会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)下水道事業費 等 |
部局等 | 24都道府県 | ||
補助の根拠 | 下水道法(昭和33年法律第79号) | ||
事業主体 | 410事業主体 | ||
下水道事業の概要 | 都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として、管きょの敷設、ポンプ場の設置、終末処理場の整備、施設に必要な用地の取得等を行う事業 | ||
平成21 年度末現在下水道事業に利用されていない用地の面積及び取得価格 | 17,014,926m2
6593億8732万余円
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(昭和21年度〜平成21年度) | |
上記に対する国庫補助金交付額 | 3235億3304万円
|
(背景金額) | |
(1)計画面積等を超えた用地の面積及び取得価格 | 176,223m2
34億4960万余円
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上記に対する国庫補助金交付額 | 18億6140万円
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(2)財産処分の承認を受けずに目的外使用を行っていた用地の面積及び取得価格等 | 182,017m2
42億6136万余円
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上記に対する国庫補助金交付額等 | 22億3515万円
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(1)及び(2)の純計 | 348,135m2
76億7032万余円
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上記に対する国庫補助金交付額等 | 40億7311万円
|
(上記(2)の事態については、「下水道用地を承認を受けずに貸し付けるなどし、貸付料等に係る国庫納付を行っていなかったもの」 を参照)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第36条の規定により意見を表示し、並びに同法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
都道府県、市町村等(以下「事業主体」という。)は、下水道法(昭和33年法律第79号)等に基づき、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として下水道事業を実施しており、貴省は、これらの下水道事業に多額の国庫補助金を交付している。
下水道事業は、各家庭等から発生する汚水や雨水等の下水を流下させる管きょの敷設、下水を揚排水するポンプ場の設置、下水を処理するための水処理施設、高度処理施設、汚泥処理施設等の構造物を建設するなどの終末処理場の整備、これらの各施設に必要な用地の取得等を行うものである。
ア 計画の概要
事業主体は、下水道事業の実施に当たり、「下水道施設計画・設計指針と解説」(社団法人日本下水道協会編。以下「設計指針」という。)に準拠して、計画区域における計画目標年次(おおむね20年後から30年後)の人口、汚水量、流入水質等の予測を行って、この予測値を基に、終末処理場及びポンプ場(以下「終末処理場等」という。)の施設並びに管きょのそれぞれの配置、構造、能力等を定めた下水道計画(以下「全体計画」という。)を策定している。この全体計画は、水質環境基準が定められている河川その他の公共の水域又は海域で、主として下水道の整備によってこの水質環境基準を達成させる必要がある場合、都道府県が定める流域別下水道整備総合計画に適合させることなどとされている。
全体計画における計画汚水量の算定については、できるだけ実測に基づいて予測することが望ましいとされており、このうち生活汚水量については、水道計画等に定める1人1日当たりの給水量を基に1人1日当たりの生活汚水量を算定し、これに計画人口を乗ずることにより算定することとされている。また、計画人口は、計画区域における人口の現状及び将来の動向を勘案するなどして定めることとされている。
