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ごみ固形燃料(RDF)化施設の運営に資する情報を提供するなどして、施設の健全な運営及び市町村のごみ処理事業の安定化に資するよう意見を表示したもの


ごみ固形燃料(RDF)化施設の運営に資する情報を提供するなどして、施設の健全な運営及び市町村のごみ処理事業の安定化に資するよう意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)環境本省 (項)廃棄物処理施設整備費
    平成11年度以前は、
(組織)厚生本省 (項)環境衛生施設整備費
部局等 環境本省(平成13年1月5日以前は厚生本省)、20道県
補助の根拠 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)
補助事業者
(事業主体)
県1、市16、町9、広域連合1、一部事務組合23、会社2、計52事業主体
補助事業の概要 廃棄物の円滑かつ適正な処理を行うことにより生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、ごみ処理施設の整備を行う市町村、一部事務組合等の整備事業等に対し事業等の実施に要する経費に充てるため、国が交付するもの
RDF化施設等の整備に係る総事業費 1988億6167万余円 (平成5年度〜18年度)
RDF化施設等の整備に係る補助対象事業費 1741億0623万余円 (平成5年度〜18年度)
上記に対する補助金等の額 584億0558万円 (背景金額)

【意見を表示したものの全文】

  国庫補助金により整備されたごみ固形燃料(RDF)化施設の運営について

(平成22年10月28日付け 環境大臣あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 事業の概要

(1) RDF化施設の概要

 貴省(平成13年1月5日以前は厚生省)は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき、廃棄物の円滑かつ適正な処理を行うことにより生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、ごみ処理施設等の廃棄物処理施設の整備を行う市町村、一部事務組合等(以下「事業主体」という。)に対して、平成16年度まで(注1) は廃棄物処理施設整備費国庫補助金を、17年度からは循環型社会形成推進交付金(以下、これらを合わせて「補助金等」という。)を交付している。
 そして、6年度から、廃棄物の排出の抑制、再生利用等のための廃棄物処理施設であるごみ燃料化施設の一つとして、ごみ固形燃料(Refuse Derived Fuel、以下「RDF」という。)を生成するRDF化施設の整備事業を補助対象事業としており、また、10年度から、専らRDFを燃料として発電を行う施設(以下「RDF発電施設」という。)の整備も補助対象事業としている。
 RDFは、家庭等から収集した生ごみ、紙ごみ、プラスチックごみなどを粉砕し、乾燥させてから、石灰を加えて圧縮成形機で固形化したものである。形状は、暗褐色のクレヨン状で、直径1.5cm×長さ5cmから直径5cm×長さ15cmの範囲のものが多く、重量は生ごみ等の約半分、体積は5分の1から8分の1程度になる。

 平成16年度以前に交付決定された事業で、17年度以降も継続しているものについては、同年度以降も廃棄物処理施設整備費国庫補助金が交付されている。

(2) RDF化施設の整備を巡る動向

ア RDFに関する有識者等の意見

 RDF化施設の整備事業が補助対象事業とされた頃においては、有識者等の中から、RDFは、燃焼効率が良く、内容も均質化されており、安定した燃焼が得られ、発熱量は低質の石炭にも匹敵することから、燃料として利用者に引き渡すことが可能であるとする意見が公表されていた。

