部局等 | 7森林管理局 | ||
国有財産の区分 | 国有林野事業特別会計所属 | (分類)行政財産 | |
(種類)公用財産 | |||
(種類)企業用財産 | |||
登記所に嘱託すべき登記の概要 | 借地に新築等した国有財産である建物について、第三者に対する対抗要件を備えるために行う登記 | ||
登記の嘱託を行っていなかった国有財産である建物に係る面積 | 14,724m2 (建面積)/16,891m2 (延べ面積)(平成21年3月末現在) | ||
上記の建物の国有財産台帳価格 | 12億0479万円 |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
国が、国の事務、事業又は国の職員の住居の用に供するなどのため庁舎、宿舎等として所有する土地、建物等は、国有財産として、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、取得、維持、保存及び運用(以下、これらを「管理」という。)並びに処分を行うこととされている。
国有財産の管理のうち、取得については、[1] 購入する場合、[2] 寄附による場合、[3] 交換による場合等があるが、建物の取得については、これらの場合以外に新築、増築及び改築する場合がある。また、保存については、修繕、盗難・紛失の防止、未登記財産に係る登記等、国有財産の保全に必要な行為と解されている。
そして、各省各庁の長は、国有財産法に基づき、国有財産の分類(行政財産等)及び種類(公用財産等)ごとに国有財産台帳を、土地を基準として設定した口座別に作成して、口座ごとに財産の区分(建物等)、種目(事務所建等)、用途(庁舎等)、数量、価格等を記載することとなっている。
国有林野事業特別会計に属する国有財産については、農林水産省所管国有財産取扱規則(昭和34年農林省訓令第21号。以下「取扱規則」という。)の定めるところにより、林野庁長官、各森林管理局長及び森林技術総合研修所長を部局長として、それぞれの部局に所属する国有財産に関する管理等の事務を分掌することとなっており(以下、当該事務を分掌する部局長を「国有財産部局長」という。)、国有財産部局長は、常時その管理する国有財産の現状を把握し、その管理及び処分を適正に行うこととなっている。
そして、国有財産部局長として、各森林管理局長は、取扱規則に基づき事務取扱準則を定め、それぞれの森林管理局管内の森林管理署等の長に国有財産の管理及び処分に関する事務の一部を分掌させている。
不動産の登記制度は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための制度であり、民法(明治29年法律第89号)第177条の規定により、不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ第三者に対抗することができないとされている。
不動産登記法によれば、登記には、不動産の表示に関する登記と不動産の所有権、地上権等の権利に関する登記がある。そして、土地又は建物を取得した者は、当該土地又は建物に係る権利に関する登記の申請をすることができるとされており、土地又は建物を取得した者が国であって、国がその取得した土地又は建物について権利に関する登記をするときは、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならないこととなっている。
そして、権利に関する登記は、表示に関する登記がなされていることが必要であることから、表示に関する登記がない新築の建物等を取得した場合には、取得した日から1月以内に、表示に関する登記を申請しなければならないこととなっている。
ただし、この表示に関する登記の申請義務については、国が所有する土地又は建物は、一般的に、直ちに取引の対象となるわけではないこと、国有財産台帳で管理されていることなどの理由から、国に対する適用が除外されている。
貴庁は、国有林野事業を実施するための森林管理署等の設置に際して、自己所有の用地が確保できない場合、借地に庁舎、宿舎等の建物を新築等しているが、借地に新築等したこれら建物について、第三者に対する対抗要件を備える必要がある場合には、当該建物の所在地を管轄する登記所に登記を嘱託するなどして、その適切な管理を図ることが求められることとなる。
そこで、本院は、合規性等の観点から、国有林野事業の実施のために借地に新築等した庁舎等の建物について、第三者に対する対抗要件を備える必要がある場合に登記の嘱託が適切に行われているかなどの点に着眼して、表1
のとおり、7森林管理局管内の77森林管理署等(注1)
の長が管理している114口座に係る514棟の建物(平成21年3月末現在の国有財産台帳価格の合計額3,137,553,728円)を対象として検査した。
森林管理局名 | 森林管理署等数 | 口座数 | 建物数(棟) | 建面積(m2 ) | 延べ面積(m2 ) | 国有財産台帳価格(円) |
北海道森林管理局 | 8 | 9 | 23 | 2,874 | 3,325 | 429,079,430 |
東北森林管理局 | 16 | 18 | 54 | 4,402 | 5,204 | 453,318,835 |
関東森林管理局 | 18 | 29 | 157 | 7,517 | 9,165 | 813,291,742 |
