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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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プロジェクト研究に係る委託費の経理が不当と認められるもの


(361) プロジェクト研究に係る委託費の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産技術会議 (項)農林水産業技術振興費
部局等 農林水産本省
契約名 「有用遺伝子活用のための植物(イネ)・動物ゲノム研究」等の委託(平成14年度〜16年度)
契約の概要 農林水産行政上の要請による試験研究等のうち特に必要があると認められる研究の実施
契約の相手方 独立行政法人農業生物資源研究所(再委託先 国立大学法人岡山大学 (平成16年3月31日以前は岡山大学))
契約 平成14年6月ほか(再委託契約 14年8月ほか) 随意契約
支払額 6,927,318,000円(うち国立大学法人岡山大学への再委託費25,942,000円)(平成14年度〜16年度)
不当と認める託費の支払額   9,339,024円(全額国立大学法人岡山大学への再委託費)(平成14年度〜16年度)

1 委託事業の概要

(1) 委託契約の概要

 農林水産省は、農林水産行政上の要請による試験研究又は新研究分野の開発若しくは急速な研究水準の向上を必要とする研究のうち特に必要があると認められる研究(以下「プロジェクト研究」という。)を独立行政法人等に委託するなどして実施している。そして、平成14年度から16年度までの間に、「有用遺伝子活用のための植物(イネ)・動物ゲノム研究」等のプロジェクト研究を独立行政法人農業生物資源研究所(以下「生物研」という。)に委託して、当該研究(以下「委託事業」という。)に要する経費を生物研に支払っている。
 また、生物研は、委託事業を実施するに当たり、その一部について期間を定めた上で国立大学法人岡山大学(16年3月31日以前は岡山大学。以下「岡山大学」という。)に再委託している。

(2) 委託費の支払額

 農林水産省は、委託契約において、委託事業に要した経費の実支出額と委託契約で定めた限度額とのいずれか低い額を委託費の支払額として確定することとしている。
 岡山大学は、前記の再委託された委託事業に要した額を14年度から16年度までの計25,942,000円として、生物研に対して委託研究等実績報告書を提出している。そして、生物研は、岡山大学に対する支払額を確定して、他の再委託先等への支払額を合わせて委託事業の実施に要した経費の額を計6,927,318,000円として、農林水産省に対して委託事業実績報告書を提出している。これを受けて、農林水産省は委託費の額を委託事業実績報告書の額と同額と確定して精算している。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、委託費が適切に管理されているかなどに着眼して、再委託先である岡山大学において会計実地検査を行った。そして、実績報告書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があったため、岡山大学に 調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するほか、農林水産省及び生物研が岡山大学の報告を受けて実施した調査の結果についても確認するなどして検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、再委託先である岡山大学において次のとおり不適正な会計経理を行っている事態が見受けられた。
 すなわち、岡山大学は、委託事業に従事している研究者から委託事業を実施するために使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)を14、15両年度に5,824,618円で購入した とする納品書、請求書等の提出を受けるなどして、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、このうち5,105,549円については、研究者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ岡山大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理していた。
 このほか、実際には研究用物品が委託事業終了後に納品されていたにもかかわらず実際の納品日とは異なる日付の検収印を押印するなどして、委託事業期間中に納品されたこととしていたものなどが14年度から16年度までに計4,233,475円あった。
 したがって、岡山大学に対する再委託費は計9,339,024円が過大となっており、ひいて は農林水産省から生物研に支払われた委託費が同額過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究者において、再委託費の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、再委託費を経理している岡山大学において、再委託費を適正に執行することについて認識が十分でなく、 研究用物品の納品検査が十分でなかったこと、農林水産省及び生物研において、委託費の適正な執行について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。