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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

自動車損害賠償責任保険に係る無保険車対策における監視活動及び街頭取締りを通達に沿って適切に行うよう是正改善の処置を求め、並びに各担当部門間で車検切れ車についての情報を共有したり、車検対象車も無保険車対策の対象としたりすることなどにより同対策が効果的なものとなるよう改善の処置を要求し及び意見を表示したもの


(4) 自動車損害賠償責任保険に係る無保険車対策における監視活動及び街頭取締りを通達に沿って適切に行うよう是正改善の処置を求め、並びに各担当部門間で車検切れ車についての情報を共有したり、車検対象車も無保険車対策の対象としたりすることなどにより同対策が効果的なものとなるよう改善の処置を要求し及び意見を表示したもの

会計名及び科目 自動車安全特別会計 (保障勘定) (項)保障費
    (自動車検査登録勘定)  
      (項)業務取扱費
部局等 国土交通本省、10地方運輸局等
無保険車対策の概要 責任保険への加入の徹底を図り、無保険車の運行を防止するために、監視活動、街頭取締りなどの業務を実施するもの
無保険車事故に係る保障金の支払額 31億3926万円(背景金額) (平成21、22両年度)  
無保険車対策に係る費用の合計額 1億7326万円(背景金額) (平成21、22両年度)  

【是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求し及び意見を表示したものの全文】

  自動車損害賠償責任保険に係る無保険車対策について

(平成23年10月28日付け 国土交通大臣宛て)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求し及び意見を表示する。

1 事業の概要

(1) 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償保障事業の概要

 国は、自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に基づき、自動車の運行によって生命又は身体を害された被害者を救済するために、道路を運行する自動車について、損害保険会社又は協同組合(以下、これらを「保険会社」という。)との自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済(以下、これらを「責任保険」という。)の契約を義務付けている。
 しかし、責任保険の契約が締結されていない自動車(以下「無保険車」という。)による事故等が毎年多数発生しており、これらの場合には、被害者は責任保険による救済を受けることができない。
 貴省は、無保険車による事故等の被害者を救済するために、自動車損害賠償保障事業(以下「保障事業」という。)を実施しており、被害者の請求に基づき、保障金を平成21年度33億3368万余円(うち無保険車に係るもの17億4809万余円)、22年度28億0409万余円(同13億9116万余円)支払っている。そして、これらの保障金を支払った場合、貴省は、被害者の有する損害賠償請求権を代位取得し、被害者に支払った額を限度として加害者等に求償して回収を図っている。しかし、無保険車を運行する者は資力が十分でないことが多いことなどから回収が進んでおらず(無保険車等に係る回収額は、21年度4億9241万余円、22年度4億8933万余円)、未回収残高は毎年増加しており、22年度末では457億7128万余円となっている。

(2) 自動車の種別、検査、届出等の概要

 自動車のうち、普通自動車、大型特殊自動車及び小型自動車(以下、これらを「車検対象車」という。)を運行の用に供する場合には、当該自動車の構造及び装置について、保安等の技術基準に適合しているかの検査(以下「車検」という。)を受け、運輸支局等から自動車検査証(以下「車検証」という。)の交付を受けることとなっている。この車検証の有効期間等に関する情報は、貴省が管理する自動車登録検査業務電子情報処理システム(以下「MOTAS」という。)により記録される。
 また、車検を受ける際には、新たに交付を受けようとする車検証の有効期間と全部重複する期間の責任保険に加入して、その証明書(以下「保険証」という。)を運輸支局等に提示しなければならないこととなっている。
 一方、二輪の軽自動車(排気量が125ccを超え250cc以下)及び原動機付自転車(排気量が125cc以下)については、車検の対象とはされていないが、その運行の際には、二輪の軽自動車については運輸支局等に、原動機付自転車については市区町村に、使用者の氏名等をそれぞれ届け出ることとされている。そして、当該届出の際に二輪の軽自動車については保険証の提示が義務付けられているが、原動機付自転車については義務付けられていない(以下、二輪の軽自動車及び原動機付自転車を合わせて「小型バイク」という。)。
 なお、軽自動車(二輪以外)も、車検対象車と同様に、保険証を提示した上で保安等の技術基準に適合しているかの検査を受けることとされているが、この検査に関する事務(以下「軽自動車の検査事務」という。)は軽自動車検査協会が行うこととされている。
 上記の自動車の種別等についてまとめると、表1 のとおりである。

