所管、会計名及び科目 | (1) | 農林水産省所管 一般会計 (組織)農林水産本省 | |
(項)牛肉等関税財源国産畜産物競争力強化対策費等 | |||
(2) | 独立行政法人農畜産業振興機構(畜産勘定) | ||
(項)畜産振興事業費 | |||
平成8年10月1日から15年9月30日までは、 | |||
農畜産業振興事業団(畜産助成勘定) | |||
(項)畜産助成事業費 | |||
8年9月30日以前は、 | |||
畜産振興事業団(助成勘定) | |||
(項)助成事業費 | |||
部局等 | (1) | 農林水産本省 | |
(2) | 独立行政法人農畜産業振興機構(平成8年10月1日から15年9月30日までは農畜産業振興事業団、8年9月30日以前は畜産振興事業団)本部 | ||
補助の根拠 | (1) | 予算補助 | |
(2) | 独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号) | ||
平成8年10月1日から15年9月30日までは農畜産業振興事業団法(平成8年法律第53号)、8年9月30日以前は畜産物の価格安定等に関する法律(昭和36年法律第183号) | |||
基金設置法人 | (1) | 2公益法人 | |
(2) | 10公益法人等 | ||
上記の法人に設置造成された基金のうち資金が有効活用されていない基金 | (1) | 2基金 | |
(2) | 14基金 | ||
計 | 16基金 | ||
上記基金の資金保有額(補助金等相当額) | (1) | 38億9455万余円 | (38億9393万余円)(平成20年度末) |
(2) | 921億3455万余円 | (850億3916万余円)(平成20年度末) | |
計 | 960億2911万余円 | (889億3310万余円) | |
上記の補助金等相当額のうち有効活用されていない額 | (1) | 35億4724万円 | |
(2) | 368億6143万円 | ||
計 | 404億0867万円 |
(平成22年8月25日付け | 農林水産大臣 | あて) |
独立行政法人農畜産業振興機構理事長 |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
農林水産省は、肉用子牛生産の安定その他食肉に係る畜産の健全な発達を図り、農業経営の安定に資することを目的として、肉用子牛生産安定等特別措置法(昭和63年法律第98号)に基づき、毎年度の牛肉等関税を財源とした肉用子牛等対策として、自ら国庫補助事業を実施するとともに、独立行政法人農畜産業振興機構(平成8年10月1日から15年9月30日までは農畜産業振興事業団、8年9月30日以前は畜産振興事業団。以下「機構」という。)が実施する肉用子牛等対策の財源として、牛肉等関税財源畜産業振興対策交付金(9年度から14年度までは牛肉等関税財源農畜産業振興事業団交付金、8年度以前は牛肉等関税財源畜産振興事業団交付金。以下「牛関交付金」という。)等を機構に交付している。
機構は、独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)等に基づき、牛関交付金等を財源として、畜産物の生産又は流通の合理化を図るための事業その他の畜産業の振興に資するための事業で農林水産省令で定めるものについてその経費を補助する業務(以下「畜産業振興事業補助」という。)等を実施している。そして、畜産業振興事業補助に係る経理は機構の畜産勘定において行われており、同勘定には調整資金及び畜産業振興資金(8年10月1日から15年9月30日までは畜産助成資金、8年9月30日以前は助成勘定の資金)が置かれている。
上記の調整資金には、食肉等に係る畜産業振興事業補助等に必要な経費の財源に充てるなどのために牛関交付金が充てられており、一方、畜産業振興資金には、酪農関係事業等の畜産全般に係る畜産業振興事業補助等に必要な経費の財源に充てるために、牛関交付金とは別に農林水産省から交付される交付金等が充てられている。これら両資金の資金保有額(保有されている資金の額。以下同じ。)は、20年度末において調整資金1120億9474万余円、畜産業振興資金700億4607万余円、計1821億4081万余円となっており、また、両資金の資金保有額を合算した額は、3年度から20年度までの各年度末において、最低額でも1033億7469万余円(15年度末)と、常に1000億円を超えるものとなっている。
