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  • 平成18年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

<参考:報告書はこちら>

我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果について


第4 我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果について

要請を受諾した年月日
平成18年6月8日
検査の対象
外務省、国際協力銀行、独立行政法人国際協力機構
検査の内容
我が国政府開発援助における無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成19年10月17日

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成18年6月7日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月8日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、独立行政法人国際協力機構、各府省が所管する公益法人

(二) 検査の内容

 我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約についての次の各事項

〔1〕 契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況

〔2〕 落札率の状況

(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)


(2) 平成16年度決算審査措置要求決議等の内容

 参議院決算委員会は、18年6月7日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成16年度決算審査措置要求決議」を行っている。
 このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、以下のとおりである。

7 資金の使途に疑惑が持たれる事件に係るODA案件の調査について

 ベトナムにおける外国からのODAで実施されたインフラ整備事業等において、不適切な設計や施工が行われ、日本を含むODA資金が遊興費等に流用されているのではないかとの疑念が同国国民の間に生じているほか、一般プロジェクト無償資金協力に関する入札の落札率が極めて高い事態等が明らかになった。
 政府は、近年の厳しい財政状況の中、ODAに対して国民の厳しい目が向けられていることを十分認識し、相手国政府の理解と協力を得て、時宜に適ったODA案件の実施や費用の適正化等に努め、我が国ODAの一層の透明性向上、適正かつ効率的な執行に努力すべきである。また、ベトナムにおいて疑念が生じているベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国ODA案件については、同国が我が国ODAの第3位の受取国となっている現状を踏まえ、捜査の動向を注視しつつ、入札手続や施工等が適切に実施されているか調査を実施し、その結果をインターネット等を通じて広く公開すべきである。


 また、18年6月15日の参議院決算委員会理事会で、「国会法第105条に基づく会計検査院に対する検査要請(18.6.7)について」として、
〔1〕 技術協力については、我が国援助実施機関が実施する、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約
〔2〕 ベトナムにおける、ベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助
の両事項が含まれることが確認され、報告については、19年次及び20年次に行うよう求めることとされた。
 本院は、これを受けて、19年次は、無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約について検査を実施し、報告することにした。また、20年次は、技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約及び我が国援助実施機関が実施する海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約についてそれぞれ検査を実施し、報告することにした。
 また、前記〔2〕の事項については、19年次に検査を実施し、その結果を別掲 として本報告書に記述した。

(3) 検査の対象、観点、着眼点及び方法

ア 検査の対象、観点及び着眼点

 検査の対象とされた各府省庁、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)及び各府省が所管する公益法人はいずれも技術協力を実施しているほか、外務省は無償資金協力を、JICAはその一部の実施の促進に必要な業務(以下「実施促進業務」という。)をそれぞれ実施している。
 本院は、検査の対象とされた我が国援助実施機関のうち、19年次は、外務省及びJICAを検査の対象とし、無償資金協力において被援助国政府が実施する施設の建設や資機材の調達等に係る契約について検査した。
 契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況については、合規性、経済性、効率性等の観点から、外務省及びJICAはどのようなガイドラインを制定しているか、また、どのような取組を行ってきているかなどに着眼して検査した。
 落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)については、合規性、経済性、効率性等の観点から、外務省が入札結果をどのように公表しているかに着眼して、予定価格も公表することにした15年度以降の閣議案件に係る契約で19年6月末までに外務省が無償資金協力の対象として適格な契約と認証したもののうち、入札結果を公表している契約等914件について検査した。

イ 検査の方法

 本院は、外務本省及びJICA本部において会計実地検査を行い、無償資金協力のうち被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約について検査した。
 そして、契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況については、外務省及びJICAからガイドライン等関連資料の提出を受けるとともに、どのような施策を講じてきているのかなどの説明を聴取した。
 また、落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)については、外務省及びJICAから基礎資料の提出を受けるなどして、外務省が公表している入札結果について一般プロジェクト無償等を中心に確認、分析した。
 本院は、本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、72人日を要して、外務本省及びJICA本部に対する会計実地検査を行った。さらに、政府開発援助事業の実施状況を現地調査した際、契約の当事者である被援助国事業実施機関から協力が得られた範囲内で、入札、契約に関する事項を含めて説明を受けた。


2 検査の結果

(1) 無償資金協力の実施及び実施促進の体制

 外務省は、無償資金協力の実施に当たり、案件の採択、交換公文の締結、契約の認証、供与資金の支払等の必要な業務を行っており、被援助国政府は事業の実施に責任を有し供与された資金を使用して施設の建設や資機材の調達等を行うことになる。
 JICAは、独立行政法人国際協力機構法(平成14年法律第136号)第13条第1項第2号でJICAの業務として規定されている無償資金協力に係る契約の締結に関し、調査、あっせん、連絡その他の必要な業務やその契約の実施状況に関し必要な調査を実施促進業務として行っている。
 そして、JICAは、無償資金協力実施促進業務実施要綱(平成16年規程(無)第8号)を定め、一般プロジェクト無償、人材育成研究支援無償、テロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償、コミュニティ開発支援無償、水産無償、文化無償、食糧援助、貧困農民支援等について実施促進業務を行っている。
 JICAが作成している「無償資金協力ガイドライン(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)」(12年作成、16年改訂、以下「無償資金協力ガイドライン」という。)は、被援助国政府が一般プロジェクト無償及び水産無償により供与される資金を用いて施設の建設や資機材の調達等を行う際に必要な事項を一般規則として定めている。そして、交換公文と同時に署名される合意議事録で、事業は無償資金協力ガイドラインに基づいて実施されることが言及されている。また、一般プロジェクト無償及び水産無償以外の分類でも準用されることがある。

(2) 無償資金協力における契約入札手続等

 交換公文の締結後、被援助国政府は、事業の実施のため、コンサルタント契約及び施設の建設や資機材の調達等の契約(以下「本体契約」という。)に向けた手続を執ることになる。
 無償資金協力ガイドライン及びJICAが定める「無償資金協力事業におけるコンサルタント業務の手引」(8年に「無償資金協力事業に係るコンサルタント業務ガイドライン」として作成。16年に改訂。以下「コンサルタント業務の手引」という。)に示されている契約入札手続は以下のとおりである。

ア コンサルタント契約

 JICAは、詳細設計とこれに基づく積算、入札補助及び施工監理業務を行う者として、基本設計調査を担当したコンサルタントを被援助国政府に推薦する。被援助国政府は、推薦されたコンサルタントと契約を締結する。このコンサルタント契約は、外務省が認証することによって無償資金協力の対象として適格な契約となる。

イ 被援助国政府による予定価格の作成

 コンサルタントが実施する詳細設計に基づく積算業務は、基本設計調査の中で積算された概算事業費の精度を高める作業である。
 そして、外務省及びJICAは、本体契約の予定価格は事業を実施する被援助国政府が詳細設計に基づく積算を基礎に作成していると説明している。

ウ 本体契約

(ア) 入札

 交換公文では、被援助国政府が締結する本体契約の相手方を我が国の企業に限定している。
 本体契約の相手方の選定は、従来から原則として一般競争入札によるとしている。ただし、施設の建設に係るものについては一般競争入札に参加する者に必要な資格を定めることができる入札参加資格制限付一般競争入札を採用している。外務省及びJICAは、これは我が国が有する優れた技術、知見等を活用した顔の見える援助としての質を確保するためのものであるとしている。
 入札会の主催者である被援助国政府は、できるだけ多くの入札参加者を求めるため、広く発行されている業界紙等に当該案件に係る入札事前資格審査又は入札会開催の公告を行う。
 我が国政府が実施する無償資金協力事業は、より公正で透明な手続が求められており、JICAは円滑な事業の実施を図るために、入札者が入札の準備に必要となる「入札指示書」や落札者を決定する基準となる「入札の評価方法」を記載した「標準入札図書(入札指示書スタンダード)」を定めている。
 開札の手順は、標準入札図書(入札指示書スタンダード)では以下のようになっている(図1参照)

図1 開札の手順【第1回入札会】

図1開札の手順【第1回入札会】


 JICAは実施促進業務を行う立場から入札会に中立な第三者として立ち会い、入札が公正かつ適正に実施されているか確認することになっている。

(イ) 銀行取極

 被援助国政府は、交換公文締結後、我が国にある銀行に被援助国政府名義の口座を開設し、我が国政府から資金を受け入れ、契約者に支払うための銀行取極を結ばなければならない。そして、この銀行取極に基づいて、被援助国政府は銀行に対し、契約者への支払手続の執行権を銀行に授与する支払授権書を発行する。

(ウ) 契約締結

 被援助国政府は、我が国政府が供与する資金を使用して、施設の建設、資機材の調達等を行うため、我が国の企業と円貨建ての契約を締結する。

(エ) 認証

 本体契約は、外務省が認証することによって初めて無償資金協力の対象として適格な契約になり、これに対して資金が供与されることとなる。

(オ) 支払

 一般プロジェクト無償等では、交換公文上の贈与の限度額全額が我が国政府から被援助国政府に直接支払われるわけではなく、銀行の被援助国政府名義の口座に必要な都度、必要な金額が支払われるものであり、すべての支払は日本国内で行われる仕組みになっている。契約者は、認証を受けた契約書及び支払授権書に基づき、銀行に対して支払請求を行う。外務省は、当該請求が正当な請求であることを確認した後、被援助国政府名義の口座に日本円で支払を行う。銀行はこの支払を受けた後、被援助国政府に代わり直ちに当該契約者に支払を行う。

(3) 契約の競争性・透明性の向上に向けた外務省及びJICAの取組の状況

 外務省及びJICAが、契約の競争性・透明性の向上に向けて近年取り組んでいる事項を時系列にまとめると表1のとおりである。

表1 契約の競争性・透明性の向上に向けた近年の取組
実施時期
事項
15年4月
予定価格の事後公表
資機材の調達等の案件における契約の細分化
15年5月
入札準備期間の延長(30日間→45日間)
17年2月
入札関連情報の提供
18年7月
入札事前資格審査の見直し
18年9月
入札公告の和文掲載
19年1月〜
企業説明会の開催(建設関係、土木関係、新規参入企業)

(4) 落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況) 

 被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約について予定価格を含めた入札結果の公表の有無及び本院の分析対象を整理して示すと、表2のとおりである。

表2 本院の分析対象
項目
分類
入札結果の公表
分析対象(注)
 
うち予定価格公表
契約の状況
落札率
一般無償のうち一般プロジェクト無償
テロ対策等治安無償
防災・災害復興支援無償
水産無償
文化無償のうち一般文化無償
イラク復興支援
食糧援助
食糧増産援助(15年度)
食糧増産援助(16年度)/貧困農民支援
×
×
×
×
 分析対象欄中、〇印は対象としたもの、−印は対象外のものをそれぞれ示している。


 そして、本院が分析対象とした契約件数を示すと表3のとおりである。

表3 契約件数の分類別・形態別内訳
(単位:件)
年度
分類/形態
15
16
17
18
一般プロジェクト無償
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
53
89
71
103
71
49
50
43
245
284
小計
142
174
120
93
529
テロ対策等治安無償
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
1
1
1
1
小計
2
2
水産無償
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
5
0
9
3
4
0
0
0
18
3
小計
5
12
4
0
21
一般文化無償
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
1
45
1
43
0
33
2
9
4
130
小計
46
44
33
11
134
イラク復興支援
資機材の調達等に係るもの
12
33
1
0
46
食糧援助
資機材の調達等に係るもの
18
18
18
7
61
食糧増産援助/貧困農民支援
資機材の調達等に係るもの
33
37
40
11
121
256
318
216
124
914