そして、事業主体は、全体計画のうち必要性が高くおおむね5年から7年の間に整備可能な区域及び施設について、事業計画を策定して、国土交通大臣又は都道府県知事の認可を受けて事業を実施している。
イ 全体計画等の見直し
人口、汚水量等の予測値は、計画策定時点から年数を経る間に、社会情勢の変化等によって全体計画と大きくかけ離れることがあるため、設計指針によれば、その地域に合った汚水量等の実測値を参考にして、可能な限り正確な予測値に修正して全体計画を見直し、併せて施設の建設計画の見直しを行うことが必要であるとされている。そして、貴省は、都道府県等に対して、平成19年に「人口減少等の社会情勢の変化を踏まえた都道府県構想の見直しの推進について」(平成19年9月国都下事第226号国土交通省都市・地域整備局下水道部下水道事業課長ほか通知)を発して、5年を基本として定期的に内容を点検するほか、社会情勢の変化等に合わせて適宜見直しを行うことなどを求めている。
終末処理場等の水処理施設、汚泥処理施設等については、管きょの敷設の進ちょく状況等に応じて流入下水量が経年的に増加することから、段階的に建設していくことになるが、終末処理場等の整備に必要な用地は、事業の初期の段階で、事業計画の認可を受けて、全体計画において将来必要と見込まれるすべての用地を先行的に取得する場合が多くなっている。
これらの下水道用地の国庫補助対象となる範囲は、下水道事業採択基準等により、原則として下水の処理又は排水に直接必要な構造物面積の4.5倍以内(終末処理場用地の場合)又は3倍以内(ポンプ場用地の場合)の面積等とされている。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金等適正化法」という。)によれば、補助事業者等が、補助事業等により取得した財産(以下「補助対象財産」という。)を補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、又は貸し付けるなどする(以下、これらの行為を「財産処分」という。)ときは、各省各庁の長の承認を受けなければならないこととされている。
そして、貴省は、従来、地域の活性化、経済的効果等に資することを目的として、一定の条件に該当する場合においては、施設等の建設に着手するまでの間、下水道事業本来の目的を妨げない範囲で下水道事業以外の用途での使用(以下「目的外使用」という。)を承認することとしており、その場合において、有償で貸付けなどを行うときは、当該貸付料等のうち国庫補助金相当額の国庫納付を条件とすることにしている。
また、20年には「都市・地域整備局所管補助事業等に係る財産処分承認基準について」(平成20年12月国都総第2449号国土交通省都市・地域整備局長通知。以下「都市局承認基準」という。)を定め、既存の資産を効率的に活用した地域活性化を図るなどのため、補助事業等の完了後10年経過した補助対象財産については、補助目的を達成したものとみなし、当該財産処分の承認については、原則、報告等をもってその承認があったものとみなすこととしている。
都市局承認基準では、目的外使用に当たり、管理上の責任を明確にするなどのため、使用予定者との間で補助対象財産に係る管理協定等を締結することを承認の条件としている。
下水道事業においては、前記のとおり、水処理施設等の構造物は、管きょの敷設の進ちょくなどに応じて段階的に建設するが、下水道用地については、事業の初期の段階で、将来必要と見込まれるすべての用地を先行的に取得する場合が多い。一方、我が国においては、人口減少社会が現実のものとなっており、貴省は、全体計画等について、5年を基本として定期的に内容を点検し、社会情勢の変化等に合わせて見直すよう事業主体に対して求めている。
そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、補助事業で取得した下水道用地の利用状況はどのようになっているか、今後の利用見込みや必要な規模について見直しがされているか、目的外使用に際して財産処分の手続は適正に行われているかなどに着眼して、24都道府県(注)
管内の522事業主体において、21年度末までに取得した2,276終末処理場等の用地計52,678,650m2
(取得価格計1兆9560億9968万余円、国庫補助金計9517億2412万余円)を対象として、全体計画書、事業計画書等の関係書類及び現地を確認するなどして、会計実地検査を行った。
