所管、会計名及び科目 | 文部科学省、経済産業省及び環境省所管 | |||
エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定) | ||||
(項)エネルギー需給構造高度化対策費 | ||||
平成18年度以前は、 | ||||
財務省、経済産業省及び環境省所管 | ||||
石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計 | ||||
(石油及びエネルギー需給構造高度化勘定) | ||||
(項)エネルギー需給構造高度化対策費 | ||||
部局等 | 環境本省 | |||
補助の根拠 | 予算補助 | |||
補助事業者 (事業主体) |
114事業主体 | |||
補助事業の概要 | エネルギー起源二酸化炭素の排出の抑制のための事業 | |||
二酸化炭素排出抑制対策に係る事業費 | 235億4251万余円
(平成17年度〜22年度)
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上記に対する国庫補助金 | 78億8922万円
(背景金額)
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目標量を設定することとされていない事業に係る事業費 | 16億0865万余円
(平成18年度〜22年度)
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上記に対する国庫補助金 | 7億9557万円
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達成率が低い事業に係る事業費 | 43億1564万余円
(平成17年度〜21年度)
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上記に対する国庫補助金 | 15億7328万円
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標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
国は、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)に基づき、温室効果ガ ス (注)
の排出の抑制等のための施策を推進するとともに、温室効果ガスの排出の抑制等に関係のある施策について、当該施策の目的の達成との調和を図りつつ温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意するものとされている。
そして、国は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるとともに、事業者、国民又はこれらの者の組織する民間の団体が温室効果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促進を図るため、技術的な助言その他の措置を講ずるように努めるものとされている。
貴省は、エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素(以下「エネルギー起源CO2
」という。)について、その排出抑制及び排出削減(以下「排出抑制等」という。)に資するために実施される様々な事業に対し、補助金を交付している。そして、これらの補助事業の区分(以下「補助メニュー」といい、補助メニューに基づき補助金の交付を受けて実施する個々の事業を「補助事業」という。)については、補助メニューを所掌する担当部局ごとに補助金交付要綱、事業実施要領等(以下、これらを合わせて「補助要綱等」という。)が定められている。
国は、1990年の温室効果ガスの排出量12億6100万tを2020年までに25%削減するとしていることから、温室効果ガス削減に係る中長期目標の達成など環境保全に関する課題を解決するなどのため、様々な施策を迅速に実施し、低炭素社会づくり等持続可能な社会づくりを強力に推し進めることとしている。そして、貴省は、エネルギー起源CO2
の排出抑制等のために様々な補助メニューを設けて補助事業者に対して多額の補助金を交付している。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、補助事業の効果の把握が適切に行われているか、補助事業の効果が向上するような適切な方策が執られているかなどに着眼して検査した。
本院は、114補助事業者において、17年度から21年度までの間に実施された補助メニュー18事業に係る補助事業126件(事業費計235億4251万余円、補助対象事業費計179億1896万余円、国庫補助金計78億8922万余円)を対象として、実績報告書、事業報告書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は、補助メニュー18事業について、いずれの補助要綱等においても、エネルギー起源CO2
の排出抑制等を目的として補助金を交付している。そして、この目的に照らして補助事業が効果を上げているかを適切に把握するためには、それぞれの補助メニューの内容を考慮した上でエネルギー起源CO2
の排出抑制等の適切な目標量(以下、補助事業者が補助金の交付申請時に掲げた排出抑制等するエネルギー起源CO2
量を「目標量」という。)を設定し、補助事業の実施により排出が抑制されたエネルギー起源CO2
量(以下「実績量」という。)と比較することなどが求められる。
しかし、補助メニュー18事業のうち、地球温暖化防止活動推進センター等基盤形成事業等の4事業(これらに係る補助事業23件、事業費計16億0865万余円、補助対象事業費計15億7529万余円、国庫補助金計7億9557万余円)については、補助要綱等において目標量を設定することとされていなかった。
