会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産本省(昭和52年度以前は農林本省) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)農村振興費 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)農業等国際協力推進費等 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)水田農業構造改革対策費 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)農業生産振興費等 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(組織)林野庁 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)林業・木材産業等振興対策費等 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(項)林業振興費 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
部局等 | 農林水産本省、林野庁 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
補助の根拠 | 予算補助 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
資金等設置団体 |
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上記の団体に設置造成された資金等のうち有効活用されていない資金等 |
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上記の資金等において有効活用されていない額 (うち国庫補助金相当額) |
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本院は、平成21年10月9日に、農林水産大臣及び林野庁長官に対して、農林水産省が公益 法人、組合(注) 及び任意団体に補助金等を交付して設置造成させた資金及び基金並びにこれらの運 用益の有効活用等を図るよう、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
要求した改善の処置の概要等は、次表のとおりである。
件名 | (1)農地・水・環境保全向上対策において積み立てられた資金等の有効活用について(農林水産大臣あて) |
資金設置団体名 | 地域協議会(56任意団体) |
資金の名称(設置年度) | 農地・水・環境保全向上対策において積み立てられた資金(平成19年度) |
資金の概要 | 〔1〕 地域ぐるみでの効果の高い共同活動に取り組む活動組織に対する共同活動支援交付金の交付を行うための資金及び〔2〕 先進的な営農活動に取り組む活動組織に対する営農活動支援交付金の交付を行うための資金を地域協議会に積み立てるもの |
検査した資金数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 109資金、国から地域協議会に19、20両年度に交付された共同活動支援交付金等計354億7106万余円(同額) |
有効活用されていない資金数、資金の額(うち国庫補助金相当額) | 109資金、地域協議会の保有する共同活動支援交付金等に係る資金等の20年度末残高計123億6762万余円(105億9366万余円) |
要求した改善の処置の概要 | 農林水産省は、地域ぐるみでの効果の高い共同活動等を一体的かつ総合的に支援する農地・水・環境保全向上対策を、国庫補助事業により実施している。本対策により地域協議会が積み立てた資金の残高等について検査したところ、毎年度、地域協議会において多額の資金残高が生じていて、その資金残高が20年度末には19年度末より大幅に増加しているなどの事態が見受けられた。 したがって、農林水産省において、共同活動資金等に多額の年度末残高が生じた場合等の取扱いを早急に定めて、地域協議会からその資金残高の一部を国庫に返還させるなどして資金の有効活用を図るなどの要がある。 |
件名 | (2)国庫補助金により造成された差額補填資金等の運用益の有効活用について(農林水産大臣あて) |
運用益保有団体名 | 社団法人国際農林業協働協会(1公益法人) |
運用益の名称(保有年度) | 運用益残額(平成12年度) |
運用益の概要 | 差額補填資金等から生じた運用益から管理運営経費に充当した後の残余額が積み上がったもの |
検査した運用益、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 1資金等の運用益、運用益の20年度末残高27億5248万余円(同額) |
有効活用されていない運用益、運用益の額(うち国庫補助金相当額) | 1資金等の運用益、運用益の20年度末残高27億5248万余円(同額) |
要求した改善の処置の概要 | 農林水産省は、緊急食糧支援として被援助国等へ貸し付けた米穀が被援助国等から金銭の償還により返済される場合に、食料安定供給特別会計に損失を発生させないため、将来発生すると見込まれる損失を貸付期間内で平準化するための差額補填資金造成事業を実施している。 同省が社団法人国際農林業協働協会に全額国庫補助金により設置造成させている基金及び差額補填資金から生じた運用益は有効に活用されているかなどについて検査したところ、運用益を管理運営経費に充当した後の残余額(以下「運用益残額」という。20年度末残高27億5248万余円。)について、実施要綱に、事業終了時に国庫に返還すると定めているものの、事業終了までの間の処理方法は定めていなかった。このため、多額の運用益残額が同協会に保有されていて有効活用されていなかった。 したがって、農林水産省において、実施要綱の改正等を行い、原則として運用益残額を国庫に返還させるなどして運用益残額の有効活用を図る要がある。 |
件名 | (3)水田農業構造改革交付金により造成された資金から生じた残余資金の有効活用について(農林水産大臣あて) |
資金設置団体名 | 都道府県水田農業推進協議会(46任意団体) |
資金の名称(設置年度) | 水田農業構造改革交付金により造成された資金(平成16年度) |
資金の概要 | 水田農業構造改革交付金により造成された資金により、米の生産調整を実施した農業者等に助成金を交付するもの |
検査した資金数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 46資金、都道府県水田農業推進協議会の20年11月末残余資金52億3616万余円(同額) |
有効活用されていない資金数、資金の額(うち国庫補助金相当額) | 46資金、都道府県水田農業推進協議会の20年11月末残余資金52億3616万余円(同額) |
要求した改善の処置の概要 | 農林水産省は、水田農業構造改革対策の一環として、都道府県水田農業推進協議会(以下「県協議会」という。)に対して交付金を交付して資金を造成させており、県協議会は、この資金により、米の生産調整を実施する農業者等に助成金を交付する地域水田農業推進協議会に助成金を交付している。46県協議会が造成している資金について検査したところ、農林水産省は、助成金として交付されなかった計52億3616万余円の残余資金を県協議会に保有させたまま有効活用していなかった。また、この残余資金を21年度の水田農業構造改革対策の財源として充当することとしていた。 したがって、農林水産省において、実施要綱の改正等を行い、今後、国の交付金から残余資金が生じた場合は、原則として国庫に返還させるなどして残余資金の有効活用を図るとともに、残余資金の取扱いについて透明性を十分確保する要がある。 |
件名 | (4)国庫補助金により造成された果樹対策資金から生じた運用益の有効活用について(農林水産大臣あて) |
運用益保有団体名 | 財団法人中央果実生産出荷安定基金協会(1公益法人) |
運用益名称(保有年度) | 事業資金剰余積立金(昭和49年度) |
運用益の概要 | 果樹対策資金から生じた運用益の一部を積み立てたもの |
検査した運用益、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 1資金の運用益、平成20年度末の事業資金剰余積立金77億6556万余円(同額) |
有効活用されていない運用益、運用益の額(うち国庫補助金相当額) | 1資金の運用益、20年度末の事業資金剰余積立金77億6556万余円(同額) |
要求した改善の処置の概要 | 農林水産省は、果樹対策の一環として、財団法人中央果実生産出荷安定基金協会に対して国庫補助金を交付して果樹対策資金を造成させており、同協会は、この資金により、果実の計画的生産等を実施した果実出荷事業者に補給金を交付するなどしている都道府県法人に補助金を交付している。同協会が果樹対策資金の運用益の一部を積み立てた剰余積立金について検査したところ、同積立金は20年度末において77億6556万余円に達しており、農林水産省は、同協会に同積立金を保有させたまま有効活用していなかった。また、同協会は、同積立金から生じた運用益の額及びその使途を把握できていなかった。 したがって、農林水産省において、実施要綱の改正等を行い、原則として剰余積立金を国庫に返還させるなどして剰余積立金の有効活用を図るとともに、剰余積立金の運用益が生じた場合の取扱いについて透明性を十分確保する要がある。 |
件名 | (5)海外農業移住交流事業の在り方及び運用益の有効活用について(農林水産大臣あて) |
基金設置団体名 | 社団法人中央農業拓植基金協会、財団法人都道府県農業拓植基金協会(計39公益法人) |
基金の名称(設置年度) | 海外農業移住交流事業により造成した基金(昭和34年度〜47年度) |
基金の概要 | 農業移住者等を資金面で援護しようとする者が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証等に係る弁済に充てるべき資産として造成するもの |
検査した基金数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 11基金、基金の平成20年度末造成額純計5億7720万余円(4億8989万余円) 29基金、解散時等に保有していた基金及び運用益計8億9163万余円(上記の11基金の20年度末造成額との重複金額を除いた額6億1713万余円、このうち国庫補助金相当額1億2394万余円) |