下水道用地の利用状況について検査したところ、表1のとおり、21年度末現在、下水道事業に利用されていない用地(以下「未利用地」という。)は、393事業主体の952終末処理場等で計17,014,926m2
(昭和21年度から平成21年度までの間に取得した用地。取得価格計6593億8732万余円、国庫補助金計3235億3304万余円)となっていた。
上記のうち、終末処理場の用地で取得後30年以上未利用地となっているものが、129事業主体の184終末処理場で計4,463,921m2
(取得価格計1093億8658万余円、国庫補助金計467億7622万余円)、また、ポンプ場の用地で取得後10年以上未利用地となっているものが、100事業主体の190ポンプ場で計299,078m2
(取得価格計209億2533万余円、国庫補助金計98億8348万余円)見受けられ、投資効果が長期間発現していない状況となっていた(保存期限経過等により書類が保存されていないため、国庫補助金等が不明のものがあり、その額は含めていない。以下同じ。)。
取得区分
|
事業主体数
|
箇所数(箇所)
|
未利用地面積
(千m2
)
|
左の用地取得価格
(百万円)
|
国庫補助金
(百万円)
|
||
終末処理場 | 用地取得後10年未満 | 114
|
163
|
1,648
|
83,824
|
40,852
|
|
用地取得後10年以上20年未満 | 188
|
292
|
3,798
|
229,460
|
110,065
|
||
用地取得後20年以上30年未満 | 152
|
222
|
4,175
|
170,567
|
90,842
|
||
用地取得後30年以上 | 129
|
184
|
4,463
|
109,386
|
46,776
|
||
用地取得時期が不明なもの | 37
|
58
|
2,513
|
38,817
|
22,188
|
||
計
|
364
(429) |
693
(997) |
16,599
(49,031) |
632,055
(1,657,459) |
310,724
(820,720) |
||
ポンプ場 | 用地取得後10年未満 | 47
|
78
|
110
|
6,344
|
2,905
|
|
用地取得後10年以上20年未満 | 58
|
103
|
115
|
10,302
|
4,880
|
||
用地取得後20年以上30年未満 | 46
|
57
|
80
|
7,448
|
3,276
|
||
用地取得後30年以上 | 36
|
44
|
103
|
3,173
|
1,727
|
||
用地取得後10 年以上の小計 | 100
|
190
|
299
|
20,925
|
9,883
|
||
用地取得時期が不明なもの | 3
|
4
|
5
|
61
|
19
|
||
計
|
121
(327) |
259
(1,279) |
415
(3,647) |
27,331
(298,640) |
12,808
(131,004) |
||
合計
|
393
(522) |
952
(2,276) |
17,014
(52,678) |
659,387
(1,956,099) |
323,533
(951,724) |
注(1)
|
用地を複数年にわたって取得しているものがあり、各取得区分の事業主体数及び箇所数には重複があるため、計は一致しない。
|
注(2)
|
未利用地面積及び金額は、千m2
未満及び百万円未満をそれぞれ切り捨てているため、集計しても計の欄とは一致しない。
|
注(3) | 計欄及び合計欄の括弧書きは検査の対象の数を表示している。 |
未利用地となっている下水道用地の今後の必要性についてみると、今後とも利用が見込まれなかったり、見込まれないこととなる可能性があったりしているなどの用地が次のとおり見受けられた。
ア 事業主体の全体計画の見直しによる施設規模の縮小等に伴い、全体計画上、下水道用地としての利用見込みがなくなっているもの
145事業主体の225終末処理場等(施設の構造物面積計11,130,230m2
)については、事業主体において、全体計画における計画人口や計画汚水量を近年の人口データ等を基に見直したり、汚泥の処理方法をより効率的なものに変更したりなどした結果、水処理施設や汚泥処理施設等の規模を縮小したり、建設を取りやめたりしていた。
