財務省は、独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)が平成15年4月に独立行政法人に移行するのに際して、印刷局特別会計から現金及び預金、本局、工場等の事業用の土地、賃貸土地等の資産を印刷局に承継させた。承継後に、印刷局は、事業用の土地、賃貸土地、宿舎用地等の一部の土地について、財務大臣の認可を受けて、一般競争入札等で譲渡して、多額の資金を得ている。
そこで、経済性、有効性等の観点から、印刷局が国の特別会計から承継した資産を対象に、賃貸土地等を譲渡するなどして得た資金が有効に活用されているか、又は国庫に返納する必要はないかなどに着眼して検査したところ、独立行政法人に移行してから、中期計画には見込んでいなかった土地の譲渡等により多額の資金を保有しており、その相当分が長期運用に充てられている状況となっていた。
そして、土地譲渡収入のうち土地の売却益については、中期目標期間の終了時(19年度末)の積立金に関する独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号)等の規定に基づき、その2分の1相当額は中期目標期間終了後に国庫に納付される見込みであるが、国から承継した土地の帳簿価額相当額の資金については、政府出資金を減額して国に戻入することなどを想定した規定がないために、印刷局が中期目標期間が終了した後も保有し続けることになる。
このように、印刷局は土地譲渡による資金を保有しているのに、制度上この資金のうちの帳簿価額部分は国庫に納付させることができない状況となっている。
さらに、印刷局は、再開発が予定されている地域に賃貸土地等を保有していることから、今後も多額の土地譲渡収入が見込まれているが、財務省において、資金の活用方針や保有させる資産の適正規模等は具体的に検討されていない状況となっていた。
このような事態が生じているのは、印刷局が承継した賃貸土地や、その譲渡により得た多額の資金について、印刷局の本来業務への必要性を勘案した適正な規模かどうかについて十分な検討が行われなかったこと、印刷局の保有する資金については、土地の譲渡等により多額の資金が生ずることや出資そのものを回収する必要が生ずるような状況を想定した制度となっていないことによると認められた。
印刷局は多額の土地譲渡収入金などの資金を保有して、なお、依然として、賃貸土地等を保有しており今後も多額の譲渡収入が見込まれることから、印刷局の保有資産の適正規模について具体的に検討して、不要な資産を国庫に返納させるよう適切な制度を整備するよう、財務大臣に対して19年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、財務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、財務省は、本院指摘の趣旨に沿い、印刷局の保有資産について、政府において検討され、策定された独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定)を踏まえて、20年4月から25年3月までの期間に印刷局が達成すべき業務運営に関する目標において保有資産の見直しを定めた。また、不要な資産を国庫に返納させる制度の整備については、政府として、各独立行政法人の不要財産の国庫返納等を定めた「独立行政法人通則法の一部を改正する法律案」を第169回国会(常会)に提出している。