会計名 | (1) | 食料安定供給特別会計(調整、国営土地改良事業両勘定) | ||
(2) | 農業共済再保険特別会計(家畜、果樹、園芸施設各勘定) | |||
(3) | 国有林野事業特別会計 | |||
部局等 | (1)、 | (2)農林水産本省 | ||
(3) | 林野庁 | |||
一般会計からの繰入れの概要 | 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第6条等の規定に基づき、各特別会計において経理されている事務及び事業に係る経費のうち、一般会計からの繰入れの対象となるべき経費の財源に充てるために必要があるときに限り、予算で定めるところにより、一般会計から当該特別会計に繰り入れるもの | |||
過大になっている一般会計からの繰入金 | (2) | 家畜勘定 | 18億1312万円 | (平成20年度) |
果樹勘定 | 8億1656万円 | (平成20年度) | ||
園芸施設勘定 | 5億3479万円 | (平成20年度) | ||
計 | 31億6448万円 | |||
減額できた一般会計からの繰入金 | (1) | 調整勘定 | 311億7128万円 | (平成20年度) |
国営土地改良事業勘定 | 2億5000万円 | (平成20年度) | ||
計 | 314億2128万円 | |||
(3) | 63億6908万円 | (平成20年度) |
(本件事態等の検査状況について、「第4章 第3節 特定検査対象に関する検査状況」に「一般会計からの繰入金を歳入としている特別会計における当該繰入金の繰入れ及び繰入れの対象となるべき経費に係る歳出予算の執行の管理等について 」を掲記した。)
特別会計への一般会計からの繰入れの適正化等について
(平成22年10月13日付け 農林水産大臣あて)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め並びに同法第36条の規定により意見を表示し及び改善の処置を要求する。
記
国は、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)に基づき、その経理を一般会計と区分して行うため特別会計を設置しており、平成20年度における特別会計は21会計となっている。このうち、食料安定供給特別会計等5特別会計については、農林水産大臣が、法令で定めるところに従い、管理することとされている。そして、食料安定供給特別会計等3特別会計においては、複数の事業が実施されていて、それぞれの事業収支を区分する必要があるとして勘定が設けられている(以下、勘定区分のない特別会計についても1勘定と数えることとする。)。
各特別会計の目的並びにその各勘定の20年度決算における収納済歳入額、支出済歳出額及びその差額である決算剰余金の状況は、表1
のとおりとなっている。この決算剰余金は、予算額に対する歳入の増加、歳出予算の繰越、不用等が要因となって生じるものである。
表1 | 各特別会計の目的及びその各勘定の平成20年度決算の状況等 | (単位:百万円) |
特別会計名 | 勘定名 | 収納済歳入額 A |
支出済歳出額 B |
決算剰余金 A—B |
|
目的 | |||||
食料安定供給 | 農業経営基盤強化事業、農業経営安定事業、食糧の需給及び価格の安定のために行う事業及び土地改良工事等に関する経理を一般会計と区分して行うため設置されているもの | 農業経営基盤強化 | 19,504 | 13,630 | 5,873 |
農業経営安定 | 210,165 | 175,316 | 34,848 | ||
米管理 | 635,290 | 632,305 | 2,984 | ||
麦管理 | 466,403 | 460,691 | 5,712 | ||
業務 | 13,746 | 13,746 | — | ||
調整 | 1,275,055 | 1,238,471 | 36,584 | ||
国営土地改良事業 | 119,127 | 108,097 | 11,030 | ||
農業共済再保険 | 国が経営する農業共済再保険事業に関する経理を一般会計と区分して行うため設置されているもの | 再保険金支払基金 | 21,766 | — | 21,766 |
農業 | 14,921 | 6,693 | 8,228 | ||
家畜 | 45,622 | 31,982 | 13,640 | ||
果樹 | 5,913 | 1,380 | 4,533 | ||
園芸施設 | 4,311 | 2,147 | 2,163 | ||
業務 | 963 | 963 | 0 | ||
森林保険 | 国が行う森林保険事業に関する経理を一般会計と区分して行うため設置されているもの | 11,067 | 2,751 | 8,315 | |
国有林野事業 | 国有林野事業を国有林野の有する公益的機能の維持増進を基本としつつ企業的に運営し、その健全な発達に資することを目的として、その経理を一般会計と区分して行うため設置されているもの | 459,061 | 451,002 | 8,059 | |
