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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

駐留軍等労働者に対する給与の振込先を原則として一つの口座とすることにより、口座振込みに係る委託費の節減を図るよう改善の処置を要求したもの


(5) 駐留軍等労働者に対する給与の振込先を原則として一つの口座とすることにより、口座振込みに係る委託費の節減を図るよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)在日米軍等駐留関連諸費
部局等 5地方防衛局
駐留軍等労働者に対する給与の支払事務の委託の概要 各地方防衛局が所掌する駐留軍等労働者に対する給与の口座振込み等の事務を銀行へ委託するもの
駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託費
4926万余円

(平成21、22 両年度)


給与の振込先を一つの口座とすることにより節減できた委託費
1022万円

(平成21、22 両年度)


【改善の処置を要求したものの全文】

 駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託費の節減について

(平成23年9月21日付け  防衛大臣宛宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託の概要

 貴省は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(昭和35年条約第7号)第12条の規定を受けて、我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等(以下「駐留軍等」という。)に必要な労働力を提供するため、駐留軍等のために労務に服する者(平成22年度末現在で25,859名。以下「駐留軍等労働者」という。)を雇用している。
 駐留軍等労働者の給与は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(平成20年条約第1号)第1条の規定により、我が国がその全部又は一部を国費で負担することとされている。また、駐留軍等労働者の身分は国家公務員でなく、国との雇用関係については原則として労働基準法(昭和22年法律第49号)等の労働関係法令が適用される。そして、駐留軍等労働者の給与は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第7条の2第1項等の規定により、駐留軍等労働者の同意を得て当該駐留軍等労働者が指定する銀行口座等への振込み(以下「口座振込み」という。)により支払うことができることとされている。このため、駐留軍等労働者の給与等に関する事務を所掌する貴省の地方支分部局である地方防衛局等は、駐留軍等労働者の過半数が組織する労働組合との間で協定を締結し、現在では駐留軍等労働者に対する給与のほとんどを口座振込みにより支払っている。
 駐留軍等労働者に対する給与の支払事務は、各地方防衛局のうち駐留軍等の所在しない北海道、近畿中部両防衛局を除く6地方防衛局(注) が所掌しており、「駐留軍労働者等に支払うべき給料その他の給与の支払事務の処理の特例に関する法律」(昭和25年法律第5号)に基づき、当該事務の一部を銀行へ委託して取り扱わせることができることとされている。これにより、6地方防衛局は、それぞれ銀行との間で駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託契約を締結しており、口座振込みに要する経費は、委託費として雇用主である国が負担している。

 6地方防衛局  東北、北関東、南関東、中国四国、九州、沖縄各防衛局

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、駐留軍等労働者に対する給与の支払事務の銀行への委託について、委託費の算定が適切に行われているかなどに着眼して、21、22両年度における駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託契約(契約件数計16件、契約金額計49,518,060円)を対象として、6地方防衛局のうち東北防衛局を除く5地方防衛局において契約関係書類等により会計実地検査を行うとともに、東北防衛局については委託費に係る調書を徴するなどして検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、6地方防衛局は、給与の口座振込みについて振込先を一つの口座に限定せず、駐留軍等労働者の希望する一定額をもう一つの口座(以下「第2口座」という。)に振り込むことを認める取扱いとしていた。そして、委託費が定額の基本料のみとなっている九州防衛局を除く5地方防衛局は、第2口座を含めた振込件数に振込手数料を乗ずるなどして委託費を算定し、それに基づき各銀行と委託契約を締結しており、5地方防衛局の21、22両年度における第2口座への給与の振込件数及びこれに係る委託費は、次表のとおり21年度計89,630件、4,981,230円、22年度計91,056件、5,243,583円、合計180,686件、10,224,813円となっていた。

表 給与の振込件数及びこれに係る委託費(平成21、22両年度)
年度 全ての振込件数 委託費 左のうち第2口座への振込件数 第2口座への振込みに係る委託費
東北防衛局 平成
21

24,679

1,648,500

4,512

386,051
22 23,797 1,691,970 4,379 389,445
48,476 3,340,470 8,891 775,496
北関東防衛局 21 53,015 735,000 12,739 190,915
22 52,865 735,000 12,687 190,528
105,880 1,470,000 25,426 381,443
南関東防衛局 21 167,671 17,257,695 33,506 3,577,543
22 167,974 16,880,850 33,558 3,495,559
335,645 34,138,545 67,064 7,073,102
中国四国防衛局 21 27,481 1,648,845 5,406 334,780
22 27,555 1,669,950 5,389 403,876
55,036 3,318,795 10,795 738,656
沖縄防衛局 21 159,080 2,798,250 33,467 491,941
22 162,282 4,200,000 35,043 764,175
321,362 6,998,250 68,510 1,256,116
合計 21 431,926 24,088,290 89,630 4,981,230
22 434,473 25,177,770 91,056 5,243,583
866,399 49,266,060 180,686 10,224,813

 一方、駐留軍等労働者と同じく国費から給与が支給されている国家公務員の給与の口座振込みについては、人事院規則9—7(俸給等の支給)等により、例えば転居を伴う異動等により職員と別居をすることとなる家族の生活費等の引出しに必要である場合で、当該別居前の地域に、当該別居後に職員が在勤する地域に有することとなる振込口座のある金融機関の店舗等がないため、その家族には利用できない場合などを除き、原則として一つの口座への全額振込みとされている。これは、全額振込みの進捗状況や金融機関間のネットワーク化をはじめとしたサービス向上等の状況を踏まえた措置であるとされている。
 そして、駐留軍等労働者は、基本的に勤務することとなる駐留軍の基地等が指定されて採用され、転居を伴う異動がほとんどないことなどから、給与の全額を原則として一つの口座に振り込むこととしても駐留軍等労働者の利便性を著しく損なうことにはならないと認められる。

(改善を必要とする事態)

 国費から給与が支給され、かつ転居を伴う異動がほとんどない駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みについて、振込先の口座を一つの口座とせず、二つまで認める取扱いとして委託費を算定している事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託について、金融機関のサービス向上等の状況、駐留軍等労働者の勤務の実態等を踏まえ、委託費の節減に向けての検討が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

 駐留軍等労働者に対する給与の口座振込みに係る委託は、今後も継続して行われることが見込まれることから、昨今の我が国の厳しい財政状況を踏まえ、委託費についてはより一層の節減を図ることが求められる。
 ついては、貴省において、駐留軍等労働者に対する給与の振込先を原則として一つの口座とすることにより、口座振込みに係る委託費の節減を図るよう改善の処置を要求する。