有効活用されていない基金数、基金の額(うち国庫補助金相当額) | 11基金、基金の20年度末造成額純計5億7720万余円(4億8989万余円) 29基金、解散時等に保有していた運用益計2億7384万余円(1億2394万余円) |
要求した改善の処置の概要 | 農林水産省は、農業移住者等の営農の安定に必要な資金等の調達を円滑にするため、農業移住者等を資金面で援護しようとする者が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証等を社団法人中央農業拓植基金協会等に行わせる海外農業移住交流事業を、国庫補助事業により実施している。本事業の一環として社団法人中央農業拓植基金協会等が造成した基金の規模が保証需要に対応した適切なものとなっているかなどについて検査したところ、近年、新規の債務保証が行われず、保証債務残高も大きく減少していることなどから、その基金規模が保証需要に比較して著しく過大となっているなどの事態が見受けられた。 したがって、農林水産省において、基金の有効活用を図るために、社団法人中央農業拓植基金協会等の業務の実施状況の把握を早急に行い、今後の海外農業移住交流事業の実施の在り方について、事業の終了も視野に入れて十分に検討するとともに、同協会等が造成した基金のうち、国庫補助金相当額を原則として国庫に返納させることとするなどの処置を講ずる要がある。 |
件名 | (6)緑の雇用担い手対策事業等に要する資金の有効活用について(林野庁長官あて) |
資金設置団体名 | 全国森林組合連合会(1組合) |
資金の名称(設置年度) | 緑の雇用担い手対策資金(平成14年度) |
資金の概要 | 林業就業に意欲のある若者等が林業の担い手として定着していくために必要な研修を実施する経費に充てるため資金を造成するもの |
検査した資金数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 1資金、20年度末資金残高81億9926万余円(同額) |
有効活用されていない資金数、資金の額(うち国庫補助金相当額) | 1資金、20年度末資金残高81億9926万余円(同額) |
要求した改善の処置の概要 | 林野庁は、森林整備に必要な林業労働力の育成・確保及び地域の活性化を図ることなどを目的として、全国森林組合連合会に緑の雇用担い手対策事業等を実施させている。全国森林組合連合会に造成された資金の各年度の資金残高等について検査したところ、毎年度多額の資金残高(20年度末 81億9926万余円)が生じて、滞留した資金が有効活用されず、事業が完了する22年度末においても多額の資金残高が見込まれる事態となっていた。 したがって、林野庁において、22年度の事業の実施に当たり、22年度末に多額の資金残高が生ずることのないよう、21年度末の資金残高及び22年度の資金の使用見込額を的確に把握し、資金需要に見合った国庫補助金を交付するなどして、資金の有効活用を図る要がある。 |
件名 | (7)苗木需給安定基金造成事業により造成された基金の有効活用について(林野庁長官あて) |
基金設置団体名 | 都道府県林業用苗木生産組合等(8公益法人、20組合) |
基金の名称(設置年度) | 苗木需給安定基金(昭和54年度〜59年度) |
基金の概要 | 苗木の円滑な需給を図るため苗木需給安定基金の造成を行うもの |
検査した基金数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 28基金、平成20年度末基金造成総額11億3696万余円(5億6740万余円) |
有効活用されていない基金数、基金の額(うち国庫補助金相当額) | 10基金、20年度末基金造成総額3億5287万余円(1億7640万円) |
要求した改善の処置の概要 | 林野庁は、林業用苗木の計画的な生産の確保と生産調整の円滑な実施を行い、もって計画的な造林の推進に資することを目的として苗木需給安定基金造成事業を、国庫補助事業により実施している。本事業により都道府県林業用苗木生産組合等に造成された基金について検査したところ、近年、調整交付金の交付実績が低調で、長期間にわたり財政資金が効果を発現することなく滞留して有効活用されていない事態が見受けられた。 したがって、林野庁において、基金の在り方を検討するための基準等を策定して、これを道県及び苗木生産組合等に示し、事業継続の妥当性や造成した基金を国庫に返還することの要否を検討させるとともに、本件事業の実施状況の把握に努め、その状況に応じて的確な指導を行うなどして、基金の有効活用を図る要がある。 |
合計
資金等設置団体の数 | 49公益法人、21組合、102任意団体 |
資金等の設置年度 | 昭和34年度〜平成19年度 |
検査した資金等の数、検査対象金額(うち国庫補助金相当額) | 195資金等及び31資金等の運用益、617億5584万余円(606億0577万余円) |
上記のうち有効活用されていない資金等の額(うち国庫補助金相当額) | 375億2503万余円(353億3737万余円) |
本院が農林水産大臣及び林野庁長官に対して改善の処置を要求した全文は、次のとおりである。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴省は、農地・水・環境保全向上対策実施要綱(平成19年18農振第1777号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、地域において農地・水・環境の良好な保全とその質的向上を図ることを通じて地域の振興に資するために、地域ぐるみでの効果の高い共同活動と農業者ぐるみでの先進的な営農活動を一体的かつ総合的に支援する農地・水・環境保全向上対策を、平成19年度から23年度までの5年間を実施期間として、国庫補助事業により実施している。
本対策は、農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)に基づく農用地区域内に存する一団の農用地において、地域ぐるみでの効果の高い共同活動に取り組む組織(以下「活動組織」という。)に対する共同活動支援交付金の交付、先進的な営農活動に取り組む活動組織に対する営農活動支援交付金の交付等をその内容とするものである。
そして、本対策の実施主体としては、原則一以上の市町村の全域をその区域として、都道府県、関係市町村、農業者団体、非営利団体等を構成員とする地域協議会を設置し、この地域協議会が、本対策の趣旨に沿って事業計画を作成の上、事業計画に基づき共同活動支援交付金及び営農活動支援交付金(以下「共同活動支援交付金等」という。)を活動組織に交付するなどして、本対策の円滑な推進に取り組むこととなっている。
貴省は、地域協議会が、活動組織の代表者と共同活動支援交付金の算定の対象となる農用地(以下「共同活動農用地」という。)が存する市町村長等との間で締結された協定に基づき、共同活動農用地において5年間以上継続して用排水路の清掃、景観形成のための活動等の共同活動を行う活動組織に対して交付金を交付するのに必要な経費に充てるための資金(以下「共同活動資金」という。)を積み立てる場合、これに必要な経費について、地域協議会に対して共同活動支援交付金を交付している。
なお、活動組織に対する共同活動支援交付金の交付額は、協定に位置付けられている共同活動農用地について地目及び区分ごとの交付単価に、それぞれ該当する共同活動農用地の面積を乗じて得た金額の合計とすることなどとなっている。
営農活動支援交付金の算定の対象となる農用地(以下「営農活動農用地」という。)は、環境保全を重視した農業生産の推進等により地域環境の保全を図ることを内容とした計画が策定されている地域内に存する農用地であって、活動組織が共同活動支援交付金の対象となる活動を実施する農用地区域内の農用地とされている。
そして、貴省は、地域協議会が、営農活動農用地において、共同活動支援交付金に係る前記の協定に定められた取組に加えて、化学肥料及び化学合成農薬の使用を大幅に低減するなどの先進的な取組を行う活動組織に対して交付金を交付するため必要な経費に充てるための資金(以下「営農活動資金」という。)を積み立てる場合、これに必要な経費について、地域協議会に対して営農活動支援交付金を交付している。
なお、活動組織に対する営農活動支援交付金の交付額は、作物ごとの営農活動支援交付金の交付単価に、それぞれ該当する営農活動農用地のうち先進的な取組の実施面積を乗じて得た額の合計額とすることなどとなっている。
地域協議会は、共同活動支援交付金等の採択を受けようとする活動組織が作成した採択申請書等を審査の上、採択を決定して、採択通知書を交付し、共同活動又は営農活動を実施する活動組織が申請した交付申請に基づき、活動組織に共同活動支援交付金等を交付している。
そして、地域協議会は、予見できない資金需要の増大により年度途中で資金不足が生ずる事態を防ぐために、貴省から交付を受けた共同活動支援交付金等によりあらかじめ資金を積み立てて、毎年度、積み立てた共同活動資金又は営農活動資金の収支をそれぞれ取りまとめた資金管理状況報告書を作成して、地方農政局長等に提出するほか、23年度末に残額が生じたときは当該残額を国に返還することとなっている。
また、活動組織についても同様の手続を地域協議会に対して行い、23年度末に残額が生じたときは当該残額を地域協議会に返還することとなっている。
(参考図) 共同活動支援交付金等の概要
本院は、有効性等の観点から、地域協議会が積み立てた共同活動資金及び営農活動資金(以下「共同活動資金等」という。)の資金残高はどのような状況になっているか、活動組織における共同活動支援交付金等の繰越額の使途が明らかなものとなっているかなどに着眼して検査した。
本院は、貴省及び24道県(注) 内において、56地域協議会に交付された共同活動支援交付金計319億3132万余円(19、20両年度計)、51地域協議会(19年度)又は50地域協議会(20年度)、純計53地域協議会に交付された営農活動支援交付金計35億3973万余円(19、20両年度計)、合計354億7106万余円を対象として、資金管理状況報告書等の関係書類を実地に確認するなどして会計実地検査を行うとともに、実施主体である56地域協議会に対して関係書類の提出を求めて検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は、19、20両年度に、活動組織に加入の意向を示している農業者の農用地面積に、年度途中から新たに活動組織に加入する農業者が現れる場合に備えて、新規に加入することが想定される農業者の農用地面積を加算するなどした共同活動農用地面積に基づき、割当内示額を地域協議会に示している。そして、地域協議会は、この割当内示額に基づき共同活動支援交付金の交付申請を行い、交付された共同活動支援交付金を県費補助金等と合わせて活動組織に交付するなどしている。