漁船再保険及び漁業共済保険 | 国が経営する普通保険等再保険事業、特殊保険再保険事業、漁船乗組員給与保険再保険事業及び漁業共済保険事業に関する経理を一般会計と区分して行うため設置されているもの | 漁船普通保険 | 7,253 | 6,806 | 446 |
漁船特殊保険 | 47 | — | 47 | ||
漁船乗組員給与保険 | 12 | — | 12 | ||
漁業共済保険 | 8,135 | 7,771 | 363 | ||
業務 | 963 | 963 | 0 |
特別会計の歳入のうち、一般会計からの繰入金は、事務事業の支出に充てるための財源の一部又は全部を、一般会計から特別会計又はその勘定に繰り入れるものである。
特会法第6条では、「各特別会計において経理されている事務及び事業に係る経費のうち、一般会計からの繰入れの対象となるべき経費(以下「一般会計からの繰入対象経費」という。)が次章に定められている場合において、一般会計からの繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り、予算で定めるところにより、一般会計から当該特別会計に繰入れをすることができる。」と規定されている。また、特会法附則第390条において、「第6条の規定は、この法律の施行前に他の法令において定められた一般会計から特別会計への繰入れに関する規定の適用を妨げるものではない。」と規定されている(以下、「一般会計からの繰入対象経費」と他の法令の規定により一般会計から繰り入れた財源が充てられる経費を合わせて「繰入対象経費」という。)。そして、食料安定供給特別会計については特会法第129条等、農業共済再保険特別会計については特会法第143条、国有林野事業特別会計については特会法第164条等、漁船再保険及び漁業共済保険特別会計については特会法第177条において、それぞれ繰入対象経費が規定されている。
貴省所管の特別会計では、20年度に、表2
のとおり、4特別会計11勘定において、一般会計からの繰入金を歳入としている。
表2 | 一般会計からの繰入れの状況等(平成20年度) | (単位:百万円、%) |
特別会計名 | 勘定名 | 収納済歳入額A | ||
うち、一般会計からの繰入額B | 繰入率 B/A×100 |
|||
食料安定供給 | 調整 | 1,275,055 | 240,288 | 18.8 |
国営土地改良事業 | 119,127 | 51,691 | 43.3 | |
農業共済再保険 | 農業 | 14,921 | 9,272 | 62.1 |
家畜 | 45,622 | 33,174 | 72.7 | |
果樹 | 5,913 | 3,485 | 58.9 | |
園芸施設 | 4,311 | 3,524 | 81.7 | |
業務 | 963 | 962 | 99.9 | |
国有林野事業 | 459,061 | 190,168 | 41.4 | |
漁船再保険及び漁業共済保険 | 漁船普通保険 | 7,253 | 6,680 | 92.0 |
漁業共済保険 | 8,135 | 7,698 | 94.6 | |
業務 | 963 | 963 | 99.9 |
各府省は、財政法(昭和22年法律第34号)第28条に規定する予算の添付書類の作成、公債発行額の決定等のために、「決算純計額報告書、決算見込額報告書及び決算見込純計額報告書等の様式並びに送付期限等について」(昭和33年蔵計第2138号)等に基づき、毎年度の12月末(第1次)、2月末(第2次)及び4月末(第3次)現在における一般会計及び特別会計の歳入歳出決算見込額を把握して、それぞれ翌月初旬に財務省に報告することとなっている。この報告においては、歳出予算現額のうち、年度内に執行しないことが確実と見込まれる「項」「目」の不用見込額について、その不用理由と併せて報告することとなっている。
本院は、合規性、効率性等の観点から、特別会計の歳入である一般会計からの繰入れは適切かつ効率的に行われているかなどに着眼して、貴省所管の5特別会計20勘定のうち、一般会計からの繰入金を歳入としている4特別会計11勘定の20年度決算を対象に、貴省本省、林野庁及び水産庁において会計実地検査を行った。そして、予算書、決算書等の関係書類によって、一般会計からの繰入れ及び繰入対象経費に係る歳出予算の執行はどのように管理されているかを分析するなどの方法により検査した。
検査したところ、食料安定供給特別会計の調整勘定及び国営土地改良事業勘定、農業共済再保険特別会計の家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定並びに国有林野事業特別会計、計3特別会計6勘定において、次のような事態が見受けられた。
ア 調整勘定
この勘定は、農業経営基盤強化勘定、農業経営安定勘定、米管理勘定及び麦管理勘定が必要とする資金の手当てを一括して行うとともに、米管理勘定、麦管理勘定及び業務勘定の損益を移し受けて整理するものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法第129条の規定により、農業経営安定事業に要する経費、農業経営安定事業の事務取扱費等とされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は2402億8803万余円で、表3