表1
 自動車の種別等

自動車の種別 管轄機関 備考
普通自動車 運輸支局等 車検対象車 責任保険の対象
大型特殊自動車
小型自動車
軽自動車(二輪以外) 軽自動車検査協会
小型特殊自動車 市区町村
軽自動車(二輪)(125ccを超え250cc以下) 運輸支局等 小型バイク
原動機付自転車(125cc以下) 市区町村

(3) 無保険車対策等の概要

 貴省は、責任保険への加入の徹底を図り、無保険車の運行を防止するための対策(以下「無保険車対策」という。)として、「今後の無保険・無共済車対策の実施について」(平成22年国自保第1045号自動車交通局保障課長通達。以下「通達」という。)等により、次のような監視活動及び街頭取締りを行うこととしている。また、小型バイクの責任保険への加入状況に係る管理業務を、請負契約により業者に請け負わせて実施するなどしている(以下、この業務を「管理業務」という。)(図参照) 。これら無保険車対策のうち、監視活動及び管理業務は小型バイクを対象として実施している。
 そして、これらの無保険車対策とは別に、運輸支局等において自動車の整備及び車検等に関する業務を行う整備担当部門の職員が、警察当局等と協力して、原動機付自転車以外の自動車を街頭で停車させて、当該自動車が保安等の技術基準に適合しているか及び車検証は有効期間内かの確認等を行う検査(以下「街頭検査」という。)を実施している。なお、街頭検査及び街頭取締りは、警察当局等と協力して行うことが必要であるため、同時に行われることが多くなっている。

図 無保険車対策等の概要

図無保険車対策等の概要

ア 監視活動

 監視活動は、地方運輸局等から委嘱された指導員等が、駅、官公署、事業所等の駐車場等を巡回、監視して、小型バイクのナンバープレートに貼付されている保険期間満了年月を示す保険標章により責任保険が満了年月を経過したものとなっていないかを確認し、経過していて無保険車の疑いのあるものを発見した場合には、責任保険への加入が確認できなかった旨の通知書を車体に結び付けるなどして交付し、その後の責任保険の加入状況を報告するよう求めるものである。そして、指導員等は、通知書を交付した小型バイクのナンバープレートの番号、保険満了年月等を記載した監視活動実績報告書を作成し、これを地方運輸局等が取りまとめて、貴省本省に毎月報告している。
 通達等によると、監視活動は同一箇所において重複して実施することのないよう注意すること、定期的に行うことなどとされている。

イ 管理業務

 管理業務は、毎月保険会社から小型バイクの責任保険への加入状況に関するデータ(以下「契約データ」という。)の提供を受け、これを活用して責任保険期間満了月から7か月後に継続契約が確認できない者を特定して、これらの者に対する警告ハガキを作成するもので、貴省本省がこれを送付している。さらに、監視活動により交付された通知書の情報を取りまとめた監視活動実績報告書に記載された無保険車の疑いのある小型バイクに関する情報と、契約データを蓄積して請負業者が管理しているデータベース(以下「保険加入マスター」という。)等とを照合させて、責任保険の契約が確認できず、かつ住所が特定できた者に対して、責任保険への加入を促す警告書を送付している(図参照)

ウ 街頭取締り

 街頭取締りは、運輸支局等の責任保険担当部門の職員が、警察当局等と協力して、街頭で自動車を停車させて保険証の提示を求め、無保険車等である場合には、警告書を交付して、直ちに責任保険への加入手続等をとるよう指導するものであり、前記のとおり、街頭検査と同時に行うことが多くなっている。なお、通達等によると、街頭取締りは各運輸支局等ごとに1月につき1回程度実施することなどとされている。

