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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年10月

各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成20年6月9日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月10日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。


一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一)検査の対象

 内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省

(二)検査の内容

 各府省所管の公益法人についての次の各事項

〔1〕  財務、特に内部留保の状況

〔2〕  国が発注している調査研究事業の状況

2 公益法人制度

(1) 公益法人制度の概要

ア 改正前の民法の規定に基づく公益法人の概況

 社団法人及び財団法人(以下、両者を合わせて「公益法人」という。)は、18年改正前の民法(明治29年法律第89号)第34条の規定に基づいて設立された法人で、学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する事業を行い営利を目的としないものである。
 このうち、社団法人は、一定の目的の下に結合した人(社員)の集合体である団体に対して法人格が与えられたものであり、財団法人は、一定の目的の下に拠出された財産(基本財産)を管理運営する団体に対して法人格が与えられたものである。
 そして、公益法人の設立に当たっては、設立しようとする目的に関連する事務を所掌している主務官庁の許可を得ることが必要とされており、また、公益法人の業務は、主務官庁の監督に属するとされている。
 公益法人の設立許可や指導監督(以下「指導監督等」という。)の事務については、各府省又は都道府県知事等(注1) が行うこととなっており、「平成20年度公益法人に関する年次報告」によれば、19年10月1日現在の公益法人数は24,648法人となっていて、このうち各府省所管の公益法人は6,720法人となっている。

 都道府県知事等  公益法人が行う事業が一つの都道府県の区域内に限られる場合には、都道府県知事及び都道府県教育委員会がその指導監督等の事務を行う。

イ 各府省所管の公益法人に対する指導監督等

 公益法人の指導監督等の事務を実施している各府省は、それぞれ省令等において、所管する公益法人に対して、事業計画書、事業報告書、収支予算書、収支計算書等の提出を求める旨や立入検査を行う旨を規定している。
 そして、政府は、公益法人の指導監督等の事務が多数の府省において行われることから、事務の統一性を確保する必要があるとして、公益法人指導監督連絡会議を設置したり、指導監督等に関する基準を策定したりしてきたが、公益法人の運営に関する問題、公益法人と行政との関係に係る問題等様々な指摘がなされたことなどから、それまでの基準を整理、強化するために、8年9月に、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(以下「指導監督基準」という。)を閣議決定した。また、同年12月に、指導監督基準の運用に当たっての具体的、統一的な指針として、「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」(公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ。以下「運用指針」という。)の申合せがなされており、各府省は、これらに基づいて公益法人に対する指導監督等を行うことになった。
 さらに、13年2月には、上記の幹事会において「公益法人の指導監督体制の充実等について」の申合せがなされており、この中で、立入検査については、所管する公益法人の業務運営に重大な問題があると認められる場合等には臨時に実施するほか、少なくとも3年に1回は定期的に実施すること、立入検査の結果、改善すべき事項が認められた場合には、各府省は、速やかに文書等により、期限を付して必要な改善を指示するとともに、これに基づき講じた措置について報告を求めることなどとされた。

ウ 公益法人の会計処理及び税制

(ア) 公益法人の会計処理

 政府は、公益法人の健全な運営に資することを目的として、財務諸表作成の基準である「公益法人会計基準」を昭和52年に策定し、60年及び平成16年に改正を行っている。このうち、16年に改正された基準(以下「新会計基準」という。)は、18年4月1日以後に開始する事業年度からできるだけ速やかに実施するものとされている。
 この新会計基準において作成することとされている財務諸表は、〔1〕 貸借対照表、〔2〕 正味財産増減計算書及び〔3〕 財産目録となっている。なお、資産の合計額100億円以上若しくは負債の合計額50億円以上又は経常収益の合計額10億円以上の公益法人については、キャッシュ・フロー計算書も作成することとされている。
 そして、16年改正前の「公益法人会計基準」において作成が求められていた収支予算書及び収支計算書については、新会計基準への改正の際に、新会計基準に基づいて作成する書類から外されたが、後掲の公益法人制度改革が行われるまでの間については、引き続き作成することとされている。

