会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)初等中等教育等振興費 | |||||
部局等 | 文部科学本省 | |||||
委託事業 | 在外教育施設派遣教員委託 | |||||
委託費の概要 | 在外教育施設へ公立の義務教育諸学校の教員等を派遣するに当たり、派遣教員の所属元である都道府県が派遣教員に支給した給与等の経費について予算の範囲内において交付するもの | |||||
検査の対象とした委託費交付先及び交付額 |
|
|||||
上記のうち委託費が過大になっていた交付先及び過大になっていた交付額 |
|
(平成23年9月7日付け 文部科学大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴省は、在外教育施設教員派遣規則(昭和56年文部省訓令第27号)等に基づき、海外に在留する邦人の子女に対して学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校に準じた教育を実施することを主たる目的として設置され文部科学大臣の認定を受けた日本人学校等の教育施設(以下「在外教育施設」という。)に、文部科学大臣が委嘱した公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部)の教員等を派遣教員として毎年度多数派遣している。
派遣教員の所属元である47都道府県は、教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第22条第3項において、教育公務員は現職のまま長期にわたる研修を受けることができるとされていることから、同教員を現職のまま研修出張扱いとして、同教員に対して給与等を支給している。
そして、貴省は、在外教育施設派遣教員委託費交付要綱(平成15年4月1日文部科学大臣決定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、派遣教員の所属元である都道府県が派遣教員へ支給した給与等の経費について在外教育施設派遣教員委託費(以下「委託費」という。)として予算の範囲内において47都道府県に交付している。
貴省は、委託費を算定するに当たり、国内における勤務を前提として支給されている調整手当、へき地手当、寒冷地手当、住居手当等の経費については委託費の対象となる経費から除外する取扱いとしている(以下、委託費の対象から除外される経費を「対象外経費」という。)。
貴省は、都道府県ごとの委託費を算定するため、毎年度、派遣教員へ支給する給与等の経費の見込額の内訳を記載した在外教育施設派遣教員委託費所要経費調査票データ(以下「所要経費調査票」という。)を各都道府県から徴している。貴省は、所要経費調査票に基づき委託費の対象となる経費の支給見込額を合計し、これに予算その他の事由を勘案した調整を行った額について、交付を決定して各都道府県に通知し、必要に応じて概算払を行っている(以下、交付を決定した委託費の額を「委託費交付決定額」という。)。そして、毎年度の事業終了後、各都道府県から実績報告書を提出させて、都道府県が実際に派遣教員へ支給した給与支給総額と委託費交付実績額の報告を受けることにしている。
貴省によれば、この委託費交付実績額とは、実際に支給した給与支給総額から対象外経費の支給実績額を除外した額であり、対象外経費の考え方については、所要経費調査票の提出を依頼する機会等を通じて47都道府県に周知しているとしている。
そして、貴省は、委託費交付決定額と委託費交付実績額とを比較して低額となっている額に基づき委託費の額の確定を行っている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、委託費の額の確定は適切に行われているかなどに着眼して、貴省及び47都道府県のうち8府県(注1) において、平成21年度に交付された委託費計19億7150万余円を対象として、実績報告書、派遣教員に係る給与簿等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、貴省は、前記のとおり、8府県から徴した所要経費調査票に基づくなどして各府県の委託費交付決定額を算定して8府県に通知し、これと同額の委託費を概算払により交付していた。そして、事業終了後、実績報告書を提出させ、記載されている委託費交付決定額と委託費交付実績額とが8府県ともそれぞれ同じ額であったことから、これらの額に基づき、8府県それぞれに委託費の額の確定を行っていた。
しかし、8府県は、委託費交付実績額として実績報告書に記載する額について、委託費交付決定額と実際に派遣教員に支給した給与支給総額とのいずれか低い額であると解釈していた。そして、給与支給総額は対象外経費が含まれている支給実績額であり、対象外経費を含まない支給見込額である委託費交付決定額よりも高額となっていたことから、委託費交付決定額を委託費交付実績額として実績報告書に記載していた。したがって、貴省は、委託費交付実績額を正しく把握しないまま委託費の額の確定を行っていた。
そこで、本院において、8府県から給与支給総額について委託費の対象となる経費と対象外経費とを区分する内訳表を徴した上で、前記のとおり、委託費の対象となる経費の支給実績額を合計して委託費交付実績額を算出し、委託費交付決定額と比較したところ、所要経費調査票の記載に誤りがあり委託費交付決定額が低く算定されていた2県を除いた6府県(注2)
について、委託費交付決定額より委託費交付実績額が低額となった。
上記により、これら6府県に係る適正な委託費を算出すると計16億0567万余円となり、貴省が6府県に対して交付していた委託費計16億4009万余円は計3442万余円が過大となっていた(表参照)。
府県名 | 交付していた委託費 | 適正な委託費 | 過大となっていた委託費 |
茨城県 | 389,409 | 387,309 | 2,100 |
長野県 | 130,325 | 127,016 | 3,308 |
静岡県 | 218,044 | 215,716 | 2,328 |
愛知県 | 313,978 | 306,655 | 7,323 |
京都府 | 148,946 | 144,954 | 3,992 |
兵庫県 | 439,394 | 424,018 | 15,375 |
計 | 1,640,099 | 1,605,671 | 34,428 |
上記のとおり、貴省において、委託費の対象となる経費の支給実績額を正しく把握しないまま、委託費を過大に交付している事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、8府県において、委託費の対象となる経費についての認識が十分でないことにもよるが、貴省において、次のことなどによると認められる。
ア 委託費の対象となる経費の費目や実績報告書における委託費交付実績額の定義について、交付要綱等において規定しておらず、また都道府県に対する周知徹底が十分でないこと
イ 都道府県から徴する実績報告書等の様式を経費の内訳が確認できるものとしておらず、実績報告書に対する審査が十分でないこと
貴省は、今後も海外に在留する邦人の子女の教育等のために在外教育施設へ教員を派遣することとしており、都道府県へ多額の委託費を交付していくことが見込まれる。
ついては、貴省において、6府県に対して過大に交付されていた前記の委託費について、国庫への返還を求めるなどの措置を講ずるよう是正の処置を要求するとともに、委託費の算定を適正なものとするよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 交付要綱等において、委託費の対象となる経費の費目及び委託費交付実績額の定義を規定するなどの改正を行い、これを都道府県に対して通知し、周知徹底を図ること
イ 実績報告書の記載内容の適否を検証できるようにするために、給与等の経費の実績額を記載した内訳表を新たに実績報告書に添付させるなどして、審査の一層の充実を図ること
8府県 京都府、宮城、茨城、長野、静岡、愛知、兵庫、長崎各県
|
|
6府県 京都府、茨城、長野、静岡、愛知、兵庫各県
|