会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)検疫所 | (項)検疫業務等実施費 |
部局等 | 厚生労働本省、8検疫所 | ||
契約名 | 健康監視システムソフトウェア開発業務一式等14契約 | ||
健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの概要 | 検疫所等が管轄する空港や海港に来航する外国からの航空機や船舶に対して実施する検疫に関する各種の情報を管理する機能及びシステム | ||
健康監視システム及び通常検疫業務システムの開発、運用、保守等に要した費用 | 8億1263万余円(平成21年度〜23年度) | ||
有効利用及び適切な運用の見直しが必要な健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの開発、運用、保守等に要した費用に相当する額 | 1億1060万円(平成21年度〜23年度) |
【是正改善の処置を求めたものの全文】
検疫所等に導入した健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの利用について
(平成23年10月28日付け 厚生労働大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、新型インフルエンザの世界的な流行が発生した場合に、発生国からの全ての入国者が健康監視の対象となり、検疫所、検疫所支所及び出張所(以下、これらを合わせて「検疫所等」という。)から複数の自治体に対して、短時間に膨大な情報を送付する必要があることなどから、このための機能(以下「新型インフルエンザ検疫業務機能」という。)を備えた、データベースサーバ等で構成されている健康監視システムを、平成22年3月から運用を開始することとして、職員が在勤する51検疫所等のうち20検疫所等(注1)
に導入している。そして、健康監視システムは、通常時における検疫所等の各種データ処理能力の強化に資することも目的としていて、検疫所等が管轄する空港や海港に来航する外国からの航空機や船舶に対して実施する検疫に関する各種の情報を管理する機能(以下「通常検疫業務機能」という。)も備えている。
また、貴省は全国的に統一した事務処理体制を提供することにより業務の統一化及び平準化を図る必要があるとして、通常検疫業務機能をパーソナルコンピュータ単体で使用できるように改修したシステム(以下「通常検疫業務システム」という。)を、上記の20検疫所等を除いた31検疫所等(注2)
に、22年4月から運用を開始することとして導入している。
健康監視システム及び通常検疫業務システム(以下「健康監視システム等」という。)の23年9月までの開発、運用、保守等に要した費用は、システム開発、機能改修、システム用機器購入等に要した費用が計7億1537万余円(21年度6億9342万余円、22年度2194万余円)、運用及び保守に要した費用が計9725万余円(21年度546万円、22年度6510万余円、23年度2669万余円)、合計8億1263万余円となっている。
そして、前記の20検疫所等は、外国から来航する航空機及び船舶の数、乗客数等が多く、また、そのほとんどが主に空港に係る業務を行っている。
一方で、前記の31検疫所等は、外国から来航する航空機及び船舶の数、乗客数等は前記の20検疫所等と比較して少なく、また、そのほとんどが主に海港に係る業務を行っている。
(注1) | 20検疫所等 成田空港、横浜、関西空港、神戸、福岡各検疫所、千歳空港、仙台空港、東京空港、中部空港、広島空港、門司、福岡空港、長崎、鹿児島、那覇空港各検疫所支所、福島空港、新潟空港、富山空港、小松空港、岡山空港各出張所
|
(注2) | 31検疫所等 小樽、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、那覇各検疫所、千葉、川崎、清水、四日市各検疫所支所、稚内、函館、旭川空港、釧路、花咲、青森空港、秋田船川、鹿島、焼津、境、水島、福山、徳山下松・岩国、坂出、松山、高知、大分・佐賀関、厳原・比田勝、宮崎空港、石垣各出張所
|
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、有効性等の観点から、開発、運用、保守等に多額の国費が投入されている健康監視システム等が有効に利用されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、貴省本省及び6検疫所等(注3)
において、契約書、仕様書等の関係書類、設置されている機器等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの45検疫所等については、健康監視システム等の導入から23年7月までの利用状況に関する調書等の提出を受け、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの利用状況について次のような事態が見受けられた。
51検疫所等における健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの導入時から23年7月までの利用状況を確認したところ、船舶の船名を入力する場合に、入力欄の桁数が不足しているなどして入力作業が著しく煩雑となるなどの状態となっていたため、海港に係る業務に対応する機能が業務上の使用に耐えないものとなっていることなどから、通常検疫業務機能については、前記の20検疫所等のうち14検疫所等において全く利用されておらず(残りの6検疫所等のうち3検疫所等は一部の機能を除いて利用)、また、通常検疫業務システムについては、導入した前記の31検疫所等の全てにおいて全く利用されていなかった。そして、これらの検疫所等は、市販のソフトウェアを利用して通常時の業務を実施していた。
このように、21年度から23年度までの間に、開発、運用、保守等の費用相当額1億1060万余円を要した健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムが所要の機能を満たしていないことなどから有効に利用されていない状況となっていた。
(是正改善を必要とする事態)
以上のように、開発、運用、保守等に多額の国費を投入している健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムが、多数の検疫所等で有効に利用されていない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴省において、検疫所等に導入した健康監視システム等の利用状況等について十分に把握しておらず、検疫所等に対する指導や適切な運用の見直しを行っていなかったことなどによると認められる。
健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムは、各検疫所等における各種データ処理能力の強化、業務の効率化等を図るために導入したものである。
そして、20検疫所等に導入した健康監視システムは、新型インフルエンザ検疫業務機能を備えたシステムとして運用されており、また、成田空港検疫所のように膨大なデータを処理する必要のある検疫所等においては、市販のソフトウェアではなく、通常検疫業務機能を利用して業務を行う必要があることから、今後も運用を続ける必要がある。
一方、通常検疫業務システムは、新型インフルエンザ検疫業務機能とは切り離されたシステムであり、通常検疫業務システムを導入した31検疫所等は、主に海港に係る検疫業務を行う検疫所等がほとんどであり、また、通常時の検疫業務として処理すべきデータ件数も健康監視システムを導入した20検疫所等よりも比較的少なく、市販のソフトウェアを利用して支障なく業務を実施している。
ついては、貴省において、健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムの有効利用及び適切な運用の見直しを行うよう次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 健康監視システムの通常検疫業務機能については、海港に係る業務に対応する機能を除いて利用を図ること
イ 健康監視システムの通常検疫業務機能のうち海港に係る業務に対応する機能及び通常検疫業務システムについては、運用及び保守に要する費用やその他追加的に発生する機能改修費用等を抑えるために、運用の停止を含めた検討を行うこと