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エネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金について、当面の間は資金残高の規模を縮減させるとともに、今後需要額の算定が必要となる場合には積立目標額の規模を見直すなどして、当面需要が見込まれない資金を滞留させないような方策を検討するよう意見を表示したもの


(3) エネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金について、当面の間は資金残高の規模を縮減させるとともに、今後需要額の算定が必要となる場合には積立目標額の規模を見直すなどして、当面需要が見込まれない資金を滞留させないような方策を検討するよう意見を表示したもの

所管 文部科学省、経済産業省及び環境省
会計名及び科目 エネルギー対策特別会計(電源開発促進勘定)
      (項)周辺地域整備資金へ繰入
    平成18年度以前は、
電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定)
      (項)周辺地域整備資金へ繰入
       
       
部局等 資源エネルギー庁
周辺地域整備資金の概要 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第92条第1項等の規定に基づき、発電用施設等の立地の進捗に伴って必要となる電源立地地域対策交付金等に対応できるようあらかじめ積み立てている資金
周辺地域整備資金の残高
1231億5598万余円
(平成22年度末)

上記のうち縮減可能な資金の額
657億円
 

【意見を表示したものの全文】

 エネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金の状況について

(平成23年10月5日付け 経済産業大臣宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 周辺地域整備資金等の概要

(1) エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の概要

 国は、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)に基づき、燃料安定供給対策、エネルギー需給構造高度化対策、電源立地対策及び電源利用対策に関する経理を明確にするため、エネルギー対策特別会計(以下「エネルギー特会」という。)を設置し、一般会計と区分して経理している。
 このエネルギー特会は、エネルギー需給勘定及び電源開発促進勘定(以下「促進勘定」という。)の2勘定に区分されている。
 そして、促進勘定においては、一般会計を経由して繰り入れられる電源開発促進税の収入を財源として、電源立地対策として実施される発電用施設周辺地域整備法(昭和49年法律第78号。以下「整備法」という。)に基づく交付金及び発電用施設の周辺地域における安全対策のための財政上の措置その他の発電の用に供する施設の設置及び運転の円滑化に資するための財政上の措置に要する費用と、電源利用対策として実施される発電用施設の利用の促進及び安全の確保並びに発電用施設による電気の供給の円滑化を図るための措置に要する費用を区分して経理している。

(2) 電源立地対策の沿革

 国は、原子力、火力両発電用施設等の設置を円滑に進めるために、昭和49年に整備法、電源開発促進税法(昭和49年法律第79号)及び電源開発促進対策特別会計法(昭和49年法律第80号。以下「電源特会法」という。)のいわゆる電源三法を制定し、これに基づき電源立地対策の実施を開始し、55年には同対策に関する経理を電源開発促進対策特別会計電源立地勘定(以下「立地勘定」という。)で行うこととした。
 そして、我が国のエネルギー構造が欧米諸国に比べ依然として石油依存度が高く、その供給構造が相対的にぜい弱な状況にあったことや、京都議定書の締結により温室効果ガス排出量の削減義務を負ったことなどを背景として、平成15年には、安定的な電力供給源であり、かつ、二酸化炭素の排出量の低減に資する原子力、水力両発電用施設等の長期固定電源の立地・利用促進を重点的に進めるため、整備法及び電源特会法の一部を改正した。電源立地対策については、それまで公共用施設整備事業等を対象として交付されていた電源立地等初期対策交付金、電源立地促進対策交付金、原子力発電施設等周辺地域交付金、電力移出県等交付金、原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金及び水力発電施設周辺地域交付金を統合して電源立地地域対策交付金(以下「立地交付金」という。)を創設し、立地交付金の一部を支弁するための積立てを目的とする周辺地域整備資金(以下「整備資金」という。)を設置するなどの見直しを行った。
 その後、19年に、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号)の施行を受けて電源特会法が廃止され、新たに施行された特会法に基づき、電源立地対策に関する経理は、エネルギー特会の促進勘定において行われることとなった。

