ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告|
  • 第5 各府省所管の公益法人の財務等の状況について

第5 各府省所管の公益法人の財務等の状況について


第5 各府省所管の公益法人の財務等の状況について

要請を受諾した年月日
平成20年6月10日
検査の対象
内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)、国会、裁判所、会計検査院
検査の内容
各府省所管の公益法人についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成21年10月14日

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成20年6月9日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月10日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、 会計検査及びその結果の報告を求める事項
 
(一) 検査の対象
 
 
  内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
 
(二) 検査の内容
 
 
  各府省所管の公益法人についての次の各事項
 
 
 〔1〕  財務、特に内部留保の状況
 〔2〕  国が発注している調査研究事業の状況

(2) 公益法人制度の概要

 社団法人及び財団法人(以下、両者を合わせて「公益法人」という。)は、18年改正前の民法(明治29年法律第89号)第34条の規定に基づいて設立された法人で、その設立許可や指導監督(以下「指導監督等」という。)の事務については、各府省又は都道府県知事等が行うこととなっている。
 政府は、8年9月に、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(以下「指導監督基準」という。)を閣議決定した。また、同年12月に、指導監督基準の運用に当たっての具体的、統一的な指針として、「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」(公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ。以下「運用指針」という。)の申合せがなされており、各府省は、これらに基づいて所管する公益法人に対する指導監督等を行うことになった。
 このうち、公益法人の内部留保については、指導監督基準において、「公益事業の適切かつ継続的な実施に必要な程度とする」とされている。また、運用指針において、内部留保の水準(以下「内部留保率」という。)は、「当該法人の財務状況等によっても異なるものであり、一律に定めることは困難ではあるが、原則として、一事業年度における事業費、管理費及び当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費の合計額の30%程度以下であることが望ましい。」とされている。そして、内部留保については、具体的に、表1のとおり算出することとされている。

表1 内部留保の算出式
内部留保額=〔1〕 −(〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 +〔6〕 )
内部留保率(%)=内部留保額/(〔7〕 +〔8〕 +〔9〕 )×100
〔1〕 :総資産額
〔2〕 :財団法人における基本財産
〔3〕 :公益事業を実施するために有している基金
〔4〕 :法人の運営に不可欠な固定資産
〔5〕 :将来の特定の支払に充てる引当資産等
〔6〕 :負債相当額
〔7〕 :事業費
〔8〕 :管理費
〔9〕 :当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費

 また、政府は、従来の公益法人制度に代わる新たな非営利法人制度の具体的な在り方等についての検討を行い、この結果、公益法人制度改革関連3法案が18年5月に成立して、20年12月から施行された。この公益法人制度改革関連3法(注1) による制度改革の概要は、次のとおりである。

 公益法人制度改革関連3法  「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(平成18年法律第49号)及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成18年法律第50号)

〔1〕  主たる事務所の所在地において設立の登記をすることにより、「一般社団法人」又は「一般財団法人」として法人格を取得できる。
〔2〕  「一般社団法人」又は「一般財団法人」は、内閣総理大臣等に公益性の認定の申請を行い、内閣府に置かれる公益認定等委員会等の意見に基づき公益性があると認定を受けた場合に、「公益社団法人」又は「公益財団法人」となることができる。
 この公益性の認定に係る基準の中には、法人の財務について、法人の純資産に計上された額のうち、具体的な使途の定まっていない財産の額である遊休財産額が一定額以上を超えないと見込まれることなどが含まれている。

 一方、本院は、17年6月に、国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等について参議院から検査の要請を受け、横断的に検査した結果を取りまとめ、同年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している。この中で、資金事業の内容、実績、資金の保有量及び管理について検討すべき事態が見受けられたものが33資金(注2) あったことなどを記述している。