イ ダイオキシン規制及びごみ処理の広域化とRDF化施設

 我が国では、昭和58年に、ごみ焼却施設の集じん灰から人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるダイオキシン類(注2) が検出されたとの報告があり、社会的に大きな関心を呼び、住民の不安等から一部市町村においては、ごみ処理の円滑な実施に支障が生じるなどした。
 そして、ごみ焼却施設では、焼却炉の立上げ時や立下げ時の燃焼温度200〜600度、特に300度前後でダイオキシン類が最も多く生成することから、貴省は、平成2年12月に「ダイオキシン類の発生を防止するためのガイドライン」(平成2年12月26日衛環第260号)を策定し、燃焼管理、排ガスの処理方法等を通知した。
 その後、貴省は、9年1月に「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(平成9年1月28日衛環第21号、以下「新ガイドライン」という。)を策定して、ダイオキシン類の排出を削減するために数値目標を定め、濃度を定期的に測定するなどして対策を強力に推進することとし、その一環として、新設するごみ焼却施設は、ダイオキシン類の発生を低く抑えるよう24時間連続運転の焼却施設(以下「全連続式焼却施設」という。)とすることとしている。そして、全連続式焼却施設として稼働するためには、一定量以上のごみがなければならないことから、「ごみ処理の広域化計画について」(平成9年5月28日衛環第173号)において、各都道府県は、10年度から19年度までの10年間で、可能な限り焼却能力が300t/日以上(最低でも100t/日以上)の全連続式焼却施設を設置できるよう市町村を広域ブロック化することとしたごみ処理の広域化計画を策定するとともに、同計画に基づいて市町村を指導することとしている。さらに、10年度から12年度までの間は、焼却能力100t/日未満のごみ焼却施設は補助金等の交付の対象としないこととしたが、その後、13年度以降は、100t/日未満のごみ焼却施設についても、ダイオキシン類の対策が十分に講じられていることを条件に、補助金等の交付の対象としている。
 また、新ガイドラインの中で、RDFの引渡先での燃焼に当たっては、ごみ焼却施設と同様の措置を講じることとしている。このため、ダイオキシン対策が講じられた燃焼炉等を有する施設でなければ、RDFを引き渡すことはできなくなった。

 ダイオキシン類  有機塩素化合物の生産過程や廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成される化学物質であり、その発生源は多岐にわたり、毒性が強い。化学的には、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)の総称で、210種類の異性体を持つ有機物と塩素の化合物群である。平成2年に、我が国におけるダイオキシン類の総排出量のうち、8〜9割をごみ焼却炉からの排出が占めているという報告がある。

(3) 廃棄物の処理に係る市町村及び国の責務

 廃棄物処理法において、国民及び事業者の責務とともに、国及び地方公共団体の責務が定められている。そして、市町村は、区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集、運搬及び処分しなければならないとされ、その処理事業の実施に当たっては、施設の整備及び作業方法の改善を図るなどその能率的な運営に努めなければならないとされている。また、国は、廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用並びに廃棄物の処理に関する技術開発の推進を図り、並びに国内における廃棄物の適正な処理に支障が生じないよう適切な措置を講ずるとともに、市町村及び都道府県に対し必要な技術的及び財政的援助を与えること並びに広域的な見地からの調整を行うことに努めなければならないとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 我が国のごみ処理は、従来、焼却処理が主であったが、環境問題への意識の高まりなどに伴い、ごみ燃料化施設であるRDF化施設も整備されるようになった。しかし、RDF化施設の中には、整備後の様々な事情により運営に支障を来し、休止するなどしている施設も散見される状況にある。
 そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、RDF化施設はどのような理由により選択されたのか、補助金等により整備されたRDF化施設におけるRDFの生成から引渡しまでの一連の運営はどのような状況となっているか、生成されたRDFは燃料として有効に利用されているか、効率的な運営のために改善すべき点はないかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 20道県(注3) 管内の48事業主体が5年度から18年度までの間に整備したRDF化施設50施設(処理能力計3,043t/日)、整備事業費1608億6695万余円(補助対象事業費1498億4125万余円、補助金等495億2433万余円)及び4県(注4) 管内の4事業主体が12年度から15年度までの間に整備したRDF発電施設4施設(処理能力計1,029t/日)、整備事業費379億9472万余円(補助対象事業費242億6497万余円、補助金等88億8125万余円)、整備事業費計1988億6167万余円(補助対象事業費計1741億0623万余円、補助金等計584億0558万余円)を対象として、14道県(注5) において整備計画書、決算書等の関係書類により会計実地検査を行うとともに、6県については上記の関係書類の提出を受けるなどして検査した。

(注3)
 20道県  北海道、茨城、群馬、富山、石川、山梨、岐阜、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、島根、広島、山口、愛媛、高知、福岡、熊本、大分各県
(注4)
 4県  石川、三重、広島、福岡各県
(注5)
 14道県  北海道、富山、石川、山梨、岐阜、兵庫、奈良、和歌山、島根、広島、山口、愛媛、高知、福岡各県

(検査の結果)

 検査したところ、RDF化施設等の整備や運営は、次のような状況となっていた。

(1) RDF化施設の選択理由等について

 検査の対象としたRDF化施設50施設を着工した年度別に見ると、5年度から9年度までが14施設、焼却能力が100t/日未満のごみ焼却施設が補助対象ではなかった10年度から12年度までに着工したものが19施設、それ以降の13年度から16年度までに着工したものが17施設となっている。
 そして、これらのRDF化施設を整備した事業主体が、ごみ焼却施設でなくRDF化施設を選択した理由について調査したところ、次のようになっていた。