(3) 立地交付金及び整備資金の概要

 立地交付金は、電源地域における住民の福祉の向上を図るなどのために、電源立地地域対策交付金交付規則(平成16年文部科学省・経済産業省告示第2号)等に基づき、立地可能性調査開始の翌年から運転終了に至るまでの発電用施設等の立地の進捗に応じて、発電用施設出力や電灯需要家契約口数等を考慮するなどして交付限度額を定め、当該発電用施設等が所在する市町村等に対して交付されている。なお、独立行政法人日本原子力研究開発機構が設置する発電用施設等に係る立地交付金については文部科学省が所管しており、それ以外については貴省が所管している。
 また、整備資金は、本院の平成13年度決算検査報告や国会での議論等を踏まえ、立地勘定の剰余金が将来の財政需要への備えであることについての透明性及び説得性を高めるとして同勘定に設置されたもので、貴省が所管している立地交付金の一部に対応できるようあらかじめ資金として積み立てることにされたものである。
 そして、整備資金の積立てについては、予算で定めるところにより、促進勘定からの繰入金及び同勘定の決算剰余金から組み入れる組入金をもってこれに充てることとされている。また、立地交付金等に充当するための整備資金の取崩しについては、予算で定める金額に限り、促進勘定の歳入に繰り入れることができることとされている。

(4) 原子力発電施設の立地手続

 原子力発電施設の立地に当たり、一般電気事業者等は、立地可能性を調査した後、電気事業法(昭和39年法律第170号)及び環境影響評価法(平成9年法律第81号)に基づく環境影響評価等を実施し、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)に基づく国の原子炉設置許可を受けるなどとされており、その主な手続は図1のとおりとなっている。

図1 原子力発電施設の立地に必要となる手続

図1原子力発電施設の立地に必要となる手続

(5) 原子力発電施設に係る安全対策

 原子力発電施設の安全対策については、一般電気事業者等が、国の基準等に基づき、災害時等の停電の際に利用されることになる非常用電源の整備等を実施している。
 一方、原子力発電施設の周辺地域における安全対策については、これまでのところ、立地交付金とは別に、国が原子力施設等防災対策等交付金等を交付して、原子力発電施設が所在する道府県等が防災資機材の整備等を実施している。

(6) 立地勘定についてのこれまでの検査状況の概要

 本院は、立地勘定について、平成13年度決算検査報告及び平成16年度決算検査報告に特定検査対象に関する検査状況として「電源開発促進対策特別会計電源立地勘定の決算状況について」 及び「電源開発促進対策特別会計における剰余金の状況について」 を掲記している。
 そして、平成13年度決算検査報告においては、立地勘定に多額の剰余金が生じていることを取り上げ、その主な原因が、地元同意を得るための調整が難航したことなどにより発電用施設の一部に設置工事の遅れが生じ、立地交付金の交付に至らず、多額の不用額が生じる事態が毎年度繰り返されてきたことであることなどから、剰余金の減少策等について検討することが望まれるとしている。
 また、平成16年度決算検査報告においては、平成13年度決算検査報告に掲記した内容のフォローアップとして、立地勘定に加え、電源開発促進対策特別会計電源利用勘定についても剰余金の状況を掲記するとともに、整備資金設置後の立地勘定については、地元同意を得るための調整の難航等により、原子力発電施設の立地に要する期間の長期化傾向が強まっていることから、整備資金に積み立てられた資金について、使用のめどが立たない事態に至るものが生じれば、剰余金と同様なものとなるおそれがあるとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、上記のとおり、平成16年度決算検査報告において整備資金の状況等について掲記したところであるが、その後、原子力発電施設の立地が引き続き遅延している状況となっている。
 また、23年3月に発生した東日本大震災に伴う東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所の事故について、その早期収束、原子力発電施設の周辺地域の安全対策等のための措置に多額の費用が必要とされている。
 そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、整備資金に係る資金規模及び将来の積立目標額は不要不急の資金が滞留することのないよう適正なものとなっているかなどに着眼して、資源エネルギー庁等において、17年度から22年度までの間に交付された立地交付金5740億余円、22年度末の整備資金の資金残高1231億余円等を対象として、決算書等の関係書類等により会計実地検査を行うとともに、資源エネルギー庁等から、立地交付金、整備資金に係る需要額(将来運転開始が見込まれる原子力発電施設に係る需要額)、整備資金の受払及び原子力発電施設の立地に係る関係資料を徴して、当該資料を分析するなどして検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、立地交付金及び整備資金の状況、整備資金の積立対象となる原子力発電施設等、整備資金残高の推移等及び原子力発電施設の立地の進捗状況は、次のとおりとなっていた。

