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概算払により交付した補助金等について、速やかに額の確定手続を完了させ、国庫に返納させるべき補助金等が補助事業者等に滞留しないよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの


(1) 概算払により交付した補助金等について、速やかに額の確定手続を完了させ、国庫に返納させるべき補助金等が補助事業者等に滞留しないよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生労働本省 (項)科学研究費
    (項)保健衛生諸費
    (項)保健衛生施設整備費
部局等 厚生労働本省
額の確定手続が完了していない補助金等のうち実績報告書上の余剰額があるもの 11件(平成18、19両年度)
上記に係る補助金の交付先 5法人
上記に係る実績報告書上の余剰額(平成21年12月末現在) 2億0265万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

  概算払により交付した補助金等の国庫返納等について

(平成22年4月7日付け 厚生労働大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 概算払により交付した補助金等の額の確定等の概要

(1) 概算払による支出

 国が行う支出は、会計制度上、支出すべき債務金額が確定した後に行うことを原則としている。一方で、経費の性質上支出すべき債務金額の確定前において支払をしなければ事務に支障を及ぼすような経費については、会計法(昭和22年法律第35号)第22条の規定により、概算払をすることができることになっており、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第58条において、補助金、負担金、交付金等は、概算払をすることができる経費とされている。
 また、概算払は、債務金額が確定していないものについて、事前に債務金額を概算して支出するものであるから、その性質上事後において必ず精算を行い、確定した債務金額が概算払により支出した額を下回り、余剰が生じた場合、国は支出を受けた者に対して返納を求めることになる。

(2) 補助金等の額の確定に係る手続

 国の支出のうち、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)の適用を受ける補助金、負担金、交付金等(以下「補助金等」という。)については、その対象となる補助事業等の完了後に、同法第15条に規定された額の確定手続が行われることとなる。
 すなわち、各省各庁の長は、補助事業者等からの補助事業等の成果を記載した補助事業等実績報告書(以下「実績報告書」という。)の提出を受けて、その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付決定の内容等に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは、交付すべき補助金等の額を確定して、当該補助事業者等に通知しなければならないこととされており、これにより、額の確定手続が完了することとなっている。
 そして、各省各庁の長は、同法第18条第2項の規定により、確定した額を超える補助金等が概算払により既に交付されているときは、期限を定めてその返還を命じなければならないとされている。

(3) ADAMSにおける概算払の処理

 国の歳出に係る事務については、原則として、官庁会計システム(平成20年12月までは官庁会計事務データ通信システム。Governmental Accounting affairs Data Communication Management Systems。以下「ADAMS」という。)を用いて処理することとされており、概算払による支出を行う場合には、ADAMSで支出決定決議書を作成する際に予算科目、支出先、金額、支払予定日等を入力するほか、概算払である旨及び精算予定日を入力することとなっている。
 そして、補助金等を概算払により支出した後、当該補助金等の額の確定手続が完了した場合には、ADAMSに補助金等の確定額を入力するなどの精算処理を行うこととなっている。
 また、ADAMSでは、概算払により支出したものについて、精算予定日以前に「概算払精算予定一覧表」を、また、精算予定日を経過しているが精算処理が行われていないものについては随時「概算払未精算一覧表」をそれぞれ出力できるようになっている。これらの一覧表を活用することにより、精算処理が行われていない補助金等を網羅的に把握、管理することが可能となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 概算払により交付した補助金等については、補助事業等が予定どおり実施されなかったなどのため、概算払により既に交付した額が交付すべき補助金等の額を超えた場合には、その差額は余剰となる。そして、このように余剰分が生じた場合には、額の確定手続が遅延すると、その分だけ当該余剰分が補助事業者等に滞留することとなることから、速やかに額の確定手続を完了して、国庫に返納させる必要がある。
 しかし、本院が参議院から検査するよう要請を受け21年10月14日に報告した「各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について 」の検査において、貴省所管の公益法人(注) のうち8法人を抽出して会計実地検査を行ったところ、このうちの4法人に対して貴省が概算払により交付した補助金について、額の確定手続が長期にわたって完了していなかったために、国庫に返納すべき補助金が滞留していた事態が見受けられた。
 これらの補助金については国庫返納の処置が執られたが、本院は、貴省における上記の事態を踏まえ、合規性、効率性等の観点から、概算払により交付した補助金等について、額の確定手続が遅延しているために国庫に返納させるべき補助金等が滞留しているものはないか、額の確定及び返納についての指導及び事務手続の進ちょく管理が適切になされているかなどの点に着眼して、厚生労働本省(以下「本省」という。)が18、19両年度に一般会計から公益法人に対して概算払により交付した補助金等を対象に直ちに検査することとした。
 そして、検査に当たっては、前記の参議院への報告に係る検査の際に各公益法人から徴した資料を基に、参議院への報告の直後である21年10月26日(以下「調査基準日」という。)現在における概算払や額の確定の状況等に関する調書を貴省から徴して、当該調書を分析するとともに、本省等において会計実地検査を行った。

 公益法人 ここでは、平成18年に改正される前の民法(明治29年法律第89号)第34条の 規定に基づいて設立された社団法人及び財団法人を指す。以下同じ。

(検査の結果)

(1) 概算払により交付した補助金等に係る実績報告書上の余剰額の状況

 本省が、18、19両年度に公益法人に対して概算払により交付した補助金等は、表1のとおり、113法人に対する計317件(概算払による補助金等交付額計504億2802万余円)であり、これら317件の補助金等に係る額の確定手続の状況についてみると、88法人に対する185件は、補助事業等完了年度の翌年度末においてもなお額の確定手続が完了していなかった。さらに、18法人に対する47件は、補助事業等完了後1年6か月超を経過した調査基準日において依然として額の確定手続が完了していない状況となっていた。