前記の56地域協議会が共同活動支援交付金を交付した活動組織は、19年度9,914活動組織、20年度10,967活動組織であり、これらの活動組織に係る協定に位置付けられている共同活動農用地の面積は、19年度計659,132ha、20年度計807,904haとなっている。そして、共同活動資金の収支状況は表1
のとおりとなっており、共同活動資金残高は19年度末において計44億7627万余円(全額国費)であったが、20年度末において28億7401万余円(全額国費)増加して、計73億5028万余円(全額国費)となっている。
区分 | 平成19年度 | 20年度 | 計 | ||
割当内示額 (交付対象地域協議会数) |
16,015,979 (56) |
15,915,344 (56) |
31,931,323 | ||
国から交付された共同活動支援交付金 | 16,015,979 | 15,915,344 | 31,931,323 | ||
うち活動組織への交付額 | A | 11,543,310 | 13,063,987 | 24,607,297 | |
県費補助金等 | B | 11,542,003 | 13,063,927 | 24,605,931 | |
活動組織への交付額 (交付対象活動組織数) |
A+B | 23,085,313 (9,914) |
26,127,914 (10,967) |
49,213,228 | |
共同活動資金残高 (交付対象地域協議会数) |
4,476,272 (56) |
7,350,285 (56) |
\ |
19、20両年度において56地域協議会から共同活動支援交付金の交付を受けた9,905活動組織は、共同活動支援交付金から活動経費を支出するなどした結果、各年度末において、地域協議会から交付された共同活動支援交付金の一部を繰り越すなどしていた。そして、上記9,905活動組織のうち4,885活動組織においては、表2 のとおり、19年度末において計13億0659万余円(うち国費相当額6億5329万余円)であった繰越額は、20年度末において10億8411万余円(うち国費相当額5億4205万余円増加して、計23億9070万余円(うち国費相当額11億9535万余円)となっている。
区分 | 平成19年度 | 20年度 | 計 | |
共同活動支援交付金の交付額 | 11,018,711 | 11,083,933 | 22,102,645 | |
うち国費 | 5,509,355 | 5,541,966 | 11,051,322 | |
活動経費の支出額 | 9,723,160 | 10,013,964 | 19,737,125 | |
うち国費相当額 | 4,861,580 | 5,006,982 | 9,868,562 | |
共同活動支援交付金の繰越額 | 1,306,590 | 2,390,707 | \ | |
うち国費相当額 | 653,295 | 1,195,353 | \ |
このように、活動組織において繰越額が生じている原因は、対策期間(19年度から活動を実施している活動組織にあっては5年間)内で施設の補修等を実施するとしていることなどから、資金需要には年度ごとに変動があるにもかかわらず、共同活動農用地の面積に応じて一律に共同活動支援交付金が交付されるためである。そして、20年度末において10,967活動組織が保有している共同活動支援交付金の繰越額は計35億4790万余円(うち国費相当額17億7395万余円)となっていたが、当該繰越額の翌年度以降の使途は明確になっていない状況となっている。
貴省は、19、20両年度に、営農活動に参加の意向を示している農業者の農用地面積に、年度途中から新たに営農活動に参加する農業者が現れる場合に備えて、新規に参加することが想定される農業者の農用地面積を加算するなどした営農活動農用地面積に基づき、割当内示額を地域協議会に示している。そして、地域協議会は、この割当内示額に基づき営農活動支援交付金の交付申請を行い、交付された営農活動支援交付金を県費補助金等と合わせて活動組織に交付するなどしている。
前記の53地域協議会が営農活動支援交付金を交付した活動組織は19年度1,167活動組織、20年度1,458活動組織であり、これらの活動組織に係る協定に位置付けられている営農活動農用地の面積は19年度計25,678ha、20年度計36,441haとなっている。そして、営農活動資金の収支状況は表3
のとおりとなっており、営農活動資金残高は19年度末において計7億8097万余円(全額国費)であったが、20年度末において6億8845万余円(全額国費)増加して、計14億6942万余円(全額国費)となっている。
表3 地域協議会における営農活動資金の収支状況
区分 | 平成19年度 | 20年度 | 計 | ||
割当内示額 (交付対象地域協議会数) |
1,641,462 (51) |
1,898,276 (50) |
3,539,738 | ||
国から交付された営農活動支援交付金 | 1,641,462 | 1,898,276 | 3,539,738 | ||
うち活動組織への交付額 | A | 860,647 | 1,217,026 | 2,077,673 | |
県費補助金等 | B | 860,647 | 1,210,321 | 2,070,969 | |
活動組織への交付額 (交付対象活動組織数) |
A+B | 1,721,294 (1,167) |
2,427,348 (1,458) |
4,148,642 | |
営農活動資金残高 (交付対象地域協議会数) |
780,979 (51) |
1,469,429 (53) |
\ |
以上のとおり、20年度末における共同活動資金残高は73億5028万余円(全額国費、19、20両年度に国から交付された共同活動支援交付金の合計額の23.0%)、営農活動資金残高は14億6942万余円(全額国費、19、20両年度に国から交付された営農活動支援交付金の合計額の41.5%)、共同活動支援交付金の繰越額は35億4790万余円(うち国費相当額17億7395万余円、19、20両年度に国から交付された共同活動支援交付金の合計額の5.5%)、合計123億6762万余円(国費相当額105億9366万余円、19、20両年度に国から 交付された共同活動支援交付金等の合計額の29.8%)となっている。
上記のように、貴省が地域協議会に交付する共同活動支援交付金等について、毎年度、地域協議会において多額の資金残高が生じていて、その資金残高が20年度末には19年度末より大幅に増加していたり、活動組織に多額の共同活動支援交付金の繰越額が生じているにもかかわらず、その使途が明確になっていなかったりしている事態は適切ではなく改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。
ア 地域協議会に対する割当内示額が、その年度に活動組織に加入の意向等を示している農業者だけではなく年度途中から新たに活動組織に加入する農業者が現れる場合を考慮して算定されていることなどから、実際の共同活動又は営農活動に見合ったものとなっておらず、そのため、割当内示額に基づき交付される共同活動支援交付金等の額と実際の使用額との間に開差が生じているにもかかわらず、共同活動資金等に多額の年度末残高が生じた場合及び活動組織に多額の繰越額が生じた場合の取扱いを明確に定めていないこと
イ 地域協議会及び活動組織において、それぞれ毎年度多額の資金残高及び繰越額が生じていることを把握しているものの、これらは23年度末に国に返還することとされていることから、地域協議会に積み立てられた資金を有効活用すること及び活動組織の保有する繰越額の使途について透明性の確保を図ることについての認識が十分でなかったこと
貴省は、本対策を23年度まで実施することとしており、引き続き多額の共同活動支援交付金等を地域協議会に交付することとしているが、現下の厳しい国の財政事情及び予算執行の透明性が一層強く求められている状況にかんがみると、地域協議会に生じた多額の資金残高の有効活用を図ることや、活動組織に生じた多額の繰越額の使途についてその透明性を十分確保することが必要である。
ついては、貴省において、共同活動資金等に多額の年度末残高が生じた場合及び活動組織に多額の繰越額が生じた場合の取扱いを早急に定めて、地域協議会からその資金残高の一部を国庫に返還させるなどして資金の有効活用を図るとともに、活動組織に繰越額の使途を明確化させるなどしてその透明性を十分確保するよう改善の処置を要求する。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴省は、近年の大規模かつ国際的な緊急食糧支援の需要の高まりに対して、緊急食糧支援の着実な実施を図り、もって我が国及び国際経済社会の健全な発展に資することを目的として緊急食糧支援事業を実施している。そして、緊急食糧支援事業実施要綱(平成10年10食糧業第586号(貿易)農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)に基づき、社団法人国際農林業協働協会(平成16年3月31日以前は社団法人国際農業交流・食糧支援基金。16年4月1日から19年3月31日までは社団法人国際農林業協力・交流協会。以下「協会」という。)を緊急食糧支援事業の実施主体として指定している。
上記の緊急食糧支援事業は、我が国が行う食糧支援事業の一つであり、食料安定供給特別会計(18年度以前は食糧管理特別会計。以下「特別会計」という。)に属する政府所有米穀を協会を通じて被援助国等へ貸し付け、協会を通じて被援助国等から米穀による返還又は金銭の償還により返済を受けるものである。
貴省は、緊急食糧支援事業費補助金交付要綱(平成10年10食糧業第587号(貿易)農林水産事務次官依命通知)に基づき、協会に対して、協会が行う緊急食糧支援事業の実施に必要な経費を対象として、一般会計から緊急食糧支援事業費補助金(以下「国庫補助金」という。)を交付している。
補助対象事業は、協会が実施する基金造成事業、差額補填(てん)資金造成事業、管理運営事業等であり、これら事業の内容は次のとおりである。
ア 基金造成事業
この事業は、緊急食糧支援事業を着実かつ円滑に実施するために基金の造成を行うものである。
イ 差額補填資金造成事業
被援助国等へ貸し付けた米穀が金銭の償還により返済される場合は、償還金額は償還時における外国産米の国際価格を基準として算出されるが、通常、外国産米の国際価格は国内産米の価格より低額であることなどから、貸し付けたときの特別会計に属する政府所有米穀の評価額を下回ることが想定される。
