄その他の処分をすることができる。」とされている。さらに、「車両を処分した場合は、駐車料金並びに車両の保管、移動及び処分のために要した費用から処分によって生じる収入があればこれを控除し、不足があるときは利用者に対してその支払いを請求し、残額があるときはこれを利用者に返還するものとする。」とされており、売却により生じる収入が駐車料金相当額等より多くなる場合があることも想定している。
 そして、放置車両について、駐車期間を20日、車両調査に約1箇月、登録名義人等への引取り要請後の協議等に約1箇月、合わせて入車日から3箇月程度で駐車場内の保管場所へ移動することとし、車両価値が売却等費用を上回るものについて、引取りの催告を行いその日から3箇月経過した後に裁判所による競売等に付すこととした場合、競売等の手続に3箇月程度要すると見込まれるので、入車から放置車両の処分までに要する期間は計9箇月程度となる。
 上記のように早期に処分を行うこととすれば、一般的に年式が新しいほど高価となる市場価格に連動して売却価格もより高価となる傾向にあることを考えると、駐車料金相当額等を相当程度回収できたものと認められる。

<事例>

 平成15年12月20日に入車した11年初度登録の車両は、18年度末時点において入車から39.9箇月経過している。
 この車両について、入車から9箇月後に処分することとした場合、その駐車料金相当額は約54万円と試算され、前記のとおり、入車から9箇月後の16年9月に売却したとすれば、駐車料金相当額等を相当程度回収できたと認められる。

 このように、放置車両について、車両調査を行うまでの期間、駐車期間経過後の保管及び処分までの期間がいずれも長期になっていることなどにより、放置車両に係る駐車料金相当額等を回収しないまま廃棄せざるを得ない状況となっていることは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
 前記の放置車両について適切な管理等を行って、入車から9箇月後に処分したとした場合、その売却により回収すべき駐車料金相当額は3214万余円と試算される。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、関空会社において、管理規程等を定めているものの、放置車両に係る具体的な処理基準を定めていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 本院の指摘に基づき、関空会社では、19年10月に、放置車両の管理及び処分を適切に行うよう、次のような処置を講じた。
ア 管理規程を改定して放置車両の取扱いを明確に定めることにより、放置車両を売却し、その収入を駐車料金相当額等に充てることができるようにするとともに、駐車場利用者に対しても上記の管理規程等の主な内容を明示するなどして周知を図った。
イ 放置車両取扱要綱等を新たに制定して所有者等への連絡や放置車両の移動・処分の手続等を定め、車両調査の具体的な方法や対応時期を明確にした。