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塩の備蓄量を見直すことにより、保有する投資有価証券等のうち余剰となる資産を国庫に納付するなどの措置を講ずるよう意見を表示したもの


塩の備蓄量を見直すことにより、保有する投資有価証券等のうち余剰となる資産を国庫に納付するなどの措置を講ずるよう意見を表示したもの

科目 (生活用塩供給等業務特別勘定)
  流動資産
    有価証券
  固定資産
    その他固定資産
      投資等
        投資有価証券
部局等 財団法人塩事業センター
塩供給等業務の概要 国民生活に使用される塩の安定的な供給の確保を図るため、生活用に使用される塩の供給、緊急時に備えた塩の備蓄等を行うもの
塩供給等業務に要する費用に充てるものとして日本たばこ産業株式会社から拠出された財産の金額
  435億3092万余円  
生活用塩供給等業務特別勘定において平成21年度末に保有する資産の合計
  619億9742万余円  
上記のうち投資有価証券等の合計
有価証券 33億3261万円  
投資有価証券 449億6826万円  
合計 483億0087万円 (背景金額)

【意見を表示したものの全文】

塩の備蓄量及び投資有価証券等の保有状況について

(平成22年10月28日付け 財団法人塩事業センター理事長あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 業務等の概要

(1) 貴センターの業務の概要

 貴センターは、平成8年7月に、塩の製造、輸入及び流通に関する情報収集及び調査研究等を行うことにより塩産業の健全な発展に寄与することなどを目的とする財団法人として設立された。そして、同年同月に、塩事業法(平成8年法律第39号)第21条の規定に基づき、大蔵大臣(当時)から日本で唯一の塩事業センターとして指定され、良質な塩の安定的な供給の確保を図るため、同法第22条に規定する塩の製造、輸入及び流通に関する情報又は資料を収集し、提供するなどの業務(以下、この業務を「調査研究等業務」という。)を行うとともに、9年4月からは、生活に使用される塩(以下「生活用塩」という。)及び食料品の加工製造等に使用される塩(以下「業務用塩」という。)の供給等の業務(以下、この業務を「塩供給等業務」という。)を行っている。

(2) 塩供給等業務の概要

 業務用塩の供給業務は14年3月31日をもって廃止され、貴センターが現在実施している塩供給等業務は次のとおりとなっている。
〔1〕 生活用塩の供給を行うこと(以下、この業務を「生活用塩供給業務」という。)
〔2〕 生活用塩及び業務用塩の備蓄を行うこと(以下、この業務を「塩備蓄業務」という。)
〔3〕 災害時など、塩の供給を緊急に増加する必要があるとき、財務大臣の命令に基づき、塩の供給を行うこと
〔4〕 塩産業の効率化を促進するため、塩の製造者等に対し、必要な助言等を行うこと
〔5〕 〔1〕から〔4〕までに附帯する業務を行うこと
 そして、塩供給等業務においては、生活用塩供給業務及び塩備蓄業務が主な業務となっている。
 貴センターは、塩供給等業務に係る経理については、調査研究等業務に係る経理を整理している一般勘定と区分し、別に生活用塩供給等業務特別勘定(以下「塩業務特別勘定」という。)を設けて整理するとともに、塩業務特別勘定は、一般勘定との間において、原則として、資金を相互に流用することができないこととされている。
 また、貴センターは、塩備蓄業務において要する塩について、日本各地に所在する製塩業者(4社6工場)から買入れを行ったり、海外から原塩を輸入するなどして調達している。また、輸入塩が備蓄期間の経過とともに品質劣化することから、塩卸売業者等に対して輸入塩を売却し、売却収入を得ている。

(3) JTからの拠出等

 資本金の全額を国が出資している法人である旧日本専売公社(以下「公社」という。)から昭和6年4月に業務を引き継ぎ、平成9年3月末まで塩専売事業を行っていた日本たばこ産業株式会社(以下「JT」という。)は、貴センターの業務に係る財産又は業務に要する費用に充てるものとして財産を寄附又は拠出しており、このうち、調査研究等業務には8年7月、331億円相当の財産を寄附し、塩供給等業務には9年4月、435億円相当の財産を拠出した。そして、貴センターは、寄附を一般勘定において、拠出を塩業務特別勘定においてそれぞれ受け入れた。
 これらのうち、JTが塩供給等業務のために拠出した財産は、政府から拠出されたものとするとされている。

