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航空気象観測所における運航従事者等からの照会に応対する業務に係る費用の積算が業務の実態に即した経済的なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの


(6) 航空気象観測所における運航従事者等からの照会に応対する業務に係る費用の積算が業務の実態に即した経済的なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定) (項)空港等維持運営費
部局等 気象庁本庁、5管区気象台等
契約名 航空気象観測所業務委託契約等43契約
契約の概要 契約の概要地方公共団体が管理する空港における航空気象観測業務、運航従事者等からの照会に応対する業務等を当該地方公共団体に委託して実施するもの
契約の相手方
20地方公共団体
(平成20 年度)
21地方公共団体
(平成21年度)
委託費
1億7762万余円
(平成20、21両年度)
照会応対業務費の積算額
3281万余円
(平成20、21両年度)
上記のうち低減できた照会応対業務費の積算額
3030万円

【是正改善の処置を求めたものの全文】

航空気象観測所における業務委託費の積算について

(平成22年10月15日付け 気象庁長官あて)

 標記について、会計検査院法第34 条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 航空気象観測所における委託業務の概要

(1) 航空気象観測所の概要

 貴庁は、気象業務法(昭和27年法律第165号)に基づき、航空機の安全な運航を支援することを目的として、各管区気象台等の下に航空地方気象台、航空気象観測所等を設置して、空港周辺の気象状態を把握するための気象観測(以下「航空気象観測」という。)を行っている。
 このうち、航空気象観測所は、地方公共団体が管理する空港で国土交通省航空局の航空管制官及び運航情報官が現地に配置されていない空港に設置されているものである。このため、航空気象観測所においては、現地で航空管制官及び運航情報官に対して、空港周辺の気象状態をきめ細かに予想した飛行場予報等(以下「予報等」という。)の解説を行う必要はないことから、貴庁は、職員を常駐させずに、空港が所在している地方公共団体等に委託して観測を実施している。そして、観測成果である風向・風速、視程等のデータ(以下「観測データ」という。)は、委託を受けた地方公共団体等から各航空気象観測所を管轄する航空地方気象台等に報告されて、予報等の作成等に利用されている。
 航空気象観測所には、空港の運用時間内において常時観測を行っている観測所と、原則として定められた時刻にのみ観測を行っている観測所(以下「SCAN観測所」という。)とがあり、全国の27航空気象観測所(注1) (平成21年度末現在。運用休止中の観測所を除く。以下同じ。)のうち、SCAN観測所が24観測所(注2) と多数を占めている。

 27航空気象観測所  紋別、奥尻、利尻、大館能代、新島、神津島、三宅島、福井、佐渡、隠岐、石見、壱岐、上五島、小値賀、与論、喜界、徳之島、沖永良部、屋久島、粟国、慶良間、南大東、北大東、波照間、与那国、多良間、久米島各航空気象観測所
 24観測所  奥尻、利尻、新島、神津島、三宅島、福井、佐渡、隠岐、壱岐、上五島、小値賀、与論、喜界、徳之島、沖永良部、屋久島、粟国、慶良間、南大東、北大東、波照間、与那国、多良間、久米島各航空気象観測所

(2) 航空気象観測所における委託業務の内容

 地方公共団体等に委託している航空気象観測所における業務(以下「委託業務」という。)は、「航空気象観測所の設置及び運用について」(昭和52年12月14日付け気航第254号気象庁長官通達)によれば、〔1〕 航空気象観測、〔2〕 観測データの航空地方気象台等への報告、〔3〕 所在する空港に駐在する航空会社等の運航従事者又は当該空港を発着する航空機の機長(以下「運航従事者等」という。)からの照会に対する観測データの提供(以下「照会応対業務」という。)等とされている。
 このうち、照会応対業務は、運航従事者等から来訪、電話等による観測データの照会を受けた場合に、当該データを観測所内に設置されたコンピュータの画面、口頭等で示すものである。なお、観測データに基づいて作成される予報等の提供や解説は、航空地方気象台等が行うこととされている。