そして、これにより、全体計画上、今後、下水道事業に利用する見込みがなくなっている用地が計2,457,880m2
(取得価格計862億1160万余円、国庫補助金計455億7653万余円)発生していた。
イ 全体計画を適切に見直すこととすれば、施設の規模が縮小するなどして、下水道用地として利用が見込まれない用地が生じ、又は見込まれないこととなる可能性があるもの
(ア) 水処理施設等の建設予定地について
全体計画上、今後も水処理施設等の増設を予定している255事業主体の398終末処理場の中には、21年度末現在において、5年以上全体計画の見直しを行っていないものが158終末処理場あり、このうち10年以上全体計画の見直しを行っていないものが34終末処理場で見受けられた。また、残りの240終末処理場においては、全体計画の見直しは行っているものの、計画人口を定めるに当たって、近年の人口減少を反映せずに、見直し前の計画人口を据え置き又は増加させているなど、全体計画の見直しが適切に行われていない事態が見受けられた。
a 計画人口について
上記255事業主体の398終末処理場の計画区域について、国立社会保障・人口問題研究所が公表している将来の市町村別人口及び指数の最新のものを用いるなどして、目標年次における人口を試算し、この試算値(以下「推計人口」という。)と計画人口を比較したところ、241事業主体の350終末処理場において、近年の人口減少を反映していなかったことなどから、推計人口の方が少ないものとなっており、計画人口に対する推計人口の割合別の終末処理場数は表2 のとおりとなっていた。
水処理施設等の増設を予定している終末処理場 | 計画人口より推計人口が少ない終末処理場 | 計画人口より推計人口が多い終末処理場 | |||
60% 未満
|
60% 以上
80% 未満 |
80% 以上
100% 未満 |
|||
398
(255) |
350
(241) |
19
(19) |
106
(90) |
225
(160) |
48
(35) |
b 1人1日当たりの計画生活汚水量について
近年、生活用品の節水化や住民の節水意識の向上等により、生活用水使用量は横ばいか減少傾向にある。そこで、前記255事業主体の398終末処理場について、21年度の上水道の給水量実測値等を基に1人1日当たりの生活汚水量を試算し、この試算値(以下「実測給水量」という。)と1人1日当たりの計画生活汚水量を比較したところ、149事業主体の219終末処理場において、実測給水量の方が少ないものとなっており、1人1日当たりの計画生活汚水量に対する実測給水量の割合別の終末処理場数は表3 のとおりとなっていた。
水処理施設等の増設を予定している終末処理場 | 計1人1日当たりの計画生活汚水量より実測給水量が少ない終末処理場 | 1人1日当たりの計画生活汚水量より実測給水量が多い終末処理場 | |||
60% 未満
|
60% 以上
80% 未満 |
80% 以上
100% 未満 |
|||
398
(255) |
219
(149) |
15
(13) |
89
(64) |
115
(95) |
179
(135) |
そして、上記aの推計人口、bの実測給水量、全体計画における工場排水量等を基に汚水量を試算し、この試算値(以下「実測推計汚水量」という。)と計画汚水量を比較したところ、183事業主体の265終末処理場(未利用地計6,580,578m2 、取得価格計2025億8608万余円、国庫補助金計1058億0090万余円)において、実測推計汚水量の方が少ないものとなっており、計画汚水量に対する実測推計汚水量の割合別の終末処理場数は表4 のとおりとなっていた。
水処理施設等の増設を予定している終末処理場 | 計画汚水量より実測推計汚水量が少ない終末処理場 | 計画汚水量より実測推計汚水量が多い終末処理場 | |||
60% 未満
|
60% 以上
80% 未満 |
80% 以上
100% 未満 |
|||
398
(255) |
265
(183) |
18
(16) |
94
(75) |
153
(118) |
133
(100) |
したがって、これらの終末処理場においては、最新の人口データ、近年の給水量の実測値等を参考として、その地域にあった全体計画に見直すことにより、水処理施設等の規模を縮小できる可能性があり、これに伴って、同施設等用地として利用が見込まれない用地が生ずると思料される。