この事業は、貸し付けた米穀が金銭の償還により返済される場合に特別会計に損失を発生させないために、将来発生すると見込まれる損失を貸付期間内で平準化するための資金(以下「差額補填(てん)資金」という。)の造成を行うものである。
ウ 管理運営事業
この事業は、緊急食糧支援を着実かつ円滑に実施するために、協会に米穀の主要輸出国の価格・需給状況調査等の各種調査及び緊急食糧支援事業の管理運営に必要な業務を行わせるものである。
緊急食糧支援事業における国庫補助金等の流れを示すと、図1のとおりである。
図1 緊急食糧支援事業における国庫補助金等の流れ(概念図)
ア インドネシア共和国に対する緊急食糧支援に係る差額補填資金
貴省は、10年6月及び12月に協会と米穀貸付けに関する契約を締結して、インドネシア共和国に協会を通じて国内産米42万t、外国産米28万t、計70万tを貸付期間30年(据置期間10年)として貸し付けている。貸付時の米穀1t当たりの評価額は、国内産米が179,000円、外国産米が84,000円となっており、その評価総額は987億円となっている。
そして、インドネシア共和国が金銭の償還による返済を行う場合は、償還時の米穀の国際価格(タイ国貿易取引委員会が公表するタイ国産砕米10%混入うるち精米1t当たりのFOB価格(注)
を指標とする。以下同じ。)に為替レート(東京外国為替市場における対顧客直物取引の対ドル電信相場の仲値)を乗ずるなどした円建価格により償還するものとされている。
このため、貴省は、貸付時の米穀1t当たりの国際価格及び為替レートに基づき、インドネシア共和国が金銭の償還による返済を行う場合の米穀1t当たりの価格を 32,000円として、償還総額を224億円と想定している。
そして、このように想定した場合、貸付米穀がすべて金銭の償還により返済されたと すると特別会計の損失額が763億円となることから、貴省は、この損失額を貸付期間の30年で除することにより平準化して、毎年度25億4333万余円の資金を造成することが必要であるとしている。
イ WFPに対する緊急食糧支援に係る差額補填資金
貴省は、12年12月に協会と米穀貸付けに関する契約を締結して、12、13両年度に国際連合世界食糧計画(以下「WFP」という。)に協会を通じて国内産米計50万tを、上記インドネシア共和国と同様に貸付期間30年(据置期間10年)として貸し付けている。貸付時の国内産米1t当たりの評価額は224,574円となっており、その評価総額は1122億8700万円となっている。
そして、WFPが金銭の償還による返済を行う場合は、貸付時の米穀の国際価格に為替レート(東京外国為替市場における対顧客直物取引の対ドル電信相場の買値)を乗じた円建価格により償還するものとされている。また、このWFPに対する緊急食糧支援を行った初年度である12年度に、我が国の外務省は、WFPに貸し付ける米穀50万tがすべて金銭の償還により返済される場合に必要になると見込まれる額と同額の無償資金援助をWFPに対して行っている。
このため、貴省は、貸付時の米穀1t当たりの国際価格及び外務省が無償資金援助時に適用した支出官レート(平成12年12月28日大蔵省告示第455号)に基づき、WFPが金銭の償還による返済を行う場合の米穀1t当たりの価格を22,684円として、償還総額を113億4200万円と想定している。
そして、このように想定した場合、貸付米穀がすべて金銭の償還により返済されたとすると特別会計の損失額が1009億4500万円となることから、貴省は、この損失額を貸付期間の30年で除することにより平準化して、毎年度33億6483万余円の資金を造成することが必要であるとしている。
実施要綱等によると、協会が行う基金及び差額補填資金の管理方法及び使途については、次のとおりとされている。
〔1〕 基金及び差額補填資金は、銀行等の金融機関への預金、地方債等の有価証券の取得等の方法により管理する。
〔2〕 基金及び差額補填資金の運用により生じた利益(以下「運用益」という。)は、管理運営事業に要する経費(以下「管理運営経費」という。)に充当できるものとして、その充当に当たっては、基金から生じた運用益、差額補填資金から生じた運用益の順に行う。
本院は、有効性等の観点から、運用益は有効に活用されているかなどに着眼して、貴省及び協会において、運用益を管理運営経費に充当した後の残余額(以下「運用益残額」という。)27億5248万余円(20年度末現在)等を対象として、協会の財務書類等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、貴省は、10年度に協会に対して国庫補助金を交付して、13億円の基金を造成させている。また、前記の貸付米穀の償還についての想定に基づき、11年度以降40年度までの予定で毎年度25億4333万余円のインドネシア共和国に対する緊急食糧支援に係る差額補填資金を、また、13年度以降42年度までの予定で毎年度33億6483万余円のWFPに対する緊急食糧支援に係る差額補填資金を、それぞれ国庫補助金により造成させており、このようにして協会に造成させた差額補填資金の総額は19年度末で464億4384万余円、20年度末で523億5201万円となっている。
協会は、基金及び差額補填資金を地方債の購入や利付国債の購入等により運用しており、その運用益は、19年度4億4432万余円、20年度5億4454万余円となっている。この運用益は、前記のとおり、基金から生じた運用益、差額補填資金から生じた運用益の順に管理運営経費に充当できるものとされているが、協会が運用益から管理運営経費に充当した額は、19年度1400万余円(基金から生じた運用益710万円、差額補填資金から生じた運用益690万余円)、20年度1475万余円(同710万円、同765万余円)であり、差引き19年度4億3032万余円、20年度5億2978万余円の運用益残額が生じている。そして、協会は、この運 用益残額を基金及び差額補填資金とは別に保有している。
しかし、貴省は、実施要綱等において、運用益残額は事業終了時に国庫に返納すると定めているものの、事業終了までの間の運用益残額の処理方法は定めていない。このため、運用益残額は年々増加していて、20年度末で27億5248万余円に上っている。
20年度における資金等の流れの概要を示すと、図2のとおりである。
図2 資金等の流れの概要(平成20年度)
上記のように、多額の運用益残額が協会に保有されていて有効活用されていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、運用益残額を有効活用することについての配慮が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省は、緊急食糧支援事業の実施主体として協会を指定し、今後も引き続き協会に国庫補助金を原資とした差額補填資金を造成させることとしているが、現下の厳しい国の財政事情にかんがみると、国庫補助金から生じた運用益残額を有効に活用することが必要である。
ついては、貴省において、実施要綱の改正等を行い、原則として運用益残額を国庫に返還させるなどして運用益残額の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴省は、米政策改革大綱(平成14年農林水産省省議決定)等に基づき、需要に即応した米づくりの推進を通じて水田農業経営の安定と発展を図るために、16年度から水田農業構造改革対策を実施している。そして、この対策の一環として、水田農業構造改革対策実施要綱(平成16年15生産第7999号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)等に基づき、16年度から18年度までの間に、水田の利活用の促進と多面的機能の発揮等を図るなどのために、産地づくり対策等の諸施策を実施している。
上記の諸施策のうち産地づくり対策は、実施期間中安定した一定の資金を交付することにより水田農業の産地づくりを進めるために行われるものであり、貴省は、毎年度、任意団体である都道府県水田農業推進協議会(以下「県協議会」という。)に対して一定額の水田農業構造改革交付金(以下「交付金」という。)を交付している。
交付金の交付を受けた県協議会は、資金の造成(資金造成事業)を行い、市町村の区域を基本に設置された地域水田農業推進協議会(以下「地域協議会」という。)に対して助成金を交付(地域協議会助成事業及び特別調整促進加算助成事業)している。また、地域協議会は、営農計画書を提出するなどして米の生産調整を実施した農業者や生産集団等(以下、これらを合わせて「農業者等」という。)に対して助成金を交付(産地づくり事業及び特別調整促進加算助成事業)している。
交付金等の流れを示すと、次図のとおりである。
図 交付金の流れ(概念図)
交付金の交付に当たって、貴省は、県協議会ごとの予算の配分額どおりに県協議会に対して交付金を交付している。そして、県協議会は、地域協議会に対して、地域協議会が農業者等に交付する助成金の額と同額の助成金を交付している。
貴省は、19年3月及び21年4月に実施要綱等を改正して、水田農業構造改革対策の実施期間を5年間延長して、16年度から23年度までの8年間としている。そして、これまでに産地づくり対策として実施してきた資金造成事業等を23年度まで引き続き実施することとしている。
実施要綱によると、県協議会は、造成した資金から地域協議会を通じて実施期間中の各年度において農業者等に対して助成金として交付した額を差し引いた残りの資金(以下「余剰資金」という。)を、それぞれ翌年度に繰り越すこととなっている。また、県協議会が地域協議会に助成金を交付する地域協議会助成事業及び特別調整促進加算助成事業を行わなくなった場合は、資金造成事業により造成した資金のうち未使用となっている資金(以下「残余資金」という。)があるときは、貴省はこれを国庫に返還するよう命ずることができることとなっている。
本院は、有効性等の観点から、県協議会が造成している資金は有効に活用されているかなどに着眼して、貴省及び26県協議会(注) において、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、会計実地検査を行わなかった20県協議会についても実績報告書等の書類の提出を受けるなどして、貴省から46県協議会に交付された16年度から18年度までの交付金計4358億7341万余円から生じた残余資金計52億3616万余円について検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は16年8月頃に開催したブロック会議等において、産地づくり対策の当時の終了年度である18年度に余剰資金が生じた場合は、余剰資金を19年度に繰り越した後に、この資金を残余資金として国庫に返還させる旨を県協議会に対して説明していた。