のとおり、20年4月から21年5月までの間に20年8月及び9月を除き毎月繰り入れられている。
表3 | 一般会計からの繰入れの状況(食料安定供給特別会計(調整勘定)) | (単位:百万円) |
年月 | 平成20年 4月 |
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||
繰入額 | 30,435 | 33,946 | 98,659 | 25,082 | — | — | 2,488 | ||
うち農業経営安定勘定繰入分 | 10,435 | 33,946 | 19,159 | 25,082 | — | — | 2,488 | ||
年月 | 11月 | 12月 | 21年 1月 |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 計 | |
繰入額 | 8,536 | 33,166 | 5,900 | 1,386 | 296 | 2 | 386 | 240,288 | |
うち農業経営安定勘定繰入分 | 8,536 | 6,166 | 400 | 1,386 | 296 | 2 | 386 | 108,288 |
この勘定では、上記の一般会計からの繰入金2402億8803万余円のうち1082億8803万余円を(項)農業経営安定事業費及び(項)事務取扱費業務勘定へ繰入の歳出予算の財源に充てるため、農業経営安定勘定に繰り入れている。
20年度決算における農業経営安定勘定の不用額は、上記の2「項」及び(項)予備費で計351億4948万余円となっており、その主なものは、(項)農業経営安定事業費(目)農業経営安定事業収入減少影響緩和対策交付金(以下、この交付金を単に「交付金」という。)の311億7128万余円となっている。
この交付金は、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成18年法律第88号)、同法施行規則(平成18年農林水産省令第59号)等に基づき、対象農産物に係る対象農業者の当年産の収入の額が、対象農産物に係る対象農業者の標準的な収入の額(注1)
を下回った場合に、その減収額の9割を、国費を財源とするこの交付金の交付と農業者が自ら積み立て積立金管理者に納付している積立金の返納により翌年度に補てんするもので、交付金と積立金の割合は3対1となっている。交付金に関する事務手続等は、水田・畑作経営所得安定対策実施要領(平成20年19経営第6631号農林水産省経理局長通知)によれば、次のとおりとなっている。
〔1〕 制度に加入しようとする対象農業者は、毎年4月から6月までの間に、積立申出書を地方農政事務所長等に提出する。
〔2〕 地方農政事務所長等は、積立申出書を提出した対象農業者(以下「対策加入者」という。)に、当年において積立金として積み立てる額等を通知する。
〔3〕 通知を受けた対策加入者は、7月末までに、通知された額を都道府県ごとに指定された積立金管理者に納付する。
〔4〕 対策加入者は、交付金の交付を受けようとするときは、翌年度の4月中に、前年産の生産実績数量を記載した交付申請書等を地方農政事務所長等に提出する。なお、対策加入者が交付金の交付を受けない場合には、その納付した積立金は、翌年度に引き続き制度に加入するときは翌年度の積立金に充てられ、加入しないときは返還される。
〔5〕 地方農政局長等は、交付申請書等を審査し、実施要領に基づいて算定された交付金額をもって交付決定を行い、申請者に対し、交付申請書等が提出された年度のおおむね7月までに交付する。
そして、交付金の財源は、上記の〔3〕 で積立金管理者に納付された積立金の総額の3倍の額を基本として翌年度に一般会計から繰り入れられる予算措置がなされている。20年度の交付金の歳出予算額は555億1673万余円であり、その財源に相当する額が20年7月までに一般会計((項)農業経営安定事業費等食料安定供給特別会計へ繰入)から調整勘定を経て農業経営安定勘定に繰り入れられている。
19年4月から6月までの間に上記の申出がなされて20年度に交付された交付金の交付状況をみると、前記の実施要領に定められた事務手続等のとおり20年5月から7月までに計243億4683万余円が対策加入者に交付されていて、20年度の交付金の交付実績額計243億4544万余円は、7月までにほぼ確定していた。
そして、貴省は、上記のとおり20年7月までに対策加入者に交付された額計243億4683万余円と歳出予算額555億1673万余円との差額311億6989万余円は不用になることを7月末に把握していたにもかかわらず、農業経営安定勘定において交付金の交付に必要な額を確保していくためには、一般会計から調整勘定を経て農業経営安定勘定に繰り入れた額と実際に交付した額との差額は特別会計で保有して翌年度(21年度)の財源の一部に充てることが必要であるなどとして、不用になる額に相当する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。