表1
 概算払により交付した補助金等の額の確定手続の状況

年度 概算払による補助金等 補助事業等完了年度の翌年度末において手続が完了していなかったもの
 
うち調査基準日においても手続が完了していないもの
法人数 件数 交付額(千円) 法人数 件数 交付額(千円) 法人数 件数 交付額(千円)
平成 18 92 150 23,759,237 74 96 11,582,181 11 18 5,270,497
    19 102 167 26,668,783 68 89 16,465,866 18 29 9,281,415
113 317 50,428,021 88 185 28,048,047 18 47 14,551,912
(注)
 「計」欄の法人数については、平成18、19両年度とも該当する法人が、「概算払による補助金等」において81あり、「補助事業等完了年度の翌年度末において手続が完了していなかったもの」において54あり、「うち調査基準日においても手続が完了していないもの」において11あるため、これらの重複を控除している。

 そして、これら47件のうち5法人に対する11件については、表2のとおり、補助事業者である法人が貴省に提出した実績報告書において、交付を受けた補助金に余剰が生じているとされており、その余剰とされた額(以下「実績報告書上の余剰額」という。)は計2億0265万余円に上っていた。

 調査基準日においても額の確定手続が完了していない補助金等のうち、実績報告書上の余剰額があるもの

年度 法人数 件数 実績報告書上の余剰額
          (千円)
補助事業が完了した日から調査基準日までの期間
平成 18 4 4 40,110 2年6か月超
    19 5 7 162,541 1年6か月超
5 11 202,652
(注)
 「計」欄の法人数については、平成18、19両年度とも該当する法人が4法人ある ため、この重複を控除している。

(2) 概算払により交付した補助金等に係る額の確定等についての指導等の状況

 前記表1のとおり、本省において一般会計から公益法人に対して概算払により交付した補助金等に係る額の確定手続の完了状況をみると、18、19両年度に交付した補助金等計317件のうち、補助事業等完了年度の翌年度末においてもなお額の確定手続が完了していなかったものが計185件と6割近くを占めている。
 このような状況を踏まえ、本省において一般会計に係る支出事務を担当している大臣官房会計課における補助金等担当課への指導状況及び額の確定手続の進ちょく管理の状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア 補助金等担当課への指導状況

 大臣官房会計課は、毎年度、各補助金等担当課に対して、過年度の補助金等の額の確定を早急に行うことを求める通知を発出しており、さらに、前記の本院の参議院への報告の後の21年10月28日には、20年度以前の補助金等の額の確定について、実績報告書が適正と認められたものは早急に額の確定、返還の手続を行い、くれぐれも補助事業者等に国費が長期にわたり滞留することのないよう努めること、特に19年度以前分でいまだに額の確定等の手続が完了していないものは、21年12月中に終わらせるよう速やかに手続を進めることを求める通知を改めて発出している。
 しかし、実績報告書上の余剰額がありながら調査基準日においても額の確定手続が完了していない前記の補助金11件(実績報告書上の余剰額計2億0265万余円。表2参照。 )について、21年12月末までの額の確定手続の完了状況についてみたところ、この間に額の確定手続が完了したものはなく、大臣官房会計課の通知により事態が改善されているとは言えない状況となっていた。

イ 額の確定手続の進ちょく管理の状況

 大臣官房会計課には、補助金等担当課から補助事業者等に発出した補助金等に係る額の確定通知の写しが回付されていた。しかし、大臣官房会計課は、当該確定通知の写しと「概算払未精算一覧表」等のADAMSの概算払に係るデータを突合するなどしておらず、額の確定手続の進ちょく状況について網羅的な把握、管理を行っていなかった。また、同課は、毎年度、各補助金等担当課から額の確定手続が完了していない過年度分の補助金等について調書を提出させているが、一部の補助金等担当課が調書を作成していないなどのために、額の確定手続の進ちょく状況の管理手段としては十分なものとなっていなかった。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

 このように、実績報告書上の余剰額がある補助金の額の確定手続が長期にわたって完了していないため、返納させるべき補助金が補助事業者に滞留したままとなっていたり、大臣官房会計課において額の確定手続の進ちょく状況を網羅的に把握、管理していなかったりしている事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、本省の補助金等担当課において、速やかに補助金等を返納させることの必要性を十分に認識しておらず、額の確定手続が適時に行われるような事務処理態勢になっていないこと、大臣官房会計課において、「概算払未精算一覧表」等が有効に活用されていないなど概算払により交付した補助金等に係る額の確定手続の進ちょく状況を網羅的に把握、管理して支出手続を適切に執行させるのに有効な事務手続が十分に整備されていなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

 概算払による補助金等の交付は、補助金等の額が確定していないものについて事前にその金額を概算して支出するものであることから、補助事業等が完了した後は、速やかに額の確定手続を完了させて、返納させるべき補助金等が補助事業者等に滞留しないようにする必要がある。
 ついては、貴省において、実績報告書上の余剰額がありながら額の確定手続が完了していなかった前記11件の補助金を含め、20年度以前に概算払により交付された補助金等について速やかに額の確定手続を完了させ、確定した額を超える補助金等があるものについては当該補助金等を国庫に返納させる処置を講ずるよう是正の処置を要求し及び21年度以降に概算払により交付した補助金等の国庫返納等について、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 早期に額の確定手続を完了させることの重要性について補助金等担当課に周知徹底するとともに、特に国庫返納が必要となるものについては、可能な限り速やかに額の確定手続を完了させることができるような事務処理態勢とすること
イ 額の確定通知の写しと「概算払未精算一覧表」等のADAMSの概算払に係るデータとを突合するなどして、補助金等の額の確定手続の進ちょく状況を網羅的に把握、管理する体制を整備すること