46県協議会は、16年度から18年度までの間に、前記のとおり、貴省から交付金計4358億7341万余円の交付を受けて資金造成事業として資金の造成を行い、地域協議会助成事業分計4211億6506万余円、特別調整促進加算助成事業分計92億6012万余円を助成金として地域協議会に交付するなどしており、余剰資金計52億2397万余円を19年度に繰り越した。そして、貴省は、この資金を残余資金として国庫に返還させる予定としていた。
その後、貴省は、19年7月に県協議会に対して残余資金の返還手続等の準備を進めるよう依頼していたが、19年産米の生産調整未達成等の影響により、19年産米価が大幅に下落して緊急の農家支援対策の検討等を行う必要が生じたため、この支援策の財源として県協議会が保有している上記の残余資金を活用することを想定して、残余資金の国庫への返還を一時凍結することとした。
しかし、貴省は、上記の支援策として、19年度の補正予算(20年2月成立)等により農業協同組合等から19年産米を34万t買い入れるなどの措置を執ることとし、残余資金を活用しなかった。そして、この支援策の効果は十分発現されるか否かが不明であるとして、20年度以降の追加支援策を策定した場合の財源として改めて残余資金を活用することを想定し、残余資金を当分の間国庫へ返還させないこととした。
この結果、46県協議会は残余資金を活用することなく保有することとなり、その額は地域協議会が誤って農業者等に交付した額の返還等があった結果、計52億3616万余円(20年11月30日現在)に達していた。
貴省は、前記のとおり、いったん県協議会に対して残余資金の返還手続等の準備を進めるよう依頼していたものの、その後米価下落対策の財源として残余資金を活用することを想定して、これを県協議会に保有させており、残余資金が滞留していた。
その後、貴省は、本院の検査の結果を受けて、県協議会が保有している残余資金計52億3616万余円を21年度の水田農業構造改革対策の財源に充当することとした。そして、21年度の交付金の予算額は、21年度に必要と見込まれた額から残余資金の額と同額を減額した額となっている。
上記のとおり、貴省は、実施要綱において、残余資金があるときは国庫に返還するよう命ずることができると定めているものの、残余資金が生じた場合の国庫返還の要否等について具体的な取扱方法を定めておらず、残余資金を県協議会に保有させていたり、21年度の水田農業構造改革対策の財源に充当したりしていた。このように、多額の残余資金を県協議会に保有させて有効活用していなかったり、残余資金の具体的な取扱方法を定めておらずその透明性を十分確保していなかったりしている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、残余資金の有効活用を図ることや、残余資金の取扱いの透明性を確保することについての配慮が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省は、水田農業構造改革対策を23年度まで引き続き実施することとしているが、現下の厳しい国の財政事情及び予算執行の透明性が一層強く求められている状況にかんがみると、国の交付金から生じた残余資金の有効活用を図ることや、残余資金の取扱いについて透明性を十分確保することが必要である。
ついては、貴省において、実施要綱の改正等を行い、今後、国の交付金から残余資金が生じた場合は、原則として国庫に返還させるなどして残余資金の有効活用を図るとともに、残余資金の取扱いについて透明性を十分確保するよう改善の処置を要求する。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴省は、果実等生産出荷安定対策実施要綱(平成13年12生産第2774号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要綱」という。)に基づき、平成19年度以降、果実需給安定対策、果樹経営支援対策、果実流通加工等対策(以下、これらを合わせて「果樹対策」という。)等を実施している。そして、果樹対策の一環として、実施要綱等に基づき、財団法人中央果実生産出荷安定基金協会(昭和47年9月設立。50年8月31日以前は財団法人中央加工原料用果実価格安定基金協会。以下「中央協会」という。)に、果実の計画的生産等を行う果実計画生産推進事業等に要する経費に充てるための果樹対策資金を造成させて、この造成に要する経費に対して国庫補助金を交付している。
中央協会は、果樹対策資金により、都道府県の区域内において果樹対策に関する業務等を行うもの(以下「都道府県法人」という。)に対して補助金を交付している。また、都道府県法人は、果実計画生産推進事業等を実施した指定果実出荷事業者に対して補給金を交付するなどしている。
国庫補助金等の流れを示すと、次図のとおりである。
図 国庫補助金の流れ(概念図)
実施要綱等によると、果樹対策資金の管理及びその運用により生じた利益(以下「運用益」という。)の使途については、次のとおりとなっている。
ア 果樹対策資金は、銀行等の金融機関への預金、地方債等の有価証券の取得等の方法により管理する。
イ 果樹対策資金の運用益は、同資金に繰り入れるほか、貴省生産局長が特に必要と認める事業(以下「特別事業」という。)に要する経費若しくは管理費に充て、又は事業資金剰余積立金として積み立てる。
ウ 事業資金剰余積立金は、特別事業に要する経費又は管理費に充てることができる。
貴省は、昭和47年に加工原料用果実価格安定対策事業実施要領(昭和47年47蚕園第2168号農林事務次官依命通達)を制定した後、数次の改定を行い、平成19年度以降は前記の実施要綱等に基づいて果樹対策を実施しており、実施要綱等の改定に伴い、中央協会が国庫補助金により造成した資金及び当該資金の運用益の一部を積み立てた積立金の名称等を見直していて、見直し前の資金等はその後の資金等に引き継がれている。
そして、資金については18年度以降は果樹対策資金に、積立金については13年度以降は事業資金剰余積立金にそれぞれ一本化されている(以下、昭和47年度以降に中央協会が国庫補助金により造成した資金をすべて「果樹対策資金」といい、中央協会が造成した資金の運用益の一部を49年度以降に積み立てた積立金をすべて「剰余積立金」という。)。
本院は、有効性等の観点から、剰余積立金は有効に活用されているかなどに着眼して、貴省及び中央協会において、剰余積立金77億6556万余円(平成20年度末現在)を対象として、中央協会の財務書類等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は、昭和47年度から平成17年度までの34年間に中央協会に対して、果樹対策資金の造成に要する経費として、国庫補助金計1596億4215万余円を交付している。
そして、中央協会は、この国庫補助金を原資として果樹対策資金を造成して、昭和47年度から平成20年度までの37年間に、同資金から都道府県法人等に補助金計1562億9678万余円を交付したり、都道府県法人等から補助金の精算により受け入れた返還金計46億1459万余円を同資金に繰り入れたりなどしていて、同資金の残高は20年度末で140億4186万余円となっている。
また、中央協会は、果樹対策資金のうち当面使用することのない資金を地方債等の有価証券等により運用しており、その20年度までの運用益計175億4112万余円を、剰余積立金に計77億6556万余円積み立てたり、果樹対策資金に計60億8217万余円繰り入れたり、特別事業に要する経費に計35億8231万余円使用したりなどしている。このうち、剰余積立金は、昭和49年度以降、果樹対策資金の運用益の一部が毎年度積み立てられていて、中央協会が剰余積立金を特別事業に要する経費や管理費に全く使用していないことから年度末残高が年々増加しており、平成20年度末においては上記のとおり77億6556万余円に達している。
実施要綱等によると、前記のとおり、剰余積立金の使途については定められているものの、剰余積立金から生じた運用益の使途については定められていない。このため、中央協会は、剰余積立金の全額を地方債等の有価証券等により運用し、この運用益を他の資金の運用益と合わせて経理処理していて、過去の剰余積立金の運用益の額及びその使途を把握することはできないとしている。
上記のように、多額の剰余積立金が中央協会に保有されたまま有効活用されていなかったり、剰余積立金の運用益に係る取扱方法が定められておらずその取扱いについて透明性が十分確保されていなかったりしている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、剰余積立金の有効活用を図ることや、剰余積立金の運用益の取扱いの透明性を確保することについての配慮が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省は、今後も果樹対策を引き続き実施することとしているが、現下の厳しい国の財政事情及び予算執行の透明性が一層強く求められている状況にかんがみると、国庫補助金から生じた剰余積立金の有効活用を図ることや、剰余積立金の運用益の取扱いについて透明性を十分確保することが必要である。
ついては、貴省において、実施要綱の改正等を行い、原則として剰余積立金を国庫に返還させるなどして剰余積立金の有効活用を図るとともに、剰余積立金の運用益が生じた場合の取扱いについて透明性を十分確保するよう改善の処置を要求する。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴省は、農業拓植基金協会設立運営指導要綱(昭和34年34振第5823号農林事務次官依命通達)等に基づき、海外に移住する農業者等(以下「農業移住者等」という。)の営農の安定に必要な資金等の調達を円滑にするため、農業移住者等を資金面で援護しようとする者(以下「援護者」という。)が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証等を、財団法人である都道府県農業拓植基金協会(以下「地方基金協会」という。)及び社団法人中央農業拓植基金協会(以下「中央基金協会」という。)に行わせ、もって海外農業移住交流事業の推進を図ることとしている。
そして、貴省は、農業拓植基金補助金交付要綱(昭和34年34振第6141号農林事務次官通達)に基づき、都道府県が地方基金協会の基金造成のために行う補助に要する経費及び中央基金協会の業務運営に必要な経費を対象として、予算の範囲内において、都道府県及び中央基金協会に補助金を交付するものとしている。なお、補助率は、都道府県が地方基金協会に対してその基金造成に必要な資金を補助するのに要する経費については1/2以内、中央基金協会が地方基金協会の保証債務の保証業務等を行うのに必要な経費については定額となっている。
