会計名及び科目 | 一般会計 (組織) 総務本省 | ||||||
(項)参議院議員通常選挙費 | (平成19年度) | ||||||
(項)選挙制度等整備費 | (平成21年度) | ||||||
部局等 | 総務本省 | ||||||
執行経費の概要 | 都道府県及び市町村の選挙管理委員会が管理する国会議員の選挙等の執行について国が負担する経費 | ||||||
検査の対象とした執行経費の交付先 | 16都府県及び管内188市町 | ||||||
上記に対して交付した執行経費の額 |
|
(平成22年9月8日付け 総務大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
国会議員の選挙、最高裁判所裁判官の国民審査等に関する事務(以下「選挙事務」という。)は、公職選挙法(昭和25年法律第100号)等に基づき都道府県及び市町村の選挙管理委員会が行い、これに要する経費(以下「執行経費」という。)は、国が負担することとされている。執行経費については、「国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律」(昭和25年法律第179号。以下「基準法」という。)において、投票所経費、開票所経費、事務費等の経費の種類ごとに基本額が定められている。
貴省は、執行経費の経費の種類ごとに基本額算定表を定めて都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)に提示するとともに、執行経費の算定に必要な様式を示している。 都道府県は、これらの様式等に従って執行経費を算定した資料(以下「算定資料」という。)を当該都道府県分と管内市町村分とを取りまとめの上、貴省に提出している。そして、貴省は、これらの算定資料に基づき、交付額を算定して都道府県に交付し、都道府県は、当該交付額のうち管内市町村分として交付を受けた額を市町村に交付している。そして、都道府県及び市町村は、交付を受けた金額の範囲内で、経費の種類相互間で融通して補うことができるとされている。
また、基準法においては、避けることのできない事故その他特別の事情によって執行経費の交付額をもって選挙事務を執行することができない都道府県又は市町村に対しては、執行経費の交付額の100分の5以内の額で別に予算をもって定められたものの範囲内において、必要な経費を追加して交付することができることとなっている(以下、追加して交付する経費を「調整費」という。)。貴省は、調整費の交付に当たり、経費の種類ごとに金額、理由等を記載した調整費の要望を提出させ、内容を審査した上で交付している。
貴省は、国会議員の選挙等の実施に合わせて、毎回、選挙の管理執行について、都道府県選挙管理委員会に総務省自治行政局選挙部長通知等を発している。その中で、選挙の管理執行体制等について、従来の慣行にとらわれることなく、合理化の見地から全般的に検討を加え事前に周到な計画を樹立して、経費の適切かつ効率的な使用及び速やかな支出に努めるとともに、経費使用の明確化を図るため経理補助簿を作成すること、また、交付される金額の範囲内で経費の種類相互間の調整を図り、執行経費に不足を生じることのないよう特に配慮することを通知して、併せて管内の市町村の選挙管理委員会に対しても都道府県選挙管理委員会から通知するように求めている。
また、都道府県選挙管理委員会にあてて平成21年6月に発した「第45回衆議院議員総選挙及び第21回最高裁判所裁判官国民審査に係る執行委託費の経理について(通知)」(平成21年総行管第161号総務省自治行政局選挙部管理課長通知)の中で、選挙事務を適法に、かつ適正に処理するためには交付された総額の範囲内で、融通して補うことはこの法律の趣旨に反するものではなく、また、委託費について精算を要するものではないとしている。
基準法は、投票所経費及び開票所経費について次のように定めている。
ア 投票所経費
投票所経費は、投票日が平日か休日かの別に、特別区及び指定都市の区、市並びに町村の三つの区分ごとに、投票区の選挙人の数に応じた1投票所当たりの基本額が衆議院議員選挙、参議院議員選挙のそれぞれごとに定められており、投票日が休日の場合の基本額は表1のとおりとなっている。
表1 投票所経費の基本額(投票日が休日の場合)
(単位:円)
|
特別区及び指定都市の区
|
市
|
町村
|
|||||||
参議院議員選挙
|
衆議院議員選挙
|
参議院議員選挙
|
衆議院議員選挙
|
参議院議員選挙
|
衆議院議員選挙
|
|||||
500人未満
|
265,534
|
271,286
|
291,756
|
297,508
|
252,192
|
257,944
|
||||
500人以上1,000人未満