(1) 立地交付金及び整備資金の状況

 17年度から22年度までの間における、立地交付金の交付実績額及び整備資金から促進勘定に繰り入れられて立地交付金に充当された額の推移は表1のとおりとなっている。

表1  立地交付金の交付実績額及び整備資金から立地交付金に充当された額の推移
(単位:百万円)
年度 平成17 18 19 20 21 22
交付実績額 90,552 97,357 99,626 95,939 93,665 96,866 574,007
うち整備資金から立地交付金に充当された額 4,992 12,798 11,223 10,194 5,635 44,845
(注)
交付実績額には経済産業省所管分を計上しており、文部科学省所管分は除いている。

 立地交付金は、前記のとおり、発電用施設等の立地の進捗に応じて交付されることとなっている。そして、貴省は、立地交付金の一部に充当される整備資金について、原子力発電施設の立地可能性調査開始の翌年から着工を経て運転開始までの期間に対応する財源として積み立てることとしている。しかし、立地交付金は、図2のとおり、主として、着工から運転開始までの期間に、集中して多額に交付されることから、整備資金は、原則として、この期間に係る財源を確保できれば十分であると認められる。

図2 原子力発電施設の立地の進捗に伴う立地交付金の交付の概要

図2原子力発電施設の立地の進捗に伴う立地交付金の交付の概要

注(1)
着工翌年から運転開始までの間で需要額が減少しているのは、原子力発電施設等周辺地域交付金相当部分において、着工から一定年数の経過に伴い算定単価の低減が生じることなどによる。
注(2)
交付期間を示す矢印の太さは、立地交付金の需要額を概念的に示している。
注(3)
平成15年の法改正により立地交付金へ統合される前の交付金相当部分ごとに交付期間を示している。

(2) 整備資金の積立対象となる原子力発電施設等

 整備資金は、前記のとおり、発電用施設等の立地の進捗に伴って必要となる立地交付金の一部に対応できるよう設置されたものであるが、その積立ての対象となる発電用施設等については法令等に明記されていない。このため、貴省は、毎年度、電気事業法に基づき一般電気事業者等がそれぞれ経済産業大臣に届け出ることとされている当該年度以降の電気の供給並びに電気工作物の設置及び運用についての計画(以下「電力供給計画」という。)において示された新増設に係る全ての原子力発電施設を一律に対象として整備資金を積み立てることとしている。
 そして、22年度の整備資金の積立てに際しては、21年度の電力供給計画において示された14基(21年12月に運転開始をした北海道電力株式会社泊3号を除く。以下同じ。)の原子力発電施設全てを対象として、立地交付金等の将来の需要額を1906億余円と算定して、この整備資金に係る需要額を積立目標額としている。

(3) 整備資金残高の推移等

 整備資金は、表2のとおり、15年度から促進勘定(18年度以前は立地勘定。以下同じ。)からの繰入れが行われ、16年度から同勘定の決算剰余金からの組入れが行われている。また、18年度からは立地交付金の財源等の一部に充てるため、これを取り崩して促進勘定への繰入れが行われており、22年度末の整備資金残高は1231億余円となっている。
 なお、東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故等への対応のため、23年度第1次補正予算が成立しており、エネルギー特会において、整備資金から促進勘定への繰入れが500億円計上されている。

表2  整備資金残高等の推移
(単位:百万円)