地方基金協会は、援護者が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証を行うものとされており、保証債務の弁済に充てるべき資産は都道府県の補助金等により事業規模に応じて必要な額の基金を基本財産として造成するものとされている。また、基本財産の運用益は、普通財産として地方基金協会の経費に支弁するものとされている。
そして、毎事業年度、運用益を生じたときは繰越損失をてん補して、なお残余があるときは準備金として積み立て、損失を生じたときは準備金をもっててん補して、なお不足があるときは翌事業年度に繰り越すものとされている。さらに、準備金は、損失のてん補に充て又は基本財産に繰り入れるほか、これを取り崩してはならないものとされている。
(参考図) 地方基金協会等の資産の概要
地方基金協会は、昭和34年度に15地方基金協会が設立され、農業移住者等の移住の状況に応じて逐次拡大されて、47年度には38地方基金協会に増加した。そして、貴省はこれらの地方基金協会に補助金を交付する38道県に対して、34年度から51年度までの間に計3億4950万円の国庫補助金を交付している。また、38地方基金協会は、いずれも中央基金協会の会員となっており、造成した基金から計1億7520万円を中央基金協会に出資している。
その後、我が国の経済発展や国際社会の情勢の変化に伴い、農業移住者等が減少してきていることなどから、貴省は、平成8年1月に、地方農業拓植基金協会の取扱いについて(平成8年農林水産省構造改善局農政部地域振興課)を発して、今後、地方基金協会の取扱いについては、保証債務制度の存続を基本とするが、やむを得ず地方基金協会の業務を他の類似団体に統合させる場合には、基金の財産が債務保証業務に適正に使用されるように区分経理を行うことなどが必要であるとした。
しかし、新規の保証業務が低迷するなどしたために、前記38地方基金協会のうち29地方基金協会等(解散した地方基金協会の業務を移管した団体を含む。)が11年度から19年度までの間に解散するなどして、その業務を中央基金協会に移管するとともに、国庫補助金相当額計2億7450万円を中央基金協会に引き継ぐなどしている。また、残りの9地方基金協会のうち5地方基金協会は、7年度から12年度までの間に解散しており、それぞれその業務を当該県内の他の関連団体に移管したとしている(以下、関連団体を含めて「9地方基金協会等」という。)。
中央基金協会は、昭和35年2月に設立され、①地方基金協会等が金融機関に対して負担する保証債務の保証(以下「再保証」という。)、②地方基金協会等の設立されていない都道府県出身の農業移住者等の援助者が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証(以下「直接保証」という。)及び③移住地の団体を援助しようとする中央の農業団体の金融機関に対する債務の保証(以下「特別保証」という。)を行うものとされている。そして、保証債務の弁済に充てるべき資産として、補助金、地方基金協会その他の会員の出資金等をもって事業規模に応じた必要な額の基金を造成するものとされている。
貴省は、中央基金協会に対して、39年度から44年度までの間に計1億4700万円の国庫補助金を交付している。そして、中央基金協会は、これらの国庫補助金等により直接保証のための基金(平成20年度末基金造成額3億2180万円、国庫補助金相当額3億2150万円)を、また、9地方基金協会等から出資金を受け入れるなどして再保証のための基金(同3760万円、同1654万余円)をそれぞれ造成して、これらの基金を一般会計として経理している。さらに、中央基金協会は、国庫補助金により特別保証のための基金(20年度末基金造成額1億円、全額国庫補助金)を造成して、これを特別会計として経理している。
(参考図) 債務保証業務の概要
本院は、有効性等の観点から、地方基金協会等及び中央基金協会が造成した基金の規保証需要に対応した適切なものとなっているか、また、地方基金協会等が解散時等において保有していた基金及びその運用益の関連団体等への引継ぎは適切に行われているかなどに着眼して検査した。
そして、9地方基金協会等のうち20年度に保証業務を行っている8地方基金協会等(注1)
及び中央基金協会が造成した基金並びに29地方基金協会等(注2)
が解散時等に保有していた基本財産及び普通財産計11億9434万余円(国庫補助金相当額6億1383万余円、表1
参照)を対象と して、これらの協会等が設立時以降に行った保証業務の状況等について検査した。
平成20年度に保証業務を行っている8地方基金協会等及び中央基金協会が造成した11基金 |
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29地方基金協会等の解散時等の財産 | 基本財産 |
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基本財産に繰り入れられた運用益(G) 118,578 |
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普通財産 | 運用益(I) 155,270 |
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計 | (K)=(D)+(G)+(I) 891,638 |
(L)=(E)+(G)+(I) 617,138 |
(M)=(F)+(H)+(J) 123,943 |
|||||||
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検査に当たっては、貴省、中央基金協会、上記8地方基金協会等のうちの4地方基金協会等(注3) 及びこれらが所在する4県において事業報告書等の書類を実地に確認するなどして会計実地検査を行うとともに、上記8地方基金協会等のうちの残りの4地方基金協会 (注4) 及びこれらが所在する4県並びに29地方基金協会等の解散時等に基本財産等の処分を許可するなどした29道県(注5) に関係書類の提出を求めて検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
昭和34年度から平成20年度までの間に8地方基金協会等が行った保証は計491件(保証債務額計7億8285万余円)となっているが、新規の債務保証は13年度に1件(保証債務額1000万円)行われたのを最後に、14年度以降は行われていない。そして、20年度末において保証の対象となっている5件、計1341万円の借入金の弁済期限は、最長のもので23年度となっている。
また、中央基金協会は、上記の8地方基金協会等が行った債務保証を対象として再保証を行うとともに、別途に直接保証を行っている。そして、昭和34年度から平成20年度までの間に行った直接保証は40件(保証債務額計1億4880万円)となっているが、新規の直接保証は11年度に2件(保証債務額計3600万円)行われたのを最後に、12年度以降は行われていない。そして、20年度末において保証の対象となっている2件、計514万円の借入金の弁済期限は、いずれも21年度となっている。
さらに、中央基金協会は、特別保証として昭和43年度に借入金1億1340万円について債務保証を行い、55年度にその借換資金について債務保証を行っているが、56年度以降は新規の債務保証を行っていない。そして、平成元年度末以降は保証債務残高が0円となっている。
地方基金協会等及び中央基金協会が行う保証の最高限度額は、農業拓植基金協会設立運営指導要綱等に基づき、地方基金協会等については基金造成額の6倍、中央基金協会の再保証については基金造成額の20倍、直接保証については基金造成額の3倍、特別保証については基金造成額の2倍となっている。
そこで、上記に基づき保証の最高限度額を算出して、保証債務残高との比率を算定すると、8地方基金協会等及び中央基金協会の保証等の最高限度額計27億4925万余円に対して、20年度末保証債務等残高は計3196万円であり、その比率は1.1%となっている(表2
参照)。
協会等名 | 基金造成額 | 保証等の最高限度額(A) | 20年度末保証債務等残高(B) | 比率(B)/(A) | |
財団法人秋田県農業拓植基金協会 | 23,900 | 143,400 | 3,600 | 2.5 | |
財団法人栃木県農業拓植基金協会 | 18,620 | 111,720 | 710 | 0.6 | |
財団法人福井県農業拓植基金協会 | 15,100 | 90,600 | 1,600 | 1.7 | |
財団法人山梨県国際交流協会 | 24,647 | 147,884 | — | — | |
財団法人長野県農業拓植基金協会 | 24,436 | 146,618 | 4,500 | 3.0 | |
財団法人徳島県国際交流協会 | 15,000 | 90,000 | — | — | |
財団法人香川県国際交流協会 | 11,006 | 66,036 | — | — | |
財団法人沖縄県国際交流・人材育成財団 | 22,600 | 135,600 | 3,000 | 2.2 | |
8 地方基金協会等計〔1〕 | 155,309 | 931,859 | 13,410 | 1.4 | |
再保証 | 32,600 | 652,000 | 13,410 | 2.0 | |
直接保証 | 321,800 | 965,400 | 5,140 | 0.5 | |
特別保証 | 100,000 | 200,000 | — | — | |
中央基金協会計〔2〕 | 454,400 | 1,817,400 | 18,550 | 1.0 | |
合計〔1〕 +〔2〕 | 609,709 | 2,749,259 | 31,960 | 1.1 |
上記のとおり、8地方基金協会等及び中央基金協会が造成した基金(造成額純計5億7720万余円、国庫補助金相当額4億8989万余円)は、その基金規模が保証需要に比較して著しく過大となっている。
29地方基金協会等が解散時等に保有していた基金計6億1779万円のうち国庫補助金相当額計2億7450万円は、前記のとおり、農業移住者等に係る債務保証業務を移管した中央基金協会に引き継がれている。また、基本財産に繰り入れられた運用益計1億1857万余円及び普通財産として保有していた運用益計1億5527万余円と、基金のうち中央基金協会に引き継がれた国庫補助金相当額を控除した残額である3億4329万円と合わせた計6億1713万余円は、5875万余円が4県に、5億5838万余円が28道県の40関連団体にそれぞれ引き継がれていた。
