会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)地域再生推進費 (項)地域活力基盤整備事業費 (項)社会資本総合整備事業費 |
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) | |||
(項)道路交通安全対策事業費 (項)地方道路整備臨時交付金 |
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部局等 | 7府県 | ||
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和33年法律第34号)等 | ||
補助事業者 (事業主体) |
県3、政令指定都市3、市3、計9事業主体 | ||
鉄道事業者への委託工事の概要 | 道路管理者等が、道路と鉄道とが交差する箇所等で事業を実施する場合に、鉄道の運転保安上等の理由から、鉄道事業者に工事の施工を委託するもの | ||
鉄道事業者に委託した立体交差化又は踏切道の拡幅を行った工事の件数及び事業費 | 198件 | 373億6920万余円 | (平成21、22両年度) |
上記に対する国庫補助金等交付額 | 203億1793万余円 | ||
内容の確認を適切に行っていなかった管理費(1) | 10件 | 1億3484万余円 | (平成21、22両年度) |
上記に対する国庫補助金等相当額 | 7262万円 | ||
鉄道事業者に橋桁の製作及び運搬を委託していた工事費(2) | 3件 | 1億2535万余円 | (平成21、22両年度) |
上記に対する国庫補助金等相当額 | 5920万円 | (背景金額) | |
将来発生するとされる費用を委託工事費に含めて支払っていた踏切道の舗装修繕費(3) | 6件 | 1742万余円 | (平成21、22両年度) |
上記に対する国庫補助金等相当額 | 937万円 | ||
(1)及び(3)の計 | 16件 | 1億5227万余円 | (平成21、22両年度) |
上記に対する国庫補助金等相当額 | 8200万円 |
(平成23年10月28日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、道路法(昭和27年法律第180号。以下「法」という。)等に基づき、直轄事業又は補助事業等により道路事業を実施している。
道路管理者は、法等により、政令で指定する区間内の一般国道については国土交通大臣、これ以外の一般国道及び都道府県道については都道府県知事又は政令指定都市(以下「政令市」という。)の長、市町村道については市町村の長とされている。そして、道路に関する工事は、道路管理者又は都市計画法(昭和43年法律第100号)により都市計画事業を施行する者(以下、両者を合わせて「道路管理者等」という。)が行うこととなっている。
しかし、道路と鉄道とが交差する箇所等で、道路に関する工事を直轄事業又は補助事業等で実施する場合は、鉄道の運転保安上等の理由により、道路管理者等が鉄道事業者に工事を委託して施行(以下、この委託による工事の施行を「委託工事」という。)し、その費用を道路管理者等が負担する場合が多く見受けられる。
ア 道路管理者等と鉄道事業者との協議
法第31条等によると、道路と鉄道とが交差する場合は、道路管理者等と鉄道事業者とが、立体交差化等に係る委託工事の施行方法、費用負担等について協議することなどとされている。
また、貴省は、平成15年3月に「道路と鉄道との交差に関する協議等に係る要綱」及び「道路と鉄道との交差に関する協議等に係る細目要綱」(以下、これらを合わせて「要綱」という。)を定めている。道路管理者等と鉄道事業者とは、要綱に基づき、道路と鉄道との交差に関する協議を行っている。そして、要綱に規定されていない事項については、従来、道路管理者等と鉄道事業者との間で個別に協議することとされていたため、これまでに多数の覚書等が締結されているが、貴省は、それらについて、要綱と矛盾のない限りにおいて有効であるとしている。
イ 要綱等における委託工事に係る費用負担の考え方
貴省は、要綱等に基づいて、委託工事に係る費用(以下「委託工事費」という。)の負担を次のようにすることとしている。
(ア) 道路の新設若しくは改築又は鉄道の新設若しくは改良に関する工事により新たに道路と鉄道とを交差させる場合等においては、当該工事の計画者が交差に要する工事費の全額を負担する。
(イ) 委託工事に係る直接工事費を除く費用(以下「管理費」という。)の負担方法は、道路管理者等と鉄道事業者とが協議して定める。
ただし、道路を立体交差化することなどにより既設の踏切道を除却する場合については、鉄道事業者は、管理費のうち、当該工事に直接労務を提供する職員の人件費及び旅費並びに調査、設計及び監督に直接従事する職員の測量又は監督の旅費等の費用(以下、これらを「直接経費」という。)を道路管理者等に要求することができる。
また、既設の踏切道を除却して新たに立体交差化を計画する道路(以下「計画道路」という。)の幅員が、既設の踏切道の幅員に対して著しく大きくなる場合については、元年10月に建設省と運輸省(いずれも13年1月以降は国土交通省)との間で締結された「踏切除却に合わせて道路の拡幅を行う立体交差工事における損失の補填及び事務費の取扱いについて」の覚書(以下「覚書」という。)に基づき、鉄道事業者は、計画道路の幅員の程度に応じて、管理費のうち直接経費以外の経費である事務費の支払も道路管理者等に要求することができるとされている。そして、事務費は、直接工事費、既設踏切道の幅員及び計画道路の有効幅員のそれぞれの値を基に、所定の計算式等により算定することとされている。