このため、一部の補助事業において、補助事業者が独自の基準により算定した目標量を設定していたものの明確な根拠に基づくものとはなっておらず、いずれの事業も事業効果を適切に把握できるものとはなっていなかった。
補助メニュー18事業のうち、補助要綱等において具体的に目標量を設定することとされている14事業で実施した補助事業103件について、エネルギー起源CO2 の排出抑制等に資するという目的に照らして、それぞれの補助事業におけるエネルギー起源CO2 の排出抑制等に係る目標量の達成状況を確認したところ、表1のとおり、実績量が目標量に達していた補助事業は57件ある一方で、実績量が目標量に達していない補助事業が42件あり、補助事業ごとに相当の開差が生じていた。なお、残りの4件については、補助要綱等により目標量を設定することとされているにもかかわらず、目標量を設定しておらず実績量も測定していなかったものが1件、実績量を測定することができない状況にあったものが2件、誤って目標量を30倍に算定したため、実績量と相当の差を生じていたものが1件となっていた。
補助メニュー名 | 補助事業数 | 実績量/目標量(%) | 達成状況が不明なものなど | ||
100%以上 | 100%未満50%以上 | 50%未満 | |||
廃棄物処理施設における温暖化対策事業 | 5 | 0 | 2 | 2 | 1 |
低炭素地域づくり面的対策推進事業 | 4 | 2 | 1 | 0 | 1 |
地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター(起業支援)事業 | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 |
地域協議会民生用機器導入促進事業 | 7 | 3 | 2 | 2 | 0 |
温室効果ガス自主削減目標設定に係る設備補助事業 | 23 | 17 | 4 | 2 | 0 |
地方公共団体対策技術率先導入補助事業 | 16 | 9 | 6 | 1 | 0 |
省エネ自然冷媒冷凍等装置導入促進事業 | 3 | 1 | 2 | 0 | 0 |
街区まるごとCO2 20%削減事業 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 |
太陽光発電等再生可能エネルギー活用推進事業のうちソーラー環境価値買取事業 | 11 | 7 | 3 | 1 | 0 |
エコ燃料利用促進補助事業 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 |
クールシティ中枢街区パイロット事業 | 15 | 8 | 2 | 4 | 1 |
温泉施設における温暖化対策事業 | 2 | 0 | 2 | 0 | 0 |
超低硫黄軽油導入普及に係る設備省エネ化事業 | 6 | 5 | 1 | 0 | 0 |
メガワットソーラー共同利用モデル事業 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 |
補助メニュー計14事業 | 103 | 57 | 27 | 15 | 4 |
そして、実績量が目標量に達しなかった補助事業42件から目標が達成されない場合の具体的な方策として、環境省自主参加型国内排出量取引制度により未達成分の排出枠を他の事業者等から購入しなければならないことなどとなっている温室効果ガス自主削減目標設定に係る設備補助事業の6件を除いた36件のうち13件(事業費計43億1564万余円、補助対象事業費計34億2884万余円、国庫補助金計15億7328万余円)については、目標量に対する実績量の割合(以下「達成率」という。)が50%未満と低くなっていた。
達成率が低いものについて事例を示すと次のとおりである。
事業主体Aは、平成21年度に、エコ燃料利用促進補助事業として、一般家庭、飲食店、ホテル等で発生する廃食油を回収してバイオディーゼル燃料に精製し、車両等の燃料として販売する事業を事業費118,819,700円(国庫補助金59,409,000円)で実施している。そして、Aは年間240キロリットルの燃料を精製して販売することとして、翌年度のエネルギー起源CO2
の排出抑制等の目標量を562.776tとしていた。
しかし、Aは、原料として予定していた廃食油が常温で固化するものであったため、整備した設備では原料として使用できなかったり、環境意識の高い企業等において廃食油を精製したバイオディーゼル燃料の引き合いが増加したことなどにより、廃食油の入手が困難になったりしたため、燃料の精製が当初の計画どおりに行えなかった。
このため、エネルギー起源CO2
の排出抑制等の実績量は25.398tにすぎず、達成率は4.5%にとどまっていた。
前記のとおり、実績量が目標量に達していない補助事業が数多く見受けられるが、前記の14事業で実施した補助事業103件のうち、目標量が達成できない場合において執るべき方策を設けているのは、「温室効果ガス自主削減目標設定に係る設備補助事業」の1事業で実施した補助事業23件のみとなっている。この補助メニューは、目標量を達成できなかった場合には、未達成分に目標量1t当たりの補助金額を乗じた補助金相当額を国庫に返納するか、又は環境省自主参加型国内排出量取引制度により未達成分の排出枠を他の事業者等から購入しなければならないこととなっており、補助事業者に対し目標量の達成を促していると認められる。
そして、当該補助メニューで実施された23件のうち、実績量が目標量に達していたのは17件(73%)となっていた。一方、このような方策を設けていない補助メニュー13事業で実施された補助事業80件のうち、実績量が目標量に達していたのは40件(50%)となっていた。
環境省自主参加型国内排出量取引制度による排出枠の取引制度を他の補助メニューにそのまま活用することは困難であると思料されるが、このように、実績量が目標量に達しなかった場合に執るべき方策を設けている補助メニューの方が、実績量が目標量に達した割合が高くなっていることから、実績量が目標量に達しなかった場合の具体的な方策を設けることは、目標量を達成するために一定の効果があると認められる。