|
305,430
|
311,182
|
331,652
|
337,404
|
292,088
|
297,840
|
||||
1,000人以上2,000人未満
|
365,527
|
371,279
|
391,749
|
397,501
|
346,102
|
351,854
|
||||
2,000人以上3,000人未満
|
384,221
|
389,973
|
397,501
|
403,253
|
391,749
|
397,501
|
||||
3,000人以上5,000人未満
|
430,269
|
436,021
|
482,713
|
488,465
|
437,397
|
443,149
|
||||
5,000人以上10,000人未満
|
518,132
|
529,636
|
531,412
|
542,916
|
485,764
|
497,268
|
||||
10,000人以上15,000人未満
|
617,349
|
628,853
|
656,851
|
668,355
|
605,451
|
616,955
|
||||
15,000人以上20,000人未満
|
870,466
|
881,970
|
975,354
|
986,858
|
765,035
|
776,539
|
||||
20,000人以上
|
1,161,479
|
1,172,983
|
1,135,933
|
1,147,437
|
924,618
|
936,122
|
基本額算定表によると、投票日が休日の場合の投票所経費の基本額の内訳で大きな割合(8割程度)を占めているのは、市町村の一般職員が正規の勤務時間外に投票所の事務(以下「投票所事務」という。)に従事する(以下、投票所事務に従事する者を「投票所事務従事者」という。)ことを想定して算定されている超過勤務手当である。なお、特別区及び指定都市の区に係る投票所経費については、投票所事務従事者として賃金職員を雇い入れるのに必要な経費が計上されている。
イ 開票所経費
開票所経費は、投票日が平日か休日かの別に、また開票を投票の当日に行うか翌日に行うかの別に、投票の翌日が平日か休日かに区分して、開票区の選挙人の数に応じた1開票所当たりの基本額が定められており、投票日が休日で投票の当日に開票を行う場合の基本額は表2のとおりとなっている。なお、参議院議員選挙及び衆議院議員選挙の開票所経費の基本額は同額となっている。
表2 開票所経費の基本額
(投票日が休日で投票当日に開票を行う場合)
(単位:円)
投票の翌日
\
開票区の選挙人の数
|
平日
|
休日
|
1,000人未満
|
309,416
|
319,208
|
1,000人以上2,000人未満
|
438,051
|
452,739
|
2,000人以上3,000人未満
|
561,637
|
580,677
|
3,000人以上5,000人未満
|
676,368
|
699,760
|
5,000人以上10,000人未満
|
814,588
|
842,876
|
10,000人以上15,000人未満
|
1,029,033
|
1,065,481
|
15,000人以上20,000人未満
|
1,281,462
|
1,327,158
|
20,000人以上30,000人未満
|
1,453,028
|
1,505,252
|
30,000人以上
|
1,581,716
|
1,638,836
|
基本額算定表によると、投票日が休日で投票当日に開票を行う場合の開票所経費の基本額の内訳で大きな割合(9割程度)を占めているのは、投票所経費の場合と同様に、市町村の一般職員が正規の勤務時間外に開票所の事務(以下「開票所事務」という。)に従事する(以下、開票所事務に従事する者を「開票所事務従事者」という。)ことを想定して算定されている超過勤務手当である。ただし、開票所経費には、開票所事務従事者として賃金職員を雇い入れるのに必要な経費は計上されていない。
また、選挙人の数が3万人以上の開票区の開票所経費については、3万人を超える選挙人の数1万人ごとに、基本額算定表に表示された選挙人の数3万人以上の区分の基本額に地域加算等をした額の100分の30相当額を加算することとされている(以下、この額の加算を「開票所加算」という。)。
調整費については、貴省は、都道府県選挙管理委員会に対して事務連絡を発するなどして、その要望に係る支出が選挙事務の執行に不可欠であるか否かについて十分に検討することなどに留意するとともに、管内の市町村の選挙管理委員会に対しても周知するよう求めている。
基準法には選挙事務に必要な備品の購入について規定はなく、基本額算定表においても、備品の購入に係る経費は計上されていない。しかし、都道府県及び市町村は、投票所事務及び開票所事務の省力化を図るなどのため備品を購入し、執行経費として交付された額の中からその購入に係る費用の支出を行っている。
