会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)法務本省 | (項)法務省施設費 |
(項)矯正施設民間開放推進費 | |||
平成19年度は、 | (項)法務省施設費 | ||
(項)矯正官署 | |||
(項)矯正収容費 | |||
(項)刑務所作業費 | |||
部局等 | 法務本省 | ||
契約の概要 | PFI手法により、社会復帰促進センターの給食業務、庶務事務支援業務等の運営事業等を民間事業者に実施させるもの | ||
契約 | 平成17年6月〜19年6月 一般競争契約 | ||
契約の相手方 | 社会復帰サポート美祢株式会社等4会社 | ||
契約件数及び契約金額 | 4件 | 2077億6362万余円(平成17年度〜37年度) | |
支払額 | 275億3396万余円(平成19年度〜21年度) | ||
予定年間収容延人員に基づく食材費相当額 | 19億0351万余円(平成19年度〜21年度) | ||
実際の年間収容延人員に基づく食材費相当額 | 13億7169万余円(平成19年度〜21年度) | ||
食材費相当額の開差額 | 5億3180万円(平成19年度〜21年度) |
(平成22年10月26日付け 法務大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求する。
記
貴省は、刑務所等の刑事施設における過剰収容状態とそれに伴う処遇環境の悪化、職員の負担の増加等を緩和、解消するに当たり、職員の定員増のみで対応することは困難であるとして、刑務官等の職員以外の者が実施することが可能な業務を民間事業者に行わせることとしている。そして、社会復帰促進センター(以下「センター」という。)という新たな刑務所を設置することとし、その整備及び運営事業を、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)に基づくPFI手法(注)
により契約を締結した民間事業者に実施させている。
貴省は、平成17年度に美祢社会復帰促進センター(以下「美祢センター」という。)、18年度に島根あさひ社会復帰促進センター(以下「島根あさひセンター」という。)それぞれの整備及び運営事業に係る契約を、19年度には播磨社会復帰促進センター(以下「播磨センター」という。)及び喜連川社会復帰促進センター(以下「喜連川センター」という。また、これらを合わせて「4センター」という。)それぞれの運営事業に係る契約を、それぞれ異なる民間事業者と締結しており、その状況は、表1のとおりである。なお、播磨センター及び喜連川センターについては、貴省が施設の整備を実施し、施設完成後の運営事業のみを民間事業者に実施させている。
センター名
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項目
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美祢センター | 島根あさひセンター | 播磨センター | 喜連川センター |
契約件名 | 美祢社会復帰促進センター整備・運営事業 | 島根あさひ社会復帰促進センター整備・運営事業 | 播磨社会復帰促進センター等運営事業 | 喜連川社会復帰促進センター等運営事業 |
契約年月日 | 平成
17年6月21日
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18年10月20日 |
19年5月31日 |
19年6月5日 |
契約終期 | 37年3月31日 | 38年3月31日 | 34年3月31日 | 34年3月31日 |
事業者名 | 社会復帰サポート美祢株式会社 | 島根あさひソーシャルサポート株式会社 | 播磨ソーシャルサポート株式会社 | 社会復帰サポート喜連川株式会社 |
契約金額(円) | 52,272,356,810 | 92,122,018,122 | 24,676,745,091 | 38,692,499,977 |
運営開始年月日 | 19年4月1日 | 20年10月1日 | 19年10月1日 | 19年10月1日 |
収容定員 | 1,000人 | 2,000人 | 1,000人 | 2,000人 |
21年度までの支払額(円) | 8,712,059,460 | 7,896,172,980 | 4,254,611,160 | 6,671,120,690 |
貴省は、契約書等において、センターに収容する対象者の条件を、刑務所への収容が初めてであること、犯罪傾向が進んでいないことなどの条件を満たす者とし、このような条件を満たす収容対象者のみを各センターに順次収容することとして、予定収容時期及び予定収容人員を表2のとおりとした。そして、民間事業者は、表2の予定収容時期のそれぞれの時期までにそれぞれに対応する人員の収容が可能となるよう維持管理・運営業務を実施することとしている。
センター名
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予定収容時期
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美祢センター | 島根あさひセンター | 播磨センター | 喜連川センター |
運営開始日まで | 250人 | — | — | — |
3か月後まで | 500人 | 500人 | — | — |
6か月後まで | 750人 | 1,000人 | 1,000 | 2,000人— |
9か月後まで | 1,000人 | 1,500人 | \ | \ |
12か月後まで | \ | 2,000人 | \ | \ |
本件4契約の締結に当たっては、それぞれ総合評価落札方式により落札者及び事業費が決定されており、落札者は、それぞれの契約書等で定められている予定収容時期及び予定収容人員、並びに運営業務要求水準書等で示しているサービスの水準をすべて考慮して事業費を算定しているが、契約書において、事業費は、維持管理・運営業務等に係る一切の対価とされ、一体の対価として支払われることとされていて、業務ごとの内訳、明細等は明らかにされていない。