北海道余市町は、昭和57年度から平成15年度にかけて、余市下水処理場の用地35,311m2
を取得して、元年度より供用開始している。そして、同町は、昭和53年度に当初の全体計画策定後、平成4年度に見直しを行い、計画人口を28,200人、計画汚水量を15,510m3
/日(水処理施設の能力約3,880m3
/日×4系列)としていたが、その後、計画人口及び計画汚水量を据え置いたままとしていた。
そこで、改めて21年度末現在の定住人口19,494人により目標年次である27年度の推計人口を算出すると、計画人口28,200人に対して18,394人となり、また、実測給水量を算出すると、全体計画における1人1日当たりの計画生活汚水量0.45m3
に対して0.25m3
となる。そして、推計人口、実測給水量、全体計画における工場排水量等を基に実測推計汚水量を算出すると7,541m3
/日となり、同町の計画汚水量15,510m3
/日を7,969m3
/日下回ることから、全体計画上、今後増設を予定している水処理施設2系列分等の規模を縮小できると思料される。
(イ) 高度処理施設の建設予定地について
54事業主体の61終末処理場においては、流域別下水道整備総合計画に水質の目標値等が定められていたり、将来水質規制が厳しくなった場合を想定したりなどして、高度処理施設用地として、1,008m2 から21,808m2 、計363,788m2 (取得価格計125億4395万余円、国庫補助金計65億9848万余円)を保有しているが、流入下水量が少ないなどのことから、具体的な施設の能力や規模等の検討を行っておらず、必要面積が明確でないまま13年から57年の長期間未利用地となっていた。さらに、近年の同施設は、技術の進歩等により、従来のように大きな沈殿池等を必要とせずに十分な高度処理を行うことが可能となってきており、引き続き広大な用地を保有する必要性がなくなっていることから、適切に見直しを行うことにより、同施設用地として利用が見込まれない用地が生ずると思料される。
(ウ) コンポスト施設の建設予定地について
42事業主体の47終末処理場においては、汚泥の資源化等を図るため、コンポスト(汚泥を脱水・発酵させたたい肥)化する施設の用地として、1,100m2
から24,100m2
、計247,735m2
(取得価格計23億6164万余円、国庫補助金計12億9067万余円)を保有しているが、コンポストの需要量等に関する調査や予測等を行っておらず、同施設の能力や規模等の検討も行っていなかった。このため、これらの用地は、その必要面積等が明確でないまま10年から48年の長期間未利用地となっていた。そして、これらの事業主体は、汚泥を民間のコンポスト工場やセメントの材料としてセメント工場(以下、これらを合わせて「民間工場」という。)に搬出するなどしていた。
一方、他の終末処理場においては、採算性を考慮するなどして見直しを行った結果、同施設の建設計画を取り止めて、将来とも民間工場で汚泥を処理することとしているものが多いことから、その必要性や規模について適切に見直しを行うことにより、同施設用地として利用が見込まれない用地が生ずると思料される。
(エ) 施設が全く建設されていない終末処理場等の施設予定地について
用地を取得しておおむね5年から7年の間に施設を建設するとして事業計画の認可を受けていながら、事業主体における予算の制約等の理由により、終末処理場の施設が用地取得後10年から28年にわたり全く建設されていないものが、5事業主体の6終末処理場の用地計234,666m2 (取得価格計364億0588万余円、国庫補助金計182億国土交通省7648万余円)で、また、受け持つ排水区域の土地区画整理事業が進ちょくしていないなどの理由により、雨水ポンプ場が用地取得後10年から54年にわたり全く建設されていないものが、18事業主体の22ポンプ場の用地計74,337m2 (取得価格計55億8546万余円、国庫補助金計28億5152万余円)で見受けられた。
徳島県那賀郡那賀川町(平成18年3月以降は市町村合併により阿南市)は、平島浄化センターの用地として平成8年度から11年度までの間に17,004m2 を取得していた。しかし、金融機関に信託した町有地において経営されていたゴルフ場の負債の処理及び運営の継続のため、12年度に多額の財政支出を行い、財政状況が悪化したことから、下水道事業を休止していて、終末処理場の建設に全く着手されていない状況となっていた。
