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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 日本中央競馬会|
  • 平成18年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

役務契約の実施における契約事務の適正化について


役務契約の実施における契約事務の適正化について

平成18年度決算検査報告 参照)

1 本院が求めた是正改善の処置

(検査結果の概要)

 日本中央競馬会(以下「競馬会」という。)は、競馬開催や競馬場建設等のために、多額の経費を要して工事や役務の契約を行っているが、平成13年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」(以下「整理合理化計画」という。)及び17年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」に基づき、中央競馬関係事業の効率化の一環として、公正確保と両立させつつ、競争入札の範囲を大幅に拡大するとともに、子会社及び関係会社(以下、これらを「子会社等」という。)に対する委託費等を削減することなどが求められている。
 そこで、合規性、経済性等の観点から、整理合理化計画及び行政改革の重要方針の趣旨に沿った一般競争契約及び指名競争契約(以下、両契約を合わせて「競争契約」という。)への移行等の措置が、その期限とされている22年までのできる限り早い時期に向けて計画的に実施されているかなどに着眼して検査したところ、検査の対象とした契約全体に占める随意契約の割合(金額)は、18事業年度においても79.9%となっており、整理合理化計画の期限とされていた17年度末までに競争契約の大幅な拡大がなされたとは認められない状況となっていた。
 18事業年度に競馬会が締結した契約を種類別にみると、物品等の賃借及び役務の契約について随意契約の金額の割合がそれぞれ99.9%、84.2%と極めて高く、これらの随意契約(契約件数1,451件、契約金額1196億6282万余円)の2分の1は子会社等との契約となっており、この中には大半の業務を再委託しているものが多数見受けられた。そして、物品等の賃借及び役務の契約の随意契約の理由として多いものは、機械・装置のリース契約を除けば、「契約実績、経験を有する」、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」などとなっていた。
 また、行政改革の重要方針では、競馬の公正・中立性の確保上支障のないことが競争入札へ移行する上での前提としているが、公正確保を随意契約の理由の一つとしている契約は、契約件数1,451件中の652件であり、これらの契約を本院において業務内容別に分類すると、機械・装置のリース契約で511件中476件、警備業務契約で133件中61件、清掃業務契約で59件中44件等となっており、同種の業務でも公正確保を随意契約の理由として掲げているものと、掲げていないものがあった。
 そこで、随意契約の理由の妥当性について検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 競馬の公正確保上特段の支障もなく、競争性のある契約であるため、競争契約へ移行することが可能であると認められたもの

(契約件数141件、契約金額76億4496万余円)

 場外勝馬投票券発売所(以下「ウインズ」という。)の警備、清掃業務等の業務区域には、厩(きゆう)舎地区等の競馬の公正確保のため万全を期す必要がある地区は含まれておらず、業務の全体を競争契約に移行しても公正確保上特段の支障がないものと認められた。また、これらの業務は特殊な業務ではなく、履行可能な業者は多数存在することから競争契約へ移行することが可能であると認められた。
イ 競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる業務と特段の支障がない業務とに区分するなどにより、随意契約としていた業務の一部を競争契約に移行できると認められたもの

(契約件数38件、契約金額89億3013万余円)

 競馬場内の警備、清掃業務の業務区域には、厩舎地区、下見所等が含まれていて競馬関係者や競走馬と接する機会があるが、それ以外のスタンドのファンエリア等の区域においては接する機会はない。また、成績表の印刷製本業務については、全国的な組織を有していなくても実施可能であることなどから、レーシングプログラムの印刷製本業務と分離することにより、さらに、レーシングプログラム発送業務は、一般の運送業者が全国に多数存在することなどから、競争契約を行うことは可能であると認められた。
 したがって、当該業務について、競争契約を実施した場合に公正確保上支障が生ずる部分と特段の支障がない部分に区分するなどにより業務の一部を競争契約に移行することが可能であると認められた。

(検査結果により求めた是正改善の処置)

 競馬会においては、競争契約への移行の期限が22年とされてはいるものの、直ちに競争契約へ移行が可能であるかどうかについて検討して、競争契約に移行可能なものは速やかに移行するとともに、検討に時間を要するものについては検討内容や進ちょく状況を公表するなどして契約の競争性及び透明性を高める必要があり、次のとおり、競馬会の理事長に対して19年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
ア 競馬会が締結している随意契約のうち、子会社等と締結している契約も含めて、競馬の公正確保上特段の支障がないウインズの警備、清掃業務等については、施設や業務の状況を踏まえて、競争契約への移行を図ること
イ 競馬会が締結している随意契約のうち、競馬場内の警備、清掃業務等については、競争契約を実施した場合の競馬の公正確保上の支障の有無や対応策を検討して、支障がないものについては移行の時期や手順を明確にすること

2 当局の処置状況

 本院は、競馬会本部、競馬場及びウインズにおいて、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、競馬会は、本院指摘の趣旨に沿い、20年8月までに次のような処置を執り、又は引き続き検討を行っている。
ア ウインズの警備、清掃業務等のうち、ウインズ周辺の交通警備業務及び競馬場の一般入場券発売業務については、それぞれ20年3月及び同年2月から8月までの間に競争契約に移行している。
 そして、競馬場の指定席入場券発売業務並びにウインズ館内の開催警備業務、案内業務、ウインズ館内の清掃業務及びウインズの不動産総合管理業務の一部については、21事業年度に競争契約に移行する予定としている。また、ウインズ館内の平日払戻警備業務等については、施設や業務の状況を踏まえて、競馬会において引き続き検討を行っていくこととしている。
イ 競馬場内の警備、清掃業務等のうち、厩舎地区等を除くスタンドのファンエリア清掃業務については20年3月又は4月に競争契約に移行している。
 そして、競馬場内の開催警備業務の一部及び成績表の印刷製本発送業務については、21事業年度に競争契約に移行する予定としている。また、競馬場内の常駐警備業務、レーシングプログラムの発送業務等については、競馬の公正確保上の支障の有無等を踏まえて、競馬会において引き続き検討を行っていくこととしている。