(イ) 公益法人に係る税制

 公益法人は、20年税制改正前の法人税法(昭和40年法律第34号)によると、同法上の収益事業(注2) から生じた所得についてのみ課税されており、その税率は22%と普通法人の30%に比べて低率となっている。
 そして、公益法人がその収益事業に属する資産のうちから、収益事業以外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、収益事業に係る所得の計算上、他の寄附金と合わせて原則として所得の金額の20%の範囲内で損金算入できることとされている(以下、この制度を「みなし寄附金」という。)。

 収益事業  20年税制改正前の法人税法における収益事業については、同法施行令(昭和40年政令第97号)で物品販売業等33業種が定められている。一方、指導監督基準における収益事業は、「付随的に収益を目的として行う事業」とされており、法人税法における収益事業とは異なるものである。したがって、指導監督基準の収益事業に該当しない事業でも、上記の33業種に該当する場合には、法人税法上の収益事業とされて、課税の対象となる。

エ 公益法人の内部留保

 内部留保は、営利法人の場合、利益のうち株主等の法人外部の者に分配せずに内部に留保したものを指すが、公益法人の場合は、営利法人と異なり利益の分配が禁止されていることなどから、同様の定義を行うことは適切ではないものとされている。そして、指導監督基準においては、公益法人の内部留保額は、次のとおり、総資産額から事業遂行に直接必要とされる資産の額等を控除することにより算出することとされている。

 内部留保額=〔1〕 -(〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 +〔6〕 )
  〔1〕 :総資産額
  〔2〕 :財団法人における基本財産
  〔3〕 :公益事業を実施するために有している基金
  〔4〕 :法人の運営に不可欠な固定資産
  〔5〕 :将来の特定の支払に充てる引当資産等
  〔6〕 :負債相当額

 公益法人は営利を目的としない法人で、その事業目的、非営利性等から税制上の優遇等が認められているものであり、内部留保額についても、過大に有することは適当でないとの考え方から、指導監督基準において、「公益事業の適切かつ継続的な実施に必要な程度とする」とされている。
 そして、内部留保の水準(以下「内部留保率」という。)は、次のとおりに算出することとされており、また、運用指針において、「当該法人の財務状況等によっても異なるものであり、一律に定めることは困難ではあるが、原則として、一事業年度における事業費、管理費及び当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費の合計額の30%程度以下であることが望ましい。」とされている。

 内部留保率(%)=内部留保額/(〔7〕 +〔8〕 +〔9〕 )×100
  〔7〕 :事業費
  〔8〕 :管理費
  〔9〕 :当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費

(2) 公益法人制度の課題と改革への取組

ア 公益法人と行政との関係及びその改革

(ア) 公益法人に対する行政の関与についての改革

 公益法人の中には、国から補助金の交付を受けていたり、契約により支出を受けていたりするなど、行政と密接な関係にある法人も少なくないが、行政との関係の透明性等について課題が指摘されるなどしている。
 政府は、これまで「行政改革大綱」(平成12年12月閣議決定)、「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」(平成14年3月閣議決定。以下「改革実施計画」という。)等において、行政委託型公益法人等(特定の法令等により、国から制度的に事務事業の委託等を受けている公益法人)が行っている事務事業の見直しを行ったり、国から公益法人への補助金・委託費等について、第三者分配型補助金等(国から交付された補助金・委託費等の5割以上を他の法人等の第三者に分配、交付するもの)及び補助金依存型公益法人(国から交付された補助金・委託費等が年間収入の3分の2以上を占める公益法人)の見直しを行ったりなどしている。

(イ) 公益法人への支出の見直し

 政府は、20年7月に、行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄の集中点検を実施した結果を明らかにした。これは、〔1〕 国又は独立行政法人等からの補助金・委託費等の支出に依存する公益法人、〔2〕 国又は独立行政法人等と随意契約を締結している公益法人、〔3〕 国との関係を総合的に見て点検の対象とすべきと考えられる事情を有している公益法人等について、図表0-1のとおり、各府省が350法人を対象として、国又は独立行政法人等からの支出の必要性等を検証したものである。