ア 予定価格の状況

 落札率を分析する前提になる予定価格について、外務省及びJICAは、コンサルタントが詳細設計において積算した事業費を基礎にして被援助国政府が作成していると説明している。
 JICAのコンサルタントに対する業務指示書では、基本設計調査における概算事業費の積算については、施設の建設に関してはその後に実施される詳細設計の事業費との差がプラスマイナス10%以内に収まるような精度を、また、資機材の調達等に関しては予定価格としての精度を、それぞれ確保することとしている。
 そこで、外務省が入札結果の中で公表している予定価格について概算事業費との対比が可能であったものを対象として、基本設計調査報告書に記載されている本体契約に係る概算事業費又は見直し後の概算事業費に対する割合を算出した。
 その結果は、施設の建設に係るものでは219件のうち、予定価格が概算事業費のプラスマイナス10%の範囲内で作成されていたものは208件(94.9%)になっていた。
 また、資機材の調達等に係るものでは128件のうち、10件は予定価格と概算事業費とが同額であり、これを含め99%以上101%未満の範囲で作成されていたものは94件(73.4%)、97%以上103%未満の範囲で作成されていたものは118件(92.1%)となっており、予定価格と概算事業費に大きな差は見受けられなかった。
 以上のとおり、ほとんどの予定価格は、概算事業費との間に大きな差は見受けられない状況となっており、公表されていた概算事業費から、おおよその予定価格を推測することが可能であったと認められる。
 このような理由から、JICAは、19年4月以降、基本設計調査報告書は本体契約が認証されるまでの間は閲覧できないようにした。

イ 入札、落札、不落随契等の状況

 分析対象とした契約件数914件から、契約の性質若しくは目的が競争を許さないという理由等により入札会を行うことなく当初から随意契約とした24件を除いた890件について、入札から契約に至るまでの状況を示すと表4のとおりである。

表4 入札から契約に至るまでの状況〔分析対象全体〕
(単位:件)
入札・契約区分
15年度
16年度
17年度
18年度
第1回入札会
251
308
209
123
891
 
落札
当初〔1〕
141
147
108
82
478
再度〔2〕
37
52
26
13
128
不調
73
109
75
28
285
 
不落随契〔3〕
52
75
60
21
208
キャンセル
1
2
2
0
5
第2回入札会
20
36
13
7
76
 
落札
当初〔4〕
11
26
5
4
46
再度〔5〕
3
2
5
1
11
不調
6
8
3
2
19
 
不落随契〔6〕
5
8
3
2
18
第3回入札会
1
0
0
0
1
 
落札
当初〔7〕
1
0
0
0
1
落札契約 計(〔1〕+〔2〕+〔4〕+〔5〕+〔7〕)
193
227
144
100
664
不落随契 計(〔3〕+〔6〕)
57
83
63
23
226
契約 合計(〔1〕+〔2〕+〔3〕+〔4〕+〔5〕+〔6〕+〔7〕)
250
310
207
123
890
(注)
 契約合計の計890件が第1回入札会の計891件から減少しているのは、不調となった1件が分割されて3件になった入札会が2件あること及び不調となった後キャンセルとなったものが5件あることによるものである。


(ア) 入札の状況

 入札会の主催者は発注者である被援助国政府であるが、コンサルタントの手引によれば、コンサルタントにはその受任者として公正で透明性を確保した入札を円滑に行う責務があるとされている。入札会は被援助国で実施されることを前提としているが、競争性を広く確保するなどの観点から、我が国国内で実施することも認められている。そして、実際には、入札会への参加を容易にするため、ほとんどの入札会が我が国国内で実施されていた。
 前記の分析対象とした890件の契約に係るすべての入札会968件において、入札会に参加した者の数の状況を示すと表5−1から表5−3のとおりである。

表5−1 入札会参加者数(分析対象全体)
(単位:件、者)
年度
入札件数
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜11者
平均
15
272
84
78
58
24
11
6
11
2.5
16
344
129
74
77
27
15
12
10
2.4
17
222
70
48
58
27
9
8
2
2.5
18
130
39
50
25
8
5
2
1
2.2
968
322
250
218
86
40
28
24
2.4
割合
100.0%
33.2%
25.8%
22.5%
8.8%
4.1%
2.8%
2.4%
累計
322
572
790
876
916
944
968
累計割合
33.2%
59.0%
81.6%
90.4%
94.6%
97.5%
100.0%

表5−2 入札会参加者数(施設の建設に係るもの)
(単位:件、者)
分類
年度
入札件数
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜11者
平均
一般プロジェクト無償
15
54
12
13
24
5
0
0
0
2.4
16
73
13
11
44
5
0
0
0
2.5
17
74
18
18
34
4
0
0
0
2.3
18
54
22
22
8
1
1
0
0
1.8
255
65
64
110
15
1
0
0
2.3
割合
100.0%
25.4%
25.0%
43.1%
5.8%
0.3%
0.0%
0.0%
累計
65
129
239
254
255
255
255
累計割合
25.4%
50.5%
93.7%
99.6%
100.0%
100.0%
100.0%

表5−3 入札会参加者数(資機材の調達等に係るもの)
(単位:件、者)
分類
年度
入札件数
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7〜11者
平均
一般プロジェクト無償
15
92
19
31
17
13
7
3
2
2.7
16
114
34
33
13
15
10
6
3
2.6
17
48
9
9
10
15
3
1
1
3.0
18
43
8
18
10
5
1
0
1
2.4
297
70
91
50
48
21
10
7
2.7
割合
100.0%
23.5%
30.6%
16.8%
16.1%
7.0%
3.3%
2.3%
累計
70
161
211
259
280
290
297
累計割合
23.5%
54.2%
71.0%
87.2%
94.2%
97.6%
100.0%

 入札会の参加者数は、分析対象全体では平均2.4者となっている。
 これを一般プロジェクト無償についてみると、施設の建設に係るものでは15年度閣議決定案件以降2.4者、2.5者、2.3者、1.8者で推移しており、資機材の調達等に係るものでは同じく2.7者、2.6者、3.0者、2.4者で推移していて、各年度とも資機材の調達等に係るものが施設の建設に係るものを若干上回っていた。また、入札会を開催しても1者しか参加しない場合があり、施設の建設に係るものでは全体の25.4%、資機材の調達等に係るものでは全体の23.5%を占めていた。外務省及びJICAは様々な取組を行っているが増加の傾向は見られず、外務省はこのような状況について、被援助国内で実施される事業は国内の公共事業等とは大きく異なり事業開始時に想定し得ない事業に関する行政手続の変更、治安の悪化等被援助国側に起因する事業実施上のリスクが存在することから、開発途上国で事業を行うことを躊躇する企業が多いなどのためと思われると説明している。
 また、一般文化無償には、博物館等の建設や遺跡の修復・保存用機材の調達のための贈与の限度額が1件当たり3億円を上限として資金を供与する案件と、日本語学習機材、スポーツ機材、視聴覚機材等の調達のための原則5000万円を上限として資金を供与する案件(以下「文化機材案件」という。)がある。
 一般文化無償についてみると、資機材の調達等に係る入札会119件のうち102件(85.7%)は1者だけが参加して行われたものであり、平均の参加者数は1.1者であった。そして、この102件の入札会はすべて文化機材案件に係るものであった。外務省はこれについて、文化機材案件は一般プロジェクト無償案件と比べて1件当たりの金額が少額であり、入札者の関心が集まりにくいというような事情があったのではないかと思われると説明している。

(イ) 落札の状況

 入札により落札者が決定された664件について、施設の建設に係るものと資機材の調達等に係るものに大別し無償資金協力の分類ごとに整理して、落札価格の予定価格に対する割合である落札率を示すと表6のとおりである。

表6 落札率の状況
(単位:件、%)
分類
年度
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
入札件数
落札件数
落札率
入札件数
落札件数
落札率
入札件数
落札件数
平均落札率
最低
平均
最高
最低
平均
最高
一般プロジェクト無償
15
54
37
81.54
98.34
99.99
92
80
26.09
84.94
99.77
146
117
89.18
16
73
40
83.25
99.06
99.98
114
89
40.36
87.09
99.95
187
129
90.80
17
74
37
72.91
96.45
99.94
48
43
54.76
81.72
99.99
122
80
88.53
18
54
34
61.12
92.88
99.98
43
41
68.42
89.13
99.94
97
75
90.83
255
148
61.12
96.81
99.99
297
253
26.09
85.83
99.99
552
401
89.88
テロ対策等治安無償
15
16
17
18
1
1
99.92
99.92
99.92
1
1
99.13
99.13
99.13
2
2
99.53
1
1
99.92
99.92
99.92
1
1
99.13
99.13
99.13
2
2
99.53
水産無償
15
5
4
99.41
99.75
99.97
0
0
5
4
99.75
16
9
8
98.38
99.57
99.97
3
3
99.34
99.66
99.84
12
11
99.60
17
4
2
99.28
99.59
99.89
0
0
4
2
99.59
18
0
0
0
0
0
0
18
14
98.38
99.63
99.97
3
3
99.34
99.66
99.84
21
17
99.63
一般文化無償
15
1
0
42
21
70.83
94.65
99.99
43
21
94.65
16
1
1
99.95
99.95
99.95
40
12
99.08
99.77
99.99
41
13
99.78
17
0
0
29
8
56.18
91.31
99.96
29
8
91.31
18
2
2
99.22
99.47
99.72
8
4
83.60
92.28
99.91
10
6
94.68
4
3
99.22
99.63
99.95
119
45
56.18
95.21
99.99
123
48
95.49
イラク復興支援
15
10
9
50.22
61.11
78.60
10
9
61.11
16
34
22
51.46
79.63
99.62
34
22
79.63
17
1
1
99.57
99.57
99.57
1
1
99.57
18
0
0
0
0
45
32
50.22
75.04
99.62
45
32
75.04
食糧援助
15
18
17
78.50
89.65
99.11
18
17
89.65
16
18
18
76.46
90.05
98.76
18
18
90.05
17
19
18
82.14
91.41
98.75
19
18
91.41
18
7
7
77.13
87.32
99.44
7
7
87.32
62
60
76.46
90.03
99.44
62
60
90.03
食糧増産/貧困農民
15
50
25
52.09
90.73
99.95
50
25
90.73
16
52
34
34.84
88.73
100.00
52
34
88.73
17
47
35
47.10
91.90
100.00
47
35
91.90
18
14
10
89.10
96.14
100.00
14
10
96.14
163
104
34.84
90.99
100.00
163
104
90.99
合計
15
60
41
81.54
98.48
99.99
212
152
26.09
86.35
99.99
272
193
88.93
16
83
49
83.25
99.16
99.98
261
178
34.84
87.85
100.00
344
227
90.29
17
78
39
72.91
96.61
99.94
144
105
47.10
87.68
100.00
222
144
90.10
18
57
37
61.12
93.43
99.98
73
63
68.42
90.40
100.00
130
100
91.52
278
166
61.12
97.12
99.99
690
498
26.09
87.68
100.00
968
664
90.04

