会計名 | 一般会計 | ||||||||||
部局等 | 航空幕僚監部 | ||||||||||
物品の分類 | (分類)防衛用品 | (区分)消耗品 | |||||||||
検査対象とした弾薬の概要 | 航空自衛隊が保有している12.7mm重機関銃M2及び口径50M2機関銃用M55型多連装銃架に使用される訓練用の12.7mm普通弾及び12.7mmえい光弾 | ||||||||||
航空自衛隊において長期にわたり保有されたままとなっている訓練用の12.7mm普通弾及び12.7mmえい光弾の物品管理簿上の価格 |
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標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴自衛隊は、基地等の警備のために、64式小銃、9mm拳銃、12.7mm重機関銃M2(以下「M2」という。)、口径50M2機関銃用M55型多連装銃架(以下「M55」という。)等の火器(以下「警備火器」という。)を保有している。このうち、M2は、地上において三脚に装着して射撃する警備火器であり、1分間に最大で400発から600発までの弾薬を発射することができる。また、M55は、銃座にM2を4丁搭載し、地上において操作員が銃座に搭乗して射撃する警備火器である(以下、これらを合わせて「口径50機関銃」という。)。
そして、貴自衛隊は、口径50機関銃に使用する弾薬として、12.7mm普通弾、12.7mmえい光弾(以下、これらを合わせて「12.7mm訓練実包」という。)、12.7mm徹甲焼い弾及び12.7mm空包の4種類の弾薬を保有している。このうち12.7mm訓練実包については、陸上自衛隊(以下「陸自」という。)が貴自衛隊分を含めて一括して調達し、貴自衛隊が口径50機関銃の射撃訓練等で使用するために管理換により取得したもので、管理換を受けた時期は不明であるが、製造年月は最新のものでも、12.7mm普通弾は平成5年4月、12.7mmえい光弾は元年8月となっており、近年、貴自衛隊において新規の取得は行われていない。そして、12.7mm訓練実包については、補給本部が策定した「技術指令書航空自衛隊弾薬等整備基準」等に基づいて検査等が実施されており、品質上の問題はなく、使用可能な状態で保管されている。
また、陸自及び海上自衛隊(以下「海自」という。)においては、M2及びM2と同型の12.7mm重機関銃を保有しており、これらの射撃訓練に使用する12.7mm訓練実包を毎年度調達している。
貴自衛隊は、「航空自衛隊の教育訓練に関する訓令」(昭和41年航空自衛隊訓令第3号)等に基づき、隊員の練度を向上して精強な部隊等を練成することを目的として練成訓練を実施している。練成訓練は、個人の練成訓練(以下「個人訓練」という。)と部隊等の練成訓練に区分され、貴自衛隊は警備火器の射撃訓練について、個人訓練として、部隊等の一員としてそれぞれの地位に応ずる資質並びに職務遂行に必要な知識及び技能を向上させる目的で、航空幕僚長が定める実施基準(以下「実施基準」という。)に基づいて実施することとしている。
射撃訓練の実施に当たっては、「航空自衛隊の練成訓練に関する達」(平成4年航空自衛隊達第11号)等の規定により、部隊等の長が、航空幕僚長が示す年度練成訓練計画、実施基準、補給本部長等から送付される部隊等ごとの射撃訓練に使用する弾薬の割当数量(M2は1丁当たりの、M55は1基当たりの割当基準を基にして算定される。)に関する通知文書等に基づいて当該部隊等の年度練成訓練計画を作成の上、実施することとされている。
また、警備火器の射撃訓練は、原則として部隊等ごとに実施することとされ、必要に応じて他部隊等に委託して実施したり、他部隊等と合同で実施したりすることができることとされている。
前記のとおり、12.7mm訓練実包は、近年、新規の取得が行われておらず製造されてから相当期間を経過したものが保有されている状況にある。そこで、本院は、有効性等の観点から、12.7mm訓練実包が射撃訓練等に有効に活用されているか、また、保有数量が適切なものとなっているかなどに着眼して、航空幕僚監部、補給本部、武器弾薬の補給業務を担任する第4補給処、基地等の警備の目的で口径50機関銃を保有する46部隊(注) 等において、12.7mm訓練実包を使用した口径50機関銃の射撃訓練の実施状況、12.7mm訓練実包の消費実績等について、地上武器原簿、物品管理簿等の帳簿類を確認するなどして検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、各部隊における口径50機関銃の射撃訓練の実施状況についてみたところ、12.7mm空包を使用した射撃訓練については、多くの部隊で実施されていたものの、12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練については、表1のとおり、一部の部隊でしか実施されていない状況となっていた。
