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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

利用が低調となっていて整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していない電子申請等関係システムについて、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るよう意見を表示したもの


部局等 内閣官房、内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務本省、財務本 省、国税庁、厚生労働本省、農林水産本省、経済産業本省、国土交通 本省
電子申請等関係
システムの概要
国民が国の行政機関とこれまで書面を用いてやり取りしてきた申請・届出等について、インターネット等を経由した電子的な申請等によっても行うことができるようにするためのシステム
効果が十分発現していない10府省等の12電子申請等関係システムの整備・ 運用等に係る経費 118億7519万円(背景金額)(平成17年度~20年度)

 本院は、電子申請等関係システムの利用状況について、平成21年9月18日に、内閣、内閣府、公正取引委員会、警察庁、総務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業 省及び国土交通省の11府省等の長に、「電子申請等関係システムの利用状況について」とし て、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
これらの意見表示の内容は、上記11府省等のそれぞれの検査結果に応じたものとなってい るが、これを総括的に示すと以下のとおりである。

1 電子申請等関係システムの概要

(1) 電子申請等関係システムの整備・運用

 政府は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)に基づい て、13年1月、内閣に、内閣総理大臣を長とした高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT戦略本部」という。)を設置し、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関するe―Japan重点計画を作成するなどして、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、国及び地方公共団体の事務におけるインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用の拡大等行政の情報化を積極的に推進することとしている。
 そして、各府省等は、その一環として、国民が国の行政機関とこれまで書面を用いてやり取りしてきた申請、届出等(以下「申請等」という。)について、インターネット等を経由した電子的な申請等を行うための電子申請等関係システムを整備・運用してきている。

(2) 電子申請等関係システムに関する施策

 IT戦略本部は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画を毎年度策定するとともに、必要に応じて行政の情報化を推進するための施策等を策定するなどしており、近年における電子申請等関係システムに係る行政の情報化を推進するための主な施策は、以下のとおりとなっている。

ア IT新改革戦略

 IT戦略本部が18年1月に策定した「IT新改革戦略」の施策において、申請等における「オンライン利用率」を22年度までに50%以上とすることを目標とし、また、国の扱うほとんどの手続においてインターネットによる申請等が可能となっている一方で国民・企業等による電子政府の利用が進んでいないなどの状況を踏まえ、利用者の視点に立って添付書類の電子化、省略・廃止、手続自体の廃止等を図るなどとしている。

イ オンライン利用促進のための行動計画

 各府省等は、上記のIT新改革戦略を受け、18年3月に、オンライン利用促進のため、年間申請件数10万件以上の手続、オンライン利用に関する企業ニーズの高い登記、国税、社会保険等の手続をオンライン利用促進対象手続(18年3時点で175手続。19年3月の改定により165手続)として、「オンライン利用促進のための行動計画」を定めており、これにより原則として添付書類を省略すること、電子署名を簡略化すること、システムを改修することなどの取組を進めることとしている。

ウ オンライン利用拡大行動計画

 IT戦略本部は、20年9月に、IT新改革戦略に掲げた目標を達成するとともに、オンライン利用を飛躍的に拡大させていく必要があるなどとして、「オンライン利用拡大行動計画」を策定している。この計画によると、オンライン化された申請等の手続のうち、国民や企業による利用頻度が高い年間申請等件数が100万件以上の手続及び100万件未満であっても主として企業等が反復的又は継続的に利用する見込みのある手続を「重点手続」(71手続)とし、重点手続全体で25年度末に「オンライン利用率」72%以上の実現を目指すとしている。
 また、同計画の実行に当たっては、オンライン利用の飛躍的拡大を図る一方で、利用率が極めて低調であるなどの手続についてはシステムの停止も含めて見直しを図るなどとしている。そして、内閣官房及び総務省は、利用率が極めて低調で、今後とも改善の見込みがない手続については、今後の利用者ニーズや費用対効果、代替措置の有無等を総合的に勘案して、停止すべきシステムの範囲をIT戦略本部に置かれている電子政府評価委員会に対して報告し、その評価や国民からの意見も踏まえた上で、システム停止の是非について結論を得るものとしている。また、停止すべきシステムの範囲は、内閣官房及び総務省において必要に応じて毎年見直していくこととしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、参議院からの検査要請に基づき、18年10月に、「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」として、その検査結果を報告している。そして、同報告において、電子申請等関係システムの電子申請件数を全申請件数(電子申請件数と書面による申請件数の計)で除した率(以下「電子申請率」という。)が全体では低い状況にあることから、各府省等において、手続のオンライン化の必要性、経済性を十分検討するとともに、利便性に対する国民の意見、要望も広く聴取して、そのニーズを的確に把握するなどしてシステムの利用の拡大を図り、もって国民の利便性の向上に努めることが必要であり、本院は、今後とも多角的な観点から検査を実施していくとしている。
 また、20年10月に、国土交通大臣等に対し、自動車保有関係手続のワンストップサービスの利用が低調となっているため、サービスの運用方法等の改善を図るよう意見を表示している。
 本院は、検査要請に基づいて実施した前記の18年の検査から3年が経過し、この間、前記1のようにIT戦略本部がオンライン利用拡大行動計画を策定していることなどを踏まえ、経済性、効率性、有効性等の観点から、システムの利用が拡大しているか、システムの見直しが行われているかなどに着眼して検査を行った。
 検査に当たっては、21年4月時点で各府省等において運用している電子申請等関係システム65システムのうち、前記の自動車保有関係手続のワンストップサービス等を除いた49システムについて、電子申請等関係システムに係る調書を徴するとともに、17府省等(注1) において、各システムの利用状況、電子申請率向上のための施策等について関係資料により実地に検査を行った。

