会計名 | (1) 社会資本整備事業特別会計(治水、道路整備、港湾各勘定) | ||
(2) 自動車安全特別会計(自動車検査登録勘定) | |||
部局等 | 国土交通本省 | ||
一般会計からの繰入れの概要 | 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第6条等の規定に基づき、各特別会計において経理されている事務及び事業に係る経費のうち、一般会計からの繰入れの対象となるべき経費の財源に充てるために必要があるときに限り、予算で定めるところにより、一般会計から当該特別会計に繰り入れるもの | ||
減額できた一般会計からの繰入金 | (1) 治水勘定 | 3249万円 | (平成20年度) |
道路整備勘定 | 11億5830万円 | (平成20年度) | |
港湾勘定 | 3億0448万円 | (平成20年度) | |
計 | 14億9528万円 | ||
(2) | 2008万円 | (平成20年度) |
(本件事態等の検査状況について、「第4章 第3節 特定検査対象に関する検査状況」に「一般会計からの繰入金を歳入としている特別会計における当該繰入金の繰入れ及び繰入れの対象となるべき経費に係る歳出予算の執行の管理等について」 を掲記した。)
(平成22年10月13日付け 国土交通大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
国は、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)に基づき、その経理を一般会計と区分して行うため特別会計を設置しており、平成20年度における特別会計は21会計となっている。このうち、社会資本整備事業、自動車安全両特別会計については、国土交通大臣が、法令で定めるところに従い、管理することとされている。そして、両特別会計においては、複数の事業が実施されていて、それぞれの事業収支を区分する必要があるとして勘定が設けられている。
両特別会計の目的並びにその各勘定の20年度決算における収納済歳入額、支出済歳出額及びその差額である決算剰余金の状況は、表1のとおりとなっている。この決算剰余金は、予算額に対する歳入の増加、歳出予算の繰越、不用等が要因となって生じるものである。
表1 両特別会計の目的及びその各勘定の平成20年度決算の状況等 | (単位:百万円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
特別会計の歳入のうち、一般会計からの繰入金は、事務事業の支出に充てるための財源の一部又は全部を、一般会計から特別会計又はその勘定に繰り入れるものである。
特会法第6条では、「各特別会計において経理されている事務及び事業に係る経費のうち、一般会計からの繰入れの対象となるべき経費(以下「一般会計からの繰入対象経費」という。)が次章に定められている場合において、一般会計からの繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り、予算で定めるところにより、一般会計から当該特別会計に繰入れをすることができる。」と規定されている(以下、「一般会計からの繰入対象経費」を単に「繰入対象経費」という。)。そして、社会資本整備事業特別会計については特会法第203条、自動車安全特別会計については特会法第215条において、それぞれ繰入対象経費が規定されている。
貴省所管の特別会計では、20年度に、表2のとおり、2特別会計6勘定において、一般会計からの繰入金を歳入としている。
表2 一般会計からの繰入れの状況等(平成20年度) | (単位:百万円、%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
各府省は、財政法(昭和22年法律第34号)第28条に規定する予算の添付書類の作成、公債発行額の決定等のために、「決算純計額報告書、決算見込額報告書及び決算見込純計額報告書等の様式並びに送付期限等について」(昭和33年蔵計第2138号)等に基づき、毎年度の12月末(第1次)、2月末(第2次)及び4月末(第3次)現在における一般会計及び特別会計の歳入歳出決算見込額を把握して、それぞれ翌月初旬に財務省に報告することとなっている。この報告においては、歳出予算現額のうち、年度内に執行しないことが確実と見込まれる「項」「目」の不用見込額について、その不用理由と併せて報告することとなっている。
本院は、効率性等の観点から、特別会計の歳入である一般会計からの繰入れは適切かつ効率的に行われているかなどに着眼して、貴省所管の2特別会計8勘定のうち、一般会計からの繰入金を歳入としている2特別会計6勘定の20年度決算を対象に、貴省本省において会計実地検査を行った。そして、予算書、決算書等の関係書類によって、一般会計からの繰入れ及び繰入対象経費に係る歳出予算の執行はどのように管理されているかを分析するなどの方法により検査した。
検査したところ、社会資本整備事業特別会計の治水勘定、道路整備勘定及び港湾勘定並びに自動車安全特別会計の自動車検査登録勘定、計2特別会計4勘定において、次のような事態が見受けられた。
ア 治水勘定
この勘定は、国が施行する直轄治水事業、都道府県知事が施行する治水事業に係る負担金又は補助金の交付等に関する経理を行うものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法第203条第1項の規定により、〔1〕 治水事業に要する費用で国が負担するもの、〔2〕 河川等に係る治水関係災害復旧事業等の事業若しくは工事又は管理に要する事務費、〔3〕 河川法に関する事業等に係る負担金、補助金及び交付金、〔4〕 独立行政法人水資源機構が施行する事業に係る交付金で国が負担するもの並びに〔5〕 民間資金等を活用した治水関係事業に係る貸付金に要する費用とされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は8226億2636万余円となっている。そして、一般会計からの繰入金は、表3のとおり、20年4月から21年3月まで毎月繰り入れられており、地方公共団体工事費負担金収入等の他の歳入と合わせて歳出予算の財源になっている。