(4) 塩業務特別勘定における資産の現状

 貴センターの21事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)末の塩業務特別勘定における資産合計は、表1 のとおり、619億余円となっている。そして、資産合計のうち投資有価証券及び有価証券(以下、これらを合わせて「投資有価証券等」という。)が過半を占めている。

表1 貸借対照表(塩業務特別勘定)(平成21年度末)
(単位:百万円)

科目 金額 科目 金額
 (資産の部)
 流動資産
  有価証券
 固定資産
  特定資産
  その他固定資産
   有形固定資産
   無形固定資産
   投資等
    投資有価証券
 
8,560
5,702
53,436
1,500
51,936
6,907
32
44,997
44,968
 (負債の部)
 流動負債
 固定負債
 
631
131
負債合計 762
 (正味財産の部)
  一般正味財産
 
61,234
正味財産 合計 61,234
資産合計 61,997 負債及び正味財産合計 61,997

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 前記のとおり、貴センターにおいては、塩業務特別勘定の資産合計のうち、投資有価証券等が過半を占めている。
 このため、本院は、塩供給等業務に係る経理を整理している塩業務特別勘定の財務構造及び塩備蓄業務の現状について、経済性等の観点から、塩備蓄業務は経済的に行われているか、投資有価証券等を含む資産の規模は、塩備蓄業務が経済的に行われる場合に見合ったものとなっているかなどに着眼して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき貴センターから提出された財務諸表、事業報告書等により検査するとともに、貴センターにおいて、塩の買入れ、備蓄等に関する書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

(1) 塩業務特別勘定における財務構造の特徴

ア 資産の推移

 塩供給等業務から業務用塩の供給業務が廃止され、生活用塩のみを供給することとなった14年度から21年度までの各年度末における資産の推移についてみると、資産合計は14年度末の569億余円から21年度末の619億余円に年々増加していた。
 このうち、最も増加している資産は投資有価証券等であり、その推移は、表2 のとおり、14年度末から21年度末にかけて、流動資産における有価証券が19億円から33億余円に、固定資産における投資有価証券が347億余円から449億余円に、それぞれ14億余円、102億余円増加している。

表2 投資有価証券等の推移
(単位:百万円)

区分 平成
14年度末
15年度末 16年度末 17年度末 18年度末 19年度末 20年度末 21年度末
(資産の部)
 1 流動資産
  有価証券
 2 固定資産
  投資有価証券

1,900
34,708

2,000
38,675

1,999
40,375

3,999
40,066

4,010
41,488

4,892
43,014

4,295
44,357

(注)
3,332
44,968
36,608 40,675 42,375 44,066 45,499 47,906 48,653 48,300
 表1 に掲げた貸借対照表の流動資産の有価証券の金額には、譲渡性預金23億70百万円が含まれているので、本表における21年度末の有価証券の金額は、貸借対照表の金額から譲渡性預金の金額に相当する額を控除している

イ 業務別損益の推移

 貴センターの業務別損益は、各業務ごとの事業損益に、事業外損益を加減するなどして、当期損益を算出している。
 そして、14年度から21年度までの各年度における業務別損益の推移についてみると、生活用塩供給業務は、14年度から19年度までは毎年度、9億余円から5億余円の事業利益が生じていたが、20年度及び21年度は、塩の運送費等の上昇によりそれぞれ6983万余円、7136万余円の事業利益にとどまっていた。また、塩備蓄業務は、各年度において、3億余円から4億余円の事業損失が生じていた。これは、塩の購入費、備蓄のために要する保管費等の管理費及び塩の運送費等の事業費の合計額が、備蓄した輸入塩の売却により得られる収入を上回っているためである。
 そして、事業外収益は、各年度において、5億余円から7億余円の利益が生じていた。その主なものは投資有価証券等の受取利息であり、その金額は、表3 のとおり、毎年度4億余円から6億余円となっている。

表3 投資有価証券等の受取利息の推移
(単位:百万円)

平成14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度
560 489 513 511 566 624 643 681

 また、当期利益は、14年度の4億余円から19年度には8億余円と累増していたが、20年度及び21年度は生活用塩供給業務において塩の運送費等が上昇したことなどにより、2億余円及び1億余円にとどまっていた。
 このように、貴センターの業務別損益においては、塩備蓄業務で生じた事業損失を、14年度から19年度までは生活用塩供給業務で生じた事業利益及び投資有価証券等の受取利息により補てんし、20、21両年度は主として投資有価証券等の受取利息により補てんする結果となっている。

