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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

農業用排水路の設計が適切でないもの


農業用排水路の設計が適切でないもの (1件 不当と認める国庫補助金 13,068,414円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(402) 関東農政局 栃木県 栃木県下都賀郡藤岡町
(事業主体)
元気な地域づくり交付金 19 34,810 17,405 26,136 13,068

 この交付金事業は、藤岡町が、中耕地地区において、農業用排水路(延長419.4m)を整備し湛水被害 の解消を図ることなどを目的として、プレキャスト水路工、プレキャストカルバート工等を実施した ものである。 このうちプレキャスト水路工は、農業用排水路の開きょ部にプレキャスト製U型水路(延長計345.3m。以下「U型水路」という。)を、プレキャストカルバート工は、農業用排水路が町道等の下部を通過する暗きょ部にプレキャスト製ボックスカルバート(以下「カルバート」という。)6基を、それぞれ設置するなどのものである。同町は、このうち地盤が比較的軟弱な区間に設置されるU型水路(延長計283.2m)及びカルバート3基(延長計27.6m)について、「土地改良事業計画設計基準・設計「水路くい工」」(農林水産省農村振興局制定。以下「設計基準」という。)等に基づき、基礎杭として松杭を打設することとして、次のように設計していた(参考図参照)
ア U型水路については、その重量を5.0kN/mとするなどして、松杭に作用する軸方向押込み力(以下「押込み力」という。)を算出し、これを、松杭の周面摩擦力と先端支持力を合計するなどして算出した松杭1本当たりの軸方向許容押込み支持力(以下「許容支持力」という。)で除した数値が、松杭の支持層が砂れき層の場合は1m当たり0.62本などとなることから、安定計算上安全となるようU型水路の延長1m当たりに松杭を1本打設する。
イ カルバート3基については、安定計算を行わず、U型水路の設計と同様に、カルバートの延長1m当たりに松杭を1本打設する。 そして、同町は、この設計に基づき施工することとして、本件工事を発注していた。しかし、上記のU型水路及びカルバートの設計が次のとおり適切でなかった。
ア U型水路の実際の重量は最大9.4kN/mなどとなっていて、設計で用いた重量5.0kN/mは誤りであった。また、設計基準等によると、砂れき層等については、地盤強度(N値)が30程度以上あれば良質な支持層とみなしてよいとされているが、当該区間の地質調査の結果によると、松杭の先端付近のN値は26以下であることから、本件松杭は、良質な支持層に支持されていないおそれがあり、設計において先端支持力を考慮することは適切ではない。
イ カルバートは、上部の道路舗装、通行する車両等の重量のため押込み力がU型水路に比較して大 きなものとなることから、U型水路とは別途に安定計算を行う必要がある。
 そこで、U型水路については実際の重量に基づくなどして、また、カルバートについては別途に設計計算を行うこととして、改めて安定計算等を行って松杭の延長1m当たりの本数を算定する と、U型水路については、最小1.03本、最大2.50本、また、カルバート3基については、最小10.58本、最大11.79本となるなど、前記の設計値である1m当たり1本はいずれも安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 したがって、本件U型水路及びカルバート等(工事費相当額26,136,829円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これらに係る交付金相当額13,068,414円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同町において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、栃木県において、同町に対する指導及び監督が十分でな かったことなどによると認められる。

(参考図)

U型水路概念図、カルバート概念図