中部森林管理局 | 9 | 23 | 91 | 4,941 | 6,011 | 578,041,826 |
近畿中国森林管理局 | 8 | 12 | 21 | 1,293 | 2,156 | 169,191,583 |
四国森林管理局 | 6 | 10 | 103 | 4,045 | 4,707 | 290,054,752 |
九州森林管理局 | 12 | 13 | 65 | 3,816 | 4,342 | 404,575,560 |
合計 | 77 | 114 | 514 | 28,888 | 34,910 | 3,137,553,728 |
検査に当たっては、上記の77森林管理署等のうち15森林管理署等 (注2) において国有財産台帳等の書類と現地の建物の状況とを照合するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの62森林管理署等については、国有財産台帳の写し等の書類を本院に提出させた上で検査し た。
検査したところ、前記の借地に新築等した建物のうち、71森林管理署等の107口座に係る484棟(国有財産台帳価格計2,925,192,559円)については、国が所有する建物は表示に関する登記の申請義務の適用が除外されているとして、登記の嘱託が行われていなかった。しかし、これら登記の嘱託が行われていない484棟のうち、57森林管理署等の79口座に係る327棟(国有財産台帳価格計1,204,794,030円)については、地方公共団体以外の個人、法人等 からの借地(以下「民有地」という。)に新築等した建物である(表2 参照)ことから、財産の保全のため第三者に対する対抗要件を備える必要があり、登記の嘱託を行う必要があると認められた。
森林管理局名 | 森林管理署等数 | 口座数 | 建物数(棟) | 建面積(m2 ) | 延べ面積(m2 ) | 国有財産台帳価格(円) |
北海道森林管理局 | 2 | 3 | 3 | 358 | 438 | 39,400,082 |
東北森林管理局 | 9 | 10 | 19 | 1,244 | 1,349 | 68,320,426 |
関東森林管理局 | 17 | 22 | 125 | 4,762 | 4,970 | 314,496,367 |
中部森林管理局 | 8 | 18 | 53 | 3,143 | 3,901 | 360,657,283 |
近畿中国森林管理局 | 6 | 9 | 15 | 769 | 994 | 82,416,950 |
四国森林管理局 | 6 | 7 | 79 | 2,697 | 3,200 | 183,256,178 |
九州森林管理局 | 9 | 10 | 33 | 1,751 | 2,039 | 156,246,744 |
合計 | 57 | 79 | 327 | 14,724 | 16,891 | 1,204,794,030 |
民有地に新築等した建物について登記の嘱託が行われていない事例を示すと、次のとおりである。
九州森林管理局長崎森林管理署長は、個人から土地を同森林管理署の敷地として賃借した上で、19年3月に庁舎等を新築して、計3棟の建物(21年3月末現在建面積計359m2
、延べ面積計588m2
、国有財産台帳価格計57,018,000円)を管理している。
しかし、同森林管理署長は、民有地に新築したこれら3棟の建物について、国が所有する建物については表示に関する登記の申請義務の適用が除外されているとして、財産の保全のため第三者に対する対抗要件を備える必要があるかどうかを十分検討せず、登記の嘱託を行わないままとしていた。
なお、不動産登記法を所管する法務省は、同省が所管する国有財産について、不動産登記法による登記の申請義務の適用が除外される場合であっても、借地に建物を新築、増築、移築又は改築し、財産の保全のため第三者に対する対抗要件を備える必要があるときなどには、遅滞なく、管轄登記所に登記を嘱託しなければならないこととしている。
国が所有する土地又は建物は、国有財産台帳に記載されていることなどの理由から、不動産登記法による表示に関する登記の申請義務の適用が除外されているが、借地上の建物については、登記がなされていればその借地権は第三者に対する対抗力を有すると解されている。
したがって、前記のように、民有地に新築等した森林管理署等の建物について、財産の保全のため第三者に対する対抗要件を備える必要があるかどうかについて十分検討することなく、登記の嘱託を行わないままとなっているものが多数ある事態は、国有財産の管理として適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴庁において、借地に新築等した建物について、財産の保全のため、どのような場合に登記の嘱託を行わなければならないかを明確にしていなかったことなどによると認められる。
貴庁は、今後とも、各森林管理局において、借地に新築等した庁舎等の建物の管理を引き続き行っていくことが見込まれている。そして、これらの建物等の国有財産については、常に良好な状態においてこれを管理することが必要とされている。
ついては、貴庁において、借地に新築等した建物について、どのような場合に登記の嘱託を行わなければならないかを明確に定め、これを各森林管理局管内の森林管理署等の長に周知するとともに、民有地に新築等した建物について登記の嘱託を行わせることなどにより国有財産の管理が適切に行われるよう改善の処置を要求する。