 33資金  33資金のうち公益法人に設置造成されているものは28資金ある。

(3) 国が発注している調査研究事業

 各府省等は、様々な調査研究事業を外部に発注して実施しており、これらの中には公益法人を契約相手方とするものも多い。
 国の契約方式としては、一般競争契約及び指名競争契約(以下、両者を合わせて「競争契約」という。)並びに随意契約の3方式があり、競争契約のうち契約の性質又は目的から価格のみの競争により難い場合には、価格と技術的要素等を総合的に評価して落札者を決定する方式(以下「総合評価方式」という。)を採ることができる。また、上記の各契約方式とは別に、契約手続の前段階における手続として、〔1〕 複数の業者から企画書等を提出させるなどし、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続(以下「企画競争」という。また、選定した者を契約相手方として締結する随意契約を、以下「企画随契」という。)、〔2〕 従来の契約相手方のほかに履行可能な者がいないかを確認するため参加者を募る手続(以下「公募」という。)が行われている。

(4) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

ア 会計検査院は、各府省所管の公益法人の財務、特に内部留保については、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、公益法人の財務、特に内部留保の状況はどのようになっているか、国又は独立行政法人(以下「国等」という。)の補助金等により設置造成された基金が適切かつ有効に運営されているかなどの点に着眼して検査を実施した。検査は、20年4月1日現在における各府省が所管する公益法人を対象として、これらの公益法人から財務の状況に関する調書を、また、各府省等から基金の状況に関する調書をそれぞれ徴して分析するとともに、公益法人を所管している12府省すべて及び抽出した59公益法人を対象として会計実地検査を実施した。
イ 国が各府省所管の公益法人に発注している調査研究事業の状況については、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、調査研究事業に係る契約事務が適切に行われており、公正性、競争性及び透明性が確保されているか、調査研究事業の成果物の活用、管理等は適切に行われているかなどの点に着眼して検査を実施した。検査は、国の各機関が、18、19、20各年度(20年度は20年9月まで)に、各府省所管の公益法人を契約相手方として締結した調査研究事業に係る契約を対象として、各府省等から契約の状況に関する調書を徴して分析するとともに、調査研究事業を発注している国の機関のうち契約金額の多い13府省(29省庁)及び抽出した37公益法人(上記59公益法人の内数)を対象として会計実地検査を実施した。

2 財務、特に内部留保の状況について

(1) 検査の結果

ア 各府省所管の公益法人に対する国等からの支出

(ア) 20年4月1日現在における各府省所管の公益法人6,661法人のうち、18、19両年度のいずれかに国等から補助金等(注3) の交付若しくは契約に基づく支払を受けているもの又は19年度末現在で国等の補助金等を原資とした基金を保有しているもの(以下、これらを総称して「国費等交付先法人」という。)は計2,018法人となっている。国等からこれらの国費等交付先法人に対する18、19両年度の支出状況は、表2のとおりとなっている。

 補助金等  交付金、助成金、負担金等名称のいかんを問わず、相当の反対給付を受けない資金交付を含む。


表2 国費等交付先法人に対する国等からの支出の状況

(単位:法人、百万円、%)

区分\年度等
平成18年度
19年度
法人数
金額(A)
法人数
金額(B)
(対18年度比)
補助金等
475
255,039
473
223,325
(△12.4)
契約
1,287
375,008
1,289
353,160
(△5.8)
1,546
630,047
1,542
576,485
(△8.5)
独立行政法人
補助金等
357
62,097
340
85,540
(37.8)
契約
729
174,813
709
164,345
(△6.0)
1,007
236,911
971
249,886
(5.5)
合計
補助金等
737
317,137
724
308,866
(△2.6)
契約
1,471
549,822
1,469
517,505
(△5.9)
1,876
866,959
1,848
826,371
(△4.7)
注(1)
 「計」欄及び「合計」欄の「法人数」は、重複分を除いた実数である。
注(2)
 「(対18年度比)」欄は、平成18年度の「金額(A)」に対する増減率である。

(イ) このうち、国の補助金等の交付についてみると、各府省が自ら所管する公益法人に対する交付額が18、19両年度とも約98%となっている。同様に、国との契約に基づく支払についてみると、各府省が自ら所管する公益法人に対するものが18、19両年度とも約94%を占めており、また、1件300万円以上の契約のうち、随意契約によるものが18年度には94.5%、19年度には82.1%となっている(いずれも支払金額ベース)。このように、国の支出の状況からは公益法人と所管府省との関係が深いことがうかがえる。