 一般プロジェクト無償についてみると、施設の建設に係るものでは平均96.81%、資機材の調達等に係るものでは平均85.83%で、両者の間には平均落札率に10ポイント以上の開きが見られる。外務省及びJICAは、資機材の調達等では輸送のほかに現地での据付け作業を伴うことがあるがこれは比較的短期間で済む一方、施設の建設では現地に一定期間留まり工事を行うことになるため、施設の建設と資機材の調達等とでは契約内容、現地事情等を勘案した場合契約履行のための前提条件に少なからず相違があり、施設の建設の方がより多くのリスクを勘案して価格札に反映されている可能性が高いと思われると説明している。
 また、一般文化無償の資機材の調達等に係るものでは平均95.21%となっていた。
 落札率と落札件数の関係を示すと表7−1及び表7−2のとおりであり、資機材の調達等に係るものでは落札率99%以上のものは全体の21.6%であるが、施設の建設に係るものでは落札率99%以上のものは全体の67.4%を占めている。

表7−1 落札率と落札件数の関係(施設の建設に係るもの)
(単位:件、%)
年度
100%
99%以上100%未満
98%以上99%未満
97%以上98%未満
96%以上97%未満
95%以上96%未満
90%以上95%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
40%以上60%未満
40%未満
15
0
26
9
1
1
0
3
1
0
0
0
0
41
16
0
44
2
0
1
0
1
1
0
0
0
0
49
17
0
27
4
1
1
0
1
3
2
0
0
0
39
18
0
15
6
3
2
2
1
2
4
2
0
0
37
0
112
21
5
5
2
6
7
6
2
0
0
166
割合
0.0
67.4
12.6
3.0
3.0
1.2
3.6
4.2
3.6
1.2
0.0
0.0
100.0
累計
0
112
133
138
143
145
151
158
164
166
166
166
累計割合
0.0
67.4
80.1
83.1
86.1
87.3
90.9
95.1
98.7
100.0
100.0
100.0

表7−2 落札率と落札件数の関係(資機材の調達等に係るもの)
(単位:件、%)
年度
100%
99%以上100%未満
98%以上99%未満
97%以上98%未満
96%以上97%未満
95%以上96%未満
90%以上95%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
40%以上60%未満
40%未満
15
0
34
9
8
6
2
28
23
21
9
10
2
152
16
1
43
14
8
6
8
24
36
17
9
10
2
178
17
2
16
6
8
6
4
22
19
8
6
8
0
105
18
1
11
5
6
1
3
7
21
7
1
0
0
63
4
104
34
30
19
17
81
99
53
25
28
4
498
割合
0.8
20.8
6.8
6.0
3.8
3.4
16.2
19.8
10.6
5.0
5.6
0.8
100.0
累計
4
108
142
172
191
208
289
388
441
466
494
498
累計割合
0.8
21.6
28.5
34.5
38.3
41.7
58.0
77.9
88.5
93.5
99.1
100.0

(ウ) 不落随契の状況

 コンサルタント業務の手引では、入札は再度までに限定されており、再度入札の価格のすべてが予定価格を上回った場合には、最低入札価格を提示した入札者と予定価格以下になるまで価格交渉を行うなどしている。
 国内では、入札契約手続における競争性・透明性の確保に努め、一層の入札競争手続の適正化を図る観点から、近年、不落随契の本来の趣旨を踏まえ、競争入札によることが困難な場合の真にやむを得ない措置となるよう厳正化に取り組む動きが広がってきている。
 各分類ごとの不落随契の件数及び割合を示すと表8のとおりである。

表8 不落随契の件数及び割合
(単位:件、%)
分類
施設の建設に係るもの
資機材の調達等に係るもの
割合
年度
割合
年度
割合
15
16
17
18
15
16
17
18
一般プロジェクト無償
落札契約
37
40
37
34
148
60.9
80
89
43
41
253
90.0
401
76.5
不落随契
16
30
33
16
95
39.0
8
14
4
2
28
9.9
123
23.4
53
70
70
50
243
100.0
88
103
47
43
281
100.0
524
100.0
テロ対策等治安無償
落札契約
1
1
100.0
1
1
100.0
2
100.0
不落随契
0
0
0.0
0
0
0.0
0
0.0
1
1
100.0
1
1
100.0
2
100.0
水産無償
落札契約
4
8
2
0
14
77.7
0
3
0
0
3
100.0
17
80.9
不落随契
1
1
2
0
4
22.2
0
0
0
0
0
0.0
4
19.0
5
9
4
0
18
100.0
0
3
0
0
3
100.0
21
100.0
一般文化無償
落札契約
0
1
0
2
3
75.0
21
12
8
4
45
38.4
48
39.6
不落随契
1
0
0
0
1
25.0
21
28
19
4
72
61.5
73
60.3
1
1
0
2
4
100.0
42
40
27
8
117
100.0
121
100.0
イラク復興支援
落札契約
9
22
1
0
32
76.1
32
76.1
不落随契
1
9
0
0
10
23.8
10
23.8
10
31
1
0
42
100.0
42
100.0
食糧援助
落札契約
17
18
18
7
60
98.3
60
98.3
不落随契
1
0
0
0
1
1.6
1
1.6
18
18
18
7
61
100.0
61
100.0
食糧増産援助/貧困農民支援
落札契約
25
34
35
10
104
87.3
104
87.3
不落随契
8
1
5
1
15
12.6
15
12.6
33
35
40
11
119
100.0
119
100.0
合計
落札契約
41
49
39
37
166
62.4
152
178
105
63
498
79.8
664
74.6
不落随契
18
31
35
16
100
37.5
39
52
28
7
126
20.1
226
25.3
59
80
74
53
266
100.0
191
230
133
70
624
100.0
890
100.0

 再度入札を行っても落札者がないとして不落随契としているものは全体で226件(25.3%)となっていた。
 一般プロジェクト無償についてみると、資機材の調達等に係るものは28件(9.9%)であるのに対し、施設の建設に係るものは95件(39.0%)と高くなっていた。

(エ) イラク復興支援

 我が国政府は、15年10月15日、イラクの復興に対する当面の支援として、総額15億ドルの資金を供与することを発表した。支援の内容としては詳細な現地調査を必要としない資機材の調達等に係る案件が中心となった。
 イラク復興支援については緊急性が高いため、援助の実施を決定すると外務大臣が閣議にて発言し、その後口上書を取り交わし、各案件ごとに資金を一括供与している。
 入札の結果、落札価格が予定価格を大幅に下回ったため追加調達をすることにし、特別に緊急性が高いという理由により随意契約を締結したものがある。

3 検査の結果に対する所見

ア 本院は、政府開発援助の無償資金協力及び技術協力における契約入札手続等についての検査の要請を受け、19年次は、無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約の状況について検査した。
 我が国の無償資金協力のうち、一般プロジェクト無償等では被援助国政府が行う事業への資金供与の形態を採るが、詳細設計やこれに基づく積算及び施設の建設や資機材の調達等は被援助国政府との契約により我が国の企業が実施している。そして、我が国が供与する資金は、必要な都度、必要な金額が我が国にある被援助国政府名義の口座を経由して直ちに契約者である我が国の企業に支払われる仕組みになっている。
 契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況については、外務省及びJICAは、ガイドライン等を制定し、一般プロジェクト無償等では競争性が確保できる制度としての一般競争入札制度を従来から採り入れており、近年においても様々な取組を行っている。また、被援助国政府が施設の建設や資機材の調達等で締結する契約の相手方を我が国の企業に限定しており、施設の建設については入札参加資格制限付一般競争入札制度を採用することとしているが、これは、我が国が有する優れた技術、知見等を活用した援助としての質を確保するためのものであるとしている。
 外務省及びJICAは、予定価格は事業を実施する被援助国政府が詳細設計に基づく積算を基礎に作成していると説明している。外務省は、従来から入札結果を公表していたが、15年度閣議決定案件からは、無償資金協力事業に対する一層の情報開示努力としてそれまでの入札結果に加え予定価格も公表することにした。そして、予定価格と基本設計調査報告書に記載されている概算事業費又は見直し後の概算事業費とを比較すると、施設の建設に係るものでは94.9%が概算事業費のプラスマイナス10%の範囲内で、また、資機材の調達等に係るものでは92.1%が概算事業費のプラスマイナス3%の範囲内で作成されている状況になっていた。
 入札会に参加する我が国の企業数は、平均で2.4者となっており、一般プロジェクト無償において、施設の建設に係るものについては15年度2.4者、16年度2.5者、17年度2.3者、18年度1.8者となっており、1者だけが参加した入札は全体の25.4%となっていた。また、資機材の調達等に係るものでは、15年度2.7者、16年度2.6者、17年度3.0者、18年度2.4者となっており、1者だけが参加した入札は全体の23.5%となっていた。これについて、外務省は、被援助国政府が実施する事業は国内の公共事業等とは大きく異なり事業開始時には想定し得ない事業に関する行政手続の変更、治安の悪化等被援助国側に起因する事業実施上のリスクが存在するなどのためと思われると説明している。
 一般文化無償では、資機材の調達等に係る入札会119件のうち102件(85.7%)は1者だけが参加して行われたものであり、平均の参加者数は1.1者であった。
 落札率の状況については、分析の結果、一般プロジェクト無償における平均落札率は89.88%になっており、施設の建設に係るものでは平均96.81%、資機材の調達等に係るものでは平均85.83%で、両者の間には平均で10ポイント以上の差が生じていた。また、落札率と落札件数の関係についてみると、資機材の調達等に係るものでは落札率99%以上のものは全体の21.6%であるが、施設の建設に係るものでは99%以上のものは全体の67.4%を占めていた。これらについて、外務省及びJICAは、資機材の調達等では輸送のほかに現地での据付け作業を伴うことがあるがこれは比較的短期間で済む一方、施設の建設では現地に一定期間留まり工事を行うことになるため、施設の建設と資機材の調達等とでは契約内容、現地事情等を勘案した場合契約履行のための前提条件に少なからず相違があり、施設の建設の方がより多くのリスクを勘案して価格札に反映されている可能性が高いと思われると説明している。
 不落随契は、再度入札をしても落札者がない場合で、それ以上は競争入札によることが困難であると見込まれる場合に予定価格を下回るまで価格交渉を行った結果随意契約として締結されるものである。JICAでは、1回の入札会で入札を再度までと限定しており、不落随契の件数は、契約件数の25.3%を占める状況になっていた。特に、一般プロジェクト無償では、資機材の調達等に係るものが9.9%であるのに対し、施設の建設に係るものは39.0%と高くなっていた。
 イラク復興支援は、外務大臣の閣議発言を受け、緊急無償資金協力として各案件ごとに資金を一括供与して実施されたものであるが、資機材の調達等に係る案件が中心であり、入札の結果、落札価格が予定価格を大幅に下回ったため追加調達をすることにし、特別に緊急性が高いという理由により随意契約を締結したものがある。