そして、農林水産省又は機構の補助金等の交付を受けて実施される事業には、補助金等の交付を受けた公益法人等(以下「法人」という。)が、当該補助金等を財源の全部又は一部として造成した基金により、畜産関係団体や生産者等に対して貸付け、債務保証、利子助成又は補助・補てんを行ったり、自ら調査等を行ったりしているものがある。
これら基金事業における財政資金の流れは次のとおりである(参考図1参照)
。
基金事業における財政資金の流れ
本院は、21年6月、参議院から国会法第105条の規定に基づき、牛肉等関税を財源とする肉用子牛等対策の施策等について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受け、これに対し検査を実施してその結果を報告 することを決定した。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、農林水産省又は機構から補助金等の交付を受けた法人が造成した基金について、有効性等の観点から、現下の厳しい国の財政事情の下で、基金が保有する財政資金は有効に活用されているか、基金の規模や必要性等の見直しは事業の進ちょく状況、社会経済情勢の変化、国の財政や機構の財務の状況等に応じて適時適切に実施されているかなどの点に着眼して検査した。
上記の要請に係る検査において検査対象とした25法人が造成した60基金のうち、21年度末までに事業を終了した37基金を除く12法人(注1) が造成した23基金(20年度末資金保有額1271億0884万余円、補助金等相当額1205億3067万余円(うち国所管基金(注2) 4基金(20年度末資金保有額109億8431万余円、補助金相当額115億0153万余円)、機構所管基金(注3) 19基金(20年度末資金保有額1161億2452万余円、補助金等相当額1090億2913万余円)))を対象として、農林水産省及び機構から、これら23基金に係る3年度から20年度までの状況に関する調書を徴して分析するとともに、農林水産省、機構及び上記12法人に対する会計実地検査を行った。
(注1) | 12法人 社団法人全国畜産経営安定基金協会、社団法人全国肉用牛振興基金協会、社団法人中央畜産会、社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会、社団法人日本家畜商協会、社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会、社団法人配合飼料供給安定機構、財団法人沖縄県畜産振興基金公社、財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構、財団法人畜産環境整備機構、日本ハム・ソーセージ工業協同組合、ホクレン農業協同組合連合会
|
(注2) | 国所管基金 農林水産省が牛肉等関税を財源とする肉用子牛等対策として交付した補助金を財源の全部又は一部として造成されている基金
|
(注3) | 機構所管基金 機構が交付した補助金等を財源の全部又は一部として造成されている基金
|
検査したところ、11法人が造成した16基金において、事業実績額(注4) と比較して多額の資金を保有していて、貴重な財政資金が有効に活用されていない事態が見受けられた(参考図2参照) 。
16基金の資金保有額及び事業実績額の推移
上記の16基金を態様ごとに示すと、次のとおりである。
通し番号 | 基金名 | 法人名 | 所管 | 使途 | 平成20年度末資金保有額 | |
補助金等相当額 | ||||||
1 | 備蓄基金 | 社団法人配合飼料供給安定機構 | 国 | 調査等その他 | 3億0477万余円 | 3億0415万余円 |
2 | 融資準備財産 | 社団法人全国肉用牛振興基金協会 | 機構 | 貸付け | 535億3555万余円 | 535億3555万余円 |
3 | 家畜防疫互助基金 | 社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会 | 機構 | 補助・補てん | 32億5226万余円 | 17億3742万余円 |
3基金(3法人) | 570億9259万余円 | 555億7713万余円 |
注(1) | 社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会は、平成21年4月に社団法人中央畜産会に統合されている。 |
注(2) | 基金名は平成20年度末現在のものを記載している。 |
これらの基金は、生産物価格の低落や病害の発生等の異常な事態が生じたときに、各法人が実施する生産者補給金の財源となる資金の貸付けや生産者の経済的損失の補償等に充てられるものである。