(3) 委託業務に係る費用の積算及び契約

 委託業務に係る費用(以下「委託費」という。)の積算は、貴庁本庁が制定した「航空気象観測所業務の委託費の積算について」(平成20年12月16日付け気航第60号。それ以前は平成15年10月16日付け気航第62号。以下、これらを合わせて「積算基準」という。)等に基づき、各管区気象台等が行っている。
 積算基準によると、SCAN観測所に係る委託費は、航空気象観測業務、観測データの航空地方気象台等への報告業務、照会応対業務等の区分ごとに、それぞれの業務に要する時間に基づいて算定することとされており、このうち、照会応対業務に要する時間は、原則として、各空港における定期便の発着回数を同業務の実施回数として(以下、積算上の照会応対業務の実施回数を「積算回数」という。)、これに1回当たりの所要時間を乗じて算出することとされている。
 そして、各管区気象台等は、上記のようにして算出した年間の所要時間の合計に労務単価を乗じて委託費を積算して、これに基づき、地方公共団体等と契約を締結しており、全国の24SCAN観測所(20年度は久米島航空気象観測所を除く23観測所)に係る委託費は20年度計8598万余円(21契約)、21年度計9163万余円(22契約)、合計1億7762万余円(計43契約)となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 近年、貴庁から航空会社等へのオンラインによる情報伝達が推進されていることなどにより、運航従事者等は、航空気象観測所に照会しなくても、自らのコンピュータ端末等により、航空気象観測所の観測データや航空地方気象台等が作成する予報等の情報を取得することが可能になってきている。
 そこで、本院は、経済性等の観点から、SCAN観測所に係る委託費の積算は適切に行われているか、特に、照会応対業務に係る費用の積算は実態に即したものとなっているかなどに着眼して検査した。
 そして、前記の20、21両年度におけるSCAN観測所に係る委託業務の委託契約43件を対象として、貴庁本庁、東京、福岡両管区気象台及び沖縄気象台において契約書等により会計実地検査を行うとともに、札幌、大阪両管区気象台については、貴庁本庁から関係書類の提出を受けるなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、照会応対業務に係る費用の積算について、各管区気象台等は、積算基準に基づくなどして、積算回数を20年度計33,378回、積算額計1536万余円、21年度積算回数計37,380回、積算額計1744万余円、合計積算回数計70,758回、積算額計3281万余円と算定していた。
 一方、実際の照会応対業務の実施回数(以下「実施回数」という。)は、委託業務に係る契約書、仕様書等において報告されることとなっていないことなどから、いずれの管区気象台等においても把握されていなかった。
 そこで、受託者である地方公共団体計21団体に対して照会応対業務の実施状況等について調査したところ、次 のとおり、実施回数は20年度計2,882回(積算回数の8.6%)、21年度計2,469回(同6.6%)、合計5,351回(同7.5%)と積算回数を大幅に下回っていて、20年度では2観測所、21年度では1観測所において全く実施されていなかった。