 17府省等  内閣官房、人事院、内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁、環境省、最高裁判所

(検査の結果)

 各府省等が運用している上記49システムの17年度から20年度までの間の整備・運用等に係る経費(注2) は、表1 のとおり計1080億3064万余円となっている。

 整備・運用等に係る経費  各システムに関係する開発及び運用に係る保守・運用費、機材購入費、ソフト開発費等の支出金額である。この金額の算出に当たっては、他システムとの共通的費用を案分して算出したり、当該システムの経費のみを切り分けることが困難なため電子申請以外の機能を含めたシステムの支出金額を計上したりしているものがある。

表1 電子申請等関係システムの整備・運用等に係る経費

(単位:円)

府省等名 システム数 平成17年度 18年度 19年度 20年度 合計
人事院 2システム 6,456,975 9,268,350 7,609,350 10,833,900 34,168,575
内閣府本府 3システム 89,901,588 169,684,788 114,254,238 386,144,511 759,985,125
公正取引委員会 1システム 22,184,818 14,561,085 43,835,267 58,158,995 138,740,165
警察庁 1システム 25,867,800 93,940,492 67,425,037 39,324,600 226,557,929
金融庁 2システム 1,362,861,363 2,272,697,553 1,807,532,089 993,735,491 6,436,826,496
総務省 4システム 1,369,902,436 1,890,534,489 1,632,899,493 1,499,427,951 6,392,764,369
法務省 2システム 317,923,812 295,224,835 1,399,108,916 1,819,406,133 3,831,663,696
外務省 1システム 28,750,838 68,707,979 28,589,577 147,566,298 273,614,692
財務省 5システム 7,340,802,302 6,926,235,625 6,120,330,948 6,567,817,598 26,955,186,473
国税庁 2システム 8,144,979,729 8,623,502,486 8,956,731,093 9,639,151,787 35,364,365,095
文部科学省 1システム 46,507,366 29,461,530 44,426,707 21,668,562 142,064,165
厚生労働省 5システム 1,723,121,772 1,764,008,322 1,566,397,058 1,523,118,924 6,576,646,076
農林水産省 3システム 454,593,964 394,394,475 944,028,283 732,464,260 2,525,480,982
水産庁 1システム 293,000,000 233,734,000 216,597,000 206,518,000 949,849,000
経済産業省 5システム 983,938,266 883,559,941 864,508,123 731,915,465 3,463,921,795
特許庁 2システム 1,564,385,426 1,579,006,453 963,182,203 1,099,489,594 5,206,063,676
国土交通省 5システム 1,593,333,985 1,155,043,582 952,841,600 1,824,895,213 5,526,114,380
海上保安庁 1システム 97,522,242 71,886,150 74,877,600 68,441,400 312,727,392
環境省 1システム 105,040,088 169,731,873 92,404,185 96,599,657 463,775,803
最高裁判所 2システム 627,463,734 549,767,612 574,838,240 698,056,844 2,450,126,430
20府省等 49システム 26,198,538,504 27,194,951,620 26,472,417,007 28,164,735,183 108,030,642,314
(注)
 厚生労働省の5システムのうち、介護福祉士養成施設等事業報告システムは、独立行政法人福祉医療機構が運用しており、システムの整備・運用等に係る経費は、厚生労働省から同機構に交付される運営費交付金の一部であるため、厚生労働省の金額から除外している。

