会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)地域活力基盤整備事業費 等 |
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) | |||
(項)地域連携道路事業費等 | |||
部局等 | 直轄事業 | 10地方整備局等 | |
補助事業 | 17都道県 | ||
事業及び補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)、交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年法律第45号)等 | ||
事業主体 | 直轄事業 | 28国道事務所等 | |
補助事業 | 都、道、県20、市26、町6 | ||
計
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82事業主体 | ||
発掘調査の概要 | 道路整備事業を行う国及び地方公共団体が、道路整備事業により損壊等することとなる埋蔵文化財について、発掘調査を行い、その内容を記録保存するもの | ||
発掘調査費用 | 直轄事業 | 116億8344万余円
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(平成20、21両年度) |
補助事業 | 74億2829万余円
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(平成20、21両年度) | |
(国庫補助金交付額 | 42億0164万余円)
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上記のうち原因者負担の対象とならない費用 | 直轄事業 | 9億0646万円
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補助事業 | 8485万余円
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(国庫補助金相当額 | 4716万円)
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標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴省は、道路交通の安全確保とその円滑化等を図るなどのため、国が行う直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業として、道路整備事業を実施している。道路整備事業を行う国及び地方公共団体は、事業の施行地内に埋蔵文化財(注1)
があり、当該事業を行うことによりやむを得ず埋蔵文化財を損壊等することとなる場合、文化財保護法(昭和25年法律第214号)等に基づき、発掘調査を行ってその内容を記録保存している。
文化財の保護に関する事務は、地方自治法(昭和22年法律第67号)等に基づき、都道府県等の教育委員会が管理し、執行することとされているが、道路整備事業に伴い埋蔵文化財が損壊等されることとなる場合に行われる発掘調査については、貴省が、昭和39年7月に、当時の文化財保護委員会(現在の文化庁)からの協力依頼に基づき発した「史跡、名勝、天然記念物及び埋蔵文化財包蔵地等の保護について」(建設省化第1号)により、その損壊等の原因となった事業を実施する者(以下「原因者」という。)が必要な費用を負担することとされている。
発掘調査は、一般に、教育委員会に委託するなどして実施されており、その内容は、〔1〕 埋蔵文化財の発掘作業、〔2〕 出土品の整理保存作業、〔3〕 発掘調査報告書(以下「報告書」という。)の作成作業等からなっている。これらの作業は、発掘作業を指揮・監督する調査員と現場で発掘作業に従事する発掘作業員等によって行われており、発掘作業員等には、随時雇用等による労働者を充てる一方、出土品が文化財として重要なものであるかどうかなどの行政判断を行う調査員には、通常、教育委員会等の職員が充てられている。
また、上記作業のうち、報告書の作成作業は、現状保存ができなかった埋蔵文化財の内容を記録保存し、広く一般に活用するために作成、配布するもので、その作成部数は、発掘調査の委託先である教育委員会等が決定している。
道路整備事業において原因者が負担する発掘調査費用は、貴省と文化庁が46年に協議の上取りまとめた「直轄道路事業の建設工事施行に伴う埋蔵文化財の取扱いについて」(昭和46年11月建設省道一発第93号。補助事業の場合もこれに準拠している。以下「取扱通知」という。)に基づき、関係教育委員会と協議して取り決めることとされている。そして、取扱通知には、原因者は、発掘作業に直接必要な費用及び発掘され又は発見された文化財に係る必要最小限の整理保存費、報告書作成費等を負担すると記載されており、これらのうち調査員に係る費用については、日当旅費を負担すると記載されている。
文化庁は、教育委員会等が埋蔵文化財の記録保存を目的として行う発掘調査等を対象として、埋蔵文化財緊急調査費国庫補助事業を実施している。この補助事業は、道路整備事業に伴い実施する埋蔵文化財の発掘調査と同様に、発掘作業、整理保存作業、報告書作成作業等を行うものである。そして、報告書の作成部数については、同庁が59年11月に発した事務連絡において、重要な文化財であるなどとして特に同庁が増刷を認めた場合を除き、関係教育委員会等の所要の公的機関に配布する必要から300部を原則とすることとしている。
道路整備事業において原因者が負担する発掘調査費用は、取扱通知に基づき、事前に関係教育委員会と協議して取り決めることとされている。そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、道路整備事業において原因者が負担する発掘調査費用が取扱通知の趣旨に沿って適切に算定されているかなどに着眼して検査した。
平成20、21両年度に、国道事務所等及び地方公共団体が、教育委員会や専門機関等に委託するなどして実施した埋蔵文化財の発掘調査のうち、直轄事業として10地方整備局等管内の28国道事務所等(注2) が実施した123件(発掘調査費用計116億8344万余円)及び補助事業として22都道県(注3) 及び管内32市町、計54地方公共団体が実施した365件(発掘調査費用計74億2829万余円(国庫補助金計42億0164万余円))、計488件の発掘調査を対象として、これらの28国道事務所等及び54地方公共団体において契約書、精算調書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