ウ 踏切道の拡幅に係る費用負担
貴省は、13年10月に「踏切道の拡幅に係る指針について」及び「踏切道の拡幅に係る指針の取扱いについて」(以下、これらを合わせて「指針」という。)を発している。そして、指針によると、道路管理者と鉄道事業者は、踏切道について、踏切事故の防止及び道路交通の円滑化のため、立体交差化、統廃合等によりその除却に努めるべきであるとされている。ただし、道路拡幅に伴い標準幅員で片側1車線までの踏切道の拡幅等については、地域状況等から統廃合が早期に実施できない場合に、踏切道の統廃合を行わずに実施できるなどとされている。そして、この場合、拡幅に係る工事費及び拡幅部等の舗装修繕に係る費用(以下「舗装修繕費」という。)は道路管理者が負担することなどとされている。
道路管理者等は、道路と鉄道とが交差する箇所等で事業を実施する場合、計画から実施までの各段階において、鉄道事業者と協議を行って工事を委託している。そして、委託工事の実施に当たり、道路管理者等は、鉄道事業者との間で、毎年度、当該年度内に施行する委託工事の内容、費用負担、費用の支払・精算等について定めた協定(以下「年度協定」という。)を締結するなどしている。
貴省は、平成17年度決算検査報告における本院の指摘 を踏まえ、委託工事に関する取組について、貴省と鉄道事業者との間で申合せがなされたことから、21年1月に「「公共事業における鉄道委託工事を行う場合の透明性の確保の徹底に関する申し合わせ」について」(以下「通知」という。)を発している。これによると、鉄道事業者は、各年度協定に係る委託工事費の精算時に、道路管理者等に対して、鉄道事業者が発注した工事の請負契約及び工事の出来形等に関する資料(以下「精算関係資料」という。)を提出することなどとされている。そして、道路管理者等は、鉄道事業者から提出された精算関係資料により上記請負契約の内容及び管理費の内訳の確認を行い、各年度協定に係る委託工事費の精算を適切に行うことなどとされている。
貴省は、道路と鉄道とが交差する箇所等で多くの事業を実施しており、鉄道事業者へ支払う委託工事費も多額に上っている。そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、委託工事費の精算が適切に行われているか、委託工事の内容が適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。
(検査の対象及び方法)
21、22両年度に、委託工事で道路と鉄道との交差に係るもののうち、立体交差化を行うもの又は踏切道の拡幅を行うものについて、18道府県(注1) 、7政令市(注2) 及び51市町村(注3) が補助事業等として実施した198件(委託工事費計373億6920万余円(国庫補助金等計203億1793万余円))を対象として会計実地検査を実施した。そして、各委託工事の年度協定書、鉄道事業者から提出された精算関係資料等の書類及び現地の状況を確認するなどして検査した。
(注1) | 18道府県 北海道、京都、大阪両府、栃木、埼玉、千葉、石川、福井、長野、静岡、和歌山、鳥取、広島、徳島、香川、福岡、長崎、鹿児島各県
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(注2) | 7政令市 さいたま、静岡、浜松、京都、岡山、福岡、北九州各市
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(注3) | 51市町村 深川、宇都宮、那須塩原、春日部、鴻巣、和光、久喜、市川、船橋、柏、鴨川、白山、長野、諏訪、駒ヶ根、茅野、塩尻、沼津、菊川、宇治、宮津、岸和田、高槻、橋本、倉敷、瀬戸内、呉、福山、府中、三次、東広島、安芸高田、坂出、松山、中間、島原、松浦、鹿児島、薩摩川内、姶良各市、野木、野々市、永平寺、精華、かつらぎ、伯耆、久米南、東みよし、苅田各町、長生、大桑両村
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(検査の結果)
検査したところ、上記198件のうち、3県、3政令市及び3市が実施した立体交差化に係る委託工事13件、踏切道の拡幅に係る委託工事6件、計19件(委託工事費計43億7638万余円(国庫補助金等計23億1490万余円))において、次のような事態が見受けられた。
ア 管理費の内訳等の確認を適切に行っていなかったもの
2県1政令市2市(注4)
は、踏切道の除却を伴う立体交差化に係る委託工事を10件(委託工事費計31億1887万余円(国庫補助金等計16億6885万余円))実施しており、鉄道事業者から提出された精算関係資料に基づき、管理費を計1億3484万余円(国庫補助金等相当額計7262万余円)として委託工事費の精算を行っていた。
しかし、通知によると、前記のとおり、年度協定に係る委託工事費の精算時に管理費の内訳を確認することとされているのに、上記の道路管理者等は、鉄道事業者から管理費に係る詳細な根拠資料の提出を受けておらず、管理費の内訳等が直接経費又は事務費に該当するかなどについて確認しないまま管理費の精算を行っていた。