図表0-1 府省別の点検対象法人数
府省名
点検対象法人数
府省名
点検対象法人数
内閣府
警察庁
金融庁
総務省
法務省
外務省
財務省
8
1
2
24
3
18
4
文部科学省
厚生労働省
農林水産省
経済産業省
国土交通省
環境省
防衛省
33
80
30
50
73
20
9
350
(注)
 複数の府省で重複して点検対象としている公益法人が5法人ある。

 そして、この集中点検の結果をまとめると図表0-2のとおりである。

図表0-2 「行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄の集中点検」結果
態様
見直し法人数
1 国等から発注等する事務事業の見直し
2 一般競争入札原則の徹底
 (1) 国等から発注等する事務事業のすべてを一般競争入札に移行
 (2) 一般競争入札に移行できない場合
  ア 関係する事務事業の分割等による一般競争入札の適用の拡大
  イ 企画競争等の競争的な手続や市場化テストの導入等
 (3) 補助金等への公募制の導入
3 法人組織等の見直し
 (1) 法人組織の縮減
 (2) 役員報酬の抑制・削減
 (3) 役員数の削減
 (4) 退職金報酬等の抑制・削減
 (5) 内部留保等の縮減
82
 
42
 
41
137
20
 
53
88
81
53
116

 また、20年12月には、内閣官房長官の下に設置された行政支出総点検会議において、国民の目線で無駄の根絶に向けた指摘をするために検討してきた結果を取りまとめている。そして、この中で、公益法人への国及び独立行政法人等からの支出について、各府省にその見直しを要請し、各府省がこれを受けて見直しを行った結果、18年度支出額に比して、21年度の支出は約37%の削減が見込まれることとなった旨が公表された。

イ 国が公益法人に補助金等を交付して設置造成させている基金に係るこれまでの横断的な会計検査の実施状況

 公益法人と行政の関わりの一環として、国が、一部の公益法人に補助金等を交付して基金を設置造成させ、単年度で完結しない特定の目的を持つ公益性の高い事業を継続して行わせているものがある。
 これについて、会計検査院は、17年6月に、国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等について参議院から検査の要請を受け、横断的に検査した結果を取りまとめ、同年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している。
 この報告書においては、16年度末現在において設置されている116資金(注3) についてその運営状況を検査したところ、資金事業の内容、実績、資金の保有量及び管理について、検討すべき事態が見受けられたものが33資金(注3) あったこと、効率的、効果的な資金事業を実施していくに当たって重要と考えられる見直し時期の設定、目的達成度を測るための基準の策定、サンセット方式の導入等見直し体制の整備に対する取組等が十分でない状況も見受けられたことなどを記述している。

 116資金 33資金  116資金のうち公益法人に設置されているものは91資金あり、検討すべき事態が見受けられた33資金のうち公益法人に設置されているものは28資金ある。

ウ 公益法人制度の改革

 我が国の公益法人制度は、民法の制定以来、100年以上にわたり抜本的な見直しが行われておらず、従来、公益法人の在り方に関する問題点が指摘されてきた。
 このようなことから、政府は、従来の公益法人制度に代わる新たな非営利法人制度の具体的な在り方等についての検討を行い、法人格の取得と公益性の判断の分離等を内容とする公益法人制度改革関連3法案を国会に提出した。そして、公益法人制度改革関連3法案は、18年5月に成立して、20年12月から施行された。この公益法人制度改革関連3法(注4) による制度改革の概要は、次のとおりである。

 公益法人制度改革関連3法  「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(平成18年法律第49号)及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成18年法律第50号)

〔1〕  主たる事務所の所在地において設立の登記をすることにより、「一般社団法人」又は「一般財団法人」として法人格を取得できる。

〔2〕  「一般社団法人」又は「一般財団法人」は、内閣総理大臣又は都道府県知事に公益性の認定の申請を行い、内閣府に置かれる公益認定等委員会又は都道府県に置かれる合議制の機関の意見に基づき公益性があると認定を受けた場合に、「公益社団法人」又は「公益財団法人」となることができる。
 この公益性の認定に係る基準の中には、法人の財務について、法人の純資産に計上された額のうち、具体的な使途の定まっていない財産の額である遊休財産額が一定額以上を超えないと見込まれることなどが含まれている。