このことに関して、貴省は、前記の21年6月の通知の中で、備品の購入に当たっては、当該備品がなければ選挙の管理執行に支障を来すのかを十分に見極めた上で必要やむを得ないものに限るとし、単に耐用年数が到来したとの理由のみによる備品の買換えは、次回の選挙に備えるための経費と位置づけられるので、次回交付される執行経費で対応することとしている。
本院は、近年、市町村合併により市町村数や市町村の規模が変化していること、期日前投票が定着したこと、また開票時間の短縮等、選挙事務の効率化・迅速化が図られていることなどにかんがみ、基準法に基づき算定され都道府県及び管内の市町村に交付された執行経費について、合規性、経済性、有効性等の観点から、投票所事務、開票所事務等の執行の実態が基準法に基づく経費の算定の内容とかい離していないか、また、備品の購入状況は適切かなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、16都府県(注) 及び管内の188市町(19特別区及び8指定都市を含む。)において19年7月実施の第21回参議院議員通常選挙(以下「参議院選挙」という。)の際にこれらの都府県及び市町に交付された執行経費151億0592万余円並びに21年8月実施の第45回衆議院議員総選挙及び第21回最高裁判所裁判官国民審査(以下「衆議院選挙」という。)の際の同執行経費180億1604万余円を対象として、算定資料、経理補助簿等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 投票所事務の従事時間
投票日が休日の場合の投票所事務の従事時間は、投票所経費の基本額算定表において、投票時間の午前7時から午後8時までの13時間に事前準備及び後始末等の各1時間30分を加算した計16時間と想定されている。しかし、実際の従事時間について検査したところ、参議院選挙及び衆議院選挙ともに、188市町のうち183市町で16時間を下回っており、188市町全体の平均従事時間は参議院選挙では13.5時間、衆議院選挙では13.6時間となっていた。
イ 配置人数
188市町が参議院選挙及び衆議院選挙の時に設置した投票所それぞれ10,942か所及び10,818か所に基本額算定表上配置されることが見込まれる投票所事務従事者の人数を算出するとそれぞれ計96,282人及び計95,737人となるが、実際に配置されていた人数(以下「実配置人数」という。)は、それぞれ計84,241人及び計88,009人であった。そして、基本額算定表に定められた選挙人の数の区分に応じた配置人数の基準(以下「基準配置人数」という。)と実配置人数とを投票所別に比較したところ、実配置人数が基準配置人数を下回っていた箇所が、参議院選挙では10,942投票所のうち7,876か所(71.9%)、衆議院選挙では10,818投票所のうち6,887か所(63.6%)となっていた。
ウ 賃金職員の導入状況
投票所事務における賃金職員の導入の状況について検査したところ、基本額算定表上賃金職員の導入が見込まれている特別区及び指定都市の区のみならず、市町においても賃金職員が幅広く導入されていて、導入の割合は市町数では参議院選挙で52.1%、衆議院選挙で54.2%、投票所事務従事者数では参議院選挙で22.4%、衆議院選挙で23.7%となっていた。
エ 投票所事務従事者に対する超過勤務手当等
以上のことなどから、投票所事務従事者に対する超過勤務手当等の実績額は、表3のとおり、基本額算定表に基づく算定額を大きく下回る結果となっていた。
表3 投票所経費における超過勤務手当等
(単位:時間、千円)
区分
|
基本額算定表
|
実績
|
開差
|
||||
時間数
|
超過勤務手当等
|
時間数
|
超過勤務手当等
|
時間数
|
超過勤務手当等
|
||
参議院選挙
|
特別区及び指定都市の区
|
481,440
|
1,144,654
|
421,326
|
945,162
|
60,114
|
199,492
|
市
|
1,000,000
|
2,487,691
|
682,675
|
1,580,962
|
317,326
|
906,728
|
|
町
|
59,072
|
136,808
|
39,038
|
83,279
|
20,035
|
53,528
|
|
計
|
1,540,512
|
3,769,154
|
1,143,038
|
2,609,404
|
397,474
|
1,159,749
|
|
衆議院選挙
|
特別区及び指定都市の区
|
505,408
|
1,215,644
|