しかし、貴省が当年度に実際に交付しないことが明らかな額を一般会計から調整勘定を経由して農業経営安定勘定に繰り入れているのは、それを翌年度の財源として繰り越して保有することが目的であり、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」とする財政法第12条や、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」とする同法第44条の趣旨に沿わないと認められる。
したがって、翌年度の財源とするために不用になる額を一般会計から繰り入れることなく、交付金の交付に必要な額のみを一般会計から繰り入れることとしていれば、7月末に不用になると把握していた311億6189万余円及びその後に戻入等された139万余円の計311億7128万余円については、一般会計からの繰入れを減額することができ、同額が農業経営安定勘定において保有されている事態にはならなかったと認められる。
イ 国営土地改良事業勘定
この勘定は、国営土地改良事業特別会計が20年度から一般会計に統合されたことに伴い、10年度以前に国営土地改良事業の事業費の一部について借入金を財源とすることとして新規着工した地区のうち19年度末までに工事が完了していない地区について、当該事業が完了するまでの間、借入金を事業費の財源の一部とすることができるように経過勘定として設けられたものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法附則第231条第6項の規定により準用される附則第165条の規定により、土地改良工事に要する費用で国庫が負担するもの及び当該土地改良工事に要する費用のうち都道府県に負担させる費用とされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は516億9170万余円となっている。そして、この一般会計からの繰入金は、表4
のとおり、20年5月から8月まで及び21年1月から3月までの各月に繰り入れられている。
表4 | 一般会計からの繰入れの状況(食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)) | (単位:百万円) |
年月 | 平成20年 4月 |
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
繰入額 | — | 4,200 | 362 | 8,898 | 1,703 | — | — | |
年月 | 11月 | 12月 | 21年 1月 |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 計 |
繰入額 | — | — | 2,857 | 4,366 | 29,304 | — | — | 51,691 |
貴省は、国営土地改良事業勘定においては、特会法附則第231条第6項の規定により準用される附則第172条の規定により、土地改良事業負担金の算定の単位となる工事ごとに経理を行うこととされているため、毎年度1月末に、各地方農政局等から工事別に地区ごとの事業費の決算見込調書を提出させており、これを基に、2月末までに当該年度の歳出予算の執行見込額に対して必要となる国庫が負担する額及び借入金の額を算出している。そして、20年度においてもこの調書により、(項)土地改良事業費等3「項」の執行見込額に対して必要となる借入金の額を175億9664万余円と算出し、借入金の歳入予算額180億円との差額4億0335万余円は借入れを行わないこととしている。
一方、国庫が負担する額については、(項)土地改良事業費等3「項」の執行見込額514億4170万余円を繰り入れる必要があるとした。そして、21年2月までの繰入額が計223億8736万余円となっていることから、同年3月以降に繰入れを要する額は290億5434万余円になると把握していたにもかかわらず、地区ごとの決算で赤字とならないよう調整する必要があるとして、21年3月に上記の額に2億5000万円を加算した293億0434万余円を一般会計から繰り入れていた。
しかし、上記の2億5000万円については、執行見込額を超える額であり、一般会計から繰入れを要する額に含まれていないのであるから、繰り入れる必要はなく、21年3月に繰り入れられた293億0434万余円のうち2億5000万円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
この特別会計における家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定は、それぞれ、農業者が、家畜の死亡、疾病等、風水害等による果実の減収等又は園芸施設の損傷等によって受ける損害について、農業共済組合等が支払う共済金について農業共済組合連合会(以下「連合会」という。)が負う保険責任のうち、損害の一定の割合等を再保険する事業に関する経理を行うものである。
これらの勘定における繰入対象経費は、それぞれ特会法第143条第3項、第4項又は第5項の規定により、家畜共済再保険事業等、果樹共済再保険事業等又は園芸施設共済再保険事業等に関する費用で農業災害補償法(昭和22年法律第185号)第13条の2、第13条の3又は第13条の5の規定により国庫が負担するものとされており、国庫は共済加入者が支払うべき共済掛金(注2)