〔3〕  公益法人は、法施行の日(20年12月1日)から起算して5年を経過する日までの経過期間は特例民法法人として存続し、経過期間内に、「公益社団法人」若しくは「公益財団法人」に移行するための認定の申請又は通常の「一般社団法人」若しくは「一般財団法人」に移行するための認可の申請をすることができる。そして、経過期間内に上記の認定又は認可を受けなかった特例民法法人は、原則として経過期間満了の日に解散したものとみなされる。

 また、新たな公益法人制度における法人税の取扱いについては、次のとおりとなっている。

〔1〕  「公益社団法人」及び「公益財団法人」においては、法人税法上の収益事業から生じた所得についてのみ課税され、その税率は30%(年800万円以下の所得については22%)となっていて、また、みなし寄附金の損金算入限度額については、所得の50%又は公益目的事業の実施のために必要な金額として認められたもののいずれか多い金額とされている。

〔2〕  「一般社団法人」及び「一般財団法人」においては、非営利型法人の場合は法人税法上の収益事業から生じた所得についてのみ、非営利型以外の法人の場合はすべての所得について課税され、いずれの場合もその税率は30%(年800万円以下の所得については22%)となっていて、また、いずれの法人とも、みなし寄附金については適用対象から除かれている。

3 国が発注している調査研究事業

(1) 国が行う調査研究事業の意義

 各府省等は、社会経済情勢が著しく変化する中で、複雑多様化する行政施策等の企画・立案を進め、また、的確な基礎データの構築及び創造的なデータの解析を行うために種々の情報収集や分析が必要であることから、様々な調査研究事業を実施している。近年、国の行政は、専門的、国際的知見がますます必要とされてきており、これに伴い、調査研究事業の範囲は拡大傾向にあると考えられる。また、調査研究事業の成果は国民にとっても有用な情報となるものであり、個人情報の保護、機密保持等に配慮する必要はあるが、その公表は重要である。
 調査研究事業のうち、広範囲な情報収集や専門的な知識、知見を必要とするものについては外部に発注して実施されており、この中には、公益法人を契約相手方とするものも多い。

(2) 国の契約方式等

 調査研究事業を含む国の契約における契約の相手方の選定方法、すなわち契約方式としては、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)等によると、一般競争契約及び指名競争契約(以下、両者を合わせて「競争契約」という。)並びに随意契約の3方式があり、このうち機会の均等、公正性の保持等の面から、一般競争契約が原則とされている。
 そして、競争契約において、契約の性質又は目的から価格のみの競争により難い場合には、価格だけでなく、技術的要素等も併せて総合的に評価して落札者を決定する方式(以下「総合評価方式」という。)を採ることができ、その場合には、各省各庁の長(衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣をいう。)が財務大臣と協議して定めるところによりこれを行うこととされている。
 また、近年、上記の各契約方式とは別に、契約手続の前段階において業者選定の公平性及び透明性を向上させるための取組として、〔1〕 価格による競争を実施することが困難な業務について、複数の業者から企画書等を提出させるなどし、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続(以下「企画競争」という。また、選定した者を契約相手方として締結する随意契約を、以下「企画随契」という。)、〔2〕 従来の契約相手方のほかに履行可能な者がいないかを確認するため、業務に必要な技術又は設備等をホームページなどで明らかにして参加者を募る手続(以下「公募」という。)が行われている。なお、企画競争は、実務上、事業ごとに複数の者を選定するため競争契約によることのできない場合にも採用されている。