 そして、これら49システムの利用状況等を検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 電子申請率の推移

 各府省等が整備・運用している電子申請等関係システムの17年度から20年度までにおける電子申請率の推移は全体でみると、表2 のとおり、17年度8.1%、18年度19.8%、19年度26.0%、20年度34.0となっていて、毎年度向上してきているものの、内閣府本府等10府省等(注3) が運用している汎用受付等システム等の12システムは、電子申請率が10%以下と低迷していて、このうち7システムは、20年度における電子申請率が1%以下と著しく低迷している。そして、これら12システムの電子申請件数についてみると、表3 のとおり、20年度における年間の電子申請件数が100件以下のシステムが6システム見受けられた。

 10府省等  内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省


表2 電子申請率

(単位:%)

府省等名 システム名 平成17年度 18年度 19年度 20年度
人事院 インターネットによる受験申込みシステム 17.6 15.0 11.0 17.0
国家公務員経験者採用管理システム 64.1 100 100
内閣府本府 汎用受付等システム 0.4 0.2 0.4 0.4
公益認定等総合情報システム 93.0
適格消費者団体専用電子掲示板システム 82.8 79.3
公正取引委員会 オンライン共通受付システム 10.6 7.9 7.0 3.3
警察庁 電子申請・届出システム 0.2 0.2 1.3 0.8
金融庁 金融庁電子申請・届出システム 51.1 71.9 82.2 85.6
金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム 76.7 82.9 99.3 99.8
総務省 総務省電子申請・届出システム 0.5 0.4 0.2 0.3
総務省電波利用電子申請・届出システム 11.6 18.0 25.7 32.5
政府統計共同利用システム(政府統計オンライン調査総合窓口) 把握不可
政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム 0 0 0 0.0
法務省 総合的な受付・通知システム 11.3 15.2 23.3 46.7
乗員上陸許可支援システム 24.3 31.4 34.0 37.5
外務省 在留届電子届出システム 22.5 24.3 30.9 28.9
財務省 財務省電子申請システム 0.0 0.0 0.0 0.0
輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS) 未集計 94.2 95.9 95.5
税関手続申請システム(CuPES) 未集計 11.2 12.6 17.2
法人企業統計調査等ネットワークシステム 14.6 16.7 18.6 20.0
国庫事務電算化システム 100 100 99.8 99.9
国税庁 国税電子申告・納税システム(e―Tax) 0.4 4.6 21.5 32.9
国税庁電子開示請求システム 7.2 0.1 0.0 0.0
文部科学省 電子調査票収集システム 52.5 64.5 75.1 90.2
厚生労働省 厚生労働省汎用申請・届出等省内処理システム 0.0 5.6 14.9 13.3
労働保険適用徴収システム 0.0 0.4 0.7 1.0
毎月勤労統計調査オンラインシステム 18.8 20.0 20.5 21.3
看護師等養成所運営報告システム及び看護師等学校養成所入学状況並びに卒業生就業状況調査システム 100 100 100 100
介護福祉士養成施設等事業報告システム 100 100 100 100
農林水産省 農林水産省電子申請システム 0.0 0.0 0.0 0.0
植物検疫検査手続電算処理システム 84.1 85.0 85.5 86.2
動物検疫検査手続電算処理システム 86.8 88.5 89.6 87.8
水産庁 漁獲管理情報処理システム 98.0 97.8 98.5 98.1
経済産業省 経済産業省汎用電子申請システム 1.1 1.7 1.7 1.9
貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) 9.2 8.1 8.3 8.2
企業活動基本調査オンラインシステム 15.1 20.1 19.2 19.6
新世代統計システム 27.2 30.7 31.6 32.7
工業標準策定システム 99.5 99.3 98.2 96.9
特許庁 弁理士試験願書請求受付システム 55.2 56.0 57.4 61.7
電子出願関連事務処理システム 90.2 91.1 92.3 91.5
国土交通省 国土交通省オンライン申請システム 0.8 1.0 1.2 1.3
輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)(港湾サブシステム) 18.9 27.5 30.5
特殊車両通行許可オンライン申請システム 8.7 19.5 27.7 37.1
道路占用許可電子申請システム 32.3 15.4 37.2 61.4
宅建業電子申請システム 1.4 12.6
海上保安庁 輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)(港湾サブシステム) 23.4 27.3 30.9 34.3
環境省 環境省電子申請・届出システム 0.3 19.3 23.4 34.5
最高裁判所 最高裁判所汎用受付等システム 把握不可 把握不可 把握不可 把握不可
督促手続オンラインシステム 25.2 32.0 38.9
検査対象システムは20府省で計49システム 8.1 19.8 26.0 34.0
注(1)
 総務省の政府統計共同利用システム(政府統計オンライン調査総合窓口)及び最高裁判所の最高裁判所汎用受付等システムは、全申請件数等が把握できないシステムとなっている。

