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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第22 独立行政法人日本貿易振興機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

団体から海外事務所に受け入れる派遣職員に係る経費について、派遣元の団体に全額を負担させるなど経費負担の在り方を適切なものとするよう改善させたもの


(1) 団体から海外事務所に受け入れる派遣職員に係る経費について、派遣元の団体に全額を負担させるなど経費負担の在り方を適切なものとするよう改善させたもの


科目 経常費用
部局等 独立行政法人日本貿易振興機構本部
特定業種団体から受け入れる派遣職員の概要 特定業種に係る団体の職員等を海外事務所の職員として受け入れるもの
特定業種団体から受け入れた派遣職員11人の業務遂行に要した経費の額 3億0316万余円(平成21年度)
上記のうち経費負担の対象としていた額 2億6044万余円
機構が負担していた経費の額   1億3022万円(平成21年度)

1 団体から海外事務所に受け入れる派遣職員の概要

 独立行政法人日本貿易振興機構(以下「機構」という。)は、各業種における貿易の増進等を行っている複数の団体との間において、各団体の職員等を機構の各海外事務所の職員(以下「派遣職員」という。)として受け入れるため、それぞれ協定書及び付属確認書(以下「協定書等」という。)を取り交わしており、平成21年度における派遣職員の数は、17団体で延べ37人となっている。
 協定書等によると、派遣職員は、派遣元である各団体の業務及び機構の業務(以下、これらを合わせて「事務所関係業務」という。)を行うこととされており、その実績について、四半期ごとに事業実績報告書を各海外事務所の所長を経由して機構本部に提出することとされている。また、派遣職員の給与、海外事務所の運営費等の事務所関係業務の遂行に必要な経費(以下「業務遂行経費」という。)については、機構と各団体がそれぞれ負担しており、その負担額等は、機構と各団体との協議により決定することとされている。
 そして、機構は、21年度において、上記の延べ37人に係る業務遂行経費9億0977万余円のうち、延べ11人に係る業務遂行経費3億0316万余円については、派遣元の各団体の業務に係る経費(以下「団体事業費」という。)計4271万余円を除いた額計2億6044万余円を機構と各団体による経費負担の対象経費とし、これに2分の1を乗じた額計1億3022万余円を機構が負担する経費として、残りの額については、団体事業費とともに各団体に負担させることとしていた。一方、上記の延べ11人を除く延べ26人に係る業務遂行経費6億0661万余円については、その全額を各団体の負担としていた。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、機構が負担する業務遂行経費は適切かなどに着眼して、前記の延べ37人に係る業務遂行経費9億0977万余円を対象として、機構本部において協定書、事業実績報告書等の書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 機構の前身である旧日本貿易振興会(以下「振興会」という。)は、振興会が独立行政法人化される15年10月まで、国から日本貿易振興会事業費補助金(以下「振興会補助金」という。)等の交付を受けて、我が国の貿易の振興に関する各種の補助事業を実施してきた。その中で、振興会は、国際経済活動の多様化、複雑化等に対応するため、国が政策的見地から特定業種(注) と位置付けた業種については、その対外活動のより積極的な展開が必要な地域に所在する海外事務所に、特定業種の発展を図ることなどを目的として設立された団体(以下「特定業種団体」という。)の職員等を派遣職員として受け入れて、当該地域における資料収集、調査、広報宣伝等を補助事業として実施していた。そして、振興会は、これらの派遣職員の給与、管理費、事業費等の業務の遂行に要する経費を補助対象経費として、その2分の1の額は振興会補助金により負担することとして、残額は特定業種団体に負担させることとしていた。
 しかし、15年10月に振興会が独立行政法人化されたことにより、上記の特定業種団体からの派遣職員に係る経費に対する振興会補助金は廃止されており、また、経済産業省によれば、政策的見地から位置付けた特定業種の概念も、少なくとも21年度以降、政策上用いられていないものとなっている。このような状況の中で、前記の延べ11人は、この特定業種団体から受け入れた派遣職員であり、機構は、振興会補助金が廃止された以降も、引き続きこれら派遣職員に係る業務遂行経費の一部を負担していた。

 特定業種  年度により増減があるが、平成15年4月時点では以下の13業種であった。国際規格、産業用電子機器、舶用機械、海外建設、貿易開発、工作機械、航空機、化学、機械、軽機械、雑貨、船舶、農業機械

 また、上記延べ11人の派遣職員から提出されている事業実績報告書についてみると、機構の業務に従事していたかどうかを確認するのに十分なものとなっていなかったが、機構本部は、派遣職員が機構の業務に従事した実績について、事業実績報告書の記述内容以外には把握していなかった。
 このように、振興会補助金が廃止され、国の政策においても特定業種という概念が失なわれるなどしているのに、機構が派遣職員に係る経費負担の在り方について見直しを行わないまま引き続き経費を負担している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、振興会補助金が廃止され、特定業種のより積極的な展開を目的とした事業の政策的根拠が失われて、その必要性が希薄になっているなどしているのに、派遣職員に係る経費負担の在り方についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、派遣元の団体との協議の結果、業務遂行経費を負担しないこととし、22年9月末までに、すべての派遣職員について、業務遂行経費の全額を団体に負担させたり、派遣職員の受入れを廃止したりする処置を講じた。