会計名 | 特定国有財産整備特別会計 | |
(平成22年度以降は財政投融資特別会計(特定国有財産整備勘定)) | ||
部局等 | 財務本省 | |
特定国有財産整備特別会計の設置目的 | 国有財産の適正かつ効率的な活用を図るため庁舎等その他の施設の用に供する特定の国有財産の整備を計画的に実施し、その経理を一般会計と区分して行うこと | |
特定国有財産整備特別会計の資産・負債差額(平成21年度末) | 2768億5973万余円 | |
上記のうち剰余となっている不動産の国有財産台帳価格 | 618億8817万円
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(平成23年10月28日付け 財務大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、国の庁舎等その他の施設の用に供する国有財産について、その使用の効率化や配置の適正化を図るなどのために、庁舎等の集約立体化、移転再配置等を行う場合、国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法(昭和32年法律第115号)等に基づいて関係の各省各庁の長の意見を聴いて、毎年度特定の事案ごとに庁舎等の取得及び処分の基本的事項に関する計画(特定国有財産整備計画。以下「整備計画」という。)を策定している。
そして、この整備計画の実施による特定の国有財産の取得及び処分に関する経理を明確にするため、昭和32年に特定国有財産整備特別会計(以下「特々会計」という。)が設置され、一般会計と区分して経理されていた。
特々会計は、平成21年度限りで廃止され、同年度末において未完了となっている79整備計画による事業に関する経理は、事業完了年度の末日までの間、財政投融資特別会計に特定国有財産整備勘定(以下「特定勘定」という。)を設けて行うこととされ、特々会計の21年度末の資産及び負債は特定勘定に帰属することとなった。また、特定勘定は、財務大臣及び国土交通大臣が管理しており、同勘定の計算整理に関する事務については財務大臣が所掌している。なお、22年度以降新規に策定される整備計画による事業については、一般会計で実施することとなっている。
整備計画による事業は、一般会計に所属する庁舎等の国有財産を対象として、庁舎等とする目的をもって耐火構造等の高層な建物等を取得し、これに伴って不用となる庁舎等の処分を行うなど、スクラップ・アンド・ビルドの考え方に基づいて実施されることとなっている。
整備計画においては、庁舎等の取得すべき国有財産(以下「新施設」という。)の取得に伴って不用となる旧施設の土地等の処分すべき国有財産(以下「処分対象財産」という。)の売払収入を財源として新施設を取得することとしており、原則として、売払収入の範囲内で新施設の取得に要する費用(以下「整備費」という。)を賄う収支相償の仕組みとなっている。また、社会情勢等の変化により処分対象財産の資産価値が目減りした場合等は、整備費を補うため整備計画を変更して処分対象財産の追加を行うこととなる。
そして、整備計画による事業の実施に当たっては、整備費を財政融資資金からの借入金で賄い、新施設を整備して一般会計へ無償で引き渡した後に、一般会計から無償で引き受けた処分対象財産を売り払った収入で借入金の償還及び利子の支払を行うこととなっている。
また、貴省は、特別会計改革の一環として、19年9月から、既に施設整備が終了している整備計画において処分対象財産の売払収入が整備費を上回っているなどの場合、引受け済みの処分対象財産を無償で一般会計へ所属替したり、一般会計に所属している未引受けの処分対象財産について、当該整備計画を変更して処分対象財産から除外したりしている。
財務大臣は、特別会計に関する法律、特別会計財務書類の作成基準(平成20年財務省告示第59号)等に基づき、特々会計について貸借対照表等の特別会計財務書類を作成している。そして、同作成基準によると、特別会計における貸借対照表の作成目的は、会計年度末において特別会計に帰属する資産及び負債の状況を明らかにすることとされている。
21年度末の特々会計の貸借対照表(以下「21年度末貸借対照表」という。)における資産の主な科目は、「現金・預金」、「販売用不動産」、「一般会計からの未引受不動産」等となっており、負債の主な科目は、「未払金」、「一般会計からの受入不動産見返り」、「借入金」等となっている。
このうち、「販売用不動産」及び「一般会計からの未引受不動産」の内容は次のとおりである。
〔1〕 販売用不動産
売払いのために一般会計から特々会計に処分対象財産として引き継がれた旧施設の国有財産台帳価格であり、整備費の支払が既に完了した整備計画に係るものと整備費の支払が未完了の整備計画に係るものとがある。
〔2〕 一般会計からの未引受不動産
新施設の整備に際して、一般会計から特々会計に引き継がれていない処分対象財産であり、整備の進行割合に応じて国有財産台帳価格の全部又は一部が計上されている。
特々会計は、21年度限りで廃止され、同年度末において未完了の79整備計画による事業に関する経理は事業完了年度の末日までの間、特定勘定において行うこととなった。また、19年度以降、前記のとおり、貸借対照表等の特別会計財務書類が作成されることになり、特々会計の資産及び負債の状況が明らかになった。