注(2)
 財務省の輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)及び税関手続申請システム(CuPES)の申請件数等は、平成17年度においてはシステム別に集計されていない。

注(3)
 電子申請率「0」は、電子申請が全くないため「0」としている。また、電子申請率「0.0」は、小数点第2位以下を切り捨てている。

注(4)
 「―」は未稼働である。表3 電子申請率が低迷している12システム上段:全申請件数中段:電子申請件数


表3 電子申請率が低迷している12システム

上段:全申請件数  
中段:電子申請件数  
下段:電子申請率 (単位:件、%)
府省等名 システム名 平成17年度 18年度 19年度 20年度
内閣府本府 汎用受付等システ厶 4,194 7,211 6,717 7,177
17 19 30 32
0.4 0.2 0.4 0.4
公正取引委員会 オンライン共通受付システム 65,956 62,280 98,690 59,141
7,030 4,958 6,936 1,996
10.6 7.9 7.0 3.3
警察庁 電子申請・届出システム 2,023 1,934 1,995 1,984
6 5 26 16
0.2 0.2 1.3 0.8
総務省 総務省電子申請・届出システム 254,279 219,085 188,154 195,843
1,474 894 476 688
0.5 0.4 0.2 0.3
政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム 6,321 6,048 6,210 6,354
0 0 0 2
0 0 0 0.0
財務省 財務省電子申請システム 73,877 67,311 63,569 69,758
69 48 55 61
0.0 0.0 0.0 0.0
国税庁 国税庁電子開示請求システ厶 81,140 145,228 140,974 134,410
5,920 275 50 61
7.2 0.1 0.0 0.0
厚生労働省 労働保険適用徴収システム 5,181,433 5,220,165 5,256,518 4,943,257
3,779 21,032 40,146 54,282
0.0 0.4 0.7 1.0
農林水産省 農林水産省電子申請システム 161,995 156,436 182,865 145,865
22 28 20 39
0.0 0.0 0.0 0.0
経済産業省 経済産業省汎用電子申請システム 671,851 601,960 571,563 580,231
8,033 10,455 10,220 11,030
1.1 1.7 1.7 1.9
貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) 48,510 53,182 57,634 52,888
4,464 4,319 4,835 4,348
9.2 8.1 8.3 8.2
国土交通省 国土交通省オンライン申請システム 2,059,200 2,036,209 1,961,997 2,043,143
18,403 20,752 25,040 26,726
0.8 1.0 1.2 1.3
(注)
 手続によっては、件数が確定実績値ではないものもある。

 上記の10府省等は、電子申請率が10%以下と低迷しているシステムについてその向上を図るため、申請窓口を総務省が運用する電子政府の総合窓口(e―Gov)電子申請システムに統合して申請者の利便性向上を図ったり、ホームページ等において電子申請の利用についての広報、普及を行ったりなどしているものの、郵送等による申請が可能で電子申請することのメリットが少ないこと、電子申請だけでは手続が完結せず別途に添付書類が必要な場合があることなどから、電子申請率が低迷しているとしている。

(2) 電子申請が可能となった手続の利用状況

 前記18年の検査において、オンライン化によって電子申請が可能となった手続について、16年度における各手続の全申請件数の申請件数区分ごとの分布状況を調査したところ、表4 のとおり、全申請件数が50件以下となっていて申請そのものが極めて少ない手続が全体の72.8%となっていた。そこで、18年の検査と同様に、19年度において電子申請が可能な47システムの12,425手続について、1年度の全申請件数の申請件数区分ごとの分布状況を調査したところ、表4のとおり、全申請件数が0件のものが6,370手続(構成比51.2%)、1件以上50件以下のものが3,055手続(同24.5%)となっていて、申請そのものが極めて少ない手続が9,425手続(同75.8%)と相当数を占めており、16年度と比べ電子申請が可能な手続の利用状況に大きな変化はない状況となっている。

表4 手続の全申請件数の分布状況(平成16、19年度)

(単位:手続、%)