イ 本院は、無償資金協力において、被援助国政府が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約の競争性・透明性の向上に向けた外務省及びJICAの取組の状況について検査した。外務省及びJICAは、ガイドライン等において一般競争入札制度を採り入れ、契約の競争性・透明性の向上に向けた様々な取組を行ってきたが、入札会に参加する我が国の企業数には現状においては特段の変化は見られない。外務省が説明する事業実施上のリスク等を考慮すると、現在の入札参加者数は必ずしも少ないとは言い切れないが、1者だけが参加した入札では競争性が確保されているとは言えない。ついては、外務省及びJICAは、契約の競争性・透明性の向上に向けたより一層の努力を引き続き行っていくことにより、被援助国政府が最低限現状の入札参加者数を確保し、また、2者以上の参加者を確保していくことが望まれる。
 また、本院は、入札の結果としての落札価格の予定価格に対する割合である落札率の状況等について外務省が公表している資料等に基づいて914件の契約について分析を行った。被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に係る予定価格やその基礎となる仕様書、設計書等は被援助国政府が作成し所有するものであることを踏まえた上で、外務省及びJICAは透明性の向上に向けて、落札率の状況(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)について、引き続き公表するなどの努力を行っていくことが望まれる。
 無償資金協力は国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるもので、国民の十分な理解を得ることが重要であることにかんがみ、国民に対する最大限の説明責任を果たしていくことが求められる。
 現在外務省が行っている無償資金協力の業務の相当部分が20年10月にJICAに移管され、外務省及びJICAの果たす役割が大きく変わることが想定されるが、本院としては、契約の競争性・透明性の向上に向けた取組や落札率の状況がどのように推移していくのかについて、今後とも留意していくこととする。
 本院としては、20年次は、技術協力を中心に、内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、JICA、各府省が所管する公益法人を対象として引き続き検査し、取りまとめが出来次第報告することとする。

(別掲)

 ベトナムにおける、ベトナム交通運輸省第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助に関する会計検査の結果について

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成18年6月7日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月8日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 内閣府本府、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、独立行政法人国際協力機構、各府省が所管する公益法人

(二) 検査の内容

 我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約についての次の各事項

〔1〕 契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況

〔2〕 落札率の状況

(予定価格、入札、落札、不落随契等契約の状況)


(2) 平成16年度決算審査措置要求決議等の内容

 参議院決算委員会は、18年6月7日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成16年度決算審査措置要求決議」を行っている。
 このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、以下のとおりである。

7 資金の使途に疑惑が持たれる事件に係るODA案件の調査について

 ベトナムにおける外国からのODAで実施されたインフラ整備事業等において、不適切な設計や施工が行われ、日本を含むODA資金が遊興費等に流用されているのではないかとの疑念が同国国民の間に生じているほか、一般プロジェクト無償資金協力に関する入札の落札率が極めて高い事態等が明らかになった。
 政府は、近年の厳しい財政状況の中、ODAに対して国民の厳しい目が向けられていることを十分認識し、相手国政府の理解と協力を得て、時宜に適ったODA案件の実施や費用の適正化等に努め、我が国ODAの一層の透明性向上、適正かつ効率的な執行に努力すべきである。また、ベトナムにおいて疑念が生じているベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国ODA案件については、同国が我が国ODAの第3位の受取国となっている現状を踏まえ、捜査の動向を注視しつつ、入札手続や施工等が適切に実施されているか調査を実施し、その結果をインターネット等を通じて広く公開すべきである。


 また、18年6月15日の参議院決算委員会理事会で、「国会法第105条に基づく会計検査院に対する検査要請(18.6.7)について」として、
〔1〕 技術協力については、我が国援助実施機関が実施する、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約
〔2〕 ベトナムにおける、ベトナム交通運輸省第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助
の両事項が含まれることが確認され、報告については、19年次及び20年次に行うよう求めることとされた。

(3) 平成16年度決算審査措置要求決議について政府が講じた措置の内容

 政府は、上記(2)の「平成16年度決算審査措置要求決議」に対して、19年3月16日に「平成16年度決算審査措置要求決議について講じた措置」を以下のとおり参議院決算委員会に報告している。

7 資金の使途に疑惑が持たれる事件に係るODA案件の調査について

 ODA事業の実施に際しては、外務省において、企業及び関係者に対して注意喚起を行うとともに、不正に対する認識を共有し、モラルの向上を図る取組を行っているところである。
 ベトナム交通運輸省第18事業管理局(PMU18)汚職疑惑事件については、ベトナム政府に対し、真相の早期究明について累次にわたり申し入れてきたところであり、ベトナム政府からは、調査の結果として、日本政府のODAを使ったプロジェクトは全てよい品質であり、ベトナム政府と日本側とのしっかりした管理協力を得ていることや、日本のODA資金を用いた全てのプロジェクトについて資金の不正使用及び流用の問題はなかったことが判明したほか、反汚職法の公布等汚職防止対策として種々の措置を執ってきた旨を伝達してきている。我が国としては本件疑惑事件を踏まえた再発防止策等の着実な実施等について引き続きベトナム政府に要請していく所存である。
 一般プロジェクト無償資金協力等の入札については、これまで入札期間の延長、契約の細分化、入札関連情報公開の拡充の措置を講じてきたところであるが、さらに本年度からは、入札事前資格審査基準の緩和、入札公告の和文掲載の措置を講じ、競争性の更なる向上、費用の適正化を図ることにより、適正かつ効率的な執行に努めているところである。
 今後とも、このような取組を通じ、我が国ODA事業の適切な実施を確保してまいる所存である。


(4) 検査の対象、観点及び着眼点

 ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム国」という。)に対する我が国の政府開発援助は、4年度から18年度までの累計額で、無償資金協力903億9700万余円、円借款1兆1528億6100万円、技術協力698億2000万余円、計1兆3130億7800万余円と多額に上っている。
 前記のとおり、参議院決算委員会理事会で、18年6月7日の国会法第105条に基づく本院に対する検査要請の検査の内容には、「ベトナムにおける、ベトナム交通運輸局第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助」を含むことが確認された。
 本院は、PMU18が事業の実施機関となった我が国のすべての政府開発援助である無償資金協力4事業支出済額100億9875万余円及び円借款7事業貸付実行額808億1733万余円を対象として検査した。
 これら11事業に係る我が国援助実施機関であり、本院の検査対象機関である外務省、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)及び国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation。以下「JBIC」という。)に対する検査に当たっては、合規性等の観点から、援助は交換公文、借款契約に則したものになっているか、また、資金の供与等は法令、予算等に従って適正に行われているかに着眼して検査した。
 また、ベトナム国において、ベトナム国政府の協力が得られた範囲内で、合規性等の観点から、入札、契約等の事業実施の手続はJICA及びJBICが示している指針等に則して適切に行われたかに着眼して調査した。
 そして、我が国の国会で、PMU18が関係する事業において不適切な設計や施工が行われているのではないかなどという疑念がベトナム国国民の間に生じているとされたことを踏まえ、本院は、今回特に、
〔1〕 無償資金協力の事業では、橋りょうの建設の工事において設計変更がある場合に手続等は上記の指針等に則して適切に行われているか
〔2〕 円借款の事業では、道路の工事において設置された施設や使用された資材が設計どおりのものとなっているか、適切な施工監理が実施されているか、契約書に記載された仕様どおりの機材を調達しているか
に着眼して調査した。

(5) 検査の方法

 本院は、今回、外務省、JICA本部及びJBIC本店において、援助実績、実施に関する資料の提出及び提示を受け、会計実地検査を行った。
 また、ベトナム国に職員を派遣し、ベトナム国の計画投資省、財政省、公安省、交通運輸省等の政府関係機関から、協力が得られた範囲内で、事業、契約の実施状況や施設、資機材の利用状況等について説明を受け、実地に調査した。
 そして、PMU18などが保有している図面、仕様書、基準等調査に必要と認められる資料について、その協力が得られた範囲内で提出又は提示を受けた。
 さらに、本院は、ベトナム国において、無償資金協力事業の16箇所、円借款事業の23箇所、計39箇所について、外務省、JICA及びJBICの職員等の立会いの下に、PMU18の協力が得られた範囲内で、目視により、また、一部は出来形の計測により、現場確認を行い、完成した橋りょうの施設等の施工状況を実地に調査した。
 本院は、本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、172.5人日を要して、外務本省、JICA本部、JBIC本店等に対する会計実地検査及びベトナム国における現地調査を行った。

2 検査の結果

(1) PMU18の概要

 交通運輸省の説明によれば、ベトナム国における道路行政は、基本的に中央政府と地方政府との役割分担がなされており、交通運輸省がすべての国道を管轄するとしている。中央政府では、交通運輸省が国道の計画、建設、維持管理等の道路行政を行い、また、主に交通運輸省内のPMU18などの各事業管理局が国道の建設工事を担当し、建設完了後の国道の維持管理を道路総局に移管しているとしている。各事業管理局は、交通運輸省の監督の下、ODA事業を含む事業実施のために個別に設立された組織である。PMU18は当初は国道18号線の建設工事を担当することとして設立された組織であったが、現在はそれ以外の国道や地方道路の建設工事も担当することとなっており、局長以下250名程度の恒常的な組織となっているとしている。

(2) 一般プロジェクト無償

ア 各事業の概要

 本院が確認したところ、ベトナム国でPMU18が実施機関となって我が国の一般プロジェクト無償により実施した事業は、4事業で供与限度額計101億9900万円となっており、前記の無償資金協力累計額903億9700万余円の約11%を占めている。外務省から提出された資料に基づき、この4事業に係る事業名、供与限度額等を整理して示すと、表1のとおりである。

表1 PMU18が実施機関となっている一般プロジェクト無償4事業
(単位:百万円、件)
事業名
交換公文締結年月日
供与限度額
コンサルタント契約の件数
建設契約の件数
調達契約の件数
北部地方橋梁改修計画
8.1.29
248
1
1
8.7.27
3,512
1
1
メコンデルタ地域橋梁改修計画
13.6.1
3,734
1
1
1
中部地方橋梁改修計画
14.3.29
739
1
2
第2次中部地方橋梁改修計画
15.6.23
1,010
1
1
16.7.1
956
1
1

イ 一般プロジェクト無償における手続の概要

 外務省及びJICAの説明によれば、上記の4事業は、基本的に次のような手続を経て実施されたとしている。

(ア) ベトナム国における我が国への援助要請及び基本設計調査

 外務省は、ベトナム国政府からの要請を受け、要請案件の中から選定を行い、当該選定案件の妥当性の検証等を行うため、調査案件採択の通知をJICAに行う。JICAは、基本設計調査をコンサルタントに委託して実施する。

(イ) 交換公文の締結及び事業実施

 一般プロジェクト無償による資金供与を行うことが適正であると確認された要請については、閣議決定を経た後、我が国の代表者とベトナム国の代表者との間で交換公文の署名が行われる。交換公文には、一般プロジェクト無償の目的及び内容、供与限度額、供与期限等が記載されている。そして、ベトナム国政府は、交換公文に基づき、供与された資金により施設の建設、資機材の調達等を、我が国の認証を得て、自ら行う。また、交換公文に付随して、JICAが一般プロジェクト無償の円滑、適正な実施を促進するための業務(以下「実施促進業務」という。)を行うこと、ベトナム国政府は、一般プロジェクト無償の実施に当たり、JICAが定めた無償資金協力ガイドラインに従うことなどが合意される。
 交換公文の締結後、実施機関であるPMU18は、事業の実施に向けて、コンサルタント契約及び施設の建設や資機材の調達等の契約(以下「本体契約」という。)の手続を執ることになる。そして、PMU18は、事業における設計等や業務の監理をコンサルタントに委託し、本体契約に基づいて工事業者及び資機材調達業者(以下、これらを「契約業者」という。)に実施させる。また、上記のガイドライン及びこれに基づく詳細事項(以下、これらを「ガイドライン等」という。)では、被援助国及び実施機関が一般プロジェクト無償を実施する際に従うべき事項等が規定されている。
 そして、JICAは、ベトナム国政府に対して、施設の建設等に係る入札、契約、契約内容の変更、完了等の各業務の段階に報告を求めており、この報告を通じるなどして実施状況を確認する。