 上記のとおり、無保険車対策のうち、監視活動及び管理業務は小型バイクを対象として実施しているが、その理由について貴省は、車検対象車については車検の際に責任保険への加入が確認されることになっているためであるとしている。また、街頭取締りについては、小型バイクを含む自動車を対象として実施している。
 前記の監視活動及び街頭取締りに要した指導員等の人件費等の費用の合計額は、21年度5331万余円、22年度5727万余円となっている。また、管理業務に要した請負金額、郵送料金等の費用は、21年度3147万余円、22年度3120万余円となっている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 保障事業は、責任保険の保険料の一部を財源としているが、無保険車による事故に係る保障金の支払額は毎年多額に上り、また、加害者等からの回収が進んでいないため、未回収残高は毎年増加する状況となっている。
 そこで、本院は、合規性、効率性、有効性等の観点から、無保険車対策が適切かつ効果的に実施されているかなどに着眼して、貴省本省及び10地方運輸局等(注1) のうち貴省本省及び6地方運輸局等において会計実地検査を行うとともに、残る4地方運輸局については、貴省本省を通じて関係書類の提出を受けるなどして検査した。

 10地方運輸局等  北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、中国、四国、九州各運輸局、沖縄総合事務局

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 監視活動の実施状況について

 監視活動の実施状況をみると、10地方運輸局等及び52運輸支局等のうち、21年度8地方運輸局及び1運輸支局(注2) 、22年度6地方運輸局(注3) においては、監視活動を実施していなかった。
 また、監視活動を実施していた運輸支局等のうち、実施箇所の具体的な記録を残していたのは一部のみとなっていたが、これによると、特定の駅やショッピングセンター等で繰り返し実施していて、広範囲かつ効率的に行っていないものが見受けられた。そして、通知書の交付状況をみると、同一車両に重複して交付する結果となっていたものが21年度1,224台(延べ2,985台)、22年度1,651台(延べ4,320台)見受けられ、多いものでは、同一車両に対して1年間に12回交付しているものが見受けられた。

(注2)
 8地方運輸局及び1運輸支局  北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、四国、九州各運輸局及び千葉運輸支局
(注3)
 6地方運輸局  北海道、東北、北陸信越、中部、近畿、九州各運輸局

(2) 管理業務の実施状況について

 管理業務において送付する警告書の基礎となる上記の監視活動により交付された通知書の件数は、21年度(7月から12月までに交付された分。)10,946件、22年度(22年1月から12月までに交付された分。)18,093件となっていた。
 そして、これらを保険加入マスター等と照合した結果、警告書作成時に既に責任保険の契約がなされていたものが21年度3,596件、22年度5,862件となっていたほか、保険会社が契約データを作成する際にナンバープレートの番号の入力方法が統一されていないなどのため、データがエラーとなって照合ができず、責任保険に加入していた契約者を特定できなかったものが21年度6,975件、22年度11,578件となっていた。このため、保険加入マスター等との照合により対象者を特定して警告書を発送することができたのは、21年度375件(通知書交付数に対する率約3.4%)、22年度653件(同約3.6%)にとどまっていた。

(3) 街頭取締りの実施状況について

 責任保険担当部門が行う街頭取締りの実施状況をみると、沖縄総合事務局及び52運輸支局等のうち10運輸支局(注4) では、21、22両年度とも街頭取締りを実施していなかった。また、街頭取締りを行っている運輸支局等の大部分では、警察当局等と協力してこれを実施していたものの、無保険車を発見しても、その運行者に警告書を交付して直ちに責任保険への加入手続等をとるよう指導するにとどまっており、街頭取締りをより効果的なものとするよう、協力して取締りを実施していた警察当局に当該自動車が無保険車であったことを伝達することはしていなかった。
 また、整備担当部門が行う街頭検査により、車検証の有効期間満了後も車検を受けていない車検対象車(以下「車検切れ車」という。)及び有効な軽自動車の検査事務を受けていない軽自動車(二輪以外)が21年度に37運輸支局等で160台、22年度に39運輸支局等で137台発見されていたが、同部門は、車検切れ車は無保険車である可能性が高いのに、この情報を責任保険担当部門に伝達していなかった。

