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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業における契約形態を、事業の性質に鑑み、原則として概算契約とするための必要な措置を講ずるよう改善の処置を要求し、概算契約の精算時に支払額の確認を適切に実施することを都道府県に対して周知徹底するよう是正改善の処置を求めたもの


(5) 緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業における契約形態を、事業の性質に鑑み、原則として概算契約とするための必要な措置を講ずるよう改善の処置を要求し、概算契約の精算時に支払額の確認を適切に実施することを都道府県に対して周知徹底するよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)高齢者等雇用安定・促進費
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)地域雇用機会創出等対策費
部局等 厚生労働本省
補助の根拠 予算補助
補助事業者 38都府県
緊急雇用創出事業の概要 民間企業等への委託により、失業者に対する短期の雇用機会の創出及び人材育成を図るもの
ふるさと基金事業の概要 民間企業等への委託により、地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会の創出を図るもの
確定契約で実施された両基金事業の実績額 1318億8947万円(背景金額)(平成21、22両年度)
新規雇用失業者に係る人件費の確認が十分に行われていない概算契約で実施された両基金事業の実績額 188億6402万円(平成21、22両年度)

 (前掲の「ふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を補助の目的外に使用していたもの」参照

 【改善の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

   緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業に係る契約形態等について

(平成23年10月28日付け 厚生労働大臣宛て)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求し、及び同法第34条の規定により是正改善の処置を求める。

1 制度の概要

(1) 緊急雇用創出事業臨時特例基金及びふるさと雇用再生特別基金の創設の経緯

 平成20年秋以降、深刻な経済不安を背景にして、派遣労働者のいわゆる雇止めなどの雇用不安が社会問題化するなど、地域の雇用情勢は全国的に急激に悪化した。このような状況に対処するため、貴省は、20年度第2次補正予算が成立したことを受けて、都道府県に対して、平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき緊急雇用創出事業臨時特例交付金(以下「緊急雇用交付金」という。)1500億円を、また、平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発職第0130002号)等に基づきふるさと雇用再生特別交付金2500億円をそれぞれ交付している。その後、緊急雇用交付金は、累次の追加交付があり、23年度第1次補正予算までに累計で8500億円が都道府県に交付されている。
 そして、交付金の交付を受けた都道府県は、緊急雇用交付金により短期の雇用・就業機会を創出するための基金として緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「緊急雇用基金」という。)を、また、ふるさと雇用再生特別交付金により地域における継続的な雇用機会を創出するための基金としてふるさと雇用再生特別基金をそれぞれ創設している(以下、これらの基金を合わせて「両基金」という。)。

(2) 緊急雇用創出事業の概要

 緊急雇用創出事業は、都道府県及び市町村等(以下「都道府県等」という。)が緊急雇用基金を活用して、都道府県等が企画した事業等を民間企業等へ委託し、失業者に対する短期の雇用機会の創出及び人材育成を図る事業等を実施するものである。そして、この事業は、貴省が定めた緊急雇用創出事業実施要領(平成21年厚生労働省職発第0130008号)等に基づき、20年度から23年度(一部については24年度)までの間、実施することとされている。
 また、緊急雇用創出事業は、緊急雇用基金として造成した8500億円のうち4500億円を財源に実施される緊急雇用事業と、同じく4000億円を財源に実施される重点分野雇用創造事業に分かれており、前者は23年度までの事業とされているが、後者には震災対応事業が追加され、24年度まで実施することとされている。そして、両事業は、対象分野、新たに雇用された失業者(以下「新規雇用失業者」という。)の雇用期間等の相違はあるものの、いずれも、都道府県等が企画した事業等を民間企業等へ委託し、受託した民間企業等が公募により失業者を雇用して事業を実施するものである。

(3) ふるさと基金事業の概要

 ふるさと基金事業は、都道府県等がふるさと雇用再生特別基金を活用して、都道府県等が企画した事業等を民間企業等へ委託し、地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会の創出を図る事業等を実施するものである。そして、この事業は、貴省が定めたふるさと雇用再生特別基金事業実施要領(平成21年厚生労働省職発第0130005号)等に基づき、20年度から23年度までの間、実施することとされている。

(4) 緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業の実施

 緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業は、いずれも失業者に対する雇用機会の創出を目的としている。このため、貴省は、両基金の各事業実施要領において、委託事業の実施に当たっては、緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業の委託を受けた民間企業等(以下「受託者」という。)は、原則として、公共職業安定所等を通じて公募に応じた新規雇用失業者等によって事業を実施することとしている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性等の観点から、緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業に係る委託契約は両基金の目的や事業の性質等を勘案した適切な形態になっているか、新規雇用失業者に係る人件費の支払は適切に実施されているかなどに着眼して検査を行った。
 検査に当たっては、貴省、9道県(注1) 及びその管内の市町村において、21、22両年度に実施された緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業を対象として、委託契約書、実績報告書等の書類を精査することなどにより会計実地検査を行った。また、この9道県のうち北海道を除く8県を含む38都府県(注2) 及びその管内の市町村等(以下、これらの都府県等を「38都府県等」という。)において、21、22両年度に実施された緊急雇用創出事業のうちの緊急雇用事業及びふるさと基金事業(以下「両基金事業」という。)に係る委託契約計25,324件、事業実績額計2156億7207万余円について、その契約形態に関する調書を徴するなどして検査した。