イ 各府省所管の公益法人の財務の状況

(ア) 国費等交付先法人のうち、1事業年度が国の1会計年度と同じ当該年の4月から翌年の3月までとなっている法人(18、19両年度とも1,854法人)における19年度の収入の状況をみると、年間収入額に占める国等からの支出額の割合は平均で13.8%であるが、このうち、年間収入額の3分の2以上を国等からの支出が占めているものは206法人となっている。
 また、国から「補助金等」の支出を受けた公益法人はその金額及び年間収入額に対する当該「補助金等」の割合を公表することとなっているが、この場合の「補助金等」は、国から交付される補助金等及び予算科目が「(目)○○委託費」から支出されたものに限定されている。そこで、公益法人に国からの「補助金等」の状況を公表するよう求めていることとは視点が異なるため、一概には比較できないが、「補助金等」以外の支出を受けている場合も国からの支出を受けている点では同じであることから、予算科目を問わず、国からの支出すべてを対象とした公表状況の分析を試みた。すなわち、18年度に予算科目を問わず国からの支出額が年間収入額の3分の2以上となっている105法人について、国からの支出を「補助金等」に限定した場合、このうち73法人は「補助金等」の年間収入に占める割合が3分の2未満となっており、これら73法人が「補助金等」を受けたものとして公表されているものは59億円となっていて、国からの支出額1708億円の3.5%にとどまっている。このように、国からの支出に大きく依存している公益法人に対する国からの支出の状況が十分には明らかになっていない。
(イ) 国費等交付先法人のうち、1事業年度が国の1会計年度と同じ当該年の4月から翌年の3月までとなっている法人(18、19両年度とも1,854法人)における支出の状況をみると、総支出額に占める管理費の割合が2分の1を超えているものが18年度40法人、19年度34法人となっている。また、国から補助金等の交付を受けた公益法人が他の法人等の第三者に当該補助金等を分配・交付(以下「再補助等」という。)している状況をみると、19年度に再補助等を行った額の割合が50%以上となっているものが24法人34件ある。
(ウ) 19年度末現在の国費等交付先法人2,018法人における資産、負債及び正味財産の状況をみると、1法人当たりの平均で資産額56.6億円、負債額33.1億円、正味財産額23.5億円となっており、国等から支出を受けていない法人(資産額65.6億円、負債額49.4億円、正味財産額16.2億円)に比べて、資産の規模は小さいが、正味財産の規模は大きくなっている。
(エ) 個別の法人を抽出して検査したところ、国から交付された補助金等の人件費への充当について検討の必要があったと認められるものが見受けられた。

ウ 各府省所管の公益法人の内部留保の状況

(ア) 国費等交付先法人2,018法人における19年度末の内部留保額は2432億円(内部留保額がプラスとなっている額5898億円、マイナスとなっている額3466億円)となっており、1法人当たりの平均でみると平均120百万円となっており、国等からの支出を受けていない法人の平均39百万円と比べて約3倍となっている。
 国費等交付先法人全体の総資産額は、18年度末の11兆0712億円から19年度末の11兆4382億円に増加しているが、内部留保額は、18年度末の2675億円から19年度末の2432億円に減少している。これは、減算項目のうち、「基本財産」、「公益事業基金」、「運営固定資産」及び「引当資産等」の各項目の金額がいずれも増加しているためである。しかし、公益事業基金については、運用指針において「事業目的が限定的であり、容易に取り崩しができないものに限る。」とされているが、19年度末現在で設置されている1,784基金のうち、事業目的に係る規定のないものは471基金、取崩し手続に係る規定のないものは606基金となっている。
(イ) 国費等交付先法人の内部留保率についてみると、表3のとおり、内部留保率が30%を超えている法人は全体の3分の1程度となっている。

表3 国費等交付先法人の内部留保率の状況

(単位:法人、%)