(3) 国が発注している調査研究事業等に係るこれまでの横断的な会計検査の実施状況

ア 平成15年度決算検査報告に掲記した「国が発注している調査研究事業について」 の概要

 会計検査院は、16年次に、各府省等の内部部局が発注している調査研究事業(14年度に契約を締結した分。このうち、公益法人を契約相手方とするものは、件数ベースで全体の45.9%)について横断的に会計検査を実施した。その結果、
〔1〕  競争契約の割合は極めて低く、また、随意契約においても企画競争を実施しているものは少ない
〔2〕  予定価格の積算については、積算体系を確立しにくい側面があって相手方から徴した参考見積書により算定しているものが相当程度見受けられ、概算契約における額の確定においては契約金額と同額で精算されているものが多い
〔3〕  成果物については、半数以上がその内容を公表しているが、近年普及してきたインターネットにより公表されているものは低い割合にとどまっている
などの状況となっており、これらの検査の状況を「特定検査対象に関する検査状況」として掲記している。

イ 19、20両年次に報告した「各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について」の概要

 会計検査院は、18年6月に、各府省等が締結している随意契約について参議院から検査の要請を受け、19、20両年次に、横断的に会計検査を実施した結果を取りまとめ、それぞれ、19年10月、20年9月に、会計検査院長から参議院議長に対して報告している。このうち、公益法人を契約相手方とする契約については、
〔1〕  19年10月の報告書 では、18年度(12月まで)の各府省等の契約のうち、公益法人を契約相手方とするものについては、その割合は件数ベースで8.8%となっていること、その随意契約の割合や企画競争を経ない随意契約の割合は対象契約全体でみた場合よりも高くなっていること
〔2〕  20年9月の報告書 では、19年度(12月まで)の各府省等の契約のうち、公益法人を契約相手方とするものについては、その割合は件数ベースで7.8%と減少していること、その随意契約の割合や企画競争等を経ない随意契約(注5) の割合は大幅に減少しているが、競争契約における1者応札や企画競争における1者応募の割合は対象契約全体でみた場合よりも高くなっていること
などを記述している。

 企画競争等を経ない随意契約  随意契約の中から、〔1〕 企画随契、〔2〕 公募を経た随意契約及び〔3〕 不落・不調随契(予決令第99条の2又は第99条の3の規定に基づき、競争に付したが入札者がいないなどのため随意契約によるものをいう。以下同じ。)の3つを除いた契約をいう。以下の本文及び図表において同様である。

4 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

ア 会計検査院は、各府省所管の公益法人の財務、特に内部留保については、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、公益法人の財務、特に内部留保の状況はどのようになっているか、国又は独立行政法人(以下「国等」という。)の補助金等により設置造成された基金が適切かつ有効に運営されているかなどの点に着眼して検査を実施した。

イ 国が各府省所管の公益法人に発注している調査研究事業の状況については、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、調査研究事業に係る契約事務が適切に行われており、公正性、競争性及び透明性が確保されているか、調査研究事業の成果物の活用、管理等は適切に行われているかなどの点に着眼して検査を実施した。

(2) 検査の対象及び方法

ア 各府省所管の公益法人の財務の状況については、20年4月1日現在における各府省が所管する公益法人を対象として、これらの公益法人から18、19両年度における財務の状況に関する調書を、また、各府省等から20年度末における基金の状況に関する調書をそれぞれ徴して分析するとともに、公益法人を所管している12府省すべて及び国等からの支出の規模、内部留保の状況、国の補助金等により設置造成された基金の状況等を考慮して抽出した59公益法人を対象として会計実地検査を実施した。

イ 国が各府省所管の公益法人に発注している調査研究事業の状況については、国の各機関が、18、19、20各年度(20年度は20年9月まで(注6) )に、各府省所管の公益法人を契約相手方として締結した調査研究事業に係る契約を対象として、各府省等から契約の状況に関する調書を徴して分析するとともに、調査研究事業を発注している国の機関のうち契約金額の多い13府省(29省庁)及び調査研究事業に係る契約の状況を考慮して抽出した37公益法人を対象として会計実地検査を実施した。
上記ア及びイに係る会計実地検査の人日数及び検査箇所は、次のとおりである。