年度 促進勘定から整備資金への繰入額(積立て) 決算剰余金から整備資金への組入額(積立て) 整備資金から促進勘定への繰入額(取崩し) 整備資金残高
平成15 26,000 26,000
16 53,000 9,100 88,100
17 12,500 6,353 106,954
18 13,600 5,545 4,992 121,106
19 11,000 3,279 12,798 122,587
20 9,600 3,462 11,223 124,426
21 7,700 3,320 10,194 125,251
22 3,540 5,635 123,155
(注)
促進勘定は、18年度以前は立地勘定である。

 促進勘定から整備資金への繰入れについて、貴省は、21年度までは、前記のとおり電力供給計画において示された新増設に係る全ての原子力発電施設を一律に対象として算定した立地交付金等の将来の需要額から、当該年度末の整備資金の残高見込額を控除した額を、翌年度以降所要の年数で積み立てることにしていた。
 そして、22年度については、当初、21年8月の概算要求においては上記により繰入額を算定していたものの、結果的には財政事情等により予算要求を行っていない。

(4) 原子力発電施設の立地の進捗状況

 国は、エネルギー政策基本法(平成14年法律第71号)に基づき、15年10月に、エネルギー需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るために、今後の原子力政策の方向性を含むエネルギー基本計画を策定している。そして、22年6月に改定されたエネルギー基本計画においては、今後の原子力政策について、2030年までに前記の電力供給計画に示された14基の原子力発電施設の新増設を行うこととされているが、現在、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、国においてエネルギー基本計画の見直しが行われている。そして、エネルギー基本計画及び電力供給計画において示された原子力発電施設14基の立地の進捗状況は、次のとおりとなっていた。

ア 電力供給計画における原子力発電施設の開発計画

 一般電気事業者等は、電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号)に基づき、毎年度策定する電力供給計画において、発電用施設の開発計画を作成している。そして、22年度の整備資金の積立ての対象となっている21年度の電力供給計画における原子力発電施設14基に係る開発計画についてみると、表3のとおり、運転開始予定が当該年度から10年以内のものが東京電力福島第一7号等8基、同10年経過以降のものが東北電力株式会社浪江・小高等6基となっていた。
 なお、東京電力福島第一7号及び同8号は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、23年5月に、東京電力により開発計画の中止が決定されている。

表3  平成21年度の電力供給計画における原子力発電施設の開発計画

運転 事業者名 発電所名称 所在地 出力
(万kW)
着工年月 運転開始年月
10年以内のもの 東京電力株式会社 福島第一
7号(注)
福島 138.0 平成23年4月 27年10月
福島第一
8号(注)
福島 138.0 23年4月 28年10月
東通1号 青森 138.5 22年12月 29年3月
中国電力株式会社 島根3号 島根 137.3 17年12月 23年12月
上関1号 山口 137.3 22年度 27年度
電源開発株式会社 大間原子力 青森 138.3 20年5月 26年11月
日本原子力発電株式会社 敦賀3号 福井 153.8 22年10月 28年3月
敦賀4号 福井 153.8 22年10月 29年3月
10年経過以降のもの 東北電力株式会社 浪江・小高 福島 82.5 27年度 32年度
東通2号 青森 138.5 27年度以降 32年度以降
東京電力株式会社 東通2号 青森 138.5 25年度以降 31年度以降
中部電力株式会社 浜岡6号 静岡 140級 27年度 31年度以降
中国電力株式会社 上関2号 山口 137.3 27年度 32年度
九州電力株式会社 川内3号 鹿児島 159.0 25年度 31年度
計14基1,930.8万kW
(注)
東日本大震災に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を受けて、23年5月に、同社は開発計画の中止を決定している。以下の表についても同様。

 また、14基の当初着工予定からの遅延年数についてみると、表4のとおり21年度の開発計画作成時点で最大37年の遅れが生じており、着工済みの東京電力東通1号、中国電力株式会社島根3号及び電源開発株式会社大間原子力(以下、これらを合わせて「着工済み3基」という。)を除く11基の原子力発電施設のほとんどについて、その着工及び運転開始予定が毎年度1年程度先送りされている状況となっている。
 このことについて、貴省は、原子力発電施設用地の取得及び地元同意を得るための調整が長期にわたり難航していることなどによると説明している。