年度末
法人数
内部留保率の規模別法人数及び割合
0%以下
0%超
10%以下
10%超
20%以下
20%超
30%以下
30%超
30%超
40%以下
40%超
50%以下
50%超
60%以下
60%超
70%以下
70%超
80%以下
80%超
90%以下
90%超
100%以下
100%超
平成18
2,017
167
409
371
357
713
225
154
94
66
36
25
19
94
(8.3)
(20.3)
(18.4)
(17.7)
(35.3)
(11.2)
(7.6)
(4.7)
(3.3)
(1.8)
(1.2)
(0.9)
(4.7)
19
2,018
172
403
376
408
659
205
138
85
56
39
23
22
91
(8.5)
(20.0)
(18.6)
(20.2)
(32.7)
(10.2)
(6.8)
(4.2)
(2.8)
(1.9)
(1.1)
(1.1)
(4.5)

(ウ) 内部留保と国費等との関係をみると、表4のとおり、国等からの支出規模が大きい法人では、内部留保額の高い法人の割合が高くなっている。

表4 国等からの支出規模と内部留保額の状況(平成19年度)

(単位:法人、%)

国等からの支出額\内部留保額の規模
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上
1000万円未満
184 (26.0)
352 (49.7)
172 (24.3)
708 (100)
1000万円以上1億円未満
128 (18.6)
341 (49.4)
221 (32.0)
690 (100)
1億円以上
107 (17.3)
161 (26.0)
352 (56.8)
620 (100)
419 (20.8)
854 (42.3)
745 (36.9)
2,018 (100)
〈参考〉国等からの支出を受けていない法人
1,987 (43.6)
1,857 (40.7)
717 (15.7)
4,561 (100)

(エ) 個別の法人を抽出して検査したところ、内部留保額の算出上減算項目としている公益事業基金及び引当資産等の妥当性に疑義のあるもの、国の補助金により設置造成された基金の運用益が内部留保の増加に影響していると考えられるものなどが見受けられたほか、国への補助金の返納が遅延しているものも見受けられた。

エ 所管府省の指導監督の状況及び所管府省退職者の再就職者の状況

(ア) 19年度に実施された所管府省による立入検査の結果、財務・会計面で改善すべき事項があるとされた国費等交付先法人233法人のうち、各府省が文書により改善の指示を行っているのは115法人(49.4%)となっている。
(イ) 所管府省から18、19両年度のいずれかに補助金等の交付又は契約に基づく支払を受けている公益法人1,521法人について、所管府省退職者の再就職者の状況をみると、20年4月1日現在で1,163法人に9,900人が在籍している。そして、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人は、在籍していない法人に比べて、19年度において、1法人当たりの所管府省からの補助金等の交付額で約7倍、1件300万円以上の随意契約に基づく支払額でも約7倍と高くなっている。

オ 国等の補助金等により各府省所管の公益法人に設置造成された基金の状況

(ア) 表5のとおり、20年度末現在で、国の補助金等により各府省所管の公益法人に設置されている基金(以下「国所管基金」という。)が110基金、独立行政法人の補助金等により各府省所管の公益法人に設置されている基金(以下「独法所管基金」という。)が35基金あり、これらの20年度末の基金保有額は、計1兆0872億円(うち国等の補助金等相当額計1兆0191億円)と多額に上っている。

表5 平成20年度末現在の国所管基金及び独法所管基金の状況

(単位:法人、基金、百万円、%)

区分
法人数
基金数
(割合)
基金保有額
(平成20年度末)
(割合)
 
うち国等の補助金等相当額
(割合)
国所管基金
68
110
(75.9)
912,051
(83.9)
849,772
(83.4)
独法所管基金
18
35
(24.1)
175,194
(16.1)
169,415
(16.6)
84
145
(100)
1,087,245
(100)
1,019,188
(100)
(注)
 2法人においては、国から補助金等の交付を受けて設置している基金と独立行政法人から補助金等の交付を受けて設置している基金の両方を有しており、「計」欄の法人数はこの重複分を控除したものである。

(イ) 国所管基金の110基金のうち、事業実績率(直近3年間の平均事業実績額を元年度以降におけるピーク時の事業実績額(注4) で除して得た数値)の算定が可能な77基金についてみると、事業実績率が30%未満となっているものが27基金ある。また、本院の17年10月の報告において対象とした68基金のうち、16年度末と20年度末の事業実績率の比較が可能な38基金についてみると、低下しているものが23基金となっている。
 同様に、上記110基金のうち、基金保有倍率(直近の基金保有額を直近3年間の平均事業実績額で除して得た数値)の算定が可能な70基金についてみると、基金保有倍率が50倍以上となっているものが19基金ある。また、上記68基金のうち、16年度末と20年度末の基金保有倍率の比較が可能な38基金についてみると、上昇しているものが15基金となっている。