(ウ) 支払

 ベトナム国政府は、我が国政府からの供与資金の受入れ、コンサルタント及び契約業者に対する対価の支払を、日本に所在する銀行(以下「本邦の銀行」という。)に開設した口座を経由して行う。

ウ 入札、契約の状況

 PMU18が実施機関となっている前記の4事業に係るコンサルタント契約6件、本体契約8件、計14件の契約が締結されている。PMU18は、JICAの推薦を受け、基本設計調査を受託したコンサルタントと業務の監理等に係るコンサルタント契約を締結しており、また、一般競争入札により本体契約の落札者を決定していた。
 本院は、入札、契約の関係書類の提出を受けて検査し、契約金額が交換公文の供与限度額を超えていないか、事業内容は交換公文の記述内容と整合しているかなどの所定の事項について審査が行われていたことを確認した。

エ 資金供与

(ア) 資金供与の流れ

 18年5月の参議院決算委員会において、我が国を含むODA資金がPMU18において遊興費等に流用されているのではないかとの疑念がベトナム国国民の間に生じている旨が言及された。
 前記の4事業における我が国からの資金は、外務省の説明によれば、図1 のように供与されたとしている。
 外務省は、契約履行の確認等を行った後、所要額を本邦の銀行にあるベトナム国政府の口座に送金し、本邦の銀行は、支払授権書に基づき、直ちにコンサルタント及び契約業者の口座へ送金することとなる。このため、PMU18が我が国から供与された資金を直接受領する仕組みとはなっていない。

図1 一般プロジェクト無償による資金供与方法

図1一般プロジェクト無償による資金供与方法


(イ) 資金供与の状況

 前記の4事業14契約における資金供与の状況について、本院は、提出を受けた証拠書類によるほか、外務省から説明を受けるなどして検査したところ、前記4事業の支出済額計100億9875万余円が、外務省から本邦の銀行に設けられたベトナム国政府の口座に支払われていたことを確認した。また、指定銀行が本邦の銀行に対し発行した支払授権書には、我が国政府から送金された資金を受領した後、本邦の銀行がベトナム国政府の口座からコンサルタント及び契約業者へ支払うことを許可する旨記載されていたことを確認した。

オ 設計変更等の状況

 18年5月の参議院政府開発援助等に関する特別委員会において、メコンデルタ地域のロンビン橋の設計変更の内容や事業費の推移について言及された。
 本院が、外務省から提出を受けた資料に基づき確認したところ、ロンビン橋の建設は、メコンデルタ地域橋梁改修計画(以下「メコンデルタ計画」という。)において実施されていた。本院は、メコンデルタ計画を中心に前記4事業の設計変更の内容、事業費の推移等を調査した。

(ア) 設計変更の手続

 コンサルタントが詳細設計を行う際に、ボーリング調査等の追加調査に基づき検討した結果、基本設計の内容を変更すること(以下、この変更を「詳細設計時の設計変更」という。)がある。ガイドライン等によれば、建物又は施設の明らかな外観の変更、建物又は施設の主要な構造や強度の変更等は、大幅な変更とみなされることとなっている。
 そして、この大幅な変更とみなされる場合には、メコンデルタ計画実施時のガイドライン等によれば、詳細設計時の設計変更の手続において、JICAの事前の確認、外務省の承認を必要とすることとなっていた。コンサルタントは事前にJICAに設計変更を報告し変更理由等詳細な説明を行うこととなっており、JICAはこれを基に変更の内容を確認し、外務省が承認したときは、承認結果を被援助国政府に通知することとなっていた。なお、13年11月以降にJICAは、ガイドライン等の見直しを行い、設計変更の手続を変更し、また15年10月以降は、JICAがこの承認を行うこととなっている。
 また、契約後に詳細設計の内容を変更すること(以下、この変更を「契約後の設計変更」という。)があり、メコンデルタ計画実施時のガイドライン等によれば、契約後の設計変更の手続においても上記と同様に、JICAの事前の確認及び外務省の承認を必要とすることとなっていた。

(イ) メコンデルタ計画における設計変更等の状況

a 基本設計の内容

 本院が、メコンデルタ計画の基本設計調査報告書の提出を受け、その内容を確認したところ、基本設計の主な内容は以下のとおりであった。
 一定の選定基準により、ベトナム国政府から要請のあった60橋りょうから38橋りょうを援助対象として選定した。そして、軟弱地盤対策を要し施工が困難なものなどについては、我が国の援助により下部工から上部工まで一貫して施工する施設建設型(21橋りょう)で実施することとしていた。また、ベトナム国側で施工が可能なものについては、我が国の援助により鋼桁を調達し、ベトナム国側で下部工、桁の架設等を施工する資機材調達型(17橋りょう)で実施することとしていた。

b 詳細設計時の設計変更の内容

 メコンデルタ計画について、JICAは、13年8月にガイドライン等に基づいて、基本設計と詳細設計との比較表等を基にその内容を確認し、13年9月に外務省の承認を得た上でベトナム国政府に通知していた。本院は、ベトナム国政府の協力を得て、JICAから基本設計と詳細設計との比較表等の提出を受け、詳細設計時の設計変更について調査したところ、その主な内容は以下のとおりであった。
〔1〕 ベトナム国政府からの申出により、1橋りょうを計画から除外する。
〔2〕 施設建設型20橋りょうのうち、ロンビン橋を含む16橋りょうの橋長及び取付道路長を変更する。
〔3〕 取付道路の軟弱地盤対策として押え盛土工法(注) 等を採用する。

 押え盛土工法 軟弱地盤の上に盛土をするとき、盛土本体がその自重で地盤にめり込んで沈下し、法尻部付近の地盤が盛り上がってくることを防ぐため、盛土本体の側部に別途盛土をする工法


c 契約後の設計変更の経緯及び内容

 JICAは、14年4月に実施促進のための調査団を派遣し、報告書を作成している。本院は、その報告書の提出を受け検査したところ、契約後の設計変更の経緯及び内容は次のとおりであった。
 PMU18が契約業者と本体契約を締結した後も、ロンビン橋を含む6橋りょうの用地確保が進んでいなかった。そのため、JICAは上記の調査団を派遣し、PMU18と交渉した結果、2橋りょうについては同月末までに、ロンビン橋を含む4橋りょうについては同年7月までに、それぞれ用地の確保を済ませること、用地の確保ができない場合は当該橋りょうの工事を中止とすることなどの取決めを行った。その後、ロンビン橋を含む4橋りょうについては、用地の確保ができなかったが、PMU18は工事を中止せず、コンサルタントとともに地元の省又は郡の人民委員会と協議を行い、地元の意見を反映して、橋長等を変更する設計変更を行うこととした。そして、その設計変更について、JICAが内容の確認を行い、外務省が承認した。また、4橋りょうについては設計変更に基づいて施工され、その他の2橋りょうについては用地の確保ができ、詳細設計どおりに施工された。このうち、事例としてロンビン橋について設計変更の経緯及び内容を示すと次のとおりである。

<事例>  ロンビン橋の設計変更の経緯及び内容

 本院は、ベトナム国において、ロンビン橋について、現地のティエンヤーン省の人民委員会から設計変更の経緯、内容について説明を聴取した。その説明によれば、変更の経緯は次のとおりであった。
 当初は、旧橋の橋長が38mであったことから、橋長を38mで援助の要請をし、基本設計で2径間橋長37.19mとした。詳細設計に当たって、コンサルタントが現地の地質を詳細に調査したところ、橋台を設置することとしていた箇所の地盤が軟弱であったことから、設計を変更し詳細設計で3径間橋長58.20mとした。しかし、この詳細設計では、左岸側において、〔1〕橋台が住宅街の中央に位置することとなっていて、46世帯と電話会社を兼ねる郵便局の移転が必要となり、影響が大きくなること、〔2〕橋りょうと省道87号線が平面交差することとなっていて、交通安全上問題があることとされた。そこで、コンサルタント、PMU18、人民委員会及びティエンヤーン省交通運輸局で協議し解決方法を検討した結果、契約後に、次のように設計を変更した。
(a) 平面交差をやめて、橋りょうが現状の省道87号線の上をオーバーパスするように設計する。
(b) (a)の変更に基づき、橋長を約40m延伸し、3径間橋長58.20mから4径間橋長98.41mとする。
(c) 橋りょうが省道87号線の上をオーバーパスする部分の桁下高は、3.50mであり、4.50mを下回るため、ベトナム国の負担で迂回路を設置する。
 本院は、外務省及びJICAの職員の立会いの下でPMU18の協力が得られた範囲内で、ロンビン橋の桁長等を計測するなどして、出来形が設計どおりとなっていることを確認した。

d 設計変更に伴う建設費の推移
 メコンデルタ計画の交換公文が締結されたのは13年6月であり、当時外務省は予定価格を公表していなかった。本院は、メコンデルタ計画の事業費について、JICAから資料の提出を受け、JICAから、また、現地でPMU18から説明を聴取した。

(a) 基本設計における建設費

 前記のメコンデルタ計画の基本設計調査報告書によれば、事業費は37.34億円であり、このうち施設建設型の橋りょうの建設費は、29.42億円である。JICAは、この施設建設型の建設費の積算について、次のように説明している。
 土工や機械損料等の工種ごとに、基本設計時で選定された21橋りょう全体の直接工事費を算出し、その工種ごとの直接工事費を合計するなどの方法で建設費を算出しており、個別の橋りょうごとの直接工事費は、把握できないものとなっていた。
 また、JICAの説明によれば、仮にロンビン橋について、杭等の単価が示されている工種の直接工事費を算出して合計すると、直接工事費は0.37億円程度になり、橋りょう1m2 当たりの直接工事費を算出し、これにロンビン橋の橋りょう部の面積を乗ずると直接工事費は0.59億円程度になるとしている。

(b) 詳細設計における建設費

 JICAの説明によれば、メコンデルタ計画の事業費は、基本設計では37.34億円であったが、詳細設計では37.17億円であり、基本設計に比べて0.17億円の減額となったとしている。
 このうち、施設建設型の詳細設計における建設費について、JICAは、次のように説明している。
 施設建設型の建設費は、詳細設計では29.66億円であり、基本設計と比べて、為替変動により1.94億円の増額、前記の1橋りょうの建設取りやめ、橋りょう及び取付道路の設計内容の見直しなどにより1.70億円の減額、差引合計0.24億円の増額となっていた。また、詳細設計時においては、個別の橋りょうごとの土工等の数量及び単価が記載されておらず、個別の橋りょうごとの直接工事費は把握できないとしている。
 本院はこの点について、PMU18から現地で説明を聴取したが、同様の回答であった。

(c) 契約後の設計変更における建設費

 JICAの説明によれば、契約後の設計変更時に、変更に係る橋りょうの工事費の見直しが行われており、合計で約8万円の増額となるが、この増額分は契約業者の負担とし、契約金額の変更は行われなかったとしている。そして、ロンビン橋を含む各橋りょうの直接工事費については、増減額だけが記載された増減表がコンサルタントから提出された書類に添付されており、当該橋りょうの直接工事費は、把握していなかったとしている。