刑務所等の刑事施設における被収容者に対しては、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)に基づいて食事を支給することとなっており、事業費には予定収容人員に係る給食業務の費用である食材費等が含まれている。
事業費の支払については、原則として、契約の終了時までの毎年度四半期ごとの均等払いとしており、それぞれの契約締結以降、四半期ごとに、契約時に取り決められた金額を支払っている。
本院は、経済性等の観点から、事業費は収容人員の実態を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して、貴省本省及び4センターにおいて、前記の運営事業等のうち、特に給食業務を対象に、契約書、収容人員に係る資料、4センターの契約相手方である民間事業者4社から提出を受けた関係資料等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、4センターにおける給食業務は、本件事業の契約者である上記の民間事業者4社からそれぞれ委託を受けた給食業者が実施している。給食業者は、給食業務の実施に当たり、翌月1か月分の献立を作成して、各センターの長の承認を受けた後、各センターの担当部署から示される直近の収容人員及び入出所予定人員等が示された翌月の収容人員の情報を基に、おおむね1か月又は1週間単位で給食材料の調達を行っている。そして、調理の前日等に各センターの担当部署から示される翌日等の収容人員の情報に基づいて実際の給食数を決定している。
そこで、この実際の給食数の基となっている4センターにおける収容人員の状況をみたところ、表3のとおりとなっており、収容人員が収容定員に達していない状況が続いていて、事業費の算定の基となっている前記の予定収容人員と実際の収容人員との間には大きな開差が生じていた。
センター名
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項目
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美祢センター | 島根あさひセンター | 播磨センター | 喜連川センター |
運営開始年月日 | 平成 19年4月1日 |
20年10月1日 |
19年10月1日 |
19年10月1日 |
収容定員 | 1,000 | 2,000 | 1,000 | 2,000 |
収容定員に達すると設定した時期の収容人員 | 477(47.7%) (20年1月1日) |
908(45.4%) (21年10月1日) |
704(70.4%) (20年4月1日) |
1,146(57.3%) (20年4月1日) |
19年度1日平均収容人員 | 309 | — | 361 | 533 |
年度末収容人員 | 567 | — | 704 | 1,146 |
20年度1日平均収容人員 | 723 | 261 | 884 | 1,540 |
年度末収容人員 | 841 | 532 | 924 | 1,611 |
21年度1日平均収容人員 | 795 | 883 | 795 | 1,437 |
年度末収容人員 | 749 | 1,351 | 699 | 1,372 |
しかし、本件契約書には、物価変動、運営業務要求水準書の変更、債務不履行等に係る事業費の増減額については取決めがされているものの、実際の収容人員が予定収容人員に満たない場合の減額については取決めがされていない。このため、実際の収容人員が、予定収容人員を下回っているのに、食材費を減額することなく事業費を支払っていた。
そこで、貴省による各契約の予定価格の積算における契約期間中の食材費総額を総収容延人員で除した値に、落札比率(予定価格に対する契約金額の割合)を乗じた各契約それぞれの食材費単価を用いて、契約書等から算出した予定年間収容延人員に基づく食材費相当額と実際の年間収容延人員に基づく食材費相当額とを算出の上、比較すると、19年度から21年度 までの間における4センターの合計で前者は19億0351万余円、後者は13億7169万余円となっていて、約5億3180万円の開差が生じていた。
したがって、食材費については予定収容人員に基づく額を事業費に含めて支払うのではなく、実際の収容人員に応じた支払にすべきであると認められる。
現に、貴省は、刑事施設の運営業務の民間委託の一環として、22年4月に、既存の静岡、笠松、黒羽各刑務所における業務の一部を契約期間7年で民間事業者に委託する契約を締結しており、この契約の委託業務にも給食業務が含まれているが、食材費については、4センターと異なり、契約書等において、実績に応じて精算払で支払うこととしており、具体的には、施設ごとの実際の収容延人員に契約で定めた食材費単価を乗じた金額を支払うこととしている。
4センターの事業契約において、実際の収容人員が予定収容人員を下回った場合の事業費の減額について取決めがされておらず、食材費が過大に支払われている事態は適切とは認められず、是正を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、4センターの事業契約の締結時、当時の刑務所等の過剰収容状態から、各契約期間の開始後1年以内に収容定員を充足し、以後契約期間の終了時まで常に収容定員どおりの人員を収容することになると見込んでいたこと、運営開始後、各センターの収容状況から予定収容人員を下回る場合があることが判明したのに、その実態に応じて事業費の節減を図るという認識が十分でなかったことなどによると認められる。
近年、依然として収容率が高い刑務所等もあるが、過剰収容状態は一定程度解消しており、4センターにおいても、実際の収容人員は予定収容人員を下回っていて、今後も予定収容人員を下回ることがあると見込まれる。
ついては、貴省において、実際の収容人員に対応して大きく変動する食材費については、これまでのように予定収容人員に基づく額を事業費に含めて支払うのではなく、実際の収容人員に応じた適切な支払を行うこととなるよう契約を変更するなどの是正の処置を要求する。