表4  平成19年度以降の電力供給計画における原子力発電施設の開発計画の状況

事業者名 発電所名称 遅延
年数(年)
平成19年度開発計画 平成20年度開発計画 平成21年度開発計画 備考
着工年 運転開始年 着工年 運転開始年 着工年 運転開始年  
東北電力株式会社 浪江・小高 37 25年 30年 26年 31年 27年 32年  
東通2号 16 25年以降 30年以降 26年以降 31年以降 27年以降 32年以降  
東京電力株式会社 福島第一7号 11 21年 25年 22年 26年 23年 27年  
福島第一8号 11 21年 26年 22年 27年 23年 28年  
東通1号 12 20年 26年 21年 27年 22年 29年 23年1月着工済み
東通2号 14 23年以降 29年以降 24年以降 30年以降 25年以降 31年以降  
中部電力株式会社 浜岡6号 27年 31年以降  
中国電力株式会社 島根3号 3 17年 23年 17年 23年 17年 23年 17年12月着工済み
上関1号 11 21年 26年 22年 27年 22年 27年  
上関2号 11 24年 29年 25年 30年 27年 32年  
九州電力株式会社 川内3号 25年 31年  
電源開発株式会社 大間原子力 9 19年 24年 20年 24年 20年 26年 20年5月着工済み
日本原子力発電株式会社 敦賀3号 7 22年 28年 22年 28年 22年 28年  
敦賀4号 7 22年 29年 22年 29年 22年 29年  
(注)
遅延年数は、当初の着工予定年から平成21年度計画で示された着工年までの年数である。

イ 原子力発電施設の立地手続の進捗状況

 原子力発電施設の立地に当たっては、図1 のとおり、電気事業法等の法令等に基づく手続が必要となっている。このうち、原子力発電施設の着工前に実施することとなっている環境影響評価、原子炉設置許可申請及び許可の各手続について、原子力発電施設14基の進捗状況は、表5のとおり、22年度までに、環境影響評価まで完了したものが11基、原子炉設置許可申請まで完了したものがこの11基のうち7基となっている。

表5 原子力発電施設の設置に係る各手続の進捗状況と各施設に対応した整備資金に係る需要額(平成22年度時点

事業者名 発電施設名称
(上記施設に対応した整備資金に係る需要額)
環境影響評価 原子炉設置許可申請 原子炉設置許可 着工
東北電力株式会社
浪江・小高
(288.0億円)
東通2号
(109.6億円)
中部電力株式会社
浜岡6号
(187.4億円)
東京電力株式会社
福島第一7号
(69.9億円)
平成13年2月
福島第一8号
(129.8億円)
13年2月
東通2号
(40.4億円)
15年9月
中国電力株式会社
上関2号
(183.9億円)
13年8月
上関1号
(305.6億円)
13年8月 21年12月 審査中
九州電力株式会社
川内3号
(292.0億円)
22年8月 23年1月 審査中
日本原子力発電株式会社
敦賀3号
(13.6億円)
14年2月 16年3月 審査中
敦賀4号
(213.1億円)
14年2月 16年3月 審査中
中国電力株式会社
島根3号
(0.0億円)
12年10月 12年10月 17年4月 17年12月
電源開発株式会社
大間原子力
(13.0億円)
11年10月 16年3月 20年4月 20年5月
東京電力株式会社
東通1号
(60.6億円)
15年9月 18年9月 22年12月 23年1月
14基
(1906.9億円)
11基
(1321.9億円)
7基
(897.9億円)
3基
(73.6億円)
3基
(73.6億円)

 立地交付金は、前記のとおり、発電用施設の着工から運転開始までの期間に集中して交付されている。着工済み3基について、原子炉設置許可申請から、設置許可を経て資金需要が増大する着工に至るまでに要した期間をみると、表5のとおり、4年から5年程度を要している状況となっている。また、原子炉設置許可申請に係る審査中の4基のうち2基(日本原子力発電株式会社敦賀3号及び同敦賀4号)については、審査に要している期間が既に4年を経過しており、18年9月の耐震設計審査指針の改定や19年7月に発生した新潟県中越沖地震の影響等による審査期間の長期化により、資金需要が増大する着工までに要する期間も長期化している傾向が見受けられる。