 以上のとおり、基本設計、詳細設計時の設計変更及び契約後の設計変更において個別の橋りょうごとの直接工事費は把握できない状況となっていたため、ロンビン橋の直接工事費及びその推移について、確認できないものとなっていた。
 しかし、土木構造物である橋りょうなどは、通常標準設計等に基づき同一の規格で建設されるものではなく、個別の橋りょうごとに建設される現場の形状等の条件に応じて構造諸元(橋長、幅員、基礎構造等)が異なるため、直接工事費も異なる。また、詳細設計時や契約後に、追加調査の結果等により、設計内容の見直しが行われ、直接工事費ひいては建設費が変更されることは、我が国の国内で実施される工事の例をみても、一般的なことである。
 したがって、JICAにおいて、多数の橋りょうを建設する事業については、個別の橋りょうごとの直接工事費及びその推移を具体的に把握するため、直接工事費の内訳や材料等の数量に関する資料を整備するなどしてより一層説明責任を果たせるよう努める必要があると認められる。

(ウ) 中部地方橋梁改修計画等3事業の設計変更等の状況

 本院が、JICAから提出された資料に基づき確認したところ、中部地方橋梁改修計画(以下「中部計画」という。)では設計変更は行われていなかった。
 また、第2次中部地方橋梁改修計画(以下「第2次中部計画」という。)のうち、第2次中部計画1/3期及び第2次中部計画2/3期の2契約では、詳細設計時及び契約後にそれぞれ設計変更が行われていた。
 そして、JICAの説明によれば、その設計変更の内容は、追加で行ったボーリング調査の結果、杭長の見直しなどが行われたことによるものであり、また、基本設計の事業費の積算段階から個別の橋りょうごとに建設費を算出しているとしている。本院は、詳細設計時の設計変更及び契約後の設計変更に係る事業費の比較表等の提示及び説明を受け、個別の橋りょうごとの建設費が把握できることを確認した。
 また、北部地方橋梁改修計画(以下「北部計画」という。)については、JICAでは完了報告書及び瑕疵検査報告書のみを現在保管しており、本院は、それらの提出を受け、内容を確認したが、完了報告書には基本設計からの設計変更についての記載がなかった。

カ 施設の建設等に係る工事の施工状況

(ア) 本院による現地確認等の状況

 本院は、PMU18が実施機関となっている一般プロジェクト無償4事業における施設の建設に関して、JICAから基本設計報告書等の提出を受けて検査するとともに、外務省及びJICAを通じて、交通運輸省、PMU18などの協力が得られた範囲内で完了報告書やこれに添付されている図面等の関係書類の提出を受け調査した。
 また、本院では、JICAが、一般プロジェクト無償における実施促進業務を担う立場から、北部計画、メコンデルタ計画、第2次中部計画の3事業の橋りょうなどの建設について、その一部を対象として、技術的観点から検討を行うため18年5月に実施した無償資金協力調査員による技術調査の報告書の提出を受け、技術調査の内容と結果を確認した。報告書によれば、北部計画における5橋りょうについて、コンクリートにひび割れはないか、橋りょうと取付道路部との間に段差はないかなどのチェック項目を設けて現地で調査したとしていた。 そして、調査の結果、橋台前面の石張りの目地にクラックが2箇所あったこと、取付道路の沈下はみられないことなどについて報告がなされ、特に不適切な事態はないとしていた。
 そして、本院は、職員をベトナム国に派遣し、計画投資省、財政省、公安省、交通運輸省、PMU18、ベトナム国会計検査院等の政府関係機関から、各事業の内容等について説明を聴取し、協力が得られた範囲内で関係書類の提出及び提示を受けて、実地に調査した。
 前記4事業の8契約のうち、7契約に係る16箇所(北部計画の3箇所、メコンデルタ計画の6箇所、中部計画の2箇所、第2次中部計画の5箇所)を選定して、外務省及びJICAの職員の立会いの下で、PMU18の協力が得られた範囲内で、現場確認を行い、完成した橋りょうの施設の施工状況を実地に調査した。16箇所の選定に当たっては、我が国の国会で工事の設計変更の内容及び建設費の推移について言及されたロンビン橋その他設計変更が行われた箇所、前記の技術調査で対象としていた北部計画の5箇所のうちの2箇所等を選定した。
 現場確認に当たっては、JICAが行った技術調査のチェック項目も含めたチェックシートを作成し、これに基づき現場の状況を目視により確認した。本院が現場確認した16箇所のうち、コンサルタントがJICAに所定の報告をしないまま、設計変更が行われた事例を示すと次のとおりである。

<事例>  ロンミー橋の設計の変更

 本院は、メコンデルタ計画のうち、ロンミー橋について、外務省から説明を受け、現場確認を行い、その形状をJICAに提出されていた完了届に添付された図面と比較して調査した。その結果、図面では、左右両岸の取付道路の両側に押え盛土を設置することとなっていたが、実際には、図面と異なり押え盛土が設置されていなかった。そして、コンサルタントは、JICAに、この設計変更について報告していなかった。
 この設計変更について、現地でPMU18から説明を聴取し、また、後に外務省及びJICAを通じてコンサルタントから説明を聴取したところ、設計変更の理由、経緯等は以下のとおりであった。
 ロンミー橋の押え盛土は、平成14年8月に設置された。しかし、その後、取付道路の用地確保が進まず、計画どおりの形状の取付道路を敷設することができなくなった。そのため、確保できた用地及び撤去する押え盛土の箇所に取付道路を敷設することとする設計変更案が、現地人民委員会から契約業者及びコンサルタントに示され、コンサルタントはPMU18にその設計変更案を報告し、変更が承認された。そして、PMU18は取付道路部の沈下及び押え盛土部分の隆起の状況を測定し、地盤が安定したことを確認できた15年4月に押え盛土を撤去した。また、事業費は、押え盛土の撤去費用による増額などにより約9千円の増額となっていた。
 コンサルタントは、橋りょう自体の形状の変更ではなかったため、軽微な変更であると判断しJICAに報告しないまま設計変更し、契約業者はそれに基づいて施工を行った。しかし、前記のように、ガイドライン等によれば、建物又は施設の明らかな外観の変更に該当する事項であり、設計変更として、JICAに報告すべきであったと認められる。また、完了報告書に添付する図面についても、しゅん工時の図面を添付して提出すべきであったと認められる。

 上記以外に、本院が今回、目視等により現場確認した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。

(3) 円借款

ア 各事業の概要

 本院が確認したところ、ベトナム国でPMU18が円借款により実施した事業は7事業であり、19年3月末までの供与限度額は1140億4900万円となっており、前記の円借款累計額1兆1528億6100万円の約10%を占めている。これらの7事業はいずれも、主要国道の道路及び橋りょうの改良を内容とする比較的大規模で長期にわたる事業となっている。
 上記の7事業について、JBIC及び外務省から提出された資料等に基づき、事業名、供与限度額等を整理して示すと表2のとおりである。

表2 PMU18が実施機関となっている円借款7事業
(単位:百万円、件)
事業名
借款契約締結年月日
供与限度額
コンサルタント契約の件数
本体契約の件数
国道1号線橋梁リハビリ事業第1期
6.1.28
3,870
1
6
7.4.18
2,859
8.3.29
8,808
国道1号線橋梁リハビリ事業第2期
8.3.29
4,907
2
8
9.3.26
2,239
11.3.30
13,170
国道1号線橋梁リハビリ事業第3期
15.3.31
5,013
1
1
国道10号線改良事業
10.3.30
17,742
1
22
12.3.29
12,719
国道18号線改良事業
10.3.30
11,863
3
12
12.3.29
11,586
バイチャイ橋建設事業
13.7.6
6,804
1
1
国道3号線道路ネットワーク整備事業
17.3.31
12,469
1
未契約

イ 円借款における手続の概要

 JBICによれば、前記の7事業は、基本的に次のような手続を経て実施されたとしている。

(ア) ベトナム国による我が国への援助要請及び審査

 ベトナム国政府は、我が国政府に対し円借款による資金協力を求める事業について、実現可能性調査に基づき、資金協力の要請を我が国に文書で提出する。
 我が国は、その要請に対し供与を行うかどうかをJBICが審査し、その報告を受けた日本政府が円借款の供与の可否を判断する。この審査に当たって、JBICは、実現可能性調査の内容の確認だけではなく、被援助国の関係者との協議を行うとともに、要請のあった事業予定現場の調査等も必要に応じて実地に行う。

(イ) 交換公文、借款契約の締結及び事業実施

 円借款による供与を行うことが適正であると確認された案件については、閣議決定を経た後、我が国の代表者とベトナム国の代表者との間で交換公文への署名が行われる。交換公文には事業名、円借款の目的、供与限度額、供与条件、支出期間等が記載されている。前記の7事業における供与条件は、事業ごとに異なるが、供与期間30年又は40年(うち据置期間10年)、年利0.75%から2.3%などとなっている。交換公文への署名後、JBICとベトナム国政府との間で円借款の手続、権利義務等を定めた借款契約が締結される(以下、交換公文及び借款契約を合わせて「交換公文等」という。)。また、円借款事業の実施においては、借款契約に一般的に適用される権利義務等の内容を記載したODA借款のための一般条項(以下「一般条項」という。)が借款契約の一部として適用される。
 交換公文等が締結されると、実施機関であるPMU18は、JBICの円借款事業のためのコンサルタント雇用ガイドライン(以下「コンサルタント雇用ガイドライン」という。)に従って、詳細設計、入札補助、施工監理等を行うコンサルタントを技術面の評価に基づいて選定し、契約を行う。
 JBICは、PMU18の作成したプロポーザル評価結果報告書及びコンサルタント契約書がコンサルタント雇用ガイドラインに沿ったものかを確認し、コンサルタント契約に対し同意を行う。
 円借款事業に必要な本体契約の手続はJBICの円借款事業のための調達ガイドライン(以下「調達ガイドライン」という。)に従って行う。
 調達方法は、原則として国際競争入札によるとされている。国際競争入札は、原則として、入札参加業者を限定せず、技術面等を加味した上で、入札価格の最低の者が落札者となる制度である。入札参加業者は、技術提案及び価格を提示して応札し、PMU18はこれらを勘案して落札者を選定し、契約を行う。
 JBICは、調達契約の規模等に応じて、入札前にPMU18の作成した入札書類、入札後に入札評価結果報告書及び契約書(応札業者が入札対象の契約の履行能力があるかを入札前に審査する事前資格審査が行われた場合は事前資格審査書類、事前資格審査結果を含む。)を確認し、調達ガイドラインに沿った内容となっているかなどを審査した上で、同意を行う。
 本体契約の締結後、契約業者は、本体契約に従って業務を実施し、コンサルタントはPMU18の補助者としてその業務を監理する。工事の進ちょく等事業の状況については、ベトナム国政府から、定期的にJBICに対して事業の進捗報告書が提出され、JBICにおいてそれを確認する。各契約で、施設の建設や資機材調達が完了するごとに、PMU18はしゅん工検査を実施する。