そこで、本院は、有効性等の観点から、21年度末貸借対照表に計上された資産が負債の規模に照らして適切なものとなっていて有効活用されているかなどに着眼して、21年度末貸借対照表の資産、負債等を対象として、貴省において、特々会計の決算書、特別会計財務書類等の関係資料を確認するなどして会計実地検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
21年度末貸借対照表の状況は次表のとおりとなっており、2768億5973万余円と多額の資産・負債差額が生じている状況となっていた。
<資産の部> | <負債の部> | ||
現金・預金 | 134,967 | 未払金 | 31,352 |
売掛金 | 64 | 未払費用 | 0 |
たな卸資産 | 164,366 | 借入金 | 2,401 |
仕掛品 | 53,982 | その他の債務等 | 27,442 |
販売用不動産 | 110,384 | 一般会計からの受入不動産見返り | 27,442 |
未収金 | 0 | ||
その他の債権等 | 38,641 | ||
一般会計からの未引受不動産 | 38,641 | 負債合計 | 61,197 |
有形固定資産 | 5 | <資産・負債差額の部> | |
無形固定資産 | 9 | 資産・負債差額 | 276,859 |
資産合計 | 338,057 | 負債及び資産・負債差額合計 | 338,057 |
そして、21年度末貸借対照表の資産の主な科目と前記の未完了となっている79整備計画との関係についてみたところ、現金・預金については、過去の販売用不動産の売払収入額等であることから特定の整備計画に区分することはできないが、今後の整備費等の支払及び借入金の償還に充てられるものとなっていた。
一方、販売用不動産及び一般会計からの未引受不動産について、22年度以降の整備費の発生の有無により二つに区分してそれぞれの区分の整備計画に係る整備費及びこれらの整備費を賄うこととなる資産についてみたところ、次のとおりとなっていた。
ア 新施設が整備中又は整備済みであって整備費の支払が未完了の21整備計画については、今後整備費が発生することになる。しかし、当該整備計画の整備費は、整備計画が収支相償の仕組みであることから、それぞれの整備計画ごとに、既に21年度末時点で特定勘定に引継ぎ済みの販売用不動産に加え、今後特定勘定に引き継がれる処分対象財産も含めた処分対象財産の売払収入により賄われることとなる。
イ 新施設が整備済みであって整備費の支払も完了している58整備計画については、今後整備費は発生しない。また、21年度末貸借対照表に計上されているこれら58整備計画に係る借入金の償還は同様に計上されている現金・預金により賄うことができる。
そして、今後整備費の支払には不要となる上記の58整備計画に係る販売用不動産及び一般会計からの未引受不動産の国有財産台帳価格は、次のとおりとなっていた。
(ア) 販売用不動産881億0874万余円(21年度末貸借対照表に計上されている前記の58整備計画に係る国有財産台帳価格)のうち22年度において一般会計へ無償で所属替をしたものを除いた額の532億6910万余円
(イ) 一般会計からの未引受不動産109億2389万余円(同)のうち22年度に整備計画を変更して処分対象財産から除外したものを除いた額の86億1907万余円したがって、前記の58整備計画に係る上記の及びの不動産(国有財産台帳価格計618億8817万余円)は整備費を賄うためには必要でなく、剰余となっていると認められる。
21年度末貸借対照表における資産・負債差額が多額に上っていて、剰余となっている不動産が生じていると認められる状況であるのに、当該不動産を一般会計へ無償で所属替等していない事態は、国有財産の有効活用の面から適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、19年度以降、販売用不動産等について、一部の整備計画において処分対象財産の売払収入が整備費を上回っているなどの場合には一般会計へ無償で所属替等を行っているものの、剰余となっている不動産を一般会計へ無償で所属替等することについての分析・検討が十分でなかったことなどによるものと認められる。
一般会計においては、税収のほか多額の国債の発行等により必要な資金が調達されている状況であり、財政制度等審議会の18年1月の答申においても、売却可能な国有財産は極力売却し、財政収入の確保に貢献していくこととされている。
また、特々会計は、庁舎等の整備計画の経理を明確にするために一般会計とは別に設置されていたものであり、整備計画ごとに収支相償する仕組みとなっていて、今後も79整備計画について特定勘定で引き続き実施することとなっている。
ついては、貴省において、剰余となっている不動産を特定勘定から一般会計へ無償で所属替等するとともに、今後は、整備費の発生の有無を勘案するなどして剰余となる不動産の有無について分析・検討を行うこととし、剰余となる不動産が生じた場合は一般会計へ無償で所属替等することにより、国有財産の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。