(注1)
 9道県  北海道、千葉、岐阜、愛知、滋賀、奈良、福岡、熊本、鹿児島各県
(注2)
 38都府県  東京都、京都、大阪両府、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 両基金事業に係る委託契約の契約形態について

 38都府県等が実施する両基金事業に係る委託契約は、契約金額が契約締結時には確定しておらず、概算額で契約して、履行が完了した段階で精算条項に基づき額を確定させる概算契約及び契約金額が契約締結時に確定している確定契約の2種類の契約形態で実施されていた。そして、概算契約及び確定契約の件数及び事業実績額は、表1のとおりとなっており、全契約件数に対する各契約形態別の件数の割合は、概算契約が35.4%、確定契約が64.6%となっていた。

表1 概算契約及び確定契約の件数及び金額
(単位:件、千円)
  全契約 概算契約 確定契約
契約件数
(件数全体に占める割合)
25,324
(100%)
8,954
(35.4%)
16,370
(64.6%)
事業実績額
(実績額全体に占める割合)
215,672,077
(100%)
83,782,607
(38.8%)
131,889,470
(61.2%)

 そして、38都府県等の契約形態について確認したところ、概算契約及び確定契約が混在している都府県等が多数見受けられたが、全てを概算契約としている県等や、逆に全てを確定契約としている県等も見受けられており、契約形態が区々となっていた。

(2) 新規雇用失業者の雇入れに要した日数等について

 両基金事業の実施に当たって、受託者が、公共職業安定所等を通じて新規雇用失業者として雇い入れることを予定していた人数について公募開始から最終的な雇入れの完了までにどの程度の日数を要しているかを契約形態別に見ると、表2のとおりとなっている。

表2 新規雇用失業者の雇入れに要した日数
(単位:件)
  合計件数 0日〜30日 31日〜60日 61日〜90日 91日以上
概算契約 7,539 4,567 1,358 478 1,136
確定契約 14,911 10,100 2,371 859 1,581
合計 22,450 14,667 3,729 1,337 2,717
注(1)  91日以上の欄には、委託事業終了時までに予定した人数の雇入れが完了しなかった契約を含む。
注(2)  当該年度に失業者を公募していないことにより集計できない契約があるため、表1の契約件数と合計件数は一致しない。

 概算契約又は確定契約のいずれの契約形態で実施された事業についても、公募開始から雇入れの完了までには一定の日数を要しており、また、その日数は区々となっていた。

<事例1>

 愛知県は、平成21年度に、緊急雇用事業として21年12月22日から22年3月27日までの間に、新規雇用失業者として12名の雇入れを予定した、安全・安心まちづくり犯罪多発地域パトロール活動事業を確定契約で委託して実施していた。そして、受託した企業は、21年12月14日から公共職業安定所を通じて新規雇用失業者として雇い入れるための公募を行っていたものの、22年1月17日時点で、予定した人数の3分の1に当たる4名しか雇い入れることができず、結果的に事業終了時までに予定していた人数の確保ができなかった。

 また、21、22両年度における38都府県等の両基金事業の新規雇用失業者数は、累計348,952人となっているが、このうち雇用契約期間の満了前の離職者数は、累計23,672人となっている。このように、雇用契約期間の途中での離職が生じた場合は、不足する人員を補充するため、公共職業安定所等を通じて再度公募することになり、予定していた人数の雇入れが完了するまでに更に期間を要することになる。
 以上のように、両基金事業においては、委託事業の実施に当たって、新規雇用失業者の雇入れのために要する日数、事業実施途中での離職の可能性等の不確定な要素があることから、これに伴う人件費等の変動が見込まれる。しかし、両基金事業の契約形態についてみると、表1のとおり、確定契約が6割以上を占めており、同契約により両基金事業を実施した場合には、実施途中で雇用状況が変動することに伴う人件費等の変動への対応が困難となっていた。
 また、確定契約は、契約締結時に契約金額が確定しており、契約内容に従って委託事業が適切に実施されていれば契約金額が支払われるため、受託者が実際に支払っていた新規雇用失業者に係る人件費の額が、都道府県等に請求していた額を下回っていることが確認できても、返還の措置を執ることができないことになっていた。