 事業実績額  本報告の分析において、各年度の事業実績額としているのは、貸付事業基金については新規貸付額、債務保証事業基金については新規債務保証額、利子助成事業基金については利子助成支払額、補助・補てん事業基金については補助金等の支払額、調査等その他事業基金については調査・研究等に係る費用の支払額としている。

(ウ) 基金の保有形態をみると、保有額の半分以上を債券で保有している基金も見受けられるが、基金によっては、事業終了時の補助金の国庫返納のため満期償還前の債券の売却を行う結果、損失が発生するおそれもある。
(エ) 国所管基金と独法所管基金の計145基金の運用益の使途に関する規定の有無及びその内容についてみると、130基金において規定があるが、このうち2基金は基金事業のほか、それ以外の事業にも充当できるとする内容の規定も設けている。
(オ) 国所管基金については政府の見直しがなされ、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定)が定められ、基金を保有する法人は各府省が定めた基金事業の目標達成度の評価を行うこととされ、使用見込みの低い基金については、基金の財源となっている国からの補助金等の国庫への返納等、その基金の取扱いを検討するとされた。また、18年度に基金について政府の見直しがあり、原則としてすべての事業について定量的な目標を設定することとされた。
 しかし、定量的な目標を設定した上で目標達成度の評価を実施したとしているものは110基金のうち17基金であり、余裕基金の返納規定が設けられていない基金も見受けられる。
 さらに、基金を保有する法人が基金の保有割合を算出するに当たって、過去の実績以外の指標等を基に必要見込額を算出しているものの中には、必要見込額をより合理的な指標を用いて算出すべきものや、単年度当たりの必要見込額が、計算上、直近3年間の平均事業実績額の10倍を超えているものが見受けられる。
(カ) 個々の基金を抽出して検査したところ、事業実績が継続的に少ない状況となっているもの、計画的かつ速やかに国庫返納がなされるべきもの、基金規模の見直しによる基金の取崩額と国庫補助金の返納額に差額が生じたものなどが見受けられた。

(2) 検査の結果に対する所見

 各府省所管の公益法人の中には、国等からの支出を受けているものや、国等の補助金等を原資とした基金を保有しているものが多数あり、これに対して国等からは多額の支出がなされているが、前記2(1)のとおり、補助事業の実施、財務の透明性、内部留保額等の算出、基金事業の運営等の面で課題が見受けられる。
 したがって、各府省は、今後、新たな公益法人制度の趣旨を踏まえつつ、以下の点に留意して、公益法人に対する国等の支出が経済的、効率的に行われて、その効果が十分上がるよう努める必要がある。

ア 公益法人における補助事業の実施及び経理について

 公益法人における補助事業の実施に当たっては、補助対象事業費に含める人件費を適正に算定させるなど公益法人に対する指導を強化するとともに、額の確定に当たって厳正な審査を行う。
 また、公益法人から補助金等を国に返納させる必要がある場合には、公益法人に補助金等が滞留しないよう、額の確定等の手続を速やかに行う。

イ 公益法人に対する国の支出の透明性について

 収入に占める国からの支出の割合が高いなどの公益法人の国からの支出額に係る公表については、公益法人に対する国の支出の状況がより明らかになるよう努める。

ウ 公益法人の内部留保について

 各府省は、所管する公益法人に対して、内部留保額等が公益法人の財務において重要な指標の一つであることを認識させて、その算出が適正に行われるよう指導する。このことは、新たな公益法人制度における遊休財産額の算定の際にも、十分留意する必要がある。
 また、内部留保の規模が過大になっている公益法人に対しては、内部留保の規模が適正になるよう指導する。