前記のとおり、運用益は、普通財産として地方基金協会の経費に支弁するものとされている。また、運用益を生じたときは準備金として積み立てて、その準備金を基本財産に繰り入れることができるものとされている。そして、地方基金協会は農業移住者等に係る債務保証業務を行うために設立された団体であるので、運用益は農業移住者等に係る債務保証業務に使用されるものである。
しかし、運用益を引き継いだ4県及び40関連団体は、農業移住者等に係る債務保証業務を行っておらず、当該債務保証業務は中央基金協会に移管されているため、前記の運用益1億1857万余円及び1億5527万余円、計2億7384万余円(国庫補助金に係る運用益相当額1億2394万余円)は、農業移住者等に係る債務保証業務の経費に使用されないことになっていると認められる。
上記のように、8地方基金協会等及び中央基金協会において、近年、新規の債務保証が行われず、保証債務残高も大きく減少していることなどから、その基金規模が保証需要に比較して著しく過大となっている事態や、29地方基金協会等の解散等の後に、運用益が農業移住者等に係る債務保証業務の経費に使用されないことになっている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、近年、海外農業移住を取り巻く状況が大きく変化しているのに、貴省において、8地方基金協会等及び中央基金協会における業務の実施状況の把握とこれに基づく指導監督を十分に行っていなかったこと、また、地方基金協会等の解散時等における運用益についての取扱いを明確に定めていないことや29地方基金協会等の解散時等における運用益の取扱いの状況を十分に把握していなかったことなどによると認められる。
海外農業移住を取り巻く状況が大きく変化しており、地方基金協会等及び中央基金協会において、基金規模が保証需要に比較して著しく過大となっていたり、地方基金協会等の解散等の後に、運用益が農業移住者等に係る債務保証業務に使用されないことになっていたりする事態が見受けられた。
ついては、貴省において、基金の有効活用の十分な確保を図るとともに、国庫補助金に係る運用益相当額の取扱いについて透明性を十分確保するよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 基金の有効活用を図るために、地方基金協会等及び中央基金協会の業務の実施状況の把握を早急に行い、今後の海外農業移住交流事業の実施の在り方について、事業の終了も視野に入れて十分に検討するとともに、地方基金協会等及び中央基金協会が造成した基金のうち、国庫補助金相当額を原則として国庫に返納させること
イ 今後、地方基金協会等が解散することが見込まれていることから、国庫補助金に係る運用益相当額の取扱いについて透明性を十分確保するために、地方基金協会等の解散時等における運用益について、国庫補助金に係るものを国庫に返納させることとするなど、その取扱いを明確に定めて、現在、農業移住者等に係る債務保証業務を行っている地方基金協会等に周知すること
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴庁は、林業生産流通総合対策事業実施要領(平成10年林野政第241号農林水産事務次官依命通知)及び「林業担い手育成確保対策事業の実施について」(平成10年林野組第70号林野庁長官通知)等(以下「要領等」という。)に基づき、森林整備に必要な林業労働力の育成・確保及び地域の活性化を図ることなどを目的として、全国森林組合連合会(以下「全森連」という。)に平成14年度から17年度までの間は緑の雇用担い手育成対策事業を、18年度から22年度までの間は緑の雇用担い手対策事業(以下、両事業を合わせて「緑の雇用事業」という。)を実施させている。
緑の雇用事業は、全森連が森林組合等の林業事業体に助成金を交付して、林業就業を希望する者を対象に、森林・林業に関する専門的知識を習得させるための集合研修及び林業就業に必要な技術・技能を習得させるための実地研修を実施させるとともに、研修生の募集を円滑に行うための就業相談会等を実施するものである。
そして、全森連がこの事業を実施するに当たり、貴庁は、要領等に基づき、全森連に国庫補助金を交付しており、全森連は、緑の雇用事業に要する経費に充てるために、国庫補助金及びその運用益により資金を造成している。
全森連は、要領等により、資金の規模が適正規模となっているかなどの状況を客観的に把握するために、補助金等の交付により造成した基金等に関する基準(平成18年8月閣議決定。以下「基準」という。)等に基づき資金について必要な見直しを行った際に、事業が完了する23年3月末までに使用する見込みがない資金の残余がある場合は、資金の一部又は全額を国に返還することとなっている。
本院は、有効性等の観点から、資金が有効に活用されているかなどに着眼して、貴庁及び全森連において会計実地検査を行い、14年度から20年度までの7年間の資金造成額、支出額、年度末残高等について分析を行うなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴庁から全森連に交付された国庫補助金交付額は、14年度に95億円、16、17両年度に各70億円、18、19両年度に各67億円、20年度に70億9600万円となっている。そして、前年度繰越金に当該年度の国庫補助金や運用益等を加えた資金造成額は、18年度98億4628万余円であったものが、年々増加して20年度には145億0709万余円に達している。
一方、17年度以降の支出額は、森林組合等における研修生の採用実績が予定した人数よりも少なかったことなどから、資金造成額を大幅に下回る金額で推移している。このため、資金残高は、18年度末56億6721万余円、19年度末74億0421万余円、20年度末81億9926万余円と年々増加して、多額の資金残高が生じている状況となっている(表1
参照)。
年度\区分 |
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— 9,156,024 59,446 968,556 3,146,284 5,667,212 7,404,217 |
9,500,000 — 7,000,000 7,000,000 6,700,000 6,700,000 7,096,000 |
— 38 8 0 — 457 6,873 |
9,500,000 9,156,062 7,059,455 7,968,557 9,846,284 12,367,669 14,507,091 |
343,975 9,096,615 6,090,898 4,822,273 4,179,071 4,963,452 6,307,830 |
9,156,024 59,446 968,556 3,146,284 5,667,212 7,404,217 8,199,260 |
96.3 0.6 13.7 39.4 57.5 59.8 56.5 |
貴庁及び全森連は、21年5月に基準に基づく見直し結果を公表している。これによる と、19年度末の資金残高が74億0400万円であるのに対して、「事業が完了するまでに必 要となる補助・補てん額及び管理費(注)
」は、20年度から22年度までの3年間に各年度91億円、計273億円であり、19年度末の資金残高を「事業が完了するまでに必要となる補助・補てん額及び管理費」で除した基金の保有割合は0.3と高くないことから、使用見込みの低い基金等には該当しないとしている。
しかし、研修生の採用予定人数を各年度2,800人とするなどして各年度に必要となる補助・補てん額及び管理費を91億円と見込んでいるものの、20年度の支出額は、研修生の採用実績が2,061人と予定を下回ったことなどにより63億0783万余円となっていて、見込額を27億余円下回っている。
上記のように、貴庁及び全森連が行った資金の見直し結果は、資金の使用見込額を的確に把握したものとはなっておらず、資金残高は21、22両年度も多額のまま推移する見通しとなっている。
本院は、資金に関して20年度末に支出額63億0783万余円を上回る81億9926万余円の資金残高が生じている一方で、21年度に60億円の国庫補助金が交付されていることなどを踏まえて、事業が完了する22年度末における資金残高がどの程度の規模になるかについて試算を行った。試算に当たり、21年度の支出額を21年度の研修生の採用実績等を基に79億8821万円、22年度の支出額を21年度と同額とした。
これによれば、22年度に全森連に対して21年度と同額の60億円の国庫補助金が交付された場合には、交付額の約70%に相当する42億円と多額の資金残高が見込まれる事態となる(表2
参照)。
年度\区分 |
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8,199,260 6,211,503 |
6,000,455 6,000,000 |
— — |
14,199,715 12,211,503 |
7,988,211 7,988,211 |
6,211,503 4,223,291 |
43.7 34.5 |
上記のように、資金に毎年度多額の資金残高が生じて滞留した資金が有効活用されず、事業完了年度末においても多額の資金残高が見込まれる事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴庁において、各年度の資金残高と使用見込額を適切に把握して、資金を滞留させないように国庫補助金を交付していくための検討が十分でなかったことなどによると認められる。
緑の雇用事業は、林業労働力の育成・確保を図る施策の一つとして全森連に対して国庫補助金を交付して実施されてきた。しかし、国庫補助金により造成された資金について毎年度多額の資金残高が生じて、滞留した資金が有効活用されていない事態が見受けられた。
ついては、貴庁において、事業完了年度である22年度の事業の実施に当たり、22年度末に多額の資金残高が生ずることのないよう、21年度末の資金残高及び22年度の資金の使用見込額を的確に把握し、資金需要に見合った国庫補助金を交付するなどして、資金の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
貴庁は、苗木需給安定対策事業実施要領(昭和54年54林野造第81号。昭和55年55林野造第43号により「苗木需給安定基金造成事業実施要領」に改正。以下「実施要領」という。)に基づき、林業用苗木の計画的な生産の確保と生産調整の円滑な実施を行い、もって計画的な造林の推進に資することを目的として、都道府県林業用苗木生産組合又は林業用苗木の需給安定を目的として設立された公益法人(以下「苗木生産組合等」という。)に苗木需給安定基金造成事業(以下「事業」という。)を実施させている。
