会計名及び科目 | 食料安定供給特別会計(農業経営基盤強化勘定) | ||
(項)農業経営基盤強化事業費 | |||
平成19年度 食料安定供給特別会計(農業経営基盤強化勘定) |
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(項)就農支援資金貸付費 | |||
平成18年度以前は、 農業経営基盤強化措置特別会計 |
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(項)就農支援資金貸付金 | |||
部局等 | 農林水産本省 | ||
貸付けの根拠 | 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法(平成7年法律第2号) | ||
貸付事業 | 就農支援資金貸付事業 | ||
貸付事業の概要 | 新たに就農しようとする青年等に対して、農業の技術若しくは経営方法を実地に習得するための研修その他の就農の準備に必要な資金又は農業経営を開始するのに必要な資金を無利子で貸し付ける事業 | ||
貸付先 | 34府県 | ||
34府県の青年農業者等育成センターが活用することなく保有していた事業資金の合計額 | 24億5271万余円 | (平成21年度末) | |
上記に対する国の貸付金相当額 | 16億3514万円 |
(平成23年10月7日付け 農林水産大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、「青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法」(平成7年法律第2号)等の規定に基づき、青年等の就農促進を図るため、新たに就農しようとする青年等で都道府県知事から就農計画の認定を受けた者(以下「認定就農者」という。)等に対して、農業の技術若しくは経営方法を実地に習得するための研修その他の就農の準備に必要な資金又は農業経営を開始するのに必要な資金(以下、これらの資金を「就農支援資金」という。)を無利子で貸し付ける事業(以下「就農支援資金貸付事業」という。)を実施している。
就農支援資金の貸付業務は、各都道府県知事が指定する青年農業者等育成センター(以下「センター」という。)又は農業協同組合、銀行等の融資機関(以下、単に「融資機関」という。)が行うこととされている。そのため、都道府県は、センター及び融資機関に対して、就農支援資金の貸付業務に必要な資金(以下「事業資金」という。)を無利子で貸し付けている。そして、貴省は、都道府県に対して、毎年度事業資金の貸付財源として必要な資金の一部を無利子で貸し付けており、その額は、必要な資金の額に3分の2を乗じて得た額から前年度までに貴省が貸し付けた資金の額を基礎として算定した額を控除した額以内の額とされている。
都道府県は、貴省からの貸付金を10年以内の据置期間を含む21年以内に償還することとされているが、センター又は融資機関からの償還に連動して貸付金を償還する場合等は、繰上償還ができることとされている。
就農支援資金には、就農研修資金、就農準備資金及び就農施設等資金の3種類があり、このうち、就農研修資金及び就農準備資金については、センターのみが貸付業務を行っている。また、就農施設等資金については、センター及び融資機関が貸付業務を行っている(図1参照 )。
これら3種類の資金の内容、貸付限度額、償還期間等は、表1 のとおりである。
種類 | 内容 | 貸付限度額 | 償還期間 (据置期間) |
就農研修資金 | 認定就農者が就農計画に従って就農するのに必要な能率的な農業の技術又は経営方法を実地に習得するための研修を受けるのに必要な資金等 | 月額5万円(農業改良助長法(昭和23年法律第165号)が定める農業者研修教育施設において青年が研修を受ける場合) | 原則として12年以内 (原則として4年以内) |
就農準備資金 | 認定就農者が就農計画に従って就農するのに必要な移転その他の事前の活動等を行うのに必要な資金等 | 200万円 | 原則として12年以内 (原則として4年以内) |
就農施設等資金 | 認定就農者が就農計画に従って農業経営を開始する場合に、当該経営に必要な施設、機械又は資材の購入等に必要な資金 | 3700万円(青年が農業経営を開始する場合) | 原則として12年以内 (原則として5年以内) |
都道府県は、センターに事業資金を貸し付ける場合には、センターが行う当該年度の貸付けに必要な額から前年度までに都道府県が貸し付けた事業資金の額を基礎として算定した額を控除した額以内の額を貸し付けることとされている。また、融資機関に事業資金を貸し付ける場合には、認定就農者から貸付けの申請があった額以内の額を貸し付けることとされている。そして、都道府県からの貸付金について、センターは10年以内の据置期間を含む21年以内に、また、融資機関は6年以内の据置期間を含む13年以内に、それぞれ償還することとされている。
都道府県は、事業資金をセンター又は融資機関に貸し付けるに当たって、都道府県における青年等の就農促進に関する方針、就農計画の認定状況、センター及び融資機関の事業資金の需要等を勘案して就農支援資金貸付事業計画(以下「貸付事業計画」という。)を策定し、地方農政局長(北海道にあっては農林水産大臣、沖縄県にあっては沖縄総合事務局長。以下同じ。)の承認を受けることとされている。そして、事業資金を貸し付けたときは、翌年度の6月30日までに実績報告書を地方農政局長に提出することとされている。