464,546
|
1,000,858
|
40,862
|
214,785
|
市
|
972,288
|
2,431,302
|
698,637
|
1,622,642
|
273,652
|
808,659
|
|
町
|
54,096
|
124,882
|
36,034
|
79,318
|
18,063
|
45,563
|
|
計
|
1,531,792
|
3,771,828
|
1,199,216
|
2,702,819
|
332,576
|
1,069,008
|
なお、投票所事務従事者に対して実際に支払われている超過勤務手当について検査したところ、一般職員の超過勤務手当について、基本額算定表に準じた時間単価、職員個人の俸給に応じた時間単価、一律の時間単価、一律の日額単価等を適用していたほか、超過勤務手当の支給に代えて代休を取得させている市町もあった。
ア 開票所事務の従事時間
開票所事務の従事時間は、開票所経費の基本額算定表において、5時間と想定されているが、188市町における実際の従事時間について検査したところ、参議院選挙では141市町(75.0%)が、衆議院選挙では160市町(85.1%)がそれぞれ5時間を下回っており、188市町全体の平均従事時間は参議院選挙で3.7時間、衆議院選挙で3.6時間となっていた。
イ 配置人数
188市町における開票所数は、参議院選挙では263か所、衆議院選挙では287か所であり、このうち開票所加算を適用した開票所は参議院選挙では200か所(76.0%)、衆議院選挙では207か所(72.1%)となっていた。
前記のとおり、開票所加算は、選挙人の数が3万人以上の開票区の開票所について3万人を超える選挙人の数1万人ごとに選挙人の数3万人以上の区分の基本額に地域加算等をした額の100分の30相当額を加算することとなっていることから、開票所経費の額の算定の基になっている開票所事務従事者の基準配置人数も同様の割合で加算されるものとみなすことができるので、これにより、4万人以上となる開票所における基準配置人数を試算して、これと実配置人数とを比較したところ、図1のような状況となっていた。
すなわち、選挙人の数が4万人以上の開票所においては、実配置人数が上記により試算した基準配置人数を下回っていて、選挙人の数が多くなるにしたがってその開差が著しく拡大する状況となっていて、開票所加算の加算率が実態とかい離していると思料された。
図1 開票所事務従事者における基準配置人数(試算)と実配置人数
そして、188市町が参議院選挙及び衆議院選挙の時に設置した開票所それぞれ263か所及び287か所における基準配置人数については、基本額算定表に基づく人数(4万人未満の開票所の分)と前記の開票所加算に基づく試算による人数(4万人以上の開票所の分)とを合計すると、参議院選挙では計105,542人、衆議院選挙では計106,525人となるが、実配置人数はそれぞれ計59,608人(56.4%)及び計60,959人(57.2%)とこれらを大幅に下回っていた。これを開票所ごとに比較したところ、参議院選挙では263開票所のうち228か所(86.6%)、衆議院選挙では287開票所のうち242か所(84.3%)において実配置人数が基準配置人数を下回っていた。
ウ 賃金職員の導入状況
開票所事務については、基本額算定表上賃金職員の導入が見込まれていないが、開票所事務における賃金職員の導入状況について検査したところ、投票所事務の場合と同様に賃金職員が導入されていて、導入の割合は、投票所事務ほど高くはないものの、市町数では参議院選挙で30.8%、衆議院選挙で33.5%、開票所事務従事者数では参議院選挙で5.5%、衆議院選挙で6.0%となっていた。
エ 開票所事務従事者に対する超過勤務手当等
以上のことなどから、開票所事務従事者に対する超過勤務手当等の実績額は、表4のとおり、基本額算定表に基づく算定額を大きく下回る結果となっていた。
表4 開票所経費における超過勤務手当等
(単位:時間、千円)
区分
|
基本額算定表
|
実績
|
開差
|
||||
時間数
|
超過勤務手当等
|
時間数
|
超過勤務手当等
|
時間数
|
超過勤務手当等
|
||
参議院選挙
|
特別区及び指定都市の区
|
229,035
|
713,857
|
83,630
|
287,516
|
145,405
|
426,340
|
市
|
286,505
|
833,583
|
129,971
|
369,516
|
156,534
|
464,066
|
|
町
|
12,170
|
34,007
|
9,130
|
23,157
|
3,041
|
10,850
|
|
計
|
527,710
|
1,581,448
|
222,731
|
680,191