ウ 東日本大震災による原子力発電施設の立地への影響

 23年3月に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、一般電気事業者等においては、原子力発電施設の開発計画の見直しなどが想定されており、立地予定市町村等においても、原子力発電施設の新増設に対する地元同意を得るための調整に要する期間がより長期化することが想定される。
 このような状況において、前記のとおり、東京電力は、福島第一7号及び同8号について開発計画の中止を決定しているところである。
 また、国において、安全審査指針類の改定作業が始まったことから、審査中の原子力発電施設(表5参照) の審査期間が更に長期化することが想定される。さらに、前記のとおり、今後の原子力政策の方向性を含むエネルギー基本計画の見直しが行われることとなり、見直しの期間中においては原子力発電施設の立地の進捗が遅延することが想定される。

 以上のことから、原子力発電施設の着工までには今後も長期間を要し、整備資金に係る需要が増大する時期についても更に遅れが見込まれる。したがって、整備資金の積立ての対象とされている14基の原子力発電施設のうち、着工済み3基を除く11基については、当面の間は整備資金に係る需要が生じないものと認められることから、整備資金の積立対象を着工済み3基のみとすれば、22年度末の整備資金の残高1231億余円については、前記の整備資金に係る需要額1906億余円のうち当該3基分の需要額に相当する73億余円(表5参照) を留保しておけば足り、前記の23年度第1次補正予算で計上された整備資金から促進勘定への繰入額500億円を考慮しても、残りの657億円は当面需要が見込まれない、縮減が可能な余裕資金であると認められる。
 また、今後、原子力発電施設の新増設に係る立地交付金の需要額の算定が必要になる場合には、前記のとおり、電力供給計画に示された新増設に係る全ての原子力発電施設を一律に対象とするのではなく、着工までに要する期間が4年程度であることや審査期間が更に長期化することが想定されることを踏まえて、原子炉設置許可申請を着工の確実性の指標とするなどして算定対象を選定し積立目標額の規模を見直すこととすれば、当面需要が見込まれない資金を滞留させない方策になると認められる。

(改善を必要とする事態)

 上記のように、整備資金に係る需要が増大する時期について今後も遅れが想定される状況であるにもかかわらず、当面需要が見込まれない多額の資金が滞留している事態、及び積立目標額の規模を見直すことなく、電力供給計画において開発が示されたことのみをもって全ての原子力発電施設を一律に積立ての対象としている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、原子力発電施設の開発計画が遅延していることについて、それぞれ個別の事情があるにもかかわらず、電力供給計画において開発が示されたことのみをもって一律に整備資金に係る需要額を算定して、この額を目標として整備資金を積み立てていることなどによるものと認められる。

3 本院が表示する意見

 原子力発電施設の立地の進捗は滞っており、安全審査指針類の改定、エネルギー基本計画の見直しなどにより、今後長期にわたり進捗が図られないことも想定される。
 また、昨今の厳しい財政状況に鑑み、不要不急の資金は可能な限り削減し、より一層の有効活用を図ることが求められており、さらに、今般の東日本大震災の被災地の復興、原子力発電施設の周辺地域における安全対策のための措置等に多額の費用が必要とされることが見込まれる。
 このような状況を踏まえ、貴省において、当面の間は、着工済み3基のみを整備資金の積立ての対象にするなどして、整備資金残高の規模を縮減させるとともに、エネルギー基本計画の見直しなどを踏まえて、今後整備資金に係る需要額の算定が必要になる場合には、原子炉設置許可申請を着工の確実性の指標にするなどし需要額の算定対象とする原子力発電施設を選定して整備資金に係る需要額を算定することにより積立目標額の規模を見直すなどして、当面需要が見込まれない資金を滞留させないような方策を検討するよう意見を表示する。