本院は、有効性等の観点から、就農支援資金の貸付財源として貴省から都道府県に無利子で貸し付けられた貸付金が活用されているかなどに着眼して、貴省及び21道府県(注1) において、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、その他の22都府県(注2) から調書の提出を受けるなどして、貴省が平成6年度から21年度までの間に43都道府県(注3) に貸し付けた資金計208億0124万余円を対象として検査した。なお、東日本大震災により甚大な被害を受けた岩手、宮城及び福島各県並びに21年度末時点でセンターが指定されていない神奈川県については、検査の対象から除外した。
(注1) | 21道府県 北海道、京都府、茨城、群馬、新潟、石川、山梨、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、広島、山口、徳島、香川、高知、福岡、佐賀、鹿児島各県
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(注2) | 22都府県 東京都、大阪府、青森、秋田、山形、栃木、埼玉、千葉、富山、福井、長野、静岡、愛知、兵庫、島根、岡山、愛媛、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄各県
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(注3) | 43都道府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県
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都道府県がセンターに事業資金を貸し付ける場合には、前記のとおり、貸付事業計画に基づき、センターが行う当該年度の貸付けに必要な額を基礎として算定した額を貸し付けることとされていることから、貸付事業計画と対比して貸付実績が低調な場合等には、センターが多額の事業資金を翌年度に繰り越すことになる。
一方、都道府県が融資機関に事業資金を貸し付ける場合には、認定就農者から貸付けの申請があった額以内の額を融資機関に貸し付けることとされていること、融資機関が認定就農者から償還を受けた場合には、同日中に、償還を受けた金額を都道府県に償還することとされていることなどから、制度上、融資機関が事業資金を常時保有しない仕組みとなっている。
そこで、都道府県がセンターに貸し付けた事業資金について、貸付事業計画と貸付実績を対比するなどして検査したところ、次のような事態が見受けられた。
43都道府県が策定した17年度から21年度までの貸付事業計画におけるセンターの収入の額から都道府県への償還金の額を差し引くことにより算出される額(以下「貸付可能額」という。図2参照 )とセンターが実際に貸し付けた額(以下「貸付実績額」という。)とを対比すると、表2 のとおりとなる。
43都道府県のセンターにおける平成17年度から21年度までの5年間の平均貸付可能額に対する平均貸付実績額の割合 | 0% | 0%超 10%未満 |
10%以上 20%未満 |
20%以上 30%未満 |
30%以上 40%未満 |
40%以上 50%未満 |
50%以上 |
都道府県数 | 5 | 19 | 9 | 4 | 3 | 1 | 2 |
このように、43都道府県のセンターのうち、北海道及び和歌山県のセンターは、17年度から21年度までの5年間の平均貸付可能額に対する平均貸付実績額の割合が50%以上となっていたものの、それ以外の41都府県(注4 )のセンターは、50%未満となっており、このうち5府県は5年間の貸付実績が全くないなど、貸付事業計画と対比して貸付実績が低調となっていた。
貸付実績が低調な上記41都府県のセンターにおける17年度から21年度までの5年間の貸付可能額、貸付実績額及び事業資金の翌年度繰越額は、表3のとおりとなっていた。
年度 | 貸付可能額 (千円)
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貸付実績額 (千円)
(件数) |
事業資金の翌年度繰越額 (千円)
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就農研修資金 | 就農準備資金 | 就農施設等資金 | ||||
貸付金額 (千円)
(件数) |
貸付金額 (千円)
(件数) |
貸付金額 (千円)
(件数) |
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平成 17 |
2,398,269 | 389,026 (345件) |
318,160 (319件) |
37,980 (21件) |
32,886 (5件) |
2,207,464 |
18 | 2,463,107 | 297,733 (278件) |
239,588 (257件) |
21,287 (12件) |
36,858 (9件) |
2,457,051 |
19 | 2,634,979 | 232,280 (210件) |
177,439 (187件) |
25,770 (14件) |
29,071 (9件) |
2,597,416 |
20 | 2,620,013 | 208,511 (180件) |
155,541 (166件) |
9,390 ( 6件) |
43,580 (8件) |
2,608,880 |
21 | 2,595,982 | 226,560 (187件) |