〔1〕  10年度から12年度までの間は、広域化計画に参画しない市町村が処理能力が100t/日未満のごみ処理施設を整備する場合において、補助金等の交付を受けようとすれば、補助対象に処理能力の制限がなかったRDF化施設を選択せざるを得なかったこと

〔2〕  ごみをRDF化し、発電や熱供給の燃料とすることなどにより、未利用エネルギーを活用でき、循環型社会形成に資することができると考えたこと

〔3〕  ごみをRDF化しRDFの利用施設で燃焼させる処理方法は、ごみを直接燃焼する方法よりも住民の同意が比較的得られやすいと考えたこと

〔4〕  有識者等の中から、RDFは、発熱量が低質の石炭にも匹敵するとされ、燃料として引き渡せるとの意見が公表されていたことなどから、RDFを利用者に容易に有償で引き渡せるものと考えていたこと
 しかし、多くの事業主体では、RDFの品質や引渡先、RDF化施設の運営に係る収支等について、十分な検討が行われていなかった。

(2) RDF化施設の運営状況等について

 RDFの生成費、引渡単価及び運送費の状況は、以下のようになっていた。

ア RDFの生成費について

 RDF化施設では、ごみを粉砕する破砕機、ごみを高温の熱風で乾燥させる乾燥機、加圧押出しする成形機、成形直後の生成品を冷却する空気送風機等の各種機械の稼働に要する電力料や石油等の燃料費、これらの各種機械の修繕費等の維持管理経費がRDFの生成のために必要となっていた。そして、46施設(注6) における19年度の生成費を生成量で除したRDF1t当たりの生成費の状況は、表1のとおりであり、最低で27,352円、最高で170,721円、平均62,606円となっており、施設間で相当な開差が生じていた。

表1 RDF1t当たりの生成費(46施設、平成19年度)
RDF1t当たり生成費 施設数 RDF1t当たり生成費 施設数
30,000円未満 3 70,000円以上80,000円未満 7
30,000円以上40,000円未満 6 80,000円以上90,000円未満 2
40,000円以上50,000円未満 8 90,000円以上100,000円未満 1
50,000円以上60,000円未満 8 100,000円以上 4
60,000円以上70,000円未満 7    
平均 62,606円
 46施設  検査対象とした50施設から、一旦生成したRDFを炭化して出荷する2施設、平成18年5月で活動を休止している1施設、19年度の稼働が短期となっている1施設を除外して集計している。以下同じ。

 このように開差が生じるのは、RDFの製造方式、施設規模、施設稼働率等の要因によると思料されるが、ごみの内容や性状等により、乾燥工程で必要な石油等の燃料費が多額に上ったり、ごみの中にひも、布、金属、引火性の高い危険物等が混入していて、破砕工程で機械に巻き付いたり、損傷させたり、乾燥工程で発火したりなど、操業上の不具合に伴う維持修繕費が多額に上ったりして、経費がかさんでいるものも多く見受けられた。

イ 引渡単価について

 46施設におけるRDF1t当たりの引渡単価は、表2のとおりであり、有償の場合は、最低で10円、最高で2,625円、平均545円となっており、逆有償(金銭を支払って引き取ってもらうこと)の場合は、最低で525円、最高で15,000円、平均9,083円となっていた。

表2 RDF1t当たりの引渡単価(46施設、平成19年度)
引渡単価 施設数 引渡単価 施設数
有償 1円以上500円未満 6 逆有償 ± 0円500円未満 0
500円以上1,000円未満 11 500円以上1,000円未満 1
1,000円以上1,500円未満 2 1,000円以上1,500円未満 0
1,500円以上2,000円未満 0 1,500円以上2,000円未満 0
2,000円以上2,500円未満 0 2,000円以上2,500円未満 0
2,500円以上3,000円未満 1 2,500円以上3,000円未満 0
3,000円以上5,000円未満 0
5,000円以上10,000円未満 13
10,000円以上 12
平均 545円 (計 20) 平均 9,083円 (計 26)

