所管、会計名及び科目 | 建設省所管 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅対策諸費 | |
部局等 | 国土交通本省(平成13年1月5日以前は建設本省) | |
補助の根拠 | 予算補助 | |
補助事業者(事業主体) | 兵庫県 | |
間接補助事業者(施行者) | 財団法人兵庫県住宅建築総合センター | |
基金の名称 | 住宅復興助成基金 | |
基金事業の概要 | 阪神・淡路大震災により被災した住宅の円滑な再建を促進するための利子補給を行う事業 | |
上記の基金に対する国庫補助金交付額 | 237億4000万円 | (平成6年度) |
上記基金の残高 | 230億8102万余円 | (平成22年度末) |
上記のうち使用する見込みのない基金の額(試算値) | 230億6090万円 |
(平成23年10月7日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災により被災した住宅について、その再建を促進するため、被災住宅再建対策事業制度要綱(平成7年建設省住民発第11号)等(以下「制度要綱等」という。)を定め、再建住宅の建設又は購入を行う者(以下「再建住宅建設者」という。)に対する利子補給を行う者(以下「施行者」という。)に対し利子補給金の一部を補助している兵庫県に被災住宅再建対策事業費補助金237億4000万円を交付している。
そして、兵庫県は、制度要綱等に基づき、財団法人兵庫県住宅建築総合センター(以下「センター」という。)を施行者とし、7年3月に、貴省から交付された額と同額をセンターに交付している。また、センターは、同県から交付された補助金により住宅復興助成基金(以下「住宅基金」という。)を造成している。
センターが行う再建住宅建設者に対する利子補給業務(以下「利子補給業務」という。)は、再建住宅建設者が、独立行政法人住宅金融支援機構(19年3月31日以前は住宅金融公庫。以下「機構」という。)等の阪神・淡路大震災に関する災害復興住宅融資等の貸付けを受ける場合に、機構等の災害復興住宅融資等貸付利率のうち2.5%を超える部分(最大で0.5%)の利息相当額について5年間利子補給を行うものである。
そして、機構における災害復興住宅融資の貸付条件は、18年4月申込み分以降は、阪神・淡路大震災により被害が生じた住宅の所有者又は居住者等で、地方公共団体からり災証明書の交付を受け、そのうち半壊以上と証明された者で、かつ、住宅地区改良法(昭和35年法律第84号)又は土地区画整理法(昭和29年法律第119号)により建築制限が行われている地域において住宅を建設又は購入する者が、当該地域の建築制限解除後6か月以内に災害復興住宅融資の申込みをした場合となっている。
また、利子補給業務が完了した時点でセンターに利子補給業務に係る補助金等の残余額がある場合、センターはその額を兵庫県に返納し、同県はその額を速やかに国庫に返納することとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、阪神・淡路大震災から16年が経過し、被災地における住宅再建が進展していることなどを踏まえ、有効性等の観点から、利子補給業務の進捗状況や住宅基金の規模等が適切、妥当なものとなっているかなどに着眼して、貴省、兵庫県及びセンターにおいて、実績報告書、財務諸表等の関係書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
センターは、7年度から利子補給業務を開始しているが、次表
のとおり、17年度以降利子補給業務の実績はない。
表 | 利子補給業務実績等の推移 | (単位:千円) |
年度 | 利子補給業務実績 | 年度末基金残高 |
平成 6 |
— | 23,740,000 |
7 | 20,301 | 24,042,000 |
8 | 320,867 | 23,985,000 |
9 | 679,989 | 23,666,000 |
10 | 742,332 | 23,239,000 |
11 | 666,979 | 22,620,000 |
12 | 596,889 | 22,082,311 |
13 | 352,597 | 21,745,892 |
14 | 91,991 | 21,800,579 |
15 | 4,895 | 21,859,939 |
16 | 38 | 21,991,202 |
17 | — | 22,145,205 |
18 | — | 22,319,289 |
19 | — | 22,563,555 |
20 | — | 22,759,421 |
21 | — | 22,950,205 |
22 | — | 23,081,021 |
計 | 3,476,882 | / |
これは、次図 のとおり、7年度当初3%に設定されていた災害復興住宅融資の貸付利率が9年9月以降2.5%を下回っていることなどから、同月以降の貸付けに係る利子補給業務を実施していないことによるものである。この結果、22年度末における住宅基金残高は230億8102万余円と多額なものとなっている。
また、災害復興住宅融資の対象となる住宅地区改良法等に基づいて実施している住宅地区改良事業等は、26年3月に完了する予定の住宅地区改良事業2地区を残すのみとなっている。上記の2地区において必要となる基金の需要額を正確に把握することは困難であるが、今後、同2地区の住宅建設可能面積全てについて、融資限度額の貸付けが貸付利率3%で行われることなどとして、5年間の利子補給額を試算すると、約2010万円となり、実際の利子補給額はこの額を上回ることはないと認められた。
以上のことから、住宅基金残高230億8102万余円(22年度末現在)は、本院が試算した基金の需要額約2010万円に対して約230億6090万円過大となっていると認められる。
(改善を必要とする事態)
住宅基金について、近年、利子補給業務の実績が全くなく、今後における基金の需要額をみても、利子補給業務を実施する場合に必要となる資金は、上記のとおり約2010万円である。したがって、基金の需要額に対し過大となっている約230億6090万円が、基金規模の見直しを行わないまま利子補給業務の完了まで住宅基金に滞留する見込みとなっている事態は適切でなく、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、災害復興住宅融資の貸付利率が当初の想定より低下し、その後、低金利のまま推移していることにもよるが、貴省において、国庫補助金の交付後、兵庫県における利子補給業務の状況を十分に把握していなかったこと、利子補給業務に使用する見込みのない資金について、利子補給業務完了前に、国庫に返納できるよう制度要綱等を見直していないことなどによると認められる。
兵庫県において実施されている利子補給業務については、阪神・淡路大震災から16年が経過し、その事業環境が大きく変化している。
貴省は、本院の指摘に基づき、23年8月、利子補給業務に使用する見込みのない資金について、利子補給業務完了前に国庫に返納できるようにするなどの制度要綱等の改正をしたところである。
ついては、貴省において、改正した制度要綱等に基づき、早期に国庫に返納させる手続を進めるなどして、基金規模の見直しを図るよう改善の処置を要求する。