なお、検査の対象とした198件のうち、同様に踏切道の除却を伴う立体交差化に係る委託工事を実施していたものは前記10件のほかに14件あったが、それらについては、道路管理者等が、管理費の根拠資料の提出を鉄道事業者に求めるなどして、その内訳等を確認した上で精算を適切に行っていた。その結果、管理費を計上していなかったものが3件、直接経費として旅費のみを計上していたものが1件で1万余円、覚書に基づく事務費のみを計上していたものが10件で計4947万余円となっていた。
イ こ線橋の橋桁の製作及び運搬を鉄道事業者に委託していたもの
1県1政令市1市(注5)
は、道路を高架とする立体交差化に係る委託工事を3件(委託工事費計6億5682万余円(国庫補助金等計3億4086万余円))実施しており、これらの工事において、橋桁の製作及び運搬を計1億2535万余円(国庫補助金等相当額計5920万余円)で鉄道事業者に委託していた。そして、橋桁の架設工事については、上記の委託工事とは分離して、別途当該鉄道事業者に委託していた。
しかし、こ線橋の橋桁の製作及び運搬については、通常、線路に近接していない場所で実施するものであるため、鉄道の運転保安上の支障を生じるおそれがないことから、鉄道事業者に委託することなく、道路管理者等において自ら発注して通常の公共工事として実施することにより、委託工事に係る管理費の節減を図るとともに、契約の競争性等を確保することが可能であった。
1県1政令市(注6)
は、踏切道の統廃合を行わない場合の踏切道の拡幅に係る委託工事を6件(委託工事費計6億0068万余円(国庫補助金等計3億0518万余円))実施していた。そして、道路管理者等は、踏切道の拡幅部等の舗装修繕費を負担することとされているものの、補助事業等の対象となる舗装修繕費の範囲について明確にされていなかったことから、鉄道事業者が要求した舗装修繕費計1742万余円(国庫補助金等相当額計937万余円)について、内容を確認しないまま委託工事費に含めてその費用を負担し、これを補助事業等の対象事業費としていた。
しかし、その算定根拠について道路管理者等を通じて鉄道事業者に確認したところ、上記の舗装修繕費は、上記の委託工事において実際に発生した工事費ではなく、工事完成後、踏切道の耐用年数の期間中にわたって将来発生するとされる当該拡幅部の舗装修繕に要する費用となっていた。
(是正改善を必要とする事態)
補助事業等を実施する道路管理者等が、委託工事における管理費について、その内訳等を確認しないまま精算を行っていたり、こ線橋の橋桁の製作及び運搬について、自ら発注して実施することが可能であるのに鉄道事業者に委託していたり、踏切道の統廃合を行わない場合の踏切道の拡幅に係る委託工事の舗装修繕費について、内容を確認しないまま鉄道事業者が要求した額を委託工事費に含めて補助事業等の対象事業費としていたりしている事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは次のことなどによると認められる。
ア 立体交差化に係る委託工事について
(ア) 管理費については、貴省において、その内訳等を確認するための管理費の根拠資料を鉄道事業者から道路管理者等に提出させることとしていなかったこと、また、道路管理者等において、鉄道事業者が要求する管理費の内訳等を確認することについての認識が十分でなかったこと
(イ) こ線橋の橋桁の製作及び運搬については、道路管理者等において、自ら発注して実施することにより、管理費の節減を図り、契約の競争性等を確保することなどについての認識が十分でなかったこと
イ 踏切道の統廃合を行わない場合の踏切道の拡幅に係る費用負担について
貴省において、補助事業等の対象となる舗装修繕費の範囲について明確にしていなかったこと、また、道路管理者等において、補助事業等の対象事業費とする舗装修繕費の内容を確認することについての認識が十分でなかったこと
貴省においては、道路交通の円滑化や安全確保の観点から、今後も、補助事業等により、道路と鉄道とが交差する箇所等での工事を鉄道事業者に委託して多数実施することが見込まれる。
ついては、貴省において、委託工事における管理費の精算等を適切に行うよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 立体交差化に係る委託工事について
(ア) 管理費については、鉄道事業者に対し、管理費の根拠資料を道路管理者等に提出するよう指導するとともに、道路管理者等において、鉄道事業者に管理費の根拠資料の提出を求め、これに基づき管理費の内訳等を確認した上で精算を適切に行うこととするよう、地方整備局等を通じて都道府県等に助言すること
(イ) こ線橋の橋桁の製作及び運搬を架設と分離して実施する場合については、道路管理者等において通常の公共工事として自ら発注して実施することとし、やむを得ず鉄道事業者に委託する場合は、その理由を明確にするよう、地方整備局等を通じて都道府県等に助言すること
イ 踏切道の統廃合を行わない場合の踏切道の拡幅については、補助事業等の対象となる舗装修繕費の範囲について明確にするとともに、補助事業等の対象事業費とする舗装修繕費の内容を確認するよう、地方整備局等を通じて都道府県等に助言すること
(注4) | 2県1政令市2市 静岡、福岡両県、浜松市、那須塩原、駒ヶ根両市
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(注5) | 1県1政令市1市 香川県、京都市、橋本市
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(注6) | 1県1政令市 香川県、福岡市
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