(ア) 有償の場合

 有償の場合の引渡先は、主に民間の製鉄工場、製紙工場、セメント工場等で、引渡単価は、上記のとおり1,000円未満がほとんどとなっている。このように低額となっているのは、引渡先においてRDFの燃焼により発生する焼却灰等の処理費や燃焼炉のダイオキシン対策の費用などを要することのほか、次のことなどによると思料された。

〔1〕  RDFの材料に水分の多い生ごみ等が含まれていることや、ごみの分別化が進みプラスチックが混入される割合が少なくなったことなどから、発熱量が想定より低いものとなっていること(貴省が21年度に行った調査結果によると、調査に回答したRDF化施設18施設のうち5施設が20年度に生成したRDFの発熱量は、生ごみ等を焼却した場合の発熱量1,000から3,000kcal/kgを上回っていたが、13施設のRDFは、それと同程度となっている。)

〔2〕  RDFは、生ごみ等を固めたものであることから塩分濃度が高く、通常のボイラーで燃焼させると腐食がおき、燃焼炉を傷めること
 また、中にはRDFの品質上の問題等から、引渡先が限定され、引渡先における追加の加工費を負担して、実質的には逆有償となっているものも見受けられた。

(イ) 逆有償の場合

 逆有償となっている26施設のうち24施設は、生成したRDFの引渡先がRDF発電施設となっていた。
 このRDF発電施設は、4県で12、13両年度に4施設が着工されており、RDF化施設を建設する参画市町村の合意により、生成されたRDFの有効利用や安定的引渡先の確保の観点から、県等により広域的なモデル施設として整備が進められたものであり、参画市町村は、RDF生成量に応じて一定額の負担金を支払うこととなっている。
 この負担金の額は、RDF発電施設の運営に係る維持管理経費と売電収入等を基に算定されており、各RDF発電施設のRDF1t当たりの額は5,058円から12,100円となっていて、19年度までに3施設が、稼働開始年度よりも増額していた。
 そして、負担金の増額理由の一つに、家庭ごみの減量化や資源化によりRDFの原料となるごみが減少し、RDFの搬入量が少なくなったことから、RDF発電施設の稼働率が低下(4施設の15年度から19年度までの間の稼働率は5年間の平均で54%〜86%)し、想定していた発電量を下回り、売電収入が減少したことがあると認められた。
 このように、RDF発電施設の稼働状況には余裕があることから、参画市町村以外の市町村のRDF化施設で生成されたRDFを受け入れることができれば、RDF発電施設の稼働率が向上し、売電収入の増収により負担金の低減を図ることができると考えられる。

ウ 運送費について

 RDFは、水分等の影響により発酵、発熱し爆発するおそれがあるため、安全な管理が求められ、特殊な車両で運送する必要があったり、運送経路に制限があったりして、一般の資材等に比べて運送費が全般的に割高になっていると思料されるが、その中でRDF発電施設にRDFを引き渡しているRDF化施設とそれ以外のRDF利用施設にRDFを引き渡しているRDF化施設における引渡先までの運送費を比較すると、表3のとおり、後者の方が高額となっていた。

表3 RDF1t当たりの運送費の比較(46施設、平成19年度)
引渡先 RDF発電施設 左記以外のRDF利用施設
  施設数 平均単価(円) 施設数 平均単価(円)
無償 3 0 4 0
1円以上1,000円未満 2 763 0 0
1,000円以上2,000円未満 7 1,506 3 1,312
2,000円以上4,000円未満 9 3,259 4 2,621
4,000円以上6,000円未満 1 5,145 3 4,658
6,000円以上8,000円未満 1 7,350 2 6,195
8,000円以上10,000円未満 1 8,190 5 9,209
10,000円以上 0 0 1 12,600
平均 (計 24) 2,587 (計 22) 4,519