表 照会応対業務の実施状況
航空気象観測所名
平成20年度
21年度計
積算回数
(A)
実施回数(B)
積算回数
(A)
実施回数(B)
積算回数
(A)
実施回数(B)
  積算回数に対する実施率(B/A)   積算回数に対する実施率(B/A)   積算回数に対する実施率(B/A)
奥尻
730.0
0
0%
730.0
0
0%
1,460.0
0
0%
利尻
730.0
365
50.0%
730.0
365
50.0%
1,460.0
730
50.0%
新島
2,920.0
12
0.4%
2,920.0
12
0.4%
5,840.0
24
0.4%
神津島
2,190.0
6
0.3%
2,555.0
9
0.4%
4,745.0
15
0.3%
三宅島
680.0
0
0%
730.0
1
0.1%
1,410.0
1
0.1%
福井
1,460.0
1,272
87.1%
1,460.0
1,211
82.9%
2,920.0
2,483
85.0%
佐渡
1,464.0
508
34.7%
0
4
1,464.0
512
35.0%
隠岐
1,460.0
60
4.1%
1,460.0
40
2.7%
2,920.0
100
3.4%
壱岐
1,423.5
30
2.1%
1,387.0
60
4.3%
2,810.5
90
3.2%
上五島
0
37
0
34
0
71
小値賀
0
17
0
21
0
38
与論
2,737.5
120
4.4%
2,810.5
144
5.1%
5,548.0
264
4.8%
喜界
3,613.5
154
4.3%
3,613.5
135
3.7%
7,227.0
289
4.0%
徳之島
2,920.0
10
0.3%
2,956.5
10
0.3%
5,876.5
20
0.3%
沖永良部
1,820.0
130
7.1%
3,540.5
260
7.3%
5,360.5
390
7.3%
屋久島
1,820.0
30
1.6%
3,613.5
60
1.7%
5,433.5
90
1.7%
粟国
2,190.0
24
1.1%
2,190.0
24
1.1%
4,380.0
48
1.1%
慶良間
0
52
0
24
0
76
南大東
1,460.0
10
0.7%
1,460.0
15
1.0%
2,920.0
25
0.9%
北大東
730.0
12
1.6%
730.0
10
1.4%
1,460.0
22
1.5%
波照間
0
10
0
5
0
15
与那国
1,569.5
20
1.3%
1,569.5
20
1.3%
3,139.0
40
1.3%
多良間
1,460.0
3
0.2%
1,460.0
3
0.2%
2,920.0
6
0.2%
久米島
1,464.1
2
0.1%
1,464.1
2
0.1%
33,378.0
2,882
8.6%
37,380.1
2,469
6.6%
70,758.1
5,351
7.5%
注(1)  実施回数には、定期便以外の航空機(以下「不定期便」という。)に係るものを含む。
注(2)  積算回数が0となっている観測所は、定期便が就航していないことから、積算基準に基づき、積算回数を0としていたものである。
注(3)  福井航空気象観測所については、定期便は就航していないが、不定期便が多く発着していることから、これらの発着回数に基づいて積算回数を算定しており、また、これらの不定期便に係る照会応対業務を多く実施しているため、実施回数も大きくなっている。
注(4)  久米島航空気象観測所は、平成21年度に開所した。

 このような状況となっている背景として、前記のように運航従事者等は航空気象観測所に照会しなくても観測データ等を自ら取得することが可能になってきていることが考えられたことからSCAN観測所の所在する空港に定期便を就航させるなどしている航空会社等の空港事務所等(以下「事務所」という。)23か所に対して観測データの取得方法について調査するなどした。
 その結果、23事務所のすべてにおいて、通常、事務所のコンピュータ端末を利用して観測データ等を取得していた。そして、3事務所は航空気象観測所に照会して観測データを取得することもあるとしていたが、19事務所は、航空気象観測所に照会して観測データを取得することは通常していないとしていた(1事務所は不明)。また、23事務所のうち18事務所は、貴庁に申請して承認を得た上で貴庁の情報通信システムを利用しており、このうち10事務所は貴庁が積算基準を制定した15年10月以降に利用を開始していた。
 以上のとおり、近年、運航従事者等が航空気象観測所に観測データを照会することは少なくなってきていることから、SCAN観測所における委託業務のうち照会応対業務については、定期便の発着回数に基づいて積算するのではなく、観測所ごとに過去の実施回数により積算するなどすべきであると認められる。
 そして、実際の業務の実施回数に基づくなどして、照会応対業務に係る費用を算定すると、20年度計132万余円、21年度計115万余円、合計247万余円となり、前記の照会応対業務に係る費用の積算額20年度計1536万余円、21年度計1744万余円、合計3281万余円を20年度計1404万余円、21年度計1629万余円、合計3030万余円低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、照会応対業務に係る費用の積算が業務の実態に即していない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、近年、運航従事者等において貴庁の情報通信システムの利用が増加していることなどから照会応対業務の実施回数が少なくなっているにもかかわらず、貴庁において、照会応対業務の実態を把握しておらず、積算基準に実態を反映させていないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴庁は、航空気象観測は航空機の安全な運航を支援するために不可欠であるとしており、委託業務は今後も引き続き実施していくとしている。そして、運航従事者等の中には貴庁とのオンラインによる情報伝達を受けていないものもあることなどから、照会応対業務についても今後も一定程度は実施していくとしている。
 ついては、貴庁において、委託費のうち照会応対業務に係る費用の積算が業務の実態に即した経済的なものとなるよう積算基準を改正し、管区気象台等に対して周知するなどして、照会応対業務に係る費用の積算が適切に行われるよう是正改善の処置を求める。