しかし、上記のような異常な事態が生ずる時期を予測することは困難であり、また、実際に生ずる頻度は低く、異常な事態が生じていない期間は長期にわたることが多い。そこで、3年度から20年度までの期間について、これらの基金の状況をみると、上記のような異常な事態が実際に生じた頻度は低く、期間の大宗を占める通常時においては、事業実績額が0円であったり、資金保有額と比較して著しく少額であったりなどしている。そして、各基金が保有する資金は、各基金が農林水産省や機構の定める基金事業の実施要綱に従って特定の目的のために造成及び使用されるものであることから、異常な事態が生じていない状況下においては、使用されることなく保有されたままになることとなる。
社団法人全国肉用牛振興基金協会(以下「全国協会」という。)は、機構から補助金等の交付を受けて「融資準備財産」を造成している(平成20年度末資金保有額535億3555万余円(補助金等相当額同額))。
本基金による事業は、肉用子牛生産者補給金制度の健全な運営を図るため、都道府県知事の指定を受けた都道府県肉用子牛価格安定基金協会(以下「指定協会」という。)において肉用子牛生産者補給金の一部に充てるための生産者積立金に不足が生じた場合に、指定協会に対して資金の貸付けを行うものである。
3年度から7年度までの各年度における事業実績額をみると、平均額は129億7401万余円であり、特に5、6両年度には、牛肉の輸入自由化の影響を受けて肉用子牛生産者補給金が増加したことに伴い生産者積立金が不足したため、168億3441万余円及び335億1346万余円と多額に上っている。このため3年度末には523億2045万余円であった資金保有額は6年度末には207億1587万余円と当該年度の事業実績額を下回る額にまで減少している(参考図参照)
。
しかし、8年度から20年度までの各年度における事業実績額をみると、事業実績があるのは、牛海綿状脳症(BSE)の発生による影響等があった11年度から16年度までであり、この間の事業実績額は最高額でも27億1967万余円(15年度)となっている。一方、同期間の各年度末における資金保有額をみると、最低額500億0257万余円(15年度末)は、同期間の各年度における事業実績額の最高額27億1967万余円(15年度)と比較して18倍となっており、また、平均額520億6962万余円は、事業実績額の平均額2億2986万余円と比較して226倍となっていて、必要以上に多額の資金を保有している(参考図参照)
。
なお、本基金については、21年度に全国協会が実施した基金の見直しの結果、同年度に437億3827万余円を機構へ返還している。しかし、本基金は、20年度末資金保有額535億3555万余円から、この返還額を差し引いても、なお97億9728万余円に上る多額の資金を保有していることとなる。
融資準備財産の資金保有額及び事業実績額の推移
このように、これら3基金では、異常な事態が実際に生じた頻度は低いのに、生ずる可能性の低い異常な事態に備えて、長期間にわたり個別の基金において必要以上に多額の資金を保有している。
通し番号 | 基金名 | 法人名 | 所管 | 使途 | 平成20年度末資金保有額 | |
補助金等相当額 | ||||||
4 | 畜産経営維持安定特別対策基金 | 社団法人全国畜産経営安定基金協会 | 国 | 補助・補てん | 35億8978万余円 | 35億8978万余円 |
5 | 家畜疾病経営維持基金 | 社団法人中央畜産会 | 機構 | 利子助成 | 10億3532万余円 | 10億3532万余円 |
6 | 家畜飼料特別支援基金 | 社団法人中央畜産会 | 機構 | 利子助成 | 76億5744万余円 | 76億5744万余円 |
7 | 家畜飼料債務保証円滑化基金 | 社団法人中央畜産会 | 機構 | 補助・補てん | 24億7668万余円 | 24億7668万余円 |
8 | 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 | 財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構 | 機構 | 調査等その他 | 1億3913万余円 | 1億3913万余円 |
5基金(3法人) | 148億9838万余円 | 148億9838万余円 |
これらの基金は、畜産経営者等に対して一定の条件で貸付けを行う融資機関に対して利子補給金を交付する事業や、貸付けに対する債務保証を行う農業信用基金協会に対して保証債務の代位弁済に伴う損失を補てんする事業等に充てられるものである。