これらの終末処理場等については、事業認可後、長期間が経過しており、この間に、計画区域において社会情勢等が変化している可能性もあることから、当該施設の必要性も含めて、十分検討する必要があるものと認められる。そして、その検討に当たっては、前記の(ア)から(ウ)のことにも留意すべきであり、それらの検討を適切に行うことにより、今後、利用が見込まれない用地が生ずると思料される。
(オ) 計画面積等を超えた終末処理場等の用地について
21年度末現在において、事業主体が下水道用地を取得した際の施設等の大まかな配置等を示す図面はあるものの、国庫補助申請時における下水の処理又は排水に直接必要となる施設等に係る構造物面積が明確でなかったことから、今回、改めて、各事業主体に対して用地取得時の全体計画を基に構造物面積の算定を依頼し、これにより補助事業で取得した下水道用地の面積を除すなどしたところ、68事業主体の149終末処理場等(用地面積計849,550m2
)において、用地取得費の国庫補助対象の範囲の原則である下水の処理又は排水に直接必要な構造物面積の4.5倍又は3倍を超えるものとなっており、その超える用地は計133,754m2
(取得価格計24億4439万余円、国庫補助金計13億5409万余円)となっていた。
また、54事業主体の87終末処理場等(用地面積計1,255,908m2
)においては、事業計画の認可を受けた用地面積を上回る面積を国庫補助対象として取得しており、その上回る用地は計46,927m2
(取得価格計10億6946万余円、国庫補助金計5億4154万余円)となっていた。
(これらの事態については、重複しているものがあり、重複分を除いた用地は計176,223m2
(取得価格計34億4960万余円、国庫補助金計18億6140万余円)となる。)
ア 財産処分の承認を受けているもの
150事業主体の238終末処理場等の未利用地計2,914,111m2 において、補助金等適正化法の規定に基づく財産処分の承認を受けて、施設等の建設に着手するまでの間等に、道路、公園、グラウンド等として目的外使用を行っており、その用途別の箇所数の内訳は表5 のとおりとなっていた。
\
|
事業主体数
|
箇所数
(箇所) |
目的外使用の用途(箇所)
|
|||||||
道路
|
公園等
|
グラウンド等
|
駐車場等
|
工事ヤード等
|
し尿処理施設等
|
その他
|
計
|
|||
終末処理場
|
146
|
221
|
28
(77) |
42
(577) |
147
(1,703) |
22
(96) |
32
(295) |
9
(7) |
43
(128) |
323
(2,887) |
ポンプ場
|
14
|
17
|
0
(0) |
6
(15) |
6
(8) |
0
(0) |
0
(0) |
0
(0) |
6
(3) |
18
(26) |
計
|
150
|
238
|
28
(77) |
48
(592) |
153
(1,712) |
22
(96) |
32
(295) |
9
(7) |
49
(132) |
341
(2,914) |
注(1) | 終末処理場、ポンプ場の事業主体数は、それぞれ重複しているものがある。 |
注(2) | 1か所で複数の目的外使用を行っている場合があるため、箇所数と用途別の箇所数の計とは一致 しない。 |
注(3) | 括弧書きは目的外使用に係る面積であり、単位は千m2 である。また、千m2 未満を切り捨てているため、各用途の面積を合計しても計欄とは一致しない。 |
このうち、48事業主体の80終末処理場等の計1,114,514m2 (取得価格計592億1316万余円、国庫補助金計296億2096万余円)においては、進入道路、外周道路等を一般交通の用に供し、市町村道として道路管理者に管理を行わせていたり、公園、グラウンド等を整備して地域住民等に開放し、これらを下水道事業者以外の者に管理を行わせていたりしていたが、管理協定等を締結していなかった。
イ 財産処分の承認を受けていないもの