 これは、引渡先がRDF発電施設である24RDF化施設は、両施設が同じ県内等であるのに対し、それ以外の22RDF化施設は、整備の際にRDFの引渡先を確保していなかったり、引渡しを予定していた施設でRDFの品質上のメリットがないなどとして、引渡しの継続ができなくなったりして、引渡先の確保に苦慮し、県外等遠方の利用施設まで運送しなければならなくなっていることなどによると思料された。
 以上のアからウまでのことから、各RDF化施設の運営に係る経費には開差が生じており、また、その経費がかさんでいる施設が多い状況となっていた。そして、茨城、兵庫両県において、県内のRDF化施設4施設におけるRDFの生成から引き渡しまでに要する経費と、これらRDF化施設とほぼ同時期に着工されたごみ焼却施設13施設における焼却経費とを比較したところ、灰処理費用等は焼却経費には含まれないがRDFの経費には含まれ、また、施設規模にも差があるものの、ごみ1t当たりの平均でRDF化施設の経費は32,716円、ごみ焼却施設の経費は20,632円となっていて、ごみの焼却処理に比べて、RDF化する方が経費が高いものとなっていた。
 また、貴省が公表している統計資料である「廃棄物処理に関する統計・状況」によると、20年度における国民一人当たり年間ごみ処理事業経費は14,200円となっている。これに対し、今回、検査の対象としたRDF化施設50施設の48事業主体における88市町村のうち、主としてRDF化施設で可燃ごみを処理している31施設に係る53市町村については、本院の試算によると、20年度9,200円から38,200円、平均19,500円となり、上記の国民一人当たりの年間ごみ処理事業経費を上回っているものが41市町村となっており、多くの市町村でRDF化施設の運営に伴う財政負担が重い傾向にあることがうかがえた。
 そして、事業主体の中には、RDF化施設の運営を休止して他の市町村にごみ処理事業を委託しているものや、生成したRDFを多額の費用を負担して一般廃棄物として廃棄物処理事業者等に引き取らせたり、焼却して埋立処理したりして、RDFが燃料として有効に利用されていないものも見受けられた。
 以上のようなRDF化施設の運営状況について事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 山梨県内のA事業主体は、他の市町村との広域化計画に参画できなかったこと、同県がRDFを燃料として使用するRDF発電施設等を整備し、県内で生成されたRDFを利用するとしていたことなどから、平成9、10両年度にRDF化施設(処理能力10t/日)を総事業費10億7131万余円(国庫補助金2億5987万余円)で整備している。
 しかし、13年度から焼却能力が100t/日未満の焼却施設も国庫補助の対象となったことなどから、県内の他の市町村がRDF化施設を整備しなかったため、同県はRDFを燃料として使用するRDF発電施設等の施設を整備しないこととなった。
 そして、同事業主体のRDFは生ごみ等を含むものとなっていて、生成費は93,469円/tとなっているが、他にRDFの引渡先を求めて、十数施設に生成したRDFを見本として提出し打診するなどした結果、愛知県の引渡先に500円/tで引き渡すこととなり、その運送費は4,200円/tとなっていた。また、この引渡先はRDFを転売することとしており、RDFに含まれる塩分濃度が高いため、転売先のボイラー燃料用に塩分濃度を調整するための加工費、転売先までの運送費等計17,000円/tを同事業主体が負担することとなっていた。

<事例2>

 和歌山県内のB事業主体は、他の市町村との広域化計画に参画できず、焼却能力が100t/日未満のごみ焼却施設には補助金等が交付されないなどの理由により、平成12、13両年度にRDF化施設(処理能力30t/日)を総事業費35億9691万余円(国庫補助金8億4155万余円)で整備している。
 同事業主体は、14年4月より同施設の稼働を開始させたものの、施設から漏れる臭気対策や設備の不具合に起因する火災事故等により維持修繕費が増大していた。
 そして、同事業主体のRDFは生ごみ等を含むものとなっており、生成量の3分の2は、自家消費のための発電に利用していて、生成費は17年度で90,339円/tとなっていた。また、生成量の残りの3分の1については、施設整備後に施工業者に引渡先の確保を依頼した結果、その引渡単価が525円/t、運送費が15,540円/tとなるなど運営経費が増大したなどのため、稼動開始後4年1か月が経過した18年5月に施設を休止させ、その後は近隣の事業主体等に可燃ごみの処理を委託している。

 一方、RDFの原料となるごみについて、水分、塩分濃度等の成分分析を行うことで品質の良いRDFを生成したり、生成されたRDFを継続的に有効利用する引渡先を確保したりなどすることにより、効率的・効果的なごみ処理が行われている事業主体も見受けられた。