実施時期等
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装備品名
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実績なし | 平成2年度以前 | 3年度 〜 7年度 |
8年度 〜 12年度 |
13年度 〜 17年度 |
18年度 〜 22年度 |
計 |
M2 | 19 | 18 | 1 | 1 | 2 | 2 | 43 |
M55 | 3 | 1 | 3 | 1 | 2 | 0 | 10 |
そして、貴自衛隊は、近年、多くの部隊で12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練を実施していない理由について、各部隊において、12.7mm訓練実包の射撃に対応した耐久性及び安全性が確保された演習場等を保有しておらず、また、この条件を満たす陸自や海自の演習場等を確保できなかったためであるとしている。
貴自衛隊では、12.7mm訓練実包を使用した口径50機関銃の射撃訓練は、警備の実施に関する能力を練成するために必要なものであるとしている。しかし、各部隊が合同で陸自や海自の演習場等で当該訓練を実施するなどして、12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練をより円滑に実施することについて十分に検討していない状況となっていた。
前記のとおり、12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練の実績が低調となっていることから、12.7mm訓練実包の近年の消費実績について検査したところ、表2のとおり年間1,000発程度となっていて貴自衛隊の保有数量に対して極めて僅かな数量しか消費されていなかった。
年度
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弾薬名
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平成18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | 計 |
12.7mm普通弾 | 884 | 784 | 762 | 1,012 | 1,082 | 4,524 |
12.7mmえい光弾 | 0 | 0 | 0 | 0 | 100 | 100 |
そして、貴自衛隊における22年度末現在の12.7mm訓練実包の物品管理簿上の価格は、12.7mm普通弾3735万余円、12.7mmえい光弾615万余円、計4350万余円となっているが、現在のような射撃訓練の実施状況のまま推移すると、貴自衛隊が保有する12.7mm訓練実包は、今後50年以上経過した時点でもなお大量に保有されていることとなり、今後も極めて長期にわたり多くの12.7mm訓練実包が有効に活用されない状況が継続することとなる。
しかし、貴自衛隊は、前記のとおり12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練をより円滑に実施することや、12.7mm訓練実包の消費実績等を踏まえた適切な保有数量を検討してこれを上回る数量を保有することになる場合には陸自又は海自に管理換することなどについて十分に検討していなかった。
前記のとおり、12.7mm訓練実包の多くが長期にわたり射撃訓練に使用されることなく保有されたままとなっていて有効に活用されていない事態は適切ではなく、是正改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴自衛隊において、射撃訓練等に使用するために保有している12.7mm訓練実包を有効に活用するための検討が十分でなかったことなどによると認められる。
前記のとおり、12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練の実績が低調であることなどから、今後も極めて長期にわたり多くの12.7mm訓練実包が射撃訓練等に有効に活用されない状況が継続することが懸念される。
ついては、貴自衛隊において、12.7mm訓練実包を使用した射撃訓練をより円滑に実施することや、12.7mm訓練実包の消費実績等を踏まえた適切な保有数量を検討してこれを上回る数量を保有することになる場合には陸自又は海自に管理換することなどについて検討することにより、12.7mm訓練実包の有効活用を図るよう是正改善の処置を求める。