のうち一定割合を負担することとされている。また、家畜勘定において同法附則第150条の3第3項は、同条第1項の家畜共済損害防止事業交付金に相当する金額は、毎会計年度予算で定めるところにより、一般会計から繰り入れると規定している。
各勘定の一般会計からの繰入金の20年度歳入予算額は、各勘定において支払うべき共済掛金国庫負担金(以下「国庫負担金」という。)等の見積額と同額となっている。そして、それぞれのその見積額は、表5 のとおり計395億4890万余円と算出され、各勘定への一般会計からの繰入金は、表6 のとおり繰り入れられている。
勘定名 | 見積額 | 見積額の算出方法 | ||||
家畜 | 国庫負担金 325億3925万余円
|
平成18年度実績を基に推計された乳用牛等の家畜の種類ごとの共済加入予定頭数に、平均国庫負担対象共済金額、平均共済掛金率及び国庫負担割合を乗じて得た額の合計額 | ||||
家畜共済損害防止事業交付金 7億0200万余円
|
18年度実績を基に推計された乳用牛等の家畜の種類ごとの検査予定頭数に、1頭当たり損害防止事業交付金、国庫負担割合を乗じて得た額の合計額 | |||||
果樹 | 国庫負担金 34億8515万余円
|
18年度実績を基に推計されたみかんなどの果樹の標準収穫量や標準収穫金額等を基に総共済金額を算出し、これに平均共済掛金率及び国庫負担割合を乗じて得た額の合計額 | ||||
園芸施設 | 国庫負担金 35億2449万余円
|
18年度実績を基に推計されたプラスチックハウスなどの園芸施設の引受予定面積等を基に国庫負担対象共済金額を算定し、これに平均共済掛金率、国庫負担割合等を乗じて得た額の合計額 | ||||
計 |
|
表6 | 一般会計からの繰入れの状況(農業共済再保険特別会計(家畜、果樹、園芸施設各勘定)) | (単位:百万円) |
年月 | 平成20年 4月 |
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||
繰入額 | 額家畜勘定 | 1,469 | 1,526 | 1,580 | 5,699 | 2,021 | 2,304 | — | |
果樹勘定 | 163 | 7 | — | 33 | — | 60 | — | ||
園芸施設勘定 | 263 | 173 | 201 | — | 186 | 386 | — | ||
年月 | 11月 | 12月 | 21年 1月 |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 計 | |
繰入額 | 額家畜勘定 | — | — | — | 1,943 | 3,898 | — | 12,730 | 33,174 |
果樹勘定 | — | — | — | — | — | — | 3,220 | 3,485 | |
園芸施設勘定 | — | 143 | 70 | — | 460 | — | 1,638 | 3,524 |
本院が、連合会から毎月又は加入月に貴省に提出される家畜共済交付金交付申請書等により、各勘定において実際に共済加入者が支払うべき共済掛金のうち国が支払うべき国庫負担金の額を確認したところ、実際に農業共済組合等が引き受けた共済金額は国庫負担金の見積額の算出の基礎とした共済金額を下回っていた。このため、表7 のとおり、20年度に共済加入者が支払うべき共済掛金に対する国庫負担金の額は計363億8441万余円となり、一般会計から繰り入れられた額計395億4890万余円は、この額より計31億6448万余円過大になっていると認められる。
表7 | 実際に国が支払うべき国庫負担金の額等(平成20年度) | (単位:百万円) |
勘定名 | 共済加入者が支払うべき共済掛金総額に対する国庫負担金 A
|
国庫負担金として一般会計から繰り入れられた額 B
|
過大になっている額 B-A
|
家畜 果樹 園芸施設 |
30,726 2,668 2,989 |
32,539 3,485 3,524 |
1,813 816 534 |
計 | 36,384 | 39,548 | 3,164 |
そして、貴省は、過大になっている額については、家畜勘定及び園芸施設勘定では、21年度に特会法第146条第1項の規定により積立金として積み立てるなどしており、果樹勘定では、21年度に特会法第145条第3項において準用する同条第1項の規定により再保険金支払基金勘定へ繰り入れるなどしていて、20年度に国が実際に支払うべき国庫負担額を超えて繰り入れられたこれらの一般会計からの繰入金は、特別会計において保有されるなどの状況となっている。
したがって、貴省に提出される家畜共済交付金交付申請書等により共済の引受状況を把握することができるのであるから、上記の国庫負担金に係る一般会計からの繰入れは、各年度に国が実際に支払うべき国庫負担額を繰り入れることとする要があると認められる。
なお、21年度においても、家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定において同様の事態が見受けられ、この3勘定の国庫負担金の額は、貴省によれば計349億2912万余円となっており、一般会計から繰り入れられた額計387億8257万余円は、この額より計38億5344万余円過大になっている。
