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(578)−(586) 独立行政法人国立病院機構病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額に過不足があったもの


(578)−(586) 独立行政法人国立病院機構病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額に過不足があったもの

科目
医業収益
部局等
独立行政法人国立病院機構9病院
請求過不足があった診療報酬
手術料、麻酔料、入院料等など
請求過不足額
請求不足額 67,491,090円(平成19年度)
請求過大額 12,071,000円(平成19年度)

1 診療報酬の概要

(1) 診療報酬の算定及び請求

 独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)が設置している病院は、保険医療機関として患者の診療を行っている。
 保険医療機関は、診療報酬の算定方法(平成18年厚生労働省告示第92号。以下「厚生労働省告示」という。)等により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数(以下「点数」という。)に単価(10円)を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。

(2) 診療報酬の構成

 診療報酬は、厚生労働省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
 このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用等を一括して算定するもので、初・再診料と入院料等に区分されている。
 また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対して、厚生労働省告示において個々に定められた点数により算定するもので、注射料、処置料、手術料、麻酔料等に区分されている。

(3) 手術料、麻酔料及び入院料等

 手術料は、厚生労働省告示により、手術の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、手術において特定保険医療材料(注1) を使用した場合は、当該手術の点数と当該特定保険医療材料の点数とを合算して算定することとなっている。また、乳腺(せん)悪性腫瘍(しゅよう)手術において、腋窩(えきか)部等の郭清(注2) を行った場合は、腋窩部等の郭清を行わなかった場合に適用される点数より高い点数を算定することとなっている。
 麻酔料は、厚生労働省告示により、麻酔の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注3) (以下「全身麻酔」という。)を、厚生労働大臣が定める重症の患者に対して行った場合は、それ以外の患者に対して行った場合に適用される点数より高い点数により麻酔料を算定することとなっている。
 入院料等には、入院基本料、入院基本料等加算などがある。そして、この入院基本料等加算には、難病患者等入院診療加算、超重症児(者)入院診療加算等がありそれぞれ所定の点数が定められている。このうち難病患者等入院診療加算は、特定の疾患のために日常生活動作に著しい支障がある患者が入院治療中の場合に、入院基本料の点数に所定の点数を加算して算定することとなっている。また、超重症児(者)入院診療加算は、厚生労働大臣が定める超重症の状態にある患者に対して算定することとなっている。ただし、この加算は、一般病棟に入院している老人(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)の患者に対しては、算定できないこととなっている。

(4) 機構の病院における診療報酬の請求事務

 機構の病院は、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムを使用して行っている。すなわち、手術等の診療行為を行った場合は、診療部門は手術名、使用した薬剤、特定保険医療材料、患者の状態等をコンピュータ上のオーダー画面に入力し、又は伝票に記入するなどして料金算定部門に送付して、料金算定部門は、この伝票の記載内容等をコンピュータに入力するなどして、これにより診療報酬の算定及び請求を行っている。

(注1)
 特定保険医療材料  厚生労働大臣が手術等の点数と合算してその費用を算定することができると定めている特定の保険医療材料で、人工血管、骨セメント等がこれに該当する。
(注2)
 腋窩(えきか)部等の郭清  悪性腫瘍(しゅよう)の転移の可能性があるわきの下などのリンパ節を系統的に切除する手術
(注3)
 閉鎖循環式全身麻酔  閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構の21病院において、合規性等の観点から、平成19年度の診療報酬の算定及び請求が適正に行われているかなどに着眼して、入院に係るレセプト控えなどの書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査の結果、9病院において、診療報酬請求額が不足していたものが2,275件、67,491,090円、診療報酬請求額が過大になっていたものが216件、12,071,000円あり、不当と認められる。
 これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 7病院は、手術において特定保険医療材料を使用しているのに、その点数を手術の点数に合算していないなどしていた。このため、手術料が過小に算定されていて、診療報酬請求額が545件、26,607,540円不足していた。
 また、7病院は、乳腺悪性腫瘍手術において、腋窩部等の郭清を行っていないのに、腋窩部等の郭清を行った場合に適用される高い点数で手術料を算定するなどしていた。このため、手術料が過大に算定されていて、診療報酬請求額が118件、9,374,150円過大になっていた。

イ 麻酔料に関するもの

 8病院は、全身麻酔を厚生労働大臣が定める重症の患者に対して行っているのに、それ以外の患者に対して行った場合に適用される低い点数により麻酔料を算定するなどしていた。このため、麻酔料が過小に算定されていて、診療報酬請求額が620件、19,379,090円不足していた。

ウ 入院料等に関するもの

 7病院は、難病患者等入院診療加算の算定対象となる患者が入院しているのに、所定の点数を加算していないなどしていた。このため、入院料等が過小に算定されていて、診療報酬請求額が375件、13,989,070円不足していた。
 また、3病院は、一般病棟に入院している老人の患者に対して、超重症児(者)入院診療加算を算定するなどしていた。このため、入院料等が過大に算定されていて、診療報酬請求額が41件、1,811,910円過大になっていた。

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

ア 請求不足については、診療部門において手術等の診療内容をオーダー画面に入力し、又は伝票に記入する際に、使用した特定保険医療材料、患者の状態等に関する入力又は記入を漏らしていたこと、料金算定部門において伝票の記載内容等をコンピュータに入力する際に記載内容を見落とすなどして入力していなかったこと、また、診療部門及び料金算定部門において入院料等の算定に関する認識が十分でなかったこと

イ 請求過大については、診療部門において手術料の算定に関する認識が十分でなかったり、料金算定部門において入院料等の算定の際に患者が算定要件を満たすか否かの確認が十分でなかったりしていたこと

 上記の事態を病院別に示すと次のとおりである。

独立行政法人国立病院機構病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額に過不足があったものの表1

(注)
 1件で、複数の診療報酬について請求過不足が生じている場合は、請求過不足額が最も多い診療報酬で分類している。