これらの基金では、利子補給や債務保証の対象となる貸付けに係る貸付残高、貸付期間、利子補給率等を把握することなどにより、次年度以降各年度に必要となる資金量を一定程度予測することが可能であるのに、この各年度に必要になると見込まれる資金量ではなく、当該事業が終了するまでに必要になると見込まれる資金量を基金設置当初から保有するなどしていて、当面使用する見込みのない多額の資金を保有している。
社団法人中央畜産会は、機構から補助金等の交付を受けて「家畜飼料特別支援基金」を造成している(平成20年度末資金保有額76億5744万余円(補助金等相当額同額))。
本基金による事業は、畜産の生産基盤の維持と安定的発展を図るために、配合飼料価格が一定の水準を上回った場合に畜産経営者等に対して飼料購入に必要な家畜飼料特別支援資金を貸し付ける融資機関に対して、利子補給を行うものである。
本基金による利子補給の対象となる貸付けは、19年度から21年度までの3年間に行われるもので、貸付枠は3年間の合計で680億円とされている。そして、本基金は、19年度に、貸付枠680億円に利子補給率の見込みを乗ずることなどにより算定された76億1968万余円の補助金等の交付を受けて造成されている。
19年度から21年度までの事業実績額をみると、利子補給は通常貸付け後1年以上経過した後に行われることや、19年度第2四半期まで配合飼料価格が一定の水準を上回らなかったことから、19、20両年度は0円、21年度は実績報告書によれば1億2539万余円となっている。そして、20年度末の資金保有額76億5744万余円は、21年度の事業実績額1億2539万余円と比較して61倍となっている。
さらに、22年度以降の各年度に必要になると見込まれる資金量を、21年度末における利子補給の対象となる貸付けの合計額534億0924万余円(計画承認額(注)
)に基づき推計すると、これらに対する利子補給率が貸付けの時期により1.25%から2.15%となっていることから、上記の534億0924万余円に利子補給率の最大値2.15%を乗じた11億4829万余円が上限額となる。そして、20年度末の資金保有額76億5744万余円は、当該上限額11億4829万余円と比較して6.6倍となっている。
通し番号 | 基金名 | 法人名 | 所管 | 使途 | 平成20年度末資金保有額 | |
補助金等相当額 | ||||||
9 | 肥育素牛導入基金 | 社団法人全国畜産経営安定基金協会 | 機構 | 貸付け | 8億4290万余円 | 8億4290万余円 |
10 | 貸付機械取得資金 | 社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 | 機構 | 貸付け | 3億4124万余円 | 1億6111万余円 |
11 | 生乳流通効率化リース基金 | 財団法人畜産環境整備機構 | 機構 | 貸付け | 11億3828万余円 | 11億3828万余円 |
12 | 食肉リース基金 | 財団法人畜産環境整備機構 | 機構 | 貸付け | 13億7594万余円 | 13億7594万余円 |
13 | 畜産環境整備リース基金 | 財団法人畜産環境整備機構 | 機構 | 貸付け | 50億7001万余円 | 50億7001万余円 |
14 | 貸付機械取得資金 | 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 | 機構 | 貸付け | 31億6349万余円 | 15億8174万余円 |
6基金(4法人) | 119億3188万余円 | 101億7001万余円 |
これらの基金は、畜産経営者等に対する貸付けやリースを行う事業に充てられるものである。そして、これら6基金による事業は、借受者からの貸付金の回収額等の収入を新たな貸付けやリースの財源とする回転型としての貸付事業となっている。
しかし、これら6基金は、資金保有額が事業実績額である新規貸付額と比較して多額になっていたり、事業実績額等の支出が回収額等の収入を下回っていたりなどしている。
また、回転型の貸付事業基金における資金保有額、事業実績額等の状況をみるため、これら6基金のうち、過去に回転型の貸付事業ではない補助付きリース(注5)
を実施していた食肉リース基金及び畜産環境整備リース基金(注6)