|
304,979
|
901,257
|
|
衆議院選挙
|
特別区及び指定都市の区
|
241,345
|
762,874
|
87,885
|
295,316
|
153,460
|
467,558
|
市
|
280,565
|
821,872
|
130,106
|
372,239
|
150,459
|
449,633
|
|
町
|
10,715
|
29,958
|
7,320
|
19,071
|
3,395
|
10,887
|
|
計
|
532,625
|
1,614,706
|
225,311
|
686,627
|
307,314
|
928,078
|
なお、開票所事務従事者に対して実際に支払われている超過勤務手当について検査したところ、一般職員の超過勤務手当について、投票所事務従事者の場合と同様の状況が見受けられた。
参議院選挙においては、表5のとおり、11都府県管内の68市町に対して9億9527万余円の調整費が交付されていた。なお、衆議院選挙にかかる調整費は、会計実地検査時点において交付額が確定していなかったため検査していない。
表5 調整費の交付の状況 | |
(参議院選挙) | (単位:千円) |
金額及び市町数
\
都府県名
|
調整費
|
|
市町数
|
金額
|
|
山形県
|
—
|
—
|
栃木県
|
5
|
8,267
|
埼玉県
|
8
|
42,706
|
東京都
|
23
|
819,818
|
神奈川県
|
12
|
57,665
|
長野県
|
—
|
—
|
大阪府
|
4
|
21,150
|
兵庫県
|
6
|
24,982
|
島根県
|
1
|
1,961
|
岡山県
|
3
|
8,380
|
徳島県
|
2
|
7,045
|
愛媛県
|
—
|
—
|
福岡県
|
1
|
424
|
佐賀県
|
3
|
2,866
|
長崎県
|
—
|
—
|
熊本県
|
—
|
—
|
計
|
68
|
995,270
|
そして、調整費の交付額が最も多い東京都管内の19特別区及び4市についてみると、投票所経費、開票所経費、事務費等の多くの経費について調整費の要望が出されており、その要望内容には、国会の会期延長に伴う入場整理券の再作成費用等やむを得ない事情によると認められるもののほか、投票用紙読取分類機等の購入費用や選挙管理システム経費等があり、これらに対して調整費が交付されていた。このように多額の調整費が交付されていたが、貴省は、前記のように、その要望に係る支出が選挙事務の執行に不可欠であるか否かについて十分に検討することなどに留意するよう周知しているものの、調整費の交付に係る具体的な要件等を整備していない状況となっていた。
参議院選挙及び衆議院選挙に係る備品の購入状況について検査したところ、表6のとおり、188市町のうち161市町(85.6%)において、投票用紙自動交付機、投票用紙読取分類機、計数機、パソコン等の備品を参議院選挙で4億6116万余円、衆議院選挙で4億7680万余円購入していた。
表6 備品の購入状況及び投票日後の備品の購入状況
(単位:円)
都府県名
|
参議院選挙
|
衆議院選挙
|
||||||||
市町数
|
左のうち備品を購入していた市町数及び金額
|
左のうち投票日後に備品を納入していた市町数及び金額
|
市町数
|
左のうち備品を購入していた市町数及び金額
|
左のうち投票日後に備品を納入していた市町数及び金額
|
|||||
山形県
|
9
|
7
|
25,165,255
|
4
|
18,150,957
|
9
|
8
|
7,438,761
|
1
|
191,762
|
栃木県
|
16
|
16
|
50,427,449
|
5
|
8,737,650
|
16
|
16
|
39,425,640
|
4
|
5,553,618
|
埼玉県
|
15
|
15
|
27,387,642
|
1
|
4,935,000
|
15
|
15
|
40,220,965
|
1
|
308,888
|
東京都
|
23
|
19
|
64,564,090
|
1
|
152,985
|
23
|
21
|
94,004,085
|
—
|
—
|
神奈川県
|
13
|
11
|
21,468,033
|
3
|
5,697,510
|
13
|
8
|
25,608,019
|
—
|
—
|
長野県
|
11
|
11
|
51,486,626
|
10
|
39,362,846
|
11
|
9
|
30,025,200
|
—
|
—
|
大阪府
|
11
|
11
|
56,961,605
|
—
|
—
|
11
|
9
|
82,782,282
|
—
|
—
|
兵庫県
|
14
|
11
|
34,303,674