 10運輸支局  宮城、秋田、山形、福島、茨城、千葉、埼玉、新潟、岐阜、徳島各運輸支局

(4) 無保険車対策の対象とする自動車について

 貴省は、車検対象車は車検の際に責任保険への加入が確認されるとして、前記のとおり、監視活動及び管理業務については、小型バイクのみを対象としている。
 しかし、無保険車による事故に係る保障金の支払状況について検査したところ、表2 のとおり、車検対象車による事故に係るものが小型バイク等による事故に係るものより多くなっていた。

表2
 車検対象車、小型バイク等の別による保障金の支払状況

支払年度 自動車の種別 人数
(人)
支払額
(円)
平成
21
車検対象車 309 1,035,289,729
小型バイク等 101 424,662,807
410 1,459,952,536
22 車検対象車 261 881,896,478
小型バイク等 103 283,256,108
364 1,165,152,586

 これは、車検切れ車で責任保険の契約を締結しないまま運行しているものがあることなどが原因と考えられる。
 したがって、無保険車対策の対象とする自動車については、小型バイクだけでなく車検対象車もこれに含めることとするよう検討する必要があると認められる。そして、その際には、MOTASにより車検証の有効期間に係る情報を活用して車検切れ車を抽出することを検討し、無保険車対策を効率的に実施する必要がある。なお、貴省本省が、MOTASを用いて調べたところ、22年度末で、車検対象車49,610,327台のうち3,195,557台(6.4%)が車検切れ車となっていた。

 (是正改善及び改善を必要とする事態)

 前記のように、貴省において実施している無保険車対策について、監視活動及び街頭取締りが通達等に沿って行われていない事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。また、監視活動によるデータが管理業務に有効に利用されていなかったり、街頭取締りで無保険車を発見した際に警察当局にその旨を伝達していなかったり、運輸支局等内において各担当部門間で無保険車の可能性が高い車検切れ車についての情報を共有していなかったり、車検対象車を無保険車対策の対象としていなかったりしていて、無保険車対策が効果的に行われていない事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において次のようなことなどによると認められる。
ア 監視活動及び街頭取締りを通達等の趣旨に沿って適切に実施することについての認識が十分でなかったこと
イ 管理業務において、保険会社が保有する契約データの入力方法が統一されておらず、データが十分活用できない状況となっていたのに、有効な活用に対する取組が十分でなかったこと
ウ 街頭取締りにおいて、無保険車を発見した際には協力して実施している警察当局にその旨を伝達すること及び車検切れ車は無保険車である可能性が高いことから整備担当部門が発見した車検切れ車についての情報を責任保険担当部門で活用することについての重要性に対する認識が十分でなかったこと
エ 車検対象車も無保険車対策の対象とすることについての検討が十分でなかったこと

3 本院が求める是正改善の処置並びに要求する改善の処置及び表示する意見

 貴省では、無保険車対策の実施により無保険車の運行の防止を図っているが、無保険車による事故は多数発生しており、これに伴い毎年度多額の保障金が支払われ、その回収は進んでいない状況となっている。
 ついては、貴省において、無保険車対策を通達に沿って適切に行うとともに、同対策が効果的なものとなるよう、次のとおり是正改善の処置を求め、並びに改善の処置を要求し及び意見を表示する。
ア 監視活動及び街頭取締りについては、通達に沿って適切に実施することについて地方運輸局等に対して周知徹底すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)
イ 管理業務については、契約データをより有効に活用できるような取組を行うこと(同法第36条による意見を表示するもの)
ウ 街頭取締りにおいて無保険車を発見した際には協力して実施している警察当局にその旨を伝達すること及び整備担当部門が街頭検査で発見した車検切れ車についての情報を責任保険担当部門で活用することについて地方運輸局等に対して周知徹底すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)
エ 無保険車対策の対象とする自動車については、小型バイクに限定せず車検対象車も対象とし、その際にはMOTASの情報を活用することなどについての検討を行うこと(同法第36条による意見を表示するもの)