所管、会計名及び科目 | 総務省所管 | 一般会計 | (組織) | 総務本省(平成13年1月5日以前は郵政本省) |
(項) | 総務本省 | |||
(項) | 情報通信格差是正事業費 | |||
財務省所管 | 産業投資特別会計 (社会資本整備勘定) | |||
(項) | 改革推進公共投資電気通信格差是正施設整備資金貸付金 | |||
(項) | 改革推進公共投資情報通信格差是正事業資金貸付金 | |||
部局等 | 総務本省(平成13年1月5日以前は郵政本省) | |||
補助事業の概要 | 地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るために、高度情報通信ネットワーク等先導的な情報通信基盤となる施設等を整備するもの | |||
有効に利用されていないテレビ会議装置の整備費 | 5億4795万余円 | (平成11年度〜17年度) | ||
上記に対する国庫補助金相当額 | 2億3229万円 |
(前掲の「情報通信格差是正事業等の実施及び経理が不当と認められるもの 」参照)
地域イントラネット基盤施設整備事業等により整備したテレビ会議装置の利用状況について
(平成20年10月31日付け 総務大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、地域における情報基盤を整備して高度情報化社会の均衡ある発展を図るために、IT関連施策としての情報通信格差是正事業、電気通信格差是正事業、地域情報通信ネットワーク基盤整備事業等を行う都道府県、市町村、連携主体(複数の市町村にまたがる区域において、都道府県又は市町村で構成される事業主体)等に対して、その事業に要する経費の一部として情報通信格差是正事業費補助金等を交付し又は無利子貸付金(注1)
を貸し付けている。
上記補助金等の交付又は無利子貸付金の貸付けを受けて事業主体が実施する事業のうち、情報端末、カメラ、プロジェクター等から成る双方向画像伝送装置(以下「テレビ会議装置」という。)の整備が補助の対象となっている事業としては、地域イントラネット基盤施設整備事業、広域的地域情報通信ネットワーク基盤施設整備事業、地域インターネット導入促進基盤整備事業及び地域公共ネットワーク基盤整備事業の4事業(以下「地域イントラネット基盤施設整備事業等」という。)がある。
地域イントラネット基盤施設整備事業等を実施する事業主体は、総務省所管補助金等交付規則(平成12年総理府・郵政省・自治省令第6号)のほか、情報通信格差是正事業費補助金交付要綱等に基づき事業を実施することとなっている。この交付要綱等によると、事業主体は、事業内容、構築しようとするシステムの利用見込み件数等を記載した交付申請書を貴省に提出して、貴省は、その内容を審査した上で補助金の交付決定を行うこととしている。事業主体は補助事業の完了後に実績報告書を貴省に提出して、貴省は、その内容の審査及び必要に応じて現地調査を行い、事業の実施結果が交付決定の内容・条件に適合すると認めたときは補助金の額の確定を行い、補助金を交付することとなっている。
地域イントラネット基盤施設整備事業等において、事業主体は、テレビ会議装置を用いて次のような各種のシステムを構築している。そして、事業主体は、これらのシステムを構築するために、本庁舎にサーバを、本庁舎、支所、学校、公民館等の公共施設にテレビ会議装置をそれぞれ整備するとともに、これらの装置を接続する光ファイバケーブル網を整備している。
〔1〕 小・中学校の児童・生徒等が、学校施設に整備されたテレビ会議装置を用いて、他校と遠隔授業を行うことなどができる学校間交流システム
〔2〕 地域住民が、自宅から遠くにある本庁舎に赴くことなく、最寄りの公共施設に整備されたテレビ会議装置を用いて、行政について相談することなどができる行政相談システム
〔3〕 地域住民が、自宅から遠くの公共施設に赴くことなく、最寄りの公共施設に整備されたテレビ会議装置を用いて、生涯学習の講座を受講して質問することなどができる生涯学習システム
テレビ会議装置については、平成14年次の会計実地検査においてその利用が低調な事態等が見受けられたので、本院がその利用状況等を改善するよう指摘したところ、14年10月に貴省が事業主体に対して需要を的確に把握することを周知徹底するなどの処置を講じたことから、平成13年度決算検査報告において、当該事態を「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として掲記している。
本院は、貴省が上記の改善の処置を講じた後の状況について、14県(注2)