この特別会計における繰入対象経費は、特会法第164条の規定により、〔1〕 国有林野のうち公益林における松くい虫の駆除又はそのまん延の防止、標識の設置その他の森林保全に要する経費、〔2〕 国有林野における保安林の指定のための調査に要する経費その他の公益林の管理に関する事務に要する経費、〔3〕 森林計画の作成に要する経費、〔4〕 国有林野を利用して行う森林及び林業に関する知識の普及並びに林業技術の指導に要する経費、〔5〕 国有林野の管理経営上重要な林道の開設に要する経費その他の国有林野事業に係る事業施設費で政令で定めるもの並びに〔6〕 直轄治山事業に関する費用で国庫が負担するもの及び災害復旧事業等に関する事務取扱費とされている。また、国有林野事業の改革のための特別措置法(平成10年法律第134号。以下「特別措置法」という。)第19条は、この特別会計の負担に属する借入金について、予算の範囲内において、〔7〕 当該年度において支払うべき利子に充てるべき金額を、一般会計から繰り入れるものとすると規定している。そして、これらの繰入対象経費に対して、20年度において一般会計から繰り入れられた額は1901億6843万余円となっており、表8 のとおり、20年4月から21年3月まで毎月繰り入れられている。
表8 | 一般会計からの繰入れの状況(国有林野事業特別会計) | (単位:百万円) |
年月 | 平成20年 4月 |
5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | ||
繰入額 | 20,641 | 13,211 | 6,435 | 16,832 | 3,610 | 2,460 | 12,495 | ||
うち特会法に基づく分 | 20,641 | 5,462 | 6,435 | 16,832 | 1,503 | 2,460 | 12,495 | ||
うち特別措置法に基づく分 | — | 7,749 | — | — | 2,106 | — | — | ||
年月 | 11月 | 12月 | 21年 1月 |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 計 | |
繰入額 | 17,562 | 25,357 | 13,994 | 10,110 | 47,455 | — | — | 190,168 | |
うち特会法に基づく分 | 9,786 | 25,357 | 13,994 | 7,721 | 47,455 | — | — | 170,147 | |
うち特別措置法に基づく分 | 7,775 | — | — | 2,389 | — | — | — | 20,021 |
一般会計からの繰入金のうち〔7〕 の特別措置法に基づく利子の支払に充てるべき分については、その歳入予算額は財務省から指示された予算積算利率により算定した利子の支払予定額となっているが、貴省林野庁は、実際の繰入額を実績利率による利子支払実績額としている。
また、一般会計からの繰入金で特会法に基づく分のうち、前記〔6〕 の直轄治山事業の財源となる分については、20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)治山事業費等6「項」で計11億3611万余円となっているが、貴省林野庁は、21年2月下旬に、事業執行を行っている森林管理局等から聞取り調査を行うなどして、これらに係る不用見込額を計9億3367万余円と把握し、この不用見込額を一般会計からの繰入額に反映させて、この不用見込額に相当する額9億3367万余円を一般会計から繰り入れないこととしていた。
他方、前記〔1〕 から〔5〕 までの直轄治山事業以外の事業の財源となる分については、20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)国有林野事業費等4「項」で計177億6441万余円となっているが、貴省林野庁が21年2月末の時点で把握していた不用見込額は、計182億4082万余円であった(なお、決算における不用額が不用見込額を下回っているのは、貴省林野庁において、21年3月に、不用見込額に含まれていた(項)国有林野事業費の(目)職員基本給等3「目」の不用見込額計5億5431万円を(目)業績賞与に流用して支出したことなどによるものである。)。
しかし、貴省林野庁は、上記のように当該年度の経費としては支出する見込みがないものとして繰入対象経費に係る不用見込額を把握していたにもかかわらず、不用見込額のうち支出負担行為実施計画未計画となっていた10億3414万余円を除いて、これを一般会計からの繰入額に反映させていなかったため、上記の不用見込額に対応する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。その不用見込額に対応する財源の額は、上記4「項」の各「目」別の不用見込額に当該「目」別の歳出予算の財源に占める一般会計からの繰入金の割合を乗じて算出すると、73億2649万余円となる。