この事業は、苗木生産組合等において、生産された苗木について出荷調整を図る必要が生じた場合に備えて、国から道県に交付された国庫補助金に道県負担分を合わせて道県から交付された資金により苗木需給安定基金(以下「基金」という。)を造成するものである。
そして、苗木生産組合等は、基金を金融機関への預金又は確実かつ有利な有価証券に換えて管理を行い、取崩しは行わないこととなっている。
また、苗木生産組合等は、基金から生ずる運用益を準備資金として積み立てており、苗木生産者が出荷調整により苗木を廃棄した場合には、この準備資金を取り崩して、当該苗木生産者に出荷調整交付金(以下「調整交付金」という。)として交付することとなっている。
図 苗木需給安定基金造成事業の概要図
実施要領によると、都道府県知事は、苗木生産組合等が本件事業を実施しようとするときは、造成を行う基金の総額、各年度の基金造成額等を定めた苗木需給安定基金造成計画を作成して、林野庁長官に提出するものとしている。
上記の造成を行う基金の総額は、苗木生産組合等と需要者団体との間で定める団体取引基本協定の対象となる苗木生産本数に、残苗率(苗木生産本数に対する出荷調整により廃棄させる苗木本数の比率で5%)及び1本当たりの補償苗木単価(都道府県における苗木の標準的な価格の2分の1の額)を乗じて、残苗発生隔年数(出荷調整により苗木を廃棄させる事態が起こりうる割合で3年に1回)及び基金の運用利回りで除することにより算定されることとなっている。
実施要領によると、国及び都道府県は、本件事業を円滑に実施するため必要があるときは、苗木生産組合等に対して必要な指導を行うこととなっている。
また、苗木生産組合等は、毎年度事業の終了後速やかに基金及びその運用益に係る収支状況を都道府県知事に報告して、都道府県知事は林野庁長官にその報告を提出するものとしている。
近年、木材市況の低迷を背景として、造林面積及び苗木生産量が減少するなど本件事業を取り巻く状況が大きく変化してきている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、基金造成時以降の造林面積及び苗木生産量の推移並びに調整交付金の交付実績はどのように推移しているか、また、状況の変化に対応して制度の見直しが適切に図られているかなどに着眼して、基金を造成している28道県(注1)
の28基金(平成20年度末の基金造成総額11億3696万余円、うち国庫補助金相当額5億6740万余円)について貴庁及び11道県において会計実地検査を行うとともに、その他の17県については関係資料を提出させて分析を行うなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
木材市況の低迷を背景として、造林面積は、基金の造成が開始された昭和54年度では約17万4370haであったが、すべての道県において基金の造成が終了して事業が本格的に実施されることとなった平成元年度では約7万1331ha、19年度では約3万3784haに減少している(表1 参照)。
年度 | 昭和54年度 | 昭和59年度 | 平成元年度 | 平成6年度 | 平成11年度 | 平成16年度 |
|
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造林面積 | 174,370 | 119,412 | 71,331 | 52,808 | 38,482 | 28,466 | 33,784 |
また、造林面積の減少に伴い、苗木生産量は、昭和54年度では約4億8000万本であったが、平成元年度では約2億1500本、19年度では約7400万本に減少している(表2 参照)。
年度 | 昭和54年度 | 昭和59年度 | 平成元年度 | 平成6年度 | 平成11年度 | 平成16年度 |
|
||
生産本数 | 480 | 353 | 215 | 142 | 108 | 78 | 74 |
すべての道県において基金の造成が終了して事業が本格的に実施されることとなった元年度以降の5か年度ごとの調整交付金の交付実績をみると、表3 のとおり、元年度から5年度までの間及び6年度から10年度までの間は、ほとんどの基金において交付実績があったが、16年度から20年度までの間(一部の基金は15年度から19年度までの間)では、10県(注2) の10基金で調整交付金の交付実績がなかった。
道県\区分 | 基金造成額 | 国庫補助金相当額 | 調整交付金の交付実績 | |||||||||
平成元〜5年度 | 6〜10年度 | 11〜15年度 | 16〜20年度 | |||||||||
北海道 | 千円 100,000 |
千円 50,000 |
千円 20,339 |
千円 3,664 |
千円 404 |
千円 194 |
||||||
青森県 | 40,000 | 20,000 | 5,816 | 12,823 | 4,530 | 1,925 | ||||||
岩手県 | 65,000 | 32,500 | 15,341 | 5,827 | 2,714 | 1,268 | ||||||
山形県 | 30,000 | 15,000 | 7,074 | 5,578 | 1,393 | — | ||||||
福島県 | 30,000 | 15,000 | 9,594 | 11,335 | 1,162 |
|
||||||
茨城県 | 30,000 | 15,000 | — | 3,128 | 2,999 | 2,938 | ||||||
栃木県 | 40,000 | 20,000 | 10,784 | 7,096 | 500 | 649 | ||||||
群馬県 | 20,000 | 10,000 | 3,951 | 2,459 | 1,563 | 1,020 | ||||||
埼玉県 | 21,000 | 10,500 | 4,599 | 1,090 | 1,223 | 384 | ||||||
神奈川県 | 12,000 | 6,000 | 2,046 | 687 | — | 254 | ||||||
新潟県 | 44,205 | 21,998 | 9,590 | 3,650 | 2,558 | 407 | ||||||
石川県 | 20,000 | 10,000 | 3,500 | 4,676 | 587 | — | ||||||
山梨県 | 36,000 | 18,000 | 9,422 | 3,135 | 893 | — | ||||||
長野県 | 40,000 | 20,000 | 13,735 | 5,700 | 4,903 | 5,477 | ||||||
岐阜県 | 50,000 | 25,000 | 9,000 | 7,022 | 2,978 | — | ||||||
静岡県 | 40,075 | 20,000 | 3,966 | 11,573 | — | — | ||||||
三重県 | 40,000 | 20,000 | — | 11,522 | 2,200 |
|
||||||
兵庫県 | 60,000 | 30,000 | 19,451 | — | 3,290 | 691 | ||||||
鳥取県 | 32,800 | 16,400 | 6,708 | 2,410 | 1,018 | — | ||||||
島根県 | 61,470 | 30,000 | 5,769 | 3,245 | — | 593 | ||||||
岡山県 | 64,000 | 32,000 | 244 | 12,594 | 50 |
|
||||||
広島県 | 48,010 | 24,005 | 1,250 | 2,838 | 2,025 |
|
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山口県 | 52,400 | 26,000 | 資料廃棄のため不明 |
|
||||||||
徳島県 | 32,000 | 16,000 | 1,563 | 12,757 | — |
|
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愛媛県 | 16,000 | 8,000 | 4,438 | 9,757 | 1,637 | 578 | ||||||
高知県 | 50,000 | 25,000 | 6,740 | 15,467 | 5,608 | — | ||||||
福岡県 | 32,000 | 16,000 | 7,359 | 11,938 | — | — | ||||||
熊本県 | 30,000 | 15,000 | 5,080 | 1,121 | 1,161 | 507 |
また、各県の苗木生産組合等の調整交付金の交付実績についてみると、福岡県は10年度以降、静岡、徳島両県は11年度以降、福島、石川、山梨、岐阜各県は12年度以降、山形、鳥取、高知各県は15年度以降、それぞれ調整交付金を全く交付しておらず、これら10県の10基金(20年度末の基金造成総額3億5287万余円、うち国庫補助金相当額1億7640万円)は、本件事業の実施に当たり、苗木生産者に対して調整交付金を全く交付していない事態が過去5年間以上の長期間にわたって継続している。
上記のように、10県の10基金において、調整交付金の交付実績が低調で、長期間にわたり財政資金が効果を発現することなく滞留している事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 貴庁において、調整交付金の交付実績が低調な基金について、毎年度基金及びその運用益に係る収支状況の報告を受けていたにもかかわらず、道県及び苗木生産組合等が基金の在り方を検討するための基準等を策定して示していなかったこと
イ 道県及び苗木生産組合等において、調整交付金の交付実績が低調な状況が続いている中で、基金の在り方、すなわち事業を継続して実施することが妥当かどうか検討していなかったこと
本件事業は、昭和54年に基金の造成が開始されて以来、林業用苗木の計画的な生産の確保及び生産調整の円滑な実施を通じて計画的な造林の推進に貢献してきた。しかし、近年、調整交付金の交付実績が低調で、長期間にわたり財政資金が効果を発現することなく滞留して有効活用されていない事態が見受けられた。
ついては、貴庁において、苗木生産組合等が基金の在り方を検討するための基準等を策定して、これを道県及び苗木生産組合等に示し、道県及び苗木生産組合等に事業継続の妥当性や造成した基金を国庫に返還することの要否を検討させるとともに、本件事業の実施状況の把握に努め、その状況に応じて的確な指導を行うなどして、基金の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。