153,625 (160件) |
26,760 (19件) |
46,175 (8件) |
2,544,128 |
計 | 12,712,351 | 1,354,110 (1,200件) |
1,044,353 (1,089件) |
121,187 (72件) |
188,570 (39件) |
12,414,942 |
このように、41都府県のセンターにおける貸付実績額は17年度の3億8902万余円から41.8%減少して21年度には2億2656万円となっているのに、貸付可能額は17年度の23億9826万余円から8.2%増加して21年度には25億9598万余円となっていた。また、事業資金の翌年度繰越額は、17年度の22億0746万余円から15.3%増加して21年度には25億4412万余円となっていた。
上記の41都府県が策定した21年度の貸付事業計画におけるセンターの事業資金の額の算定方法をみると、次のとおりとなっていた。
前記の41都府県のセンターにおける事業資金の保有状況をみると、各都府県が、(3)のとおり、就農支援資金の貸付け見通しを適切に反映させて貸付事業計画を策定していないため、このうちの34府県(注8
)のセンターでは、17年度から21年度までの全ての年度末において、当該年度の貸付実績額を上回る多額の事業資金を毎年度繰り越していて、これらのセンターの5年間の平均繰越額は、平均貸付実績額の11.4倍に上っていた。
この結果、これら34府県のセンターは、21年度末に、計24億5271万余円(国の貸付金相当額16億3514万余円)の事業資金を保有しており、このうち、24.9%に当たる6億1034万余円(21年度末現在)を銀行等に1年以上の定期預金として預けていた。
広島県は、平成7年度から11年度までに、財団法人広島県農林振興センター(平成15年5月31日以前は財団法人広島県農業青年育成基金。15年6月1日から10月9日までは財団法人広島県農林振興公社)に対して事業資金として計2億6460万円(国の貸付金相当額計1億7640万円)を貸し付けていた。その後、同県は、単独事業として実施していた就農研修資金等償還金助成事業を17年度で終了することに伴う就農支援資金の延滞の増加等を懸念して、19年度以降の就農支援資金の新規貸付けを中止することを決定した。
しかし、同県は、19年度以降の貸付事業計画の策定に当たり、上記を踏まえて、同センターの就農支援資金の貸付けを行わないこととする一方で、同センターが保有する多額の事業資金はそのまま翌年度に繰り越すこととしていた。そして、同センターは、19年度1億0814万余円(国の貸付金相当額7209万余円)、20年度1億0528万余円(同7019万余円)、21年度1億0593万余円(同7062万余円)の事業資金をそれぞれ翌年度に繰り越していた。
(注4) | 41都府県 東京都、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県
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(注5) | 20県 茨城、群馬、新潟、石川、山梨、長野、静岡、愛知、滋賀、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県
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(注6) | 3県 静岡、山口、香川各県
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(注7) | 21都府県 東京都、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、栃木、埼玉、千葉、富山、福井、岐阜、三重、兵庫、奈良、広島、高知、福岡、佐賀、長崎、沖縄各県
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(注8) | 34府県 京都府、青森、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、富山、石川、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、兵庫、奈良、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、熊本、大分、鹿児島、沖縄各県
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貴省が新規就農者を支援するために34府県に無利子で貸し付けた多額の資金が活用されることなく、34府県のセンターに保有されている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。
我が国の農業者の高齢化が進行する中で、農業の生産構造を維持し、もって国民に対する安定的な食料供給を行うためには、新規就農者を支援するための各種施策を効果的に実施することが求められる。一方、近年、国の財政資金の有効活用に対する要請が高まっており、国による無利子の貸付金についても、厳しく見直すことが求められている。
ついては、貴省において、都道府県にセンターが保有する事業資金の適切な規模について算定基準等を示して検討させるとともに、適切な規模を超えるものについて、そのうちの国の貸付金相当額を国に繰上償還するよう都道府県に対して求めるなどして、財政資金の有効活用を図るよう改善の処置を要求する。