表3 一般会計からの繰入れの状況(社会資本整備事業特別会計(治水勘定)) | (単位:百万円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)都市水環境整備事業費等19「項」で計27億0095万余円となっているが、貴省は、21年2月末の時点では、これらに係る不用見込額を計3351万余円と把握していた。
しかし、貴省は、このように当該年度の経費としては支出する見込みがないものとして繰入対象経費に係る不用見込額を把握していたにもかかわらず、これを一般会計からの繰入額に反映させていなかったため、上記の不用見込額に対応する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。その不用見込額に対応する財源の額は、上記19「項」の各「目」別の不用見込額に当該「目」別の歳出予算の財源に占める一般会計からの繰入金の割合を乗じて算出すると、3249万余円となる。
したがって、繰入対象経費に係る21年2月末の不用見込額3351万余円を一般会計からの繰入額に反映させていれば、21年3月に繰り入れられた2514億7999万余円のうち、不用見込額に対応する3249万余円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
イ 道路整備勘定
この勘定は、国が施行する道路の新設、改築、維持及び修繕に関する事業並びに道路の整備に関する事業についての国の負担金その他の経費の交付及び資金の貸付けに関する経理を行うものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法第203条第2項の規定により、道路整備事業に要する費用で国が負担するものとされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は2兆1969億8943万余円となっている。そして、一般会計からの繰入金は、表4のとおり、20年4月から21年3月まで毎月繰り入れられており、地方公共団体工事費負担金収入等の他の歳入と合わせて歳出予算の財源になっている。
表4 一般会計からの繰入れの状況(社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)) | (単位:百万円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
(注) 一般会計から繰り入れられた2兆1969億8943万余円のうち1兆9343億0068万余円は、道路特定財源である揮発油税及び石油ガス税が一般会計経由でこの勘定に繰り入れられたものである。
20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)道路環境改善事業費等19「項」で計66億0005万余円となっているが、貴省は、21年2月末の時点では、これらに係る不用見込額を計13億5251万余円と把握していた。
しかし、貴省は、このように当該年度の経費としては支出する見込みがないものとして繰入対象経費に係る不用見込額を把握していたにもかかわらず、不用見込額のうち支出負担行為実施計画未計画となっていた330万余円を除いて、これを一般会計からの繰入額に反映させていなかったため、上記の不用見込額に対応する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。その不用見込額に対応する財源の額は、上記19「項」の各「目」別の不用見込額に当該「目」別の歳出予算の財源に占める一般会計からの繰入金の割合を乗じて算出すると、11億5830万余円となる。
したがって、繰入対象経費に係る21年2月末の不用見込額13億5251万余円を一般会計からの繰入額に反映させていれば、21年3月に繰り入れられた3849億4422万余円のうち、不用見込額に対応する11億5830万余円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
ウ 港湾勘定
この勘定は、国が施行する港湾整備事業及び港湾管理者が施行する港湾整備事業に対する負担金又は補助金の交付等に関する経理を行うものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法第203条第3項の規定により、〔1〕 港湾整備事業に要する費用で国が負担するもの、〔2〕 一般会計所属港湾関係工事に要する事務費、〔3〕 港湾施設の建設等で港湾管理者が施行するものに係る負担金及び補助金、〔4〕 広域臨海環境整備センターの事業に対する補助金、〔5〕 港湾法等の規定による貸付けに要する費用並びに〔6〕 民間資金等を活用した港湾施設の建設又は改良に係る貸付けに要する費用とされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は2383億3177万余円となっている。そして、一般会計からの繰入金は、表5のとおり、20年4月から21年3月まで毎月繰り入れられており、港湾管理者工事費負担金収入等の他の歳入と合わせて歳出予算の財源になっている。