20、21両年度に、埋蔵文化財の発掘調査の調査員に充てられている教育委員会の職員の給与等を負担していたものが、13国道事務所等(注4)
及び4地方公共団体(注5)
においてそれぞれ43件、8億7571万余円及び21件、5550万余円(国庫補助金2996万余円)あった。
しかし、前記のとおり、取扱通知においては、調査員に係る費用のうち原因者負担の対象として記載されているのは日当旅費となっていて、教育委員会の職員の給与等は、原因者が負担する発掘調査費用の対象としては記載されていない。
現に、教育委員会の職員を調査員に充てて発掘調査を実施していた上記以外の国道事務所等及び地方公共団体では、地方自治法等により、発掘調査で調査員が行う業務は、教育委員会が文化財の保護部局として自ら実施すべき事務とされているなどの理由により、教育委員会の職員の給与等を負担していなかった。
20、21両年度に、教育委員会等に埋蔵文化財の発掘調査を委託するなどして報告書を作成し、その印刷製本費用等を負担していたものが、21国道事務所等及び35地方公共団体においてそれぞれ78件、1億1073万余円及び117件、1億0971万余円(国庫補助金6508万余円)あった。
取扱通知においては、原因者が負担する報告書の作成費用は必要最小限の費用とされているが、原因者が負担する作成部数などについての標準的な範囲は明確にされていない。一方、文化庁が実施する同種の補助事業においては、前記のとおり原則として300部とされている。そこで、原因者が負担していた報告書の作成部数をみたところ、最少100部から最大600部までと区々になっており、このうち、17国道事務所等(注6)
及び23地方公共団体(注7)
は、文化庁が同種の補助事業で原則としている300部を超える報告書の作成費用を原因者として全額負担していた。そして、これらの報告書の作成に係る件数、作成部数及び作成費用は、それぞれ65件、10,170部、3074万余円及び84件、13,353部、2935万余円(国庫補助金相当額1719万余円)となっていた。
しかし、原因者が負担する報告書の作成費用は、必要最小限の費用とされているのであるから、道路整備事業に伴い実施する発掘調査と内容等が同様である文化庁の補助事業における原則的な報告書の作成部数を超えてまで作成費用を負担しているのは、原因者が負担すべき必要最小限の範囲を超えるものと認められる。
道路整備事業を行う国道事務所等及び地方公共団体が、教育委員会に委託するなどして実施した埋蔵文化財の発掘調査において、教育委員会の職員の給与等を負担したり、必要最小限の範囲を超えて報告書の作成費用を負担したりしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、教育委員会の職員の給与等は原因者が負担する発掘調査費用には含まれないということを取扱通知に明確にしていないこと、また、そのことを国道事務所等及び地方公共団体に周知徹底していないこと、及び取扱通知において報告書の作成費用を負担する際の標準的な範囲について明確にしていないことなどによると認められる。
道路整備事業の実施に伴う埋蔵文化財の発掘調査に係る費用は毎年度多額に上っており、その費用を適切に算定して発掘調査を適正に実施することが求められている。そして、その際の原因者が負担する発掘調査費用の範囲についても、原因者間で不均衡が生じないよう統一的な運用を図る必要がある。
ついては、貴省において、道路整備事業に伴う埋蔵文化財の発掘調査を実施するに当たり、教育委員会の職員の給与等は原因者負担の対象とならないこと及び原因者負担の対象となる報告書作成費用の標準的な範囲をそれぞれ明確にするとともに、改めて取扱通知の趣旨を地方整備局等を通じて国道事務所等に対して周知徹底し、また、地方公共団体に対しても同様に周知するなどして原因者が負担する発掘調査費用の算定を適切なものとするよう是正改善の処置を求める。
埋蔵文化財 土地に埋蔵されている貝づか、古墳、住居跡等の遺跡及びこれらの遺跡から発見される土器、石器、陶器等
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28国道事務所等 岩手河川、湯沢河川、酒田河川、高崎河川、大宮、北首都、首都、甲府河川、長野、高田河川、岐阜、高山、沼津河川、浪速、姫路河川、和歌山河川、紀南河川、鳥取河川、倉吉河川、岡山、福山河川、香川河川、熊本河川、八代河川、大分河川、鹿児島、南部各国道事務所、函館開発建設部
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22都道県 東京都、北海道、青森、秋田、群馬、神奈川、新潟、富山、山梨、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、島根、高知、佐賀、熊本、大分、宮崎、沖縄各県
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13国道事務所等 甲府河川、岐阜、高山、姫路河川、鳥取河川、倉吉河川、岡山、香川河川、熊本河川、八代河川、大分河川、鹿児島各国道事務所、函館開発建設部
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4地方公共団体 岐阜、兵庫両県、玉名、西都両市
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17国道事務所等 岩手河川、湯沢河川、酒田河川、高崎河川、大宮、首都、高田河川、高山、沼津河川、和歌山河川、鳥取河川、倉吉河川、熊本河川、大分河川、鹿児島、南部各国道事務所、函館開発建設部
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23地方公共団体 青森、群馬、神奈川、富山、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、島根、高知、佐賀、大分、宮崎各県、高崎、新潟、洲本、加西、大和高田、熊本、玉名、日田各市、いの町
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