|
—
|
—
|
14
|
12
|
30,411,324
|
1
|
26,250
|
島根県
|
10
|
7
|
8,934,507
|
—
|
—
|
10
|
6
|
3,538,500
|
—
|
—
|
岡山県
|
10
|
7
|
7,850,335
|
—
|
—
|
10
|
8
|
8,593,720
|
—
|
—
|
徳島県
|
9
|
5
|
13,752,917
|
2
|
1,551,000
|
9
|
7
|
13,042,504
|
1
|
1,442,174
|
愛媛県
|
9
|
6
|
6,705,739
|
1
|
1,689,450
|
9
|
8
|
20,703,648
|
1
|
4,095,000
|
福岡県
|
8
|
7
|
9,142,640
|
2
|
3,376,275
|
8
|
7
|
14,164,807
|
1
|
210,000
|
佐賀県
|
9
|
8
|
14,800,655
|
1
|
483,000
|
9
|
8
|
16,868,865
|
—
|
—
|
長崎県
|
9
|
8
|
17,733,523
|
3
|
8,363,911
|
9
|
8
|
14,527,870
|
—
|
—
|
熊本県
|
12
|
12
|
50,484,621
|
3
|
13,971,405
|
12
|
11
|
35,448,945
|
—
|
—
|
計
|
188
|
161
|
461,169,311
|
36
|
106,471,989
|
188
|
161
|
476,805,135
|
10
|
11,827,692
|
そして、備品の納入時期を検査したところ、投票日(参議院選挙19年7月29日、衆議院選挙21年8月30日)後に納入されているものが、表6のとおり、参議院選挙において36市町で1億0647万余円、衆議院選挙において10市町で1182万余円見受けられた。
さらに、これらのうち参議院選挙の投票日後に納入された備品について、その契約及び納入時期をみると、図2のとおり、選挙から5か月以上経過した翌年1月から3月に集中している状況(投票日後の備品の納入に係る金額の74.3%)となっていた。
このように、投票日後の年度末に備品が多く納入されていることについて、当該市町の選挙管理委員会事務局の多くは、これら備品の購入目的を次回の選挙の用に供するためなどとしている。
投票所経費及び開票所経費の基本額の算定の基礎となっている従事時間数や配置人数等が選挙事務の執行の実態とかい離していたり、開票所加算が実態を適切に反映したものとなっていなかったり、次回の選挙の用に供する備品を購入していたりなどしている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。
ア 投票所経費及び開票所経費の基本額の算定の基となっている選挙事務従事者の従事時間数、配置人数、賃金職員の導入等について、都道府県等の選挙事務の執行の実態を十分に把握しておらず、経費の算定に適切に反映させていないこと
イ 開票所加算の措置を講ずる開票所の実態を十分把握しておらず、加算率を基準法制定後一度も見直していないこと
ウ 調整費の要望に係る支出を避けることのできない事故その他特別な事情により当該選挙の執行に不可欠なものに限定する具体的な手続等が整備されておらず、審査が十分でないこと
エ 備品の購入の実態が経費の算定に反映されておらず、また、備品の購入について当該備品がなければ選挙の管理執行に支障を来すのかを十分に見極めた上で必要やむを得ないものに限るとする周知が徹底していないこと
国会議員の選挙等の実施に当たっては、今後も多額の執行経費が交付されることが見込まれることから、早急に経費の見直し等を行い、執行経費の適正化を図る必要があると思料される。
ついては、貴省において、執行経費の交付額の算定を選挙事務の実態に即したものとすることなどにより執行経費の適正化を図るよう、次のとおり意見を表示する。
ア 投票所経費及び開票所経費の算定の基になっている選挙事務従事者の従事時間数、配置人数及び賃金職員の導入について、実態を調査し、基本額の算定に反映させること
イ 開票所加算の対象となる開票所の実態を調査した上で、加算率の見直し等を行うこと
ウ 調整費による支出を避けることのできない事故その他特別の事情により当該選挙の執行に不可欠なものに限定するため、関係者に対して交付要件をあらかじめ周知するとともに、具体的な手続を定めて調整費の要望に対し十分な審査を行うこと
エ 選挙事務における備品の購入の実態を調査し、経費の算定に適切に反映するよう検討すること、また、備品の購入に当たり、次回選挙に備えるための備品購入を行わないよう周知をより一層徹底すること