エ 所管府省による指導監督及び所管府省退職者の再就職者の状況について

 所管する公益法人への財務状況についての指導監督を実効あるものにするために、立入検査をより徹底するとともに、その的確な把握に努めて、指導が必要な事項は適時適切に文書によって行い、当該法人が講じた措置の履行状況の把握にも努める。
 また、所管府省退職者の再就職者が在籍している公益法人への支出に当たっては、特にその透明性の確保に留意して、当該法人に対する支出の必要性等について十分説明責任を果たせるようにする。

オ 基金事業の運営について

 今回の検査において検討すべき事態が見受けられた基金については、早急に実効性のある見直しを行って所要の処置を講ずる。
 また、これらを含めて、今後の基金事業の運営に当たっては、事業実績や保有倍率を考慮に入れて利用条件や基金規模の検討を常に行うとともに、基金設置の趣旨に沿った管理や基金の国庫返納の際の損失発生を回避する手段の検討について公益法人を指導する。さらに、定量的な目標の策定とこれに基づく適切な目標達成度の評価及び基金事業の見直しに努める。

3 国が発注している調査研究事業の状況について

(1) 検査の結果

ア 契約の競争性

(ア) 各府省所管の公益法人を契約相手方として国が締結した調査研究事業に係る契約(少額随契等を除く。以下「対象契約」という。)のうち19年度全体でみると、表6のとおり、随意契約の割合(件数72.6%、支払金額82.2%)は、前年度より件数で11.8ポイント、支払金額で11.1ポイント低下しているものの、依然として大部分を占めている。

表6 契約方式の全体状況
〔1〕 件数 (単位:件、%、%ポイント)
年度等\契約方式
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
平成18年度
件数
割合(A)
460
(10.6)
11
(0.3)
219
(5.0)
 
679
(15.6)
11
(0.3)
3,662
(84.4)
1,205
(27.8)
2,044
(47.1)
4,341
(100)
19年度
件数
割合(B)
816
(23.3)
347
(9.9)
143
(4.1)
 
959
(27.4)
347
(9.9)
2,539
(72.6)
1,050
(30.0)
287
(8.2)
3,498
(100)
増減値(B)−(A)
12.7
9.7
△1.0
11.8
9.7
△11.8
2.3
△38.9

〔2〕 支払金額
(単位:百万円、%、%ポイント)

年度等\契約方式
一般競争契約
指名競争契約
競争契約(計)
随意契約
合計
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち総合評価方式
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
平成18年度
金額
割合(A)
6,237
(4.3)
112
(0.1)
3,450
(2.4)
 
9,687
(6.7)
112
(0.1)
134,458
(93.3)
56,001
(38.9)
71,221
(49.4)
144,146
(100)
19年度
金額
割合(B)
19,831
(15.7)
13,135
(10.4)
2,588
(2.1)
 
22,420
(17.8)
13,135
(10.4)
103,640
(82.2)
44,970
(35.7)
19,790
(15.7)
126,060
(100)
増減値(B)−(A)
11.4
10.3
△0.3
11.1
10.3
△11.1
△3.2
△33.7
(注)
 「企画競争等を経ない随意契約」は、随意契約の中から、〔1〕 企画随契、〔2〕 公募を経た随意契約及び〔3〕 不落・不調随契(予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第99条の2又は第99条の3の規定に基づき、競争に付したが入札者がいないなどのため随意契約によるものをいう。)の三つを除いた契約をいう。

(イ) 契約金額の予定価格に対する比率を示す落札率は、予定価格の妥当性や契約方式の特性等から、その高低だけをもって一律に評価することはできない面はあるものの、随意契約の平均落札率が、表7のとおり、競争契約の87.7%よりも10.8ポイント高く98.5%となっていて、競争性及び経済性の面でまだ十分ではない状況となっている。

表7 契約方式別の落札率の状況(平成19年度)

(単位:%)

区分\契約方式
競争契約
 
随意契約
一般競争契約
指名競争契約
平均落札率
87.7
87.9
86.8
98.5
95.6

(ウ) 19年度の対象契約における競争契約の割合(件数27.4%、支払金額17.8%)は、表6のとおり、前年度より上昇している。しかし、1者応札の件数割合が58.3%と半数以上を占めており、1者応札の平均落札率(92.6%)が、表8のとおり、2者応札よりも8ポイント以上、3者以上応札よりも14ポイント以上上回っていて、落札率からみた場合、1者応札の場合には実質的な競争性を確保しにくい状況となっている。