において会計実地検査を行った。そして、11年度から17年度までの間に地域イントラネット基盤施設整備事業等を実施した上記14県の63事業主体による66事業のうち、テレビ会議装置を整備していた43事業主体による46事業(補助対象事業費135億6928万余円、これに係る国庫補助金56億0826万円)を対象として検査した。そして、有効性等の観点から、上記の43事業主体が56システム(学校間交流システム34、行政相談システム19、生涯学習システム3)を構築するために整備したテレビ会議装置1,168台(整備費5億5392万余円、これに係る国庫補助金相当額2億3510万余円)が所期の目的に沿って利用されていて、補助の目的は達せられているかなどに着眼して、交付申請書、実績報告書等の書類により検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア テレビ会議装置の全般的な利用状況について
前記のテレビ会議装置1,168台の運用開始から19年度末又は運用停止までの間(最短7か月間、最長72か月間、平均40か月間)における平均年間利用回数は、次図のとおりとなっていた。
図 テレビ会議装置1,168台における平均年間利用回数ごとの台数構成
すなわち、全体の99.3%に当たる1,160台(整備費5億4795万余円、これに係る国庫補助金相当額2億3229万余円)が週に1回以下の極めて低調な利用状況となっていた。この1,160台のおよそ3分の2に当たる769台は年に1回以下の利用状況となっており、更にこの769台のうち424台は全く利用実績がなく、これが1,160台のおよそ3分の1を占めていた。特に、広島県三原市の地域インターネット導入促進基盤整備事業及び徳島県阿波市の地域イントラネット基盤施設整備事業においては、テレビ会議装置計21台を用いた学校間交流システム全体が事業完了後全く利用されていなかった。
このように、週に1回以下の利用状況にある1,160台のテレビ会議装置については有効に利用されておらず、事業の目的が達成されているとは認められない。
イ テレビ会議装置を用いたシステムの種類別の利用状況について
システムの種類別の利用回数ごとの台数及びテレビ会議装置1台当たり平均年間利用回数は、表1のとおりであり、いずれのシステムにおいても、その利用状況は低調で、1台当たりの平均利用回数は年に数回の利用にとどまっている状況となっていた。特に、学校間交流システム及び行政相談システムのために整備したテレビ会議装置の利用状況は極めて低調であり、どちらのシステムにおいても、それぞれ、全体の3分の1以上である222台及び202台が事業完了後全く利用されていなかった。
システムの種類 | システム数 | 全台数 | 平均年間利用回数ごとの台数構成(上段:台数/下段:構成比) | 1台当たりの平均年間利用回数(回/台・年) | ||||
〔A〕 利用実績なし | 〔B〕 年0回超年1回以下 | 〔C〕 年1回超12回以下(年1回超月1回以下) | 〔D〕 年12回超52回以下(月1回超週1回以下) | 〔E〕 年52回超(週1回超) | ||||
学校間交流 | 34 | 635 | 222 | 240 | 148 | 18 | 7 | 2.63 |
(35.0%) | (37.8%) | (23.3%) | (2.8%) | (1.1%) | ||||
行政相談 | 19 | 506 | 202 | 101 | 179 | 23 | 1 | 2.52 |
(39.9%) | (20.0%) | (35.4%) | (4.5%) | (0.2%) | ||||
生涯学習 | 3 | 27 | 0 | 4 | 19 | 4 | 0 | 5.86 |
(0.0%) | (14.8%) | (70.4%) | (14.8%) | (0.0%) | ||||
計 | 56 | 1,168 | 424 | 345 | 346 | 45 | 8 | 2.66 |
(36.3%) | (29.5%) | (29.6%) | (3.9%) | (0.7%) |
ウ 14年に改善の処置を講ずる前に実施された事業におけるテレビ会議装置の利用状況について
貴省が14年10月に改善の処置を講ずる前の11年度又は13年度に実施された7事業9システムにおいて整備したテレビ会議装置についてみると、テレビ会議装置1台当たりの平均利用回数は表2のとおりである。改善の処置を講ずる前の13年度以前は1.02回であったのに対して、処置後である15年度以降においても1.18回にとどまっており、15年度以降に利用状況が改善されたとはいえない状況となっている。
事業実施年度 | 事業数 | システム数 | 台数 | 利用年度別の平均利用回数(回/台・年) | |||||||||
13年度以前の平均 | 14年度 | 15年度以降の平均 | |||||||||||
12年度 | 13年度 | 15年度 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | |||||||
平成11年度事業 | 1 | 1 | 27 | 2.37 | 1.18 | 1.77 | 0.44 | 0.07 | 0.14 | 0.00 | − | − | 0.16 |