表5 一般会計からの繰入れの状況(社会資本整備事業特別会計(港湾勘定)) | (単位:百万円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)港湾環境整備事業費等9「項」で計7億8148万余円となっているが、貴省は、21年2月末の時点では、これらに係る不用見込額を計3億8761万余円と把握していた。
しかし、貴省は、このように当該年度の経費としては支出する見込みがないものとして繰入対象経費に係る不用見込額を把握していたにもかかわらず、不用見込額のうち支出負担行為実施計画未計画等となっていた4932万余円を除いて、これを一般会計からの繰入額に反映させていなかったため、上記の不用見込額に対応する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。その不用見込額に対応する財源の額は、上記9「項」の各「目」別の不用見込額に当該「目」別の歳出予算の財源に占める一般会計からの繰入金の割合を乗じて算出すると、3億0448万余円となる。
したがって、繰入対象経費に係る21年2月末の不用見込額3億8761万余円を一般会計からの繰入額に反映させていれば、21年3月に繰り入れられた482億4347万余円のうち、不用見込額に対応する3億0448万余円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
この勘定は、自動車検査登録等事務(自動車の検査、登録等)に関する経理を行うものである。
この勘定における繰入対象経費は、特会法第215条第2項の規定により、自動車重量税の納付の確認及び税額の認定の事務に要する経費とされており、20年度に一般会計から繰り入れられた額は8億8526万余円となっている。
また、特会法附則第65条及び附則第63条の規定による読替え後の特会法第216条の規定により、自動車損害賠償保障事業及び自動車事故対策計画に基づく交付等に係る業務の取扱いに要する経費に充てるための財源として、当該経費に相当する金額を保障勘定及び自動車事故対策勘定からこの勘定に繰り入れるものとされており、20年度に両勘定から繰り入れられた額は、それぞれ7億5803万余円及び2億0618万余円となっている。
自動車重量税の納付の確認等の事務を含む自動車検査登録等事務、自動車損害賠償保障事業及び自動車事故対策計画に基づく交付等に係る業務に必要な人件費、事務費等については、この勘定の(項)業務取扱費から支出することとされており、その経費に充てるための財源については、各勘定において経理される事務又は事業の予算定員を基に各「目」の歳出予定額を案分するなどして一般会計又は保障勘定若しくは自動車事故対策勘定ごとの負担額が算出されている。そして、一般会計及び両勘定からの繰入金は、表6のとおり、20年4月から21年4月までおおむね四半期ごとに同勘定に繰り入れられている。
表6 一般会計等からの繰入れの状況(自動車安全特別会計(自動車検査登録勘定)) | (単位:千円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
20年度決算における繰入対象経費に係る不用額は、(項)業務取扱費で25億3242万余円となっているが、貴省は、21年2月末の時点では、これらに係る不用見込額を10億9916万余円と把握していた。
しかし、貴省は、このように当該年度の経費としては支出する見込みがないものとして繰入対象経費に係る不用見込額を把握していたにもかかわらず、これを保障勘定及び自動車事故対策勘定からの繰入額にのみ反映させていて、一般会計からの繰入額には反映させていなかったため、上記の不用見込額に対応する財源を含めて一般会計から繰り入れていた。その不用見込額に対応する財源の額は、上記の「項」における「目」別の不用見込額に当該「目」別の歳出予算の財源に占める一般会計からの繰入金の割合を乗じて算出すると、2008万余円となる。
したがって、繰入対象経費に係る21年2月末の不用見込額10億9916万余円を一般会計からの繰入額に反映させていれば、21年4月に繰り入れられた1億7306万余円のうち、不用見込額に対応する2008万余円は一般会計からの繰入れを減額することができたと認められる。
特会法第6条によれば、一般会計からの繰入れは、特会法に定める一般会計からの繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り行うことができるとされているのに、社会資本整備事業特別会計の治水勘定、道路整備勘定及び港湾勘定並びに自動車安全特別会計の自動車検査登録勘定において、歳出予算の執行過程で把握していた不用見込額を一般会計からの繰入額に反映させていない事態は、減額されずに繰り入れられた資金が決算剰余金となって有効に活用されないこととなるもので適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、一般会計からの繰入れは、特会法において繰入対象経費の財源に充てるために必要があるときに限り行うことができるとされていることについての認識が十分でなく、不用見込額を把握しているにもかかわらず、社会資本整備事業特別会計の上記3勘定では、そのうち支出負担行為実施計画未計画等に係る額以外は一般会計から繰り入れることにしていること、自動車安全特別会計の自動車検査登録勘定では、予算で定められたとおりの金額を一般会計から繰り入れることを慣行にしていることなどによると認められる。
一般会計からの繰入れが特別会計における歳出予算の執行状況等に応じて適時適切に行われ、税収のほか国債の発行等により調達されて一般会計から特別会計へ繰り入れられた資金が有効に活用されることが求められる。
ついては、貴省において、特別会計における歳出予算の執行過程で把握した不用の見込みを一般会計からの繰入額に確実に反映させることにより、繰入額を抑制して一般会計からの繰入れを適切かつ効率的なものとするよう改善の処置を要求する。