表8 競争契約における応札者数別の落札率の状況(平成19年度)

(単位:件、%)

区分\応札者数
1者
2者
3者
4者
5者以上
件数
550
224
61
27
67
929
平均落札率
92.6
84.2
78.2
71.7
74.5
87.7

 また、企画競争においても、1者応募の件数割合が55.8%と半数以上を占めており、企画競争において複数の業者の中から優れた企画を提案した者を選定する手続の実効性を確保しにくい状況となっている。

(エ) 価格と技術等の両方を評価する総合評価方式及び企画内容等を審査する企画競争において、今回会計実地検査を実施した29省庁の内部部局のうち、統一的な要領等を作成していない省庁が、それぞれ5省庁、10省庁あったり、評価や審査を調査研究事業の担当課職員のみで行っているものが見受けられたりするなど、その実施方法において公平性及び透明性の確保が必ずしも十分でない状況となっている。
(オ) 抽出した対象契約について検査したところ、競争契約や企画競争において、募集期間や履行期間が短期間であったり、入札の資格要件に制限的な条件を付したりなどしていて競争性の確保に関して検討の必要があったもの、総合評価方式の実施方法において透明性が十分でないものなどが見受けられた。

イ 予定価格の算定

(ア) 19年度の対象契約の中から予定価格算定調書を徴した96件(複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。)について、人件費単価の分布状況をみると、契約により内容や履行の難易度に違いがあるため一律に比較できないものの、相当のばらつきがある。
(イ) 諸経費は、通常、対象経費に諸経費率を乗じて算定されているが、今回会計実地検査を実施した29省庁の内部部局における積算基準等の状況をみると、各省庁間で、諸経費率の水準や対象経費の範囲が区々となっている。
 また、19年度の対象契約の中から予定価格算定調書を徴した91件(複数の算定方法を重複して採用している契約を除く。)について、直接費(人件費に事務費等を加えた直接費全体)に対する諸経費率を計算すると、積算基準や参考見積書等により算定している場合にばらつきが大きくなっている。そして、公益法人の19事業年度の財務データに基づいて、その諸経費率を参考のために試算すると、平均では各府省等の契約に係る予定価格における諸経費率は、公益法人の諸経費率より高くなっている。
(ウ) 抽出した対象契約について検査したところ、複数の省庁から同一公益法人に発注された調査研究事業に係る契約の予定価格における諸経費率が区々となっているものが見受けられた。

ウ 契約の履行及びその確認

(ア) 契約相手方が、業務の一部を更に第三者に再委託(下請を含む。以下同じ。)することについては、一括再委託が禁止されており、一般的に、再委託には発注者の承認が必要とされている。そして、大部分の府省等は、再委託に係る承認手続のために公益法人からその承認申請書が提出された段階になって再委託の状況を把握する場合が多い。19年度の対象契約について再委託の状況をみると、再委託が行われているとしている契約467件のうち、再委託率(国の支払金額に占める再委託支払金額の割合をいう。)が50%以上となっている契約の件数割合は9.0%となっている。
(イ) また、概算契約(契約金額が契約締結時には確定しておらず、概算額で契約して、履行が完了した段階で額を確定させるもの)の額の確定方法については、今回会計実地検査を実施した29省庁のうち、統一的な要領等を作成していない省庁が16省庁あり、19年度の対象契約のうち概算契約について額の確定方法をみると、提出書類だけで確認しているものの件数割合が43.6%となっている。
(ウ) 抽出した対象契約について検査したところ、再委託の承認手続をとっていなかったり、再委託の成果物を確認できなかったり、概算契約において区分経理が行われていなかったり、履行期間外に業務を実施していたり、成果物の納品が遅延していたり、成果物の記載内容が不十分となっていたり、当初の目標を達成していなかったりしているものなどが見受けられた。