一方、貴省では、補助事業は、目標値を盛り込んだ二酸化炭素削減計画を策定し、それに従った施設整備を行うことなどであって、補助事業者にはエネルギー起源CO2
の削減の義務はないとしている。
しかし、補助金は国民の貴重な税金等を原資とするものであることから、補助要綱等において、目標の達成を促す具体的な方策を設けていないことは適切とは認められない。
貴省は、補助事業の実施に伴う実績量を補助事業者から報告させているが、エネルギー起源CO2 を1t排出抑制等するための単価について十分な検討が行われていない。そこで、本院は、目標量を設定している補助メニュー14事業で実施した103件の補助事業の効果を計る指標として、補助事業が完了した翌年度の実績量を用いてエネルギー起源CO2 を1t排出抑制等するための補助金の交付額(以下「実績抑制単価」という。)及び補助金交付申請時における目標量を用いてエネルギー起源CO2 を1t排出抑制等するための交付決定額(以下「目標抑制単価」という。)を計算すると、表2のとおりとなっており、補助メニュー間においても、同一の補助メニューにおける補助事業間においても相当な開差が生じていた。
補助メニュー名 | 補助事業数 (件) |
実績抑制単価(補助金の交付額/実績量) | 目標抑制単価(交付決定額/目標量) | ||
最高 | 最低 | 平均a | 平均b | ||
廃棄物処理施設における温暖化対策事業 | 5 | 876 | 11 | 280 | 84 |
低炭素地域づくり面的対策推進事業 | 4 | 15,080 | 308 | 5,532 | 5,964 |
地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター(起業支援)事業 | 4 | 6,240 | 73 | 2,521 | 627 |
地域協議会民生用機器導入促進事業 | 7 | 6,436 | 55 | 1,120 | 1,075 |
温室効果ガス自主削減目標設定に係る設備補助事業 | 23 | 124 | 0.6 | 24 | 24 |
地方公共団体対策技術率先導入補助事業 | 16 | 2,476 | 27 | 318 | 230 |
省エネ自然冷媒冷凍等装置導入促進事業 | 3 | 394 | 23 | 151 | 142 |
街区まるごとCO2 20%削減事業 | 3 | 1,873 | 590 | 1,020 | 1,963 |
太陽光発電等再生可能エネルギー活用推進事業のうちソーラー環境価値買取事業 | 11 | 912 | 38 | 620 | 604 |
エコ燃料利用促進補助事業 | 2 | 2,339 | 147 | 1,243 | 69 |
クールシティ中枢街区パイロット事業 | 15 | 140,949 | 548 | 36,762 | 22,626 |
温泉施設における温暖化対策事業 | 2 | 157 | 63 | 110 | 82 |
超低硫黄軽油導入普及に係る設備省エネ化事業 | 6 | 20 | 3 | 7 | 8 |
メガワットソーラー共同利用モデル事業 | 2 | 683 | 671 | 677 | 685 |
補助メニュー計14事業 | 103 | — | — | — | — |
そして、実績抑制単価及び目標抑制単価の両者が低い補助事業は、例えば、ボイラーの燃料を重油から都市ガスに転換する(温室効果ガス自主削減目標設定に係る設備補助事業)などエネルギー起源CO2
の排出抑制等の効果が大きい設備等が対象であるのに対し、実績抑制単価及び目標抑制単価の両者が高い補助事業は、例えば、建物への屋上緑化や高反射性塗装等により使用電力量を抑える(クールシティ中枢街区パイロット事業)など広範囲に工事を行う必要があって、エネルギー起源CO2
の排出抑制等の効果が比較的小さい設備等が対象とされていることによるものと思料される。
しかし、本件補助メニューの目的が、全てエネルギー起源CO2
の排出抑制等となっているのに、補助メニューによって実績抑制単価及び目標抑制単価に1,000倍以上の開差が生じているのは、補助事業の効率的な執行の見地からみて適切とは認められない。
以上のように、貴省において、補助要綱等で目標量等を設定することとしていなかったり、補助要綱等で実績量が目標量に達しなかった場合において執るべき具体的な方策を設定していなかったり、実績抑制単価及び目標抑制単価が補助メニューによって大きな開差を生じているなど、補助事業の効率的な執行が行われておらず、補助事業の効果が向上するような方策が十分に執られていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、補助事業の効果を的確に把握することや補助事業の効果をより一層向上させることについての認識が十分でないことなどによると認められる。
貴省は、温室効果ガスを削減するためには、あらゆる部門での取組が不可欠であるとして、低炭素社会づくり等の基礎となる制度を構築するとともに、中長期の地球温暖化対策の行程表を策定しつつ、民生、エネルギー、企業等の各分野で様々な施策を実施し、低炭素社会づくり等に向けた取組を促進しているところである。
ついては、貴省において、エネルギー起源CO2
の排出抑制等に係る補助事業を効率的、効果的に実施するよう、次のような処置を講ずるよう意見を表示する。
ア 排出抑制等の目標量を設定していない補助メニューについては、それぞれの補助メニューの内容を考慮して、適切な目標量等を設定させること
イ 実績量が目標量に達しなかった場合には、その程度に応じて、目標量の達成を促す具体的な方策を設けること
ウ 目標抑制単価が高い補助メニューについては、不適切な事業を採択することとならないよう、事業採択時における審査を強化したり、実績抑制単価が高い補助メニューについては、補助メニューの在り方を見直したりするなどして、その妥当性について検討すること