を除く4基金を全体として、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額や各年度における事業実績額等をみると、各基金における事業実績額の年度ごとの変動が一定程度平準化されており、いずれの年度においても年度末の資金保有額は当該年度の事業実績額を上回っている。そして、当該期間内の資金保有額の平均額と事業実績額の平均額との比較では、事業実績額(15億2958万余円)の4.6倍に相当する70億8727万余円もの資金を保有していることになり、さらに、事業実績額(注7)
の平均額と回収額等の平均額との比較では、事業実績額(注7)
が回収額等を1901万余円下回っている(参考図3参照)
。
(注5) | 補助付きリース リースの対象となる機械施設の取得価額の一部に補助金を充てて、取得価額と補助金の差額を回収額等の算定の基礎として貸付けを行うものである。
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(注6) | 食肉リース 基金及び畜産環境整備リース基金食肉リース基金は平成12、13両年度に、畜産環境整備リース基金は9年度から19年度まで、それぞれ補助付きリースを実施していた。
|
(注7) | 事業実績額 貸付機械取得資金については、回収額等に利子に相当する附加貸付料等を含んでいることから、事業実績額に附加貸付料等で賄うこととなる事務費を加えている。
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4基金を全体としてみた場合の資金保有額、事業実績額等の推移
このように、これら4基金を含めた前記6基金では、資金保有額が事業実績額と比較して多額になっていたり、事業実績額等の支出が回収額等の収入を下回っていたりなどしていて、必要以上に多額の資金を保有している。
日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、機構から補助金等の交付を受けて「貸付機械取得資金」を造成している(平成20年度末資金保有額31億6349万余円(補助金等相当額15億8174万余円))。
本基金による事業は、食肉加工業者等に対して、国産食肉及び畜産副生物の新規用途開発、製品等の品質・衛生管理並びに環境対策のために必要な成型機等の機械施設の貸付けを行うものである。そして、借受者から回収する基本貸付料(注)
等を新たな貸付けの財源とする回転型としての貸付事業となっている。
3年度から20年度までの各年度末における資金保有額や各年度における事業実績額等を平均してみると、事業実績額(6億4999万余円)の3.9倍に相当する25億7533万余円もの資金を保有していることになり、さらに、事業実績額に事務費を加えた額(8億6422万余円)が回収額等(8億7596万余円)を1173万余円下回っている。
なお、本基金については、21年度に同組合が実施した基金の見直しの結果、同年度に6億3121万余円(補助金等相当額3億1560万余円)を機構等へ返還している。しかし、本基金は、20年度末資金保有額31億6349万余円から、この返還額を差し引いても、なお25億3227万余円に上る多額の資金を保有していることとなる。
通し番号 | 基金名 | 法人名 | 所管 | 使途 | 平成20年度末資金保有額 | |
補助金等相当額 | ||||||
15 | 食肉価格安定基金 | 財団法人沖縄県畜産振興基金公社 | 機構 | 補助・補てん | 107億7582万余円 | 71億8388万余円 |
この基金は、基金の運用益を財団法人沖縄県畜産振興基金公社が実施する県産食肉の安定供給等に係る補助・補てん事業に充てるものである。
この基金では、近年の低金利により運用益が減少したため事業規模が縮小しており、事業実績額が大きく減少した13年度から20年度までの各年度における事業実績額の平均額は7010万余円となっている。そして、この事業実績額の平均額に基づき計算すると、この基金は、20年度末において153か年度分もの事業実績額に相当する多額の資金を保有していることとなる。
このように、この基金は、基金の運用益により事業を実施しているため、近年の低金利状況下で、多額の資金を有効に使用することなく保有しているが、これに代えて、必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することにより事業を実施することも可能である。
通し番号 | 基金名 | 法人名 | 所管 | 使途 | 平成20年度末資金保有額 | |
補助金等相当額 | ||||||
16 | 保証基金 | 社団法人日本家畜商協会 | 機構 | 債務保証 | 13億3042万余円 | 11億0369万余円 |
