会計名及び科目 | 社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定) | (項)空港使用料収入 | |
平成19年度以前は、空港整備特別会計 | (項)空港使用料収入 | ||
部局等 | 国土交通本省 | ||
保安料の概要 | 空港保安対策に要する費用の一部を賄うため、国の管理する空港を航空機が離陸する場合の施設の使用料として旅客等の数に応じて算定した額を航空会社から徴収するもの | ||
検査の対象とした空港 | 25空港 | ||
東京国際空港を離陸する国際線について保安料を徴収することとした場合の徴収額 | 2億0773万円
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(平成19、20両年度) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
我が国には、平成20年度末現在、空港法(昭和31年法律第80号。平成20年6月17日以前は空港整備法)に定める空港で供用中のものが97空港あり、これらの空港の管理者等は、ハイジャック、航空機爆破等の不法な行為の未然防止を図るため、各種の空港保安対策を講じている。
貴省は、上記97空港のうち国が管理する25空港(注1)
(以下「国管理空港」という。)において、空港保安対策として、航空会社等が旅客及び旅客の手荷物あるいは貨物に対してX線透視手荷物検査装置、金属探知機等を使用して実施する保安検査業務及びこれらの保安検査機器の設置等に要する経費の1/2をそれぞれ分担及び補助するほか、立入りが制限されている区域への不法侵入防止対策等を実施している。そして、貴省は、これらの空港保安対策に要する費用を、社会資本整備事業特別会計空港整備勘定(19年度以前は空港整備特別会計。以下「空港整備勘定」という。)において経理しており、これを空港管理規則(昭和27年運輸省令第44号)に基づき航空会社等から徴収する着陸料、保安料等の空港使用料や一般会計からの受入れなどの収入により賄っている。
13年9月の米国同時多発テロ事件の発生以降、空港保安対策が格段に強化されたことに伴い、空港保安対策に要する費用が飛躍的に増大している。
また、交通政策審議会航空分科会は、14年4月、「今後の空港及び航空保安施設の整備に関する方策について」とする国土交通大臣の諮問を受けて、同年12月に答申を行い、空港整備勘定の収入と支出等の透明性の向上を求めている。
貴省は、空港保安対策に要する費用の増大及び上記の答申を踏まえて、空港保安対策に係る受益と負担の関係を明確にするとともに、空港整備勘定からの支出である空港保安対策に要する費用の一部を賄うことを目的として、16年6月に空港管理規則を改正して、航空機が国管理空港を離陸する場合の空港使用料として、従来設定していた着陸料等に加えて、保安料を旅客等の数に応じた額となるように設定して航空会社から徴収することとした。
この保安料の額について貴省は、「国土交通大臣が設置し、及び管理する公共用飛行場の使用料に関する告示」(以下「告示」という。)において定めており、19年4月以降の保安料についてみるとジェット機が空港を離陸する場合、旅客1人当たり100円又は貨物1トン当たり300円となっている。ただし、告示の特則により、東京国際空港を離陸する国際線については、国際線に係る保安料の設定当初から保安料を徴収しないこととしている。
そして、保安料の収納額は、19年度80億6131万余円、20年度78億7882万余円、計159億4013万余円となっている。
貴省が空港保安対策を実施するために支出している費用の額は、19年度約96億円、20年度約81億円と毎年多額に上っている。
そこで、本院は、保安料の徴収について、経済性、効率性等の観点から、保安料設定の趣旨に沿ったものとなっているかなどに着眼して、国管理空港における保安料を対象として、貴省航空局において、保安料算定に係る基礎資料等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は、前記のとおり、東京国際空港を離陸する国際線については保安料を徴収しないこととしているが、他の空港を離陸するものについては国際線、国内線の別を問わずすべて保安料を徴収していた。
東京国際空港を離陸する国際線について保安料を徴収してこなかった経緯についてみると、貴省によれば、〔1〕 国内線の基幹空港である東京国際空港の国際線の着陸料について成田国際空港株式会社(以下「成田会社」という。)が管理する首都圏における国際線の拠点空港である成田国際空港の国際線の着陸料と同額(航空機の重量1トン当たり2,400円)となるよう従来設定していたこと及び〔2〕 成田会社は当時保安料を設定していなかった(注2)
ことから、こうした空港使用料についての両空港におけるこれまでの取扱いとの整合性を図るため、東京国際空港を離陸する国際線についても保安料を徴収しないこととしたことによるとしている。
しかし、空港保安対策は、安全確保のため東京国際空港を含めていずれの国管理空港においても実施されているのであるから、保安料については、空港の別や国際線、国内線の別を問わず、受益者負担の公平性の観点から統一的に設定する必要があり、国管理空港のうち東京国際空港を離陸する国際線についてのみ保安料を徴収しないこととしていることは、空港保安対策に係る受益と負担の関係を明確にすることなどとしている保安料設定の趣旨に沿ったものになっていないと認められる。
そこで、東京国際空港を離陸する国際線について保安料を徴収することとして、19、20両年度の旅客数及び貨物取扱量を基にその徴収額を計算すると、19年度9293万余円、20年度1億1479万余円、計2億0773万余円となる。
航空会社から徴収する保安料の設定に当たり、東京国際空港を離陸する国際線について保安料を徴収しないこととしている事態は、保安料設定の趣旨に沿ったものになっていないと認められ、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、保安料設定の趣旨に沿って保安料を徴収することについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省は、国管理空港において、今後も引き続き、空港の別や国際線、国内線の別を問わず空港保安対策を実施し、その費用の一部を賄うために保安料を徴収することとしており、また、東京国際空港については22年10月に第4滑走路、新国際線旅客ターミナルビル及び新国際線貨物ターミナルの供用が開始されることに伴い、国際線の旅客数及び貨物取扱量の増大が見込まれている。
ついては、貴省において、東京国際空港を離陸する国際線に係る保安料を、保安料設定の趣旨に沿って徴収することとするよう意見を表示する。