13年度事業 | 6 | 8 | 301 | − | 0.73 | 0.73 | 0.68 | 1.75 | 1.69 | 0.84 | 1.72 | 1.22 | 1.29 |
計 | 7 | 9 | 329 | 2.37 | 0.80 | 1.02 | 0.65 | 1.52 | 1.36 | 0.74 | 1.72 | 1.22 | 1.18 |
テレビ会議装置を用いた各システムの利用が極めて低調となっている原因について、事業主体は次のことによるとしており、各システムに対する需要が極めて限定的であることがその原因であると認められる。
〔1〕 学校間交流システムについては、事業主体のネットワークに接続した学校間の距離が短いことなどからテレビ会議装置を利用するまでもなく学校間での交流を図ることができること、テレビ会議装置を利用するのに適した学校行事がなかったことなどによる。
〔2〕 行政相談システムについては、地域住民の中には、最寄りの支所等の公共施設へ赴かず電話で相談して事が足りるとしていたり、支所等に赴いたとしてもテレビ会議装置を利用せずに直接職員に相談していたりすること、相談相手の職員に顔を見られてしまうので匿名での相談を行えないことなどによる。
〔3〕 生涯学習システムについては、テレビ会議装置の利用に適した講座が少ないことなどによる。
ア 交付申請の審査の状況について
貴省は、利用見込みのないシステムを補助事業で採択しないようにするために、13年度第1次補正予算以降の補助事業において、事業主体に対して、整備しようとするシステム別の利用見込み件数及びその算定根拠となる資料を交付申請書に添付させて、これに基づき交付申請の審査を行うこととしている。
しかし、上記の資料は、次のようなものとなっていた。
(ア) 交付申請書に添付することとなっている資料は、〔1〕 実際にテレビ会議装置を使うこととなる児童・生徒、地域住民、教育委員会、学校、行政相談を受ける課等の関係者がテレビ会議装置を用いたシステムを真に必要としていることや、〔2〕 テレビ会議装置の利用について関係者と十分に協議されていて、利用の体制が整備されていることが分かる資料ではなかった。
(イ) この資料のうちの利用見込み件数について、貴省は、類似システムの利用状況、人口、パソコンの普及率、窓口利用件数等を総合的に勘案して、適切に算定するよう定めているのみであった。
このため、事業主体は、学校間交流システムについて各学級が毎月1回利用するなどとしていたり、行政相談システムについて市役所等の来庁者の1割がテレビ会議装置による相談に移行するなどとしていたりしていたが、その頻度を算定するに当たって、実際に利用することとなる学校等から必ずしもその状況を聴取しておらず、具体的な根拠に基づかずに利用見込み件数を算定していた。
イ 本院の指摘に基づき貴省が講じた改善の処置の状況について
本院の指摘に基づき14年10月に貴省が講じた改善の処置等により、事業主体は、テレビ会議装置を用いたシステムの利用状況を把握して、その利用状況が低調な場合には原因を追究して、改善策を執ることとされた。
しかし、テレビ会議装置を用いたシステムの利用状況が低調であると当該事業主体自身が認識している41事業主体のうち33事業主体は、何らの対策を講じていなかったり、教育委員会、学校、行政相談を受ける課等の関係者と改善策について検討したものの、特段の改善策を見い出せなかったなどとして利用を呼びかけたにとどまっていたりしていた。
貴省は、本院の指摘に基づき14年10月に改善の処置を講じたが、これまでに整備したテレビ会議装置の利用状況は全般的に極めて低調で事業目的が達成されていないことからみて、その需要は限定的なものと認められる。
したがって、テレビ会議装置の整備費を補助の対象とすることは適切でなく、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、主として、貴省において、テレビ会議装置を用いたシステムの需要は極めて限定的であるのに、これを補助の採択に反映させていなかったことによると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、貴省は、地域イントラネット基盤施設整備事業におけるテレビ会議装置の取扱いについて、20年10月に総合通信局等に対して通知を発して、テレビ会議装置の整備費を原則として補助の対象から除外するなどの処置を講じているところである。
ついては、今後、これらの処置がより実効あるものとなるためには、例外的な取扱いに関する厳格な運用など格段の取組が必要とされることから、貴省が事業主体向けに作成している地域イントラネット基盤施設整備事業実施マニュアルにおいて、原則として補助の対象から外す旨の改訂を早急に実施するなど、補助を行わないこととした処置が的確に行われるよう是正改善の処置を求める。