したがって、繰入対象経費に係る21年2月末の不用見込額182億4082万余円を一般会計からの繰入額に反映させていれば、林産物収入等の自己収入の収納額が見込額を下回るおそれを考慮しても、21年3月に繰り入れられた474億5589万余円のうち、不用見込額に対応する財源として繰り入れられた上記の73億2649万余円のうち63億6908万余円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
農業共済再保険特別会計の家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定において、一般会計からの繰入金が国庫が実際に負担すべき金額を超えて過大になっていて、この特別会計において保有されるなどの状況となっている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
また、食料安定供給特別会計の調整勘定において、農業経営安定勘定では当年度に交付を要しないため不用になることが確実な交付金の額を、同勘定における翌年度の交付金の財源として繰り越して保有することを目的として一般会計から繰り入れている事態は、前記のとおり財政法の趣旨に沿わないもので適切とは認められず、改善の要があると認められる。
さらに、特会法第6条によれば、一般会計からの繰入れは、特会法に定める一般会計からの繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り行うことができるとされているのに、〔1〕 食料安定供給特別会計の国営土地改良事業勘定において、歳出予算の執行過程で把握していた執行見込額を一般会計からの繰入額に反映させていない事態、〔2〕 国有林野事業特別会計において、歳出予算の執行過程で把握していた不用見込額を一般会計からの繰入額に反映させていない事態は、いずれも減額されずに繰り入れられた資金が決算剰余金となって有効に活用されないこととなるもので適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、一般会計からの繰入れは、特会法において繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り行うことができるとされていることについての認識が十分でなかったことなどのほか、次のことによると認められる。
ア 農業共済再保険特別会計の家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定において、各勘定が実際に国が支払うべき国庫負担額とかかわりなく歳入予算額をそのまま繰り入れることを慣行にしていること
イ 食料安定供給特別会計の調整勘定において、交付金の交付に必要な額を特別会計において継続して確保しておくことの適否についての検討が十分でなく、予算で定められたとおりの金額を一般会計から繰り入れて農業経営安定勘定に繰り入れることにしていること
ウ 食料安定供給特別会計の国営土地改良事業勘定において、執行見込額を超える額を一般会計から繰り入れることにしていること
エ 国有林野事業特別会計において、不用見込額を把握しているにもかかわらず、そのうちの支出負担行為実施計画未計画に係る額以外は一般会計から繰り入れることにしていること
一般会計からの繰入額が過大にならないようにすることはもとより、繰入れが特別会計における歳出予算の執行状況等に応じて適時適切に行われ、税収のほか国債の発行等により調達されて一般会計から特別会計へ繰り入れられた資金が有効に活用されることが求められる。
ついては、貴省において、一般会計からの繰入れを適正化するとともに、繰入額を抑制して一般会計からの繰入れを適切かつ効率的なものとするよう、次のとおり是正改善の処置を求め、並びに意見を表示し、及び改善の処置を要求する。
ア 農業共済再保険特別会計の家畜勘定、果樹勘定及び園芸施設勘定において、一般会計からの繰入金の額は共済の引受けにより各年度に国が実際に支払うべき国庫負担額とすることなどにより、一般会計からの繰入れを適正化すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)
イ 食料安定供給特別会計の調整勘定において、農業経営安定勘定における交付金の支払額が予算額を下回り不用になることが確定しているのに一般会計から予算額全額を繰り入れて農業経営安定勘定に繰り入れ、同勘定において翌年度の財源として繰り越すことを行わないようにするための方策を検討すること(同法第36条による意見を表示するもの)
ウ 食料安定供給特別会計の国営土地改良事業勘定において、歳出予算の執行過程で把握した執行の見込みを一般会計からの繰入額に確実に反映させること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)
エ 国有林野事業特別会計において、自己収入の収納の動向を適切に把握しつつ、歳出予算の執行過程で把握した不用の見込みを一般会計からの繰入額に確実に反映させること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)