(ウ) 貸付実行

 貸付実行の方式は、借款契約に定める方式(信用状を用いるコミットメント方式、本邦の銀行を経由して送金するトランスファー方式、ベトナム国政府が契約業者等へ対価を支払った後に貸付実行するリインバースメント方式等)の中から選定することとなっており、PMU18が締結したコンサルタント契約及び本体契約で規定している。円借款は円貨で貸付実行され、ベトナム国政府は円貨でJBICに償還することとなる。
 工事の完了から瑕疵担保期間(一般的に1年から2年)を経過した後に道路の維持管理を担当する部局がPMU18から施設の維持管理を引き継ぎ、同部局とPMU18が瑕疵検査を実施する。コンサルタント及び契約業者は、同部局とPMU18が実施する瑕疵検査に合格した後、当該契約の最終支払の請求を行い、これに対するJBICの最後の貸付実行が行われると、当該契約におけるJBICの貸付けが終了する。

ウ 入札、契約の状況

 前記の7事業ではコンサルタント契約10件、本体契約50件、計60件の契約が締結されている。JBICは、被援助国の同意を得た上で、11年4月以降に閣議決定が行われた交換公文に基づく借款契約の下で締結されたもののうち、契約額が1億円以上のコンサルタント契約についてはプロポーザル提出業者名、契約締結業者名等を、また、契約額が10億円以上の本体契約については応札業者名、応札額、落札業者名等を、それぞれ年次報告書等に公表している。PMU18が実施機関となっている7事業60契約のうち、上記の条件を満たし、落札業者名等の公表を行っているものは、コンサルタント契約では2件、本体契約では8件であった。

エ 貸付実行等の状況

 前記のとおり、18年5月の参議院決算委員会において、我が国を含むODA資金がPMU18において、遊興費等に流用されているのではないかとの疑念がベトナム国国民の間に生じている旨が言及された。
 本院は、JBICから貸付実行の状況について説明を聴取し、JBICが保管している貸付実行に係る支払請求書、PMU18が契約履行を確認した出来高証明書、JBICの債権管理データ等を確認するなどして検査した。7事業60契約に係る19年3月末までの貸付実行額は808億1733万余円であり、コミットメント方式(貸付実行額388億6395万余円)、トランスファー方式(貸付実行額392億8703万余円)、リインバースメント方式(貸付実行額2374万余円)のいずれかの方式により、貸付実行がなされていた。このうち、コミットメント方式による貸付実行は、JBICによれば、以下のとおり実施されたとしている(図2参照)

図2 コミットメント方式による貸付実行方式

図2コミットメント方式による貸付実行方式


(a) PMU18はコンサルタント契約及び本体契約を締結する(図2〔1〕)。
(b) その後、PMU18が指定した銀行を経由して、信用状の発行を本邦の銀行に依頼する(同〔2〕)。
(c) 本邦の銀行はJBICに対し、発行する信用状の履行を保証する支払引受書の発行を依頼し、JBICは本邦の銀行に対し、支払引受書を発行する(同〔3〕及び〔4〕)。
(d) 本邦の銀行は、コンサルタント及び契約業者の取引銀行(以下「取引銀行」という。)を経由して、コンサルタント及び契約業者に対し、信用状及び支払引受書が発行された旨の通知を行い、対価の支払を保証することになる(同〔5〕)。
(e) コンサルタント及び契約業者は、前金払、出来高払等のための所定の支払要件を満たすごとに、取引銀行に対し、信用状に定められた出来高証明書、請求書等の書類の買取りを依頼し、取引銀行から対価を受領する(同〔7〕及び〔8〕)。 
(f) それらの書類を受領した取引銀行は、本邦の銀行に対し、信用状に基づく買取金額補てん請求を行使し、さらに、本邦の銀行はJBICに対し、信用状及び支払引受書に基づき買取金額の支払を請求する(同〔9〕及び〔10〕)。
(g) JBICは、所定の確認を行った後、所要額を円貨で本邦の銀行に送金し、本邦の銀行は、取引銀行に対し、支払を行うこととなる(同〔11〕及び〔12〕)。JBICは財政省に対し、信用状に基づき貸付実行したことを通知する(同〔13〕)。

 JBICは、これら3方式の貸付実行方式について次のように説明している。
 コミットメント方式及びトランスファー方式では、JBICが貸付実行を行った資金は、本邦の銀行を経由して、コンサルタント及び契約業者へ支払われ、財政省には、JBICから貸付実行を行った報告がなされるという仕組みになっている。また、リインバースメント方式では、ベトナム国政府の予算からコンサルタント及び契約業者へ対価が支払われた後、財政省はその額について貸付実行の請求を行い、JBICが貸付実行した資金は本邦の銀行を経由して、財政省に支払われる仕組みとなっている。このように、PMU18はJBICが貸付実行を行った資金を直接受領する仕組みとはなっていない。
 また、JBICは、前記の3方式における貸付実行時の確認を次のように行うとしている。
 コンサルタント及び契約業者は、支払請求時に、コミットメント方式では出来高証明書等を取引銀行に提出する必要があり、トランスファー方式及びリインバースメント方式では出来高証明書等を支払請求書に添付してPMU18に提出する必要がある。PMU18は契約履行を確認し、この出来高証明書等に、確認の署名をすることとなっている。JBICは、貸付実行の請求がなされると、JBICに提出された出来高証明書等に実施機関の確認の署名を受けているかなど契約の内容に沿った正当な請求であるかを確認した上で、貸付実行を行う。
 本院は、この貸付実行について、JBICが保存している貸付実行書類、送金指示書、支払請求書、その添付書類である出来高証明書等の提出及び提示を受けて検査した。検査した範囲では、支払請求書に必要な書類が添付されていること、出来高証明書にPMU18による確認の署名があることなどを確認した。

オ 施設の建設に係る工事の施工状況

 本院は、PMU18が実施機関となっている円借款7事業における施設の建設に関して、JBICから関係書類の一部の提出及び提示を受けて検査するとともに、外務省及びJBICを通じて、交通運輸省、PMU18などの協力が得られた範囲内で関係書類の提出を受け調査した。
 そして、本院は、職員をベトナム国に派遣し、計画投資省、財政省、公安省、交通運輸省、PMU18及びベトナム国会計検査院の政府関係機関から、各事業の内容や、政府関係機関が行った調査の状況等について説明を聴取し、協力が得られた範囲内で関係書類等の提出及び提示を受けて、実地に調査した。
 また、前記7事業のうち、本体契約が締結されていない国道3号線道路ネットワーク整備事業を除いた6事業の50契約のうち、15契約に係る23箇所を選定して、外務省及びJBICの職員の立会いの下で、PMU18の協力が得られた範囲内で、現場確認を行い、完成した橋りょうの施設等の施工状況を実地に調査した。23箇所の選定に当たっては、我が国の国会で工事の施工、施工管理等について言及された箇所や、また、JBICが18年5月に構造、舗装、地盤の各専門家等による現地調査をした結果特に不適切な事態はなかったとしている11橋りょうなどのうちの8橋りょうなどを選定した。現場確認に当たっては、前記のとおりチェックシートを作成し、これに基づき、現場の状況を目視により確認した。本院が現場確認を行うこととした23箇所等のうち、その確認の状況について2事例を示すと次のとおりである。

<事例1>  設置されたトラフィックポストの材料

 平成18年5月の参議院決算委員会等において、国道18号線改良事業において鉄筋の代わりに竹を使用しているとの現地報道がある旨が言及された。
 交通運輸省及びPMU18の説明によれば次のとおりである。
〔1〕 国道18号線改良事業ノイバイ〜バクニン間において設置されたトラフィックポストの材料に、鉄筋の代わりに竹が使用されていたとの報道がなされた。
〔2〕 トラフィックポストは、ベトナム国においては、道路敷地とそれ以外の土地との区切り、盛土部における車両等の転落防止等を目的として、簡易ガードレール用のポストとして設置しているものである。
〔3〕 トラフィックポストは、工事現場周辺の小規模な工場で製作されている。
〔4〕 その規格については、PMU18が実施している事業では、すべて鉄筋を使用する構造としており、各契約ごとの図面に詳細を示しており、これを各道路の維持管理を担当する部局が認可している。
 前記のとおり、JBICでは18年5月に専門家等による現地調査を実施しており、本院は、この現地調査に同行したJBICの職員から、トラフィックポストの材料に鉄筋の代わりに竹材が使用されていたとされたことについて、次のような説明を受けた。 
〔1〕 16年4月頃、コンサルタントは施工監理において鉄筋の代わりに竹が使用されたトラフィックポストを当該区間で発見した。
〔2〕 その付近では、当時、地元住民による鉄筋目当てのトラフィックポストの盗難が頻発していた。
〔3〕 その後、当該区間において施工されたすべてのトラフィックポストについて検査を実施した。
〔4〕 その結果、コンサルタントは、品質管理が不備なものが認められたので、契約業者に対して、不備が認められたトラフィックポストに代えて、仕様どおりのものを製作して、再度設置することを指示し、工場での材料検査や抜取り検査等施工監理を実施し、仕様どおりのトラフィックポストが設置されていることを確認した。
 さらに、PMU18の説明によれば次のとおりである。
〔1〕 内部に竹材が入ったトラフィックポストが現場に設置されていた。
〔2〕 道路の維持管理を担当する部局に引き渡すまでには、仕様どおりに鉄筋が使用されたトラフィックポストが再度設置された。
〔3〕 再度設置されたトラフィックポストはコンサルタント等の確認を受けていた。
〔4〕 18年4月にPMU18と公安省等が確認のためトラフィックポスト25本を無作為に抽出しこれを破壊して調査したところ、仕様どおりに鉄筋が使用されていた。
 本院は、国道18号線改良事業のノイバイ〜バクニン間の道路脇に設置しているトラフィックポストについて、PMU18の協力を得て図面の提出を受け確認した。その図面によれば、形状は、地上部の高さ60cm、1辺の長さ18cmのコンクリート製の四角柱であり、内部に縦方向に直径6mmの鉄筋4本を配置し、それらを横方向に直径6mmの鉄筋6本で巻く構造となっていた。そして、PMU18と公安省等が破壊して調査したトラフィックポスト25本のうち、ノイバイ〜バクニン間において、コンクリートの一部がはつられ、鉄筋が露出し確認できる状態で設置されていた2本について、仕様どおり鉄筋が使われていることを現地で確認した。

<事例2>  道路工事の盛土に使用された砂の品質

 平成18年5月の参議院決算委員会において、国道18号線改良事業で使用された砂の品質についてベトナム国会計検査院が指摘しているとの現地報道がある旨が言及された。
 交通運輸省及びPMU18の説明によれば、国道18号線改良事業のバクニン〜チリン間(約40km)の軟弱地盤上に盛土を行うなどした工事で、工事施工時に設計どおりの透水性の高い砂を全量確保することが困難であったため、交通運輸省及びベトナム国首相府の承認を得た上で、当初の設計と異なる砂を使用したとしている。
 この区間ではサンドマット工法により敷き砂を施工している。サンドマット工法は、軟弱地盤上での盛土工事の場合に、まず排水を促進する材料として砂を敷き、その上に盛土を行う工法であり、この敷き砂の層が盛土材による軟弱地盤の圧密のために抜け出した地下水の排水層となって地下水の排水を促進することにより、地盤の安定を図るものである。
 前記のとおり、JBICでは18年5月に専門家等による現地調査を実施しており、本院はこの現地調査に同行したJBICの職員から、現地調査の内容について次のような説明を受けた。
 すなわち、専門家等が現地で確認したところ、本件工事で実際に敷き砂として使用され、設計より透水性の低いと報道された砂は、排水を促進する材料として十分使用できるものであり、我が国におけるサンドマット材の砂の基準に当てはめると比較的透水性の高い材料に相当するものであった。また、当初の設計と異なる砂を使用することについて、ベトナム国政府内部の承認手続が適切に行われていたことを確認したとしており、バクニン〜チリン間において、施工後に道路の沈下等は認められなかった。
 なお、本院は、ベトナム国会計検査院に指摘の有無及び内容の確認や資料の提出の協力を求めたが、指摘の有無、資料等については原則としてベトナム国政府内部にしか公表していないとのことであった。