この基金は、社団法人日本家畜商協会が実施する、傘下の会員組合による肉用子牛の導入に必要な資金の融通の円滑化を図るための債務保証及び代位弁済に充てられるものである。そして、事業実施要領によれば、本基金による債務保証残高は、本基金と同協会の基本財産等の額との合計額の15倍相当額(以下「実施要領上の債務保証限度額」という。)を超えてはならないとされている。
しかし、同協会は、実務上、債務保証残高が59億6370万円(以下、この金額を「実務上の債務保証限度額」という。)を超えないよう事業を運営しており、20年度末の債務保証残高は48億5572万余円となっている。そして、20年度末の実施要領上の債務保証限度額について、本基金の額を0円と仮定して同協会の基本財産等の額(4億8288万円)のみで試算すると、その額は72億4320万円となり、実務上の債務保証限度額を上回っている。
また、同協会が債務保証を行うに当たっては、同協会の業務方法書において当該債務について組合理事長を含む過半数の理事の連帯保証人を立てる必要があるとされていること、債務保証の対象は個々の畜産農家ではなく会員組合であるため保証を受ける組合の財務状況を把握しやすいことなどから、代位弁済のリスクは低く、現に、本基金が設置された10年度から20年度までに代位弁済を行った実績はない。
このように、この基金は、事業実施要領の規定や事業実績額等をみると、同協会の基本財産等だけで事業実施に必要な資金量を満たしており、事業実施に必要な水準を超えた多額の資金を保有している。
16基金(国所管基金2基金、機構所管基金14基金)の20年度末における資金保有額は、国所管基金計38億9455万余円(補助金相当額38億9393万余円)、機構所管基金計921億3455万余円(補助金等相当額850億3916万余円)、合計960億2911万余円(補助金等相当額889億3310万余円)となっている。21年度に各法人が行った基金の見直しの結果等により、16基金のうち5基金から、同年度に補助金等相当額計448億3982万余円が機構に返還されているが、16基金は、20年度末資金保有額のうちの補助金等相当額から上記返還額を差し引いても、なお国所管基金計38億9393万余円、機構所管基金計401億9934万余円、合計440億9328万余円に上る多額の財政資金を保有していることになる。
また、16基金が引き続き事業を実施するために、年度ごとに農林水産省及び機構から交付される補助金等とは別に確保しておくことが必要と認められる資金保有額を、1か年度分の事業実績額に相当する金額とするなどして算定すると、国所管基金計3億4720万余円、機構所管基金計40億5201万余円、合計43億9921万余円となる。
したがって、16基金の20年度末資金保有額から上記の必要と認められる資金保有額を差し引いた国所管基金計35億4734万余円(補助金相当額35億4724万余円)、機構所管基金計880億8254万余円(補助金等相当額817億0125万余円)、合計916億2989万余円(補助金等相当額852億4849万余円)のうちの補助金等相当額から前記返還額を差し引いても、なお国所管基金において計35億4724万余円、機構所管基金において計368億6143万余円、合計404億0867万余円に上る多額の財政資金を保有していることとなる。
上記のように、農林水産省及び機構が交付した補助金等により造成されている16基金において、事業実績額と比較して必要以上に多額の資金を保有していて、貴重な財政資金が有効に活用されていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、農林水産省及び機構において、事業の進ちょく状況、社会経済情勢の変化、国の財政や機構の財務の状況等に応じて、基金の規模や必要性等の見直しを適時適切に実施していなかったことなどによると認められる。
農林水産省及び機構が法人に補助金等を交付して造成させた基金のうち16基金においては、事業実績額と比較して必要以上に多額の資金を保有していて、現下の厳しい国の財政事情の下で貴重な財政資金が有効に活用されていない。
ついては、農林水産省及び機構において、各基金に係る事業の在り方について幅広く検討し、補助金等相当額を国又は機構に返還させた上で必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することにより事業を実施したり、資金保有額を縮減して補助金等相当額を国又は機構に返還させたりなどして、財政資金の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。