エ 成果物の公表及び管理

(ア) 19年度の対象契約3,498件に係る成果物4,300件(契約によって複数の成果物があるため、契約件数とは一致しない。)について、その公表の状況をみると、次図のとおり、公表しているものの件数割合は39.9%、うちインターネットによる公表は14.3%にとどまっており、国立国会図書館への納本率も低い状況となっている。また、成果物のうち24.2%については、契約条項において著作権の帰属に関する規定がない状況となっている。

図 成果物の公表の状況(平成19年度)

図成果物の公表の状況(平成19年度)

(イ) 抽出した対象契約について検査したところ、成果物についてより有効な公表方法を検討すべきもの、発注者に著作権を帰属させる旨を契約書等に明確に定めるべきものなどが見受けられた。

(2) 検査の結果に対する所見

 各府省所管の公益法人に発注している国の調査研究事業については、各府省等では公共調達の適正化を推進する中で、競争性の高い契約方式への移行が図られているが、前記3(1)のとおり、契約の競争性のほか、予定価格の算定、契約の履行及びその確認、成果物の公表及び管理の面で課題が見受けられる。
 したがって、公益法人に調査研究事業を発注している各府省等は、次の点に留意することにより、契約の経済性、公正性、競争性及び透明性の更なる向上に努めるとともに、調査研究事業の成果が広く国民に活用されるよう努める必要がある。

ア 契約の競争性について

(ア) 随意契約を実施しているものについては、企画競争等によらざるを得ない場合を除いて、発注する業務の内容を仕様書等において具体的に定めるなどして早急に総合評価方式を含む競争契約への移行を図る。また、企画競争等を経ない随意契約による場合には、なるべく複数者から見積書を徴して、競争の原理の応用に努める。
(イ) 契約相手方の選定に当たって技術等の評価を必要とする場合には総合評価方式を実施することを原則とし、仕様書等の内容を具体的に提示することが困難であったり、複数の者を契約相手方として選定する必要があったりするなどの同方式の導入になじまない場合に限って企画競争の実施を検討する。また、総合評価方式及び企画競争については、審査員の構成、審査方法等に関して統一的な要領等を作成して、これに基づいて実施するなど公平性及び透明性の一層の向上を図る。
(ウ) 競争契約や企画競争を行うに当たっては、契約の適正な履行の確保に配慮しつつ、より多くの者の参加が可能となるよう、入札や応募の資格要件や審査基準を必要最小限にとどめ、履行期間や提案書の応募期間を十分確保することにより制限的なものとならないよう留意するほか、仕様書や要領等の内容を明確にするなどして、実質的な競争性の確保に努める。また、公募を実施する場合には、公正性を確保するため契約予定相手方名の表示は行わないようにする。

イ 予定価格の算定について

 調査研究事業では、多様な業務内容等に応じて予定価格の算定を行う必要があり、積算基準、実例価格、公益法人の財務データなど、利用可能な資料のうちから実態に適合したものを選択して、これに基づいて人件費、諸経費等を積算することにより、算定の合理性の向上に努める。

ウ 契約の履行及びその確認について

 公益法人による再委託について管理を厳格にしたり、業務内容等の変更に応じて契約変更を適時適切に行ったりなどして、契約の履行管理の徹底を図る。
 また、概算契約について、公益法人における区分経理の実施状況を十分に把握するとともに、額の確定方法に関する統一的な要領等を作成して、これに基づいて契約金額の精算を行い、概算契約の適切な履行を確保する。
 さらに、成果物の納品等、契約の履行確認の徹底を図る。

エ 成果物の公表及び管理について

 調査研究事業の成果物については、国民に有用な情報を提供するとともに、個人情報の保護等に十分留意しつつ、公表に係る要領等を整備して一層積極的に公表を進める。特に、インターネットが急速に普及していることから、基本的にインターネットによる公表を推進するとともに、各府省等全体の取組として国立国会図書館への納本を励行する。
 また、成果物の著作権については、契約書等において各府省等への帰属を明確に定めておく。

 本院としては、公益法人制度の改革に伴う各府省所管の公益法人の今後の状況を注視するとともに、公益法人に対しては、引き続き、国等から多額の支出がなされることも見込まれることから、今後とも、これらの支出及びこれにより設置造成された基金について、多角的な観点から検査していくこととする。