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場外勝馬投票券発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置するための子会社等との契約を抜本的に見直すことにより、競争性及び透明性を確保するとともに、利益を享受することができるよう是正改善の処置を求めたもの


場外勝馬投票券発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置するための子会社等との契約を抜本的に見直すことにより、競争性及び透明性を確保するとともに、利益を享受することができるよう是正改善の処置を求めたもの

科目 一般勘定 (項)事業外収入
部局等 日本中央競馬会本部、10競馬場
自動販売機及び売店等を設置するため施設の一部を貸し付けている施設数 31場外発売所、10競馬場
貸付けの概要 自動販売機及び売店等を設置するために場外発売所及び競馬場の施設の一部等を貸し付けるもの
貸付けの相手方 JRAファシリティーズ株式会社、財団法人競馬共助会、食堂業者等
日本中央競馬会が徴収した貸付料 5億4616万余円 (平成21、22両事業年度)
上記のうちJRAファシリティーズ株式会社から徴収した貸付料 1億2814万余円  
JRAファシリティーズ株式会社が販売会社から支払を受けた管理料等 5億8427万余円 (平成21、22両事業年度)
日本中央競馬会が増収を図ることができた額 4億5713万円 (平成21、22両事業年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

  場外勝馬投票券発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置するための子会社等との契約の見直しについて

(平成23年10月21日付け 日本中央競馬会理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 自動販売機及び売店等を設置するための契約の概要

(1) 自動販売機及び売店等の設置

 貴会は、日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)等に基づき、中央競馬の開催等の業務を行っており、10競馬場(注1) において年間36回(288日以内)の競馬を開催して、競走ごとの勝馬投票券を当該10競馬場及び43場外勝馬投票券発売所(注2) (以下「場外発売所」という。)において発売している。
 そして、貴会は、競馬開催に伴う来場者の利便性を向上させるなどのため、場外発売所及び競馬場に、飲料、たばこなどの自動販売機及び飲食物、競馬新聞等を販売する売店や食堂(以下「売店等」という。)を設置することとしており、貴会が建物を賃借している場外発売所において建物の所有者が自ら設置して運営を行っている自動販売機及び売店等を除くと、平成22事業年度は31場外発売所(注3) 及び10競馬場に合計で1,062台の自動販売機及び701か所の売店等が設置されている。

(注1)
 10競馬場  札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉各競馬場
(注2)
 43場外勝馬投票券発売所  貴会の場外勝馬投票券発売所35か所及び地方競馬の施設を利用した場外勝馬投票券発売所8か所(平成22事業年度末現在)
(注3)
 31場外発売所  札幌、室蘭、釧路、津軽、新白河、銀座、新橋、汐留、新宿、後楽園、浅草、錦糸町、渋谷、立川、田無、横浜、伊勢佐木、新横浜、石和、名古屋、京都、難波、梅田、神戸、米子、広島、小郡、高松、八幡、博多、佐世保各場外発売所

(2) 自動販売機及び売店等を設置するための施設の貸付け及び運営形態

 貴会は、場外発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置させるため、場外発売所については「日本中央競馬会不動産貸付基準」(昭和50年理事長達第9号)、競馬場については「日本中央競馬会競馬場内食堂及び売店施設貸付基準」(昭和60年理事長達第29号)に基づいて場外発売所及び競馬場の施設の一部等を貸し付けている(以下、場外発売所及び競馬場の施設の一部等を貸し付けていることを単に「施設の貸付け」という。)。上記の基準によれば、施設の貸付けに係る貸付料は、自動販売機及び売店等の売上額の多寡にかかわらず、当該施設の固定資産課税台帳登録価格等に一定の率を乗じて得た額等を基準として日割計算した額に競馬の開催日数を乗じるなどして算出することとされている。そして、貴会は、表1 のとおり、貴会の子会社であるJRAファシリティーズ株式会社(注4) (以下「ファシリティーズ」という。)、貴会の関連一般社団法人等(注5) の一つである財団法人競馬共助会(注6) (以下「共助会」という。)、食堂の運営を行う事業者(以下「食堂業者」という。)等に対して施設の貸付けを行っており、貸付料として21事業年度計2億7498万余円、22事業年度計2億7118万余円、合計5億4616万余円の支払を受けている。
 また、貴会は、近年、施設の貸付けの一部において、食堂を設置させるため公募により選定した食堂業者と契約することとしているが、それ以外の施設の貸付けについては、相手方の選定に当たり競争