37事業主体の46終末処理場等においては、未利用地等計182,017m2 (取得価格計39億9114万余円、国庫補助金計21億0038万余円)について、財産処分の承認を受けずに、道路、グラウンド等として目的外使用を行っていた。このうち、2事業主体の4終末処理場等の計7,123m2 (取得価格計9億6391万余円、国庫補助金計5億2232万余円)については、駐車場等として有償で貸し付けるなどしており、当該貸付料等(270,223,363円)のうち国庫補助金相当額(134,774,686円)の国庫納付を行っていなかった。
前記のように、下水道事業で取得した用地の利用に関して、社会情勢の変化等を適時適切に反映して全体計画を見直したり、今後の必要性について十分検討したりしないまま、利用が見込まれない、又は見込まれないこととなる可能性がある未利用地を保有している事態は、投資効果が発現しないこととなるもので適切でなく、改善の要があると認められる。また、用地の取得に際して、計画面積等を超えた用地を国庫補助対象としている事態や、財産処分の手続が適正に行われていない事態は適切でなく、是正及び是正改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において、
(ア) 用地の利用に関して、施設については、段階的に整備していくものであり、引き続き財政措置が必要であることから、整備の必要性や規模の見直しが行われるものの、用地については、すべての用地を先行的に取得することが多いため、見直しの機会がほとんどなく、その意識が働きにくいこと
(イ) 用地の取得に関して、原則として構造物面積の4.5倍又は3倍まで補助対象となることなどから、施設整備の見込みや規模等の検討を十分行わないまま取得していること、また、先行的な用地取得では、取得時点で構造物の面積を十分正確に算定できないこと
(ウ) 補助金等適正化法等に基づく適正な手続により財産処分を行うことについて、認識が十分でないこと
イ 貴省において、全体計画等を見直し、社会情勢の変化等に適合したものとなるよう、事業主体に対して助言等を行っているものの、用地については、未利用地の状況を把握するための報告やその利活用についての検討を十分促してこなかったこと
下水道事業においては、これまで多額の財政資金により用地の取得が行われてきたが、多くの用地が未利用のまま投資効果が発現していない事態となっており、このままでは、今後とも未利用地として推移するものが相当数に上ることが見込まれる。一方、下水道財政を含めて国及び地方公共団体の財政状況は極めて厳しく、社会情勢の変化等に応じた施策の充実、拡大等のため、既存の資産の有効活用が求められている。また、下水道の未普及地における事業着手等に伴って、今後も下水道用地の取得が行われることになる。
ついては、貴省において、未利用となっている下水道用地について、下水道事業における必要性の見直しが適時適切に行われ、その活用が図られるよう、また、今後の下水道用地の取得が適時適切に行われるよう、さらに、財産処分に当たって適正な手続がとられるよう、次のとおり意見を表示し並びに是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
ア 事業主体に対して、社会情勢の変化、現状における給水実績等の最新データなどを的確に反映した全体計画等の見直しを早急に行うよう周知徹底し、建設予定の施設等の必要性、適正な規模、配置等の具体的な検討を求めること。その際、終末処理場等の用地についても、建設予定の施設等に必要な面積と不要な面積とを区分するなどの具体的な検討を求めること。さらに、これらの具体的な検討状況、未利用地の状況等の報告を適宜求め、下水道用地の適切かつ有効な管理・利用を図ること
イ 事業主体に対して、全体計画等の見直しなどにより、将来も下水道事業に利用する見込みがなくなった用地については、可能な限り他事業又は他事業者等に譲渡するなどしてその資産の有効活用を図らせること
事業主体に対して、用地の取得に当たっては、補助の目的に沿った利用が早期に図られるものを可能な限り優先するとともに、補助対象の範囲を十分確認の上、国庫補助申請を行うよう周知徹底すること
事業主体に対して、国土交通大臣の承認を受けないで財産処分を行っていたり、管理協定等を締結していなかったりしている下水道用地について、速やかに補助金等適正化法、都市局承認基準等にのっとった所要の承認手続等をとらせるとともに、有償のものについては、国庫補助金相当額の国庫納付をさせること。また、今後、財産処分に当たっては、これらの法令等を遵守して、適正な手続及び所要の国庫納付を行うよう周知徹底すること