(2) 塩の備蓄量及びその規模

ア 塩の備蓄量の推移

 昭和52年、塩専売事業を行っていた公社に設置された塩業審議会において、緊急時に備えて塩の備蓄用在庫を保有する必要性が指摘された。このため、公社は、52年度末の生活用塩及び業務用塩の備蓄用在庫として計10万tを確保することとし、原塩の輸入を行った。そして、これを契機として、以後、JT及び貴センターは、国内において大規模な災害などが生じ、すべての国内の製塩業者が操業を停止したときでも、迅速に塩の供給を行うことができるよう、常時、10万tを目安に生活用塩及び業務用塩の備蓄を行っている。
 平成14年度末以降の貴センターの保有する備蓄量の推移をみると、表4 のとおり、各年度末とも10万tを上回る備蓄量を保っている。

表4 塩の備蓄量の推移
(単位:t)

区分 平成
14年度末
15年度末 16年度末 17年度末 18年度末 19年度末 20年度末 21年度末
国内塩 39,354 39,779 42,269 41,111 40,360 44,679 44,030 43,819
輸入塩 65,535 66,694 60,777 60,602 64,807 60,558 62,072 62,083
合計 104,890 106,473 103,047 101,713 105,167 105,237 106,102 105,902

イ 備蓄量の見直しの必要性

 貴センターは、備蓄量の目安である10万tは、1人当たりの塩摂取量を基に算出される必要量であるとしていて、その計算根拠は表5 のとおりとしている。

表5 備蓄量の計算根拠
我が国の人口
(A)
1日に摂る適切な食塩摂取の目標量(B) 原塩を輸入するのに要する期間  (C) 塩備蓄量
(A)×(B)×(C)
1.2 億人 10g 90日 10万t

 しかし、次のようなことから、10万tの備蓄量につき見直しを行う必要があると考えられる。
〔1〕 この計算根拠においては、90日間にわたりすべての日本人が摂取する塩の量を備蓄する必要があるとしているが、国内の製塩業者(4社6工場)のすべてが特定の地域に立地されているわけではないなどの現状を踏まえると、上記のすべての製塩業者が操業を停止する事態が起きることは可能性に乏しい点があること
〔2〕 生活用塩は貴センターのほか民間事業者によっても供給されており、また、業務用塩は民間事業者によって供給されていることを踏まえると、民間事業者が保有する在庫の活用の可能性を検討する必要があること
〔3〕 大規模災害時に備蓄した塩を自主的に供給した実績として、7年1月に発生した阪神・淡路大震災の際にJTが行ったもの及び16年10月に発生した新潟県中越地震の際に貴センターが行ったものがあるが、その量はそれぞれ14t及び100kgに過ぎなかったこと

(3) 塩の備蓄量の削減による事業損失の縮減の見込み

 前記の塩備蓄業務に要している管理費及び事業費のうち過半を占めるのは、倉庫業者等に対して支払う保管費となっている。このため、塩の備蓄量を削減することとすれば、保管に要する経費を節減できることから、塩備蓄業務において毎年度生じている事業損失も縮減できるものと認められる。

(改善を必要とする事態)

 塩業務特別勘定は、前記のとおり、塩備蓄業務に生じた事業損失を投資有価証券等の受取利息等である事業外収益を加減するなどして当期損益を算出する財務構造になっている。このような状況の下で、塩の備蓄量の見直しを行わないまま、これまでどおりの量の備蓄を行うことによって、毎年度多額の管理費等の経費を生じさせ、塩備蓄業務に事業損失を生じさせている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴センターにおいて、国内の製塩業者の立地状況、民間事業者が保有する生活用塩及び業務用塩の在庫の活用の必要性並びに過去の大規模災害時における備蓄塩の供給実績等を踏まえた適正な備蓄量についての検討及び見直しを行っていなかったことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 貴センターにおいて保有する塩の備蓄量を見直して塩備蓄業務に要する経費を削減させることにより塩備蓄業務において生ずる事業損失を縮減し、これにより余剰となる投資有価証券等の資産を国庫に納付するなどの措置を講ずるよう意見を表示する。