年度 区分 電子申請が可能となった手続の全申請件数 電子申請が可能となった手続数計
0件 1件~50件 51件~100件 101件~1,000件 1,001件~10,000件 10,001件~99,999件 10万件以上 把握できないなど
平成
16年度
手続数 7,054 3,309 495 1,061 545 255 149 1,357 14,225
10,363
構成比 49.5 23.2 3.4 7.4 3.8 1.7 1.0 9.5 100
72.8
19年度 手続数 6,370 3,055 508 1,133 559 261 147 392 12,425
9,425
構成比 51.2 24.5 4.0 9.1 4.4 2.1 1.1 3.1 100
75.8
 手続ごとの申請件数が把握できない場合は、「把握できないなど」として集計している。

 平成19年度の計数は、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号)第10条の規定に基づき各府省等が電子申請等の利用に関する状況について公表している資料等により集計したものである。このうち手続数については、各システムの処理可能な手続数と把握方法が異なる場合がある。また、電子申請率が10%以下と低迷している前記12システムを運用している10府省等それぞれの電子申請等関係システムの電子申請件数について、手続ごとの内訳を調査したところ、表5 のとおり、電子申請件数が最も多い手続の電子申請件数が全体の電子申請件数に占める割合が50%超となっているものが7省等あり、また、電子申請件数の多い上位3手続の電子申請件数が全体の電子申請件数に占める割合が80%超となっているものが9府省等あるという状況となっていて、電子申請件数の相当数が特定の手続によるものとなっている。


表5 電子申請件数の状況
(単位:件、%)

府省等名 電子申請件数 電子申請件数が最も多い手続 電子申請件数の多い上位3手続 その他の手続
電子申請件数 左の占める割合 電子申請件数 左の占める割合 電子申請件数 左の占める割合
a b c=b/a×100 d e=d/a×100 f g=f/a×100
内閣府本府 160 66 41.2 135 84.3 25 15.6
公正取引委員会 1,996 1,383 69.2 1,993 99.8 3 0.1
警察庁 16 3 18.7 7 43.7 9 56.2
総務省 134,589 71,796 53.3 128,447 95.4 6,142 4.5
財務省 37,615,739 17,669,707 46.9 34,626,383 92.0 2,989,356 7.9
国税庁 9,454,526 5,076,492 53.6 9,189,400 97.1 265,126 2.8
厚生労働省 22,897,215 22,653,001 98.9 22,733,060 99.2 164,155 0.7
農林水産省 459,100 240,414 52.3 443,150 96.5 15,950 3.4
経済産業省 176,692 101,589 57.4 152,142 86.1 24,550 13.8
国土交通省 448,785 264,536 58.9 389,011 86.6 59,774 13.3
注(1)
 総務省、財務省、国税庁及び厚生労働省は平成19年度、その他の府省等は20年度を集計している。

注(2)
 複数の手続が1件の申請等によって行われている場合は、手続ごとの申請件数が把握できないため、1手続による申請等として集計している。

注(3)
 本表における電子申請件数は、電子的な申請等があった件数から、国以外への申請、申請取下げなどを除いた件数である。このように、電子申請が可能となっていても申請そのものが極めて少ない手続が相当数を占めていて、利用される電子申請の手続が特定の手続に偏っているのは、IT戦略本部が12年度に策定したe―Japan重点計画等の政府の施策において、「国民等と行政との間の実質的にすべての申請・届出等手続を、2003年度までのできる限り早期にインターネット等で行えるようにする」とされたことなどを受け、各府省等が、これまで原則としてすべての手続をオンライン化してきたことなどによると認められる。

(3) オンライン申請1件当たりの経費

 電子政府評価委員会は、各府省等における電子申請等関係システムの整備経費・運用経費(注4) やオンライン申請件数等について調査し、その結果を「電子政府評価委員会平成20年度報告書」として21年3月に公表している。そして、同報告書において、電子申請等関係システムを、〔1〕経費を比較的容易に把握できるシステム(類型I)、〔2〕整備経費については比較的容易に把握することができるが、運用経費については、正確な数値が把握できないシステム(類型II)及び〔3〕整備経費及び運用経費ともに正確な数値が把握できないシステム(類型III)の3類型に分類した上で、各システムの年間運用経費に1年当たりの整備経費を加えた額をオンライン申請等件数で除するなどしたオンライン申請1件当たりの経費(注5) を公表している。そして、類型Iに該当するシステム全体でのオンライン申請1件当たりの経費は、144円となっていて、また、類型II及び類型IIIを合わせたシステム全体でのオンライン申請1件当たりの経費は、391円となっている。
 この報告書によると、電子申請率が低迷している前記12システムの19年度におけるオンライン申請1件当たりの経費は、表6 のとおり、3,883円から3,571,159円となっていて、これらシステムの電子申請の現状がこのまま推移すると、費用対効果が十分発現されないこととなると認められる。