・実地検査人日数 406人日
・検査箇所
ア 財務の状況
12府省及び59公益法人
 
イ 調査研究事業
13府省(29省庁)及び37公益法人

 20年9月まで  20年度については、本報告を取りまとめるに当たっての時間的制約により20年4月から9月までに締結された契約を対象とした。

(内訳)

実地検査対象機関(府省)
検査箇所(省庁)
実地検査実施公益法人(所管する公益法人数)
ア 財務の状況
イ 調査研究事業
内閣 注(1)
内閣官房
内閣府
本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、金融庁
3
3
総務省
本省、公害等調整委員会、消防庁
4
3
法務省
本省
2
1
外務省
外務省
2
1
財務省
本省、国税庁
1
1
文部科学省
本省、文化庁
6
3
厚生労働省
本省、社会保険庁
8
3
農林水産省
本省、林野庁、水産庁
11
6
経済産業省
本省、資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁
12
7
国土交通省
本省、気象庁、海上保安庁
16
13
環境省
環境省
4
4
防衛省 注(2)
防衛省
2
2
計(13)
29
59 注(3)
37 注(3)
 内閣は、公益法人の所管府省ではないため検査要請の「検査の対象」に含まれていないが、公益法人に発注している調査研究事業があるため、会計実地検査を実施した。
 防衛省は、平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁である。
 「実地検査実施公益法人(所管する公益法人数)」の「計」欄は、共管する公益法人の重複分を除いた数である。
59法人の内訳は、次のとおりである。
※社団法人中央調査社、※財団法人都市防災研究所、※財団法人交通事故総合分析センター、社団法人漁業信用基金中央会、財団法人海外通信・放送コンサルティング協力、※社団法人電波産業会、※財団法人計量計画研究所、※財団法人テレコム先端技術研究支援センター、※財団法人国際研修協力機構、財団法人民事法務協会、財団法人日韓文化交流基金、※財団法人日本システム開発研究所、財団法人産業医学振興財団、財団法人東洋文庫、※財団法人中部科学技術センター、※財団法人国際医学情報センター、※財団法人原子力安全技術センター、財団法人日本オリンピック委員会、財団法人二十一世紀職業財団、財団法人友愛福祉財団、※財団法人日本公衆衛生協会、社団法人国民健康保険中央会、財団法人日本腎臓財団、財団法人食品産業センター、※社団法人農林水産技術情報協会、社団法人米穀安定供給確保支援機構、※社団法人農村環境整備センター、財団法人日本特産農産物協会、※財団法人食品流通構造改善促進機構、※社団法人日本森林技術協会、※社団法人農業土木機械化協会、※財団法人漁港漁場漁村技術研究所、財団法人海外漁業協力財団、社団法人日・タイ経済協力協会、※財団法人新エネルギー財団、財団法人天然ガス導入促進センター、※財団法人造水促進センター、※財団法人ベンチャーエンタープライズセンター、※財団法人社会経済生産性本部(平成21年4月1日以降は財団法人日本生産性本部)、社団法人国際家具産業振興会、社団法人潤滑油協会、※財団法人デジタルコンテンツ協会、財団法人住宅産業研修財団、財団法人日弁連交通事故相談センター、財団法人日本自動車輸送技術協会、※社団法人全国市街地再開発協会、※財団法人道路環境研究所、※財団法人ダム水源地環境整備センター、※財団法人日本気象協会、※社団法人東北建設協会、※財団法人沿岸技術研究センター、※社団法人ウォーターフロント開発協会、※財団法人運輸低公害車普及機構、※財団法人自然環境研究センター、※財団法人地球環境戦略研究機関、※財団法人日本環境協会、※財団法人産業廃棄物処理事業振興財団、※財団法人自衛隊援護協会、※財団法人防衛施設周辺整備協会(法人名の前に※を付した37法人は、財務の状況及び調査研究事業の両事項について実地検査を実施した法人である。)

(以下、本文及び図表中の数値は、原則として、件数及び金額については表示単位未満を切り捨て、割合については表示単位未満を四捨五入している。)