<参考事例>

 北海道内のC事業主体は、平成13年度にRDF化施設(処理能力7t/日)を総事業費2億7300万余円(国庫補助金5220万余円)で整備している。
 同事業主体では、従前もRDF化施設を有していて、その知識・経験から、収集された可燃ごみの成分分析を実施して、RDFの原料となるごみに水分の多い生ごみを使わないこととして、ごみを分別するなどしていた。このような取組により、RDFの生成に要する燃料費が抑制され、かつ、発熱量が高く品質の良いものとなっており、引渡先も道内に確保していた。
 そして、生成費は46施設の平均62,606円/tに対して27,352円/t、引渡単価は有償で引き渡している20施設の平均545円/tに対して2,625円/t、運送費はRDF発電施設以外の利用施設に引き渡している22施設の平均4,519円/tに対して3,255円/tとなっていた。
 このように運営が比較的順調となっているRDF化施設も見受けられたが、これらの施設における情報は、他の事業主体等に十分認識されていないと認められた。

(3) 発電設備等の余熱利用設備を整備したごみ焼却施設の利用について

 貴省は、8年度以降に整備する全連続式焼却施設には、極力すべての施設に発電設備等を整備することとするなど、地球温暖化対策の一環として、ごみ焼却施設において発電設備の整備促進や高効率化を図ってきており、貴省が公表している「日本の廃棄物処理」(平成20年度版)によれば、発電設備を備えたごみ焼却施設は、11年度が215施設であったものが、20年度には300施設となっている。そして、20年3月に閣議決定された「廃棄物処理施設整備計画」では、24年度にごみ焼却施設の総発電能力を20年度の1,615MWから約2,500MWまで向上させることが目標とされている。
 一方、ごみの減量化、資源化等に伴い、発電設備等の余熱利用設備を整備した既存のごみ焼却施設の処理能力に余裕が生じていることから、これらの施設でRDFを利用できるようにすれば、ごみ焼却施設におけるRDFの受入貯蔵設備等が必要となるものの、引渡先の確保に苦慮しているRDF化施設にとっても、余熱利用設備を整備したごみ焼却施設にとっても有益な場合があると考えられる。

(改善を必要とする事態)

 補助金等の交付を受けてRDF化施設を整備した多くの事業主体において、多額の燃料費や維持修繕費、運送費を要する一方、品質や引渡先の問題等により引渡単価が低額となっているなどして、財政負担が重くなっている事態は、補助金等により整備されたRDF化施設が効率的・効果的に運営されておらず、また、ごみ処理事業の安定的な実施や循環型社会形成の推進にも支障を来しかねないものであり、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、ダイオキシン類の規制、ごみの分別化、燃料費の高騰等の要因も大きく、また、事業主体の取組方にもよるものの、貴省において、RDF化施設の運営状況等を調査・把握等することにより、生成費等の経費削減、RDFの高品質化、引渡先の確保等の面で、一定の役割を果たすことができると考えられるが、一般廃棄物処理事業は自治事務であるとしても、RDF化施設の運営を効率的・効果的なものにすることへの配慮が十分でなく、循環型社会形成の取組が円滑に行われるような十分な対策を講じてこなかったことによると認められる。

3 本院が表示する意見

 市町村においては、家庭等から日々ごみが発生し、その処理を適正・確実に行わなければならないものである。そして、廃棄物処理法では、廃棄物の円滑かつ適正な処理のため、前記のとおり、市町村の責務として、一般廃棄物処理事業の能率的な運営に努めることとされ、また、国の責務として、地方公共団体に対して、補助金等の財政的な援助のほか、情報面等の技術的な援助や広域的な見地からの調整を行うことに努めることとされている。
 ついては、貴省において、補助金等により整備されたRDF化施設の健全な運営及び市町村のごみ処理事業の安定化に資するよう、次のとおり意見を表示する。

ア RDF化施設の中で運営状況が良好な施設について、その要因を調査・分析したり、民間の工場、RDF発電施設、発電設備等の余熱利用設備を整備したごみ焼却施設等のRDFの利用が見込まれる施設における受入条件(品質、規格、数量、価格等)を調査したりするなどして、それらの情報をRDF化施設を運営する市町村等の事業主体に提供するとともに、今後のごみ処理事業やRDF化施設の運営の在り方について検討するよう促すこと

イ 市町村等が整備・運営する発電設備等の余熱利用設備を備えたごみ焼却施設においてRDFが利用可能となる設備を整備する場合も、循環型社会形成推進交付金の交付対象事業とするなどの方策を検討すること

ウ 今後、RDF化施設も含め、燃料化施設の整備に当たっては、事業主体において施設整備後における燃料の安定的な引渡先が確保されていることや、収支の見積りを精確に行うことを条件とするなど、交付要綱等の改正を検討すること