 整備経費・運用経費  システムの整備経費については、平成19年度までの累積額を基に、このうちのオンライン申請に係る分の経費を推計し、これを当該システムの予定使用期間で除して1年当たりの整備経費を算出しているなど、本院が調査したシステムの整備・運用等に係る経費とは一致しない。

 オンライン申請1件当たりの経費  整備経費や運用経費の正確な数値が把握できないため、オンライン申請1件当たりの経費については、システムの実情に応じて推計・算出した値を含む概算値であり、単純比較はできないなどとされている。


表6 オンライン申請1件当たりの経費(電子政府評価委員会平成20年度報告書)
(単位:円/件)

府省等名 システム名 類型 申請1件当たりの経費 備考
内閣府本府 汎用受付等システム III 3,571,159  
公正取引委員会 オンライン共通受付システム 3,883  
警察庁 電子申請・届出システム 9,357  
総務省 総務省電子申請・届出システム 253,834  
総務省 政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム III  
財務省 財務省電子申請システム III 332,272  
国税庁 国税庁電子開示請求システム 581,620  
厚生労働省 労働保険適用徴収システム II 50,089  
農林水産省 農林水産省電子申請システム II (487,275)295,536 19年度運用経費は保証期間で「0」のため、20年度経費を参考値として( )内に記入している。
経済産業省 経済産業省汎用電子申請システム 13,664  
経済産業省 貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) III 64,500  
国土交通省 国土交通省オンライン申請システム III 27,292  
(注)
 政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステムについては、電子申請が1件もなかったことなどから算出されていない。

(4) システム停止等の状況

 前記のとおり、オンライン利用拡大行動計画では、システム停止の是非についても検討することとされているが、これを受けて文部科学省オンライン申請システム及び防衛省申請届出等システムが20年度中に停止している。これらのシステムは、いずれも内閣官房及び総務省が電子政府評価委員会に報告し、同委員会による評価を受けた上で、〔1〕利用実績が極めて低いこと、〔2〕電子申請1件当たりの費用が高額となっていること、〔3〕対象としている手続の性格上利用促進が見込まれないことなどを理由として、運用を停止したものである。
 しかし、電子申請等関係システムを停止する基準については、オンライン利用拡大行動計画において「今後の利用者ニーズや費用対効果、代替措置の有無等を総合的に勘案して」とされているだけで、電子申請率あるいはオンライン申請1件当たりの経費等の明確な指標がなく、また、停止に至るまでの手順等も明確になっていない。

(改善を必要とする事態)

 電子申請等関係システムの整備・運用等に係る経費が多額に上っているにもかかわらず、電子申請率が10%以下と低迷しているシステムが10府省等で12システム(17年度から20年度における整備・運用等に係る経費118億7519万余円)見受けられ、これらの中には、電子申請率が1%以下と著しく低迷しているシステムが7システムあるなど、システムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していない事態は適切でなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、IT戦略本部が策定した政府の施策を受け、各府省等において原則としてすべての手続を一律にオンライン化してきたこと、10府省等において電子申請率が低迷しているシステムについて費用対効果の検討が十分でなく、抜本的な見直しを行っていないことなどによるほか、内閣官房においてシステムを停止等させる際の基準となる指標や停止等に至るまでの手順等を明確にしていないことなどによると認められる。

3 本院が表示した意見

 政府は、国民の利便性の向上、効率的な電子行政サービスの提供等を図るため、今後とも電子申請等関係システムを運用していくこととしている。
 ついては、内閣官房において、オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していて今後とも改善の見込みがなく、電子申請等関係システムの整備・運用等に係る経費に対してその効果の発現が十分見込めないシステムについては、システムの停止等の抜本的な措置を執ることができるよう、当該措置を執る際の基準として電子申請率やオンライン申請1件当たりの経費等の指標や当該措置を執るに至るまでの手順等を明確化することについて、各府省等と所要の調整を適時適切に行うよう内閣総理大臣に対して意見を表示した。
 また、10府省等において、オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していてシステムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していないシステムについては、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るようそれぞれの長に対して意見を表示した。