<事例2>

 千葉県山武市は、平成21年度に、ふるさと基金事業として確定契約で実施した豊かな森林資源再生事業において、受託した企業の請求に基づいて委託費計19,536,300円を支払っていた。しかし、同企業が提出した実績報告書には、誤って既存の雇用者の社会保険料を含めていて新規雇用失業者の賃金が過大に計上されていたため、支払額が計1,461,141円過大となっていたが、確定契約であり、委託事業そのものは適切に実施されていたことから、返還の措置は執られていない。

(3) 新規雇用失業者に係る人件費の支払の確認等について

 概算契約は、履行が完了した段階で、事業の実施に要した経費に応じて額を確定させるものであることから、賃金台帳等のように実際の支払が確認できる書類に基づき委託費の請求額を確認するなどして額を確定すべきものである。特に新規雇用失業者に係る人件費の支払の確認は、雇用機会の創出という緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業の目的と密接に関連するもので極めて重要である。
 そこで、概算契約について、全てを確定契約としている県及びその管内の市町村等を除いた、37都府県及びその管内の市町村等(以下、これらの都府県等を「37都府県等」という。)が新規雇用失業者に係る人件費の支払をどのように確認しているか検査したところ、表3のとおり、概算契約であるにもかかわらず新規雇用失業者に係る人件費の支払について、賃金台帳等により実際の支払額を確認しないまま額を確定している契約が、計2,051件(事業実績額188億6402万余円)あり、全体の2割以上に上っていた。

表3 概算契約における新規雇用失業者に係る人件費の支払の確認方法
(単位:件、千円)
  合計件数 賃金台帳等を確認 賃金台帳等の確認なし
概算契約件数
(件数全体に占める割合)
8,954
(100%)
6,903
(77.1%)
2,051
(22.9%)
概算契約での事業実績額
(実績額全体に占める割合)
83,782,607
(100%)
64,918,581
(77.5%)
18,864,025
(22.5%)
(注)
 金額は千円未満を切り捨てているため、各項目の金額を合計しても合計欄の金額と一致しない。

 そして、受託者が提出した実績報告書の記載内容を検査したところ、受託者が実際に支払っていた新規雇用失業者に係る人件費の額が、都道府県等に請求していた額を下回っている事態等が見受けられた。

<事例3>

 福岡県は、平成20、21両年度に、ふるさと基金事業として概算契約で委託して実施した看護補助者確保支援事業において、受託した企業が提出した実績報告書を賃金台帳等により確認しないまま、委託費を計251,136,621円と確定して支払っていた。しかし、同企業が提出した実績報告書には、賃金台帳の金額の集計を誤るなどして新規雇用失業者に係る人件費等が過大に計上されていた。

 以上のように、37都府県等においては、受託者が実際に支払っていた新規雇用失業者に係る人件費の額の確認が十分に行われていないものが概算契約全体の2割以上見受けられ、結果として委託費の請求額と委託事業に要した額にかい離が生じている事態も発生していた。

 (改善及び是正改善を必要とする事態)

 以上のように、両基金事業の契約形態について、確定契約が6割以上を占めていて、これらの契約において事業の実施途中で雇用状況が変動することに伴う人件費等の変動に対応することが困難となっている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
 また、概算契約について、37都府県等において受託者が実際に支払っていた新規雇用失業者に係る人件費の額の確認が十分に行われていないものが全体の2割以上見受けられるなど、精算時における確認が十分に行われていない事態は適切でなく、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。

ア 貴省において、都道府県等が実施する緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業において新規雇用失業者の雇入れに要する日数によって人件費等の変動が生ずることに対する認識が十分でなかったこと及び概算契約の精算時において適切な確認を実施する必要性について都道府県への周知徹底が十分でないこと
イ 都道府県等において、概算契約の精算時において支払額の確認を適切に実施することの重要性に対する認識が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置及び求める是正改善の処置

 貴省は、緊急雇用事業及びふるさと基金事業を23年度まで実施することとし、震災対応事業を追加した重点分野雇用創造事業については、今後も緊急雇用基金を活用して実施する必要があることから、24年度まで実施することとしている。また、22年度末時点での両基金の残高は、緊急雇用基金が4204億余円、ふるさと雇用再生特別基金が1148億余円となっており、23年度及び24年度においても事業の実施額が多額に上ることが見込まれる。
 ついては、貴省において、失業者に対する雇用機会の創出という事業の実施をより適切なものとするよう、次のとおり改善の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
ア 緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業に係る委託契約については、公募により雇用した新規雇用失業者を事業に従事させるという事業の性質に鑑み、雇用状況が変動することに伴う人件費等の変動を適切に反映できるよう、原則として概算契約とするよう必要な措置を講ずること(会計検査院法第36条による改善の処置を要求するもの)
イ 緊急雇用創出事業及びふるさと基金事業の実施に当たり締結する概算契約については、精算時に支払額の確認を適切に実施するよう都道府県に対して通知するなどしてその周知徹底を図ること(同法第34条による是正改善の処置を求めるもの)