 以上の2事例以外に、本院が今回、目視により現場確認した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。

カ 事業実施のための車両の購入

 JBICの説明によれば、18年11月にベトナム国政府はJBICに対し、PMU18が実施機関となった円借款に関し、車両の購入に当たり必ずしも適切とはいえない調達があったとして、当該車両の購入資金を返還する旨の申出を行ったとしている。
 JBICは、上記の申出を踏まえ、保管している仕様書とベトナム国政府から提示された購入車両リスト等により、2事業2契約における4台分の車両購入について、仕様書と異なる車両が購入されていたことを確認した。そして、JBICは、一般条項に定められた手続により、19年1月31日に当該車両4台の購入に係る貸付資金2871万余円及び同資金に係る返還日までの未収利息16万余円、計2888万余円についてベトナム国政府から返還を受けた。
 本院は、本件の経緯について、JBICから、また、現地で財政省、交通運輸省、PMU18などから、説明を聴取した。

(ア) 交通運輸省の調査で判明した事態

 交通運輸省の説明によれば、PMU18に関する疑念を受け、同省が実施しているODA事業について関係書類等の調査を自ら行い、その結果、国道18号線改良事業、国道1号線橋梁リハビリ事業第2期(III)の2事業2契約において、適切でない調達があったことが判明したとしている。
 このうち、JBICの説明によれば、国道18号線改良事業のパッケージK契約に係る事態を例にすれば、本件の経緯は次のとおりである。
 15年12月、PMU18は国道18号線改良事業のパッケージK契約(契約金額13億4131万余円)の入札手続を行い、JBICに対し、契約同意を求め、契約書等を提出した。JBICは、同月に同契約の内容を確認し、同意を行った。仕様書では、当該事業に係る工事管理のためPMU18などが使用する車両計3台(四輪駆動車2台、ミニバス1台)を購入することとなっていた。
 JBICは、16年11月から17年8月までの間に計6回にわたって、ベトナム国政府から上記の車両3台分の購入分を含む貸付実行請求を受け、PMU18が確認の署名をしていることなどの内容を確認の上、1億4475万余円をコミットメント方式及びトランスファー方式により貸付実行した。しかし、実際に購入されたのは、セダン3台(これに係る貸付実行額2225万余円)であり、いずれも仕様書に記載された車両とは異なる車両が購入されていた。
 交通運輸省及びPMU18の説明によれば、PMU18はこれら4台の車両を事業の工事管理等に使用していたとしている。

(イ) 本院によるJBICの契約及び貸付実行の手続等の確認

 JBICは、本件の車両の購入に係る事業の本体契約については、入札評価結果報告書及び契約同意申請を確認し、また、本件の車両の購入に係る事業のコンサルタント契約については、プロポーザル評価結果報告書及び契約同意申請を確認したとしている。また、貸付実行時には、出来高証明書等実施機関が確認した署名の入った所定の書類に基づいて貸付実行したとしている。
 本院は、JBICから上記書類の提出又は提示を受け、貸付実行書類について、所定の書類が整っているか、実施機関であるPMU18の確認を受けているかなどを検査した。その結果、貸付実行時には、コンサルタント及び契約業者からの支払請求書に、出来高証明書等所定の書類が添付されており、出来高証明書等には、提出した契約業者の署名のほか、それをチェックしたコンサルタントの署名、PMU18の署名がそれぞれなされていたことを確認した。
 また、本院は、ベトナム国政府からの返還について、JBICがベトナム国政府から受けた説明の内容を聴取するとともに、仕様書、返還手続に係る文書、JBICへの返還の通知文書等の提出及び提示を受け、返還手続が一般条項に則して行われていることを確認した。

(ウ) ベトナム国政府における車両の管理に関する改善策

 財政省及び交通運輸省の説明によれば、ベトナム国政府では、公的財産に関する政令及び関連通達の改正を行い、実施機関が、ODA資金による契約に基づき購入した車両の管理について、実施機関が当該事業完了後に財政省に管理換する方式から、契約完了ごとに財政省に管理換する方式に改めたとのことである。

(4) ベトナム国政府におけるODAの事業実施体制の見直しなど

 外務省及びJBICの説明によれば、ベトナム国政府では、ODAの事業実施体制を規定する政令の見直し及び関連する通達の策定を行っているとしている。PMU18に関する疑念を契機として、JBICが他の事業管理局を含めたODAの事業実施体制における問題点及び課題に係る調査を実施し、ベトナム国政府はJBICのこの調査結果を政令の見直し及び関連する通達の策定に活用したとしている。
 JBICは、JBICの調査の主な内容について次のように説明している。交通運輸省における事業管理局による事業実施体制には、PMU18が多方面の事業を実施しているように、複数事業間の柔軟なやり繰りが可能であるなどの長所がある。一方で、事業管理局の法的地位、役割、責任の明確な定めがなく、関係機関との業務の重複があるなどのため、説明責任意識が希薄であるなどの課題が挙げられる。
 本院は、計画投資省及び公安省から、JBICの調査結果を踏まえたODAの事業実施体制の見直しなどの状況について説明を聴取した。
 計画投資省の説明によれば、ODAの事業実施体制を規定していた従来の政令を廃止し、新たな政令を制定するなどして、事業管理局の法的地位、役割、責任等を明確にするなど、ODAの事業実施体制等の見直しを行ったとしている。
 また、公安省の説明によれば、汚職防止に関する取組については、反汚職法が17年に成立し、公安省汚職犯罪捜査局が新設されたとしている。なお、外務省の説明によれば、PMU18の元職員等に係るサッカー賭博に関連した裁判が引き続き行われているとしている。

4 検査の結果に対する所見

ア 我が国の政府開発援助は、前記のとおり毎年多額に上っており、4年度から18年度までのベトナム国に対する累計額は、無償資金協力、円借款及び技術協力の合計で1兆3130億7800万余円となっている。
 そして、ベトナム国における各国からのODAでPMU18が実施機関となって実施された事業において、不適切な設計や施工が行われ、我が国を含むODA資金が遊興費等に流用されたのではないかとの疑念がベトナム国国民の間に生じているとされた。
 本院は、今回、PMU18が実施した無償資金協力4事業及び円借款7事業、計11事業について、我が国援助実施機関等から資料の提出、提示や説明を受け、また、ベトナム国に職員を派遣し、協力が得られた範囲内で、相手国実施機関等から資料の提出、提示や説明を受けるなどし、検査及び調査を実施した。合規性等の観点から、援助は交換公文、借款契約に則したものとなっているか、無償資金協力の資金の供与、円借款の貸付実行は法令、予算等に従って適正に行われているか、入札、契約等の事業実施の手続はJICA及びJBICが示している指針等に則して適切に行われているか、契約書に記載された仕様どおりの機材を調達しているかなどに着眼して検査及び調査を実施した。また、橋りょうの建設の工事において設計変更がある場合に手続等は指針等に則して適切に行われているか、道路の工事において設置された施設や使用された資材が設計どおりのものとなっているか、適切な施工監理が実施されているかなどに着眼し、実地に、無償資金協力事業の16箇所、円借款事業の23箇所、計39箇所で施工状況等の現場確認を行った。
 その結果、外務省及びJBICの説明によれば、無償資金協力の供与及び円借款の貸付実行の方法は、PMU18は我が国の資金を直接受領する仕組みとなっていないとしている。本院は、検査した範囲では、無償資金協力により供与された資金については、本邦の銀行から直接契約業者等に送金される旨の支払授権書を確認し、また、円借款により貸付実行された資金については、その支払請求書に出来高証明書等所定の書類が添付され、出来高証明書等にはPMU18などによる確認の署名のあることなどを確認した。
 そして、無償資金協力事業においては、メコンデルタ計画の全体事業費は把握できるものの、ロンビン橋等の個別の橋りょうごとの建設費及びその推移は具体的に把握できないものとなっていたり、ロンミー橋について、コンサルタントがJICAに設計変更の所定の報告をしないまま取付道路等の形状変更が行われていたりしていた。
 円借款事業においては、道路の工事において設置された施設の状況を確認した。そして、当初の設計と相違した資材が使用された経緯等について説明を受けた。また、ベトナム国政府からの申出によりJBICに車両の購入資金の返還が行われた経緯の説明を聴取したところ、2事業2契約で仕様書に記載されていた車両とは異なる車両4台が購入されていた。

イ ODA事業では被援助国の政府関係機関等が契約、入札、設計、支払等を行っているが、その資金は我が国の財政資金で賄われていることにかんがみ、外務省、JICA及びJBICにおいては、事業の内容を把握し、事業の全般の執行について、納税者である我が国国民に対する説明責任をより一層果たす必要がある。
 無償資金協力事業において、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移が具体的に把握できないものとなっていたり、コンサルタントが設計変更についてJICAに所定の報告をしないまま取付道路の形状変更が行われていたりしていた。このような事態が生じたのは、JICAにおいて、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移を把握することとなっていなかったことによると認められる。また、設計変更の手続について主としてコンサルタントの理解が十分でなかったこと、JICAにおいてコンサルタントに十分に理解させていなかったことによると認められる。JICAにおいては、多数の橋りょうを建設する事業については、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移を的確に把握するための資料の整備や完了報告時の出来形の確認の徹底をより一層図る必要があると認められる。 また、JICAにおいては、コンサルタントに制度の一層の理解を促す必要があると認められる。
 また、円借款事業の実施において、仕様書とは異なる車両4台が購入された事態が生じたことは遺憾である。このような事態が生じたのは、主として、ベトナム国政府がガイドラインの趣旨等を十分に理解していなかったことによると認められる。したがって、ベトナム国政府はODAの事業実施体制の見直しに努めているところであるが、JBICにおいては、ベトナム国政府に対し、ガイドラインの趣旨等についてより一層理解を促したり、必要に応じて事業内容のより一層の的確な把握に努めるように求めたりする必要があると認められる。
 「ベトナムにおける、ベトナム交通運輸省第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助について」については、以上のとおり報告する。
 ベトナム国では、ODAの事業実施体制の見直しが行われ、PMU18の元職員に係る裁判が引き続き行われている。
 また、外務省は、ODAの実施に際して、企業及び関係者に対して注意喚起を行うとともに、不正に対する認識を共有し、モラルの向上を図る取組を行っており、また、再発防止対策等の着実な実施等について引き続きベトナム国政府に要請していくとしている。
 本院としては、以上のような状況を踏まえ、ベトナム国における我が国のODA事業に関し、外務省、JICA及びJBICにおける説明責任をより一層果たすための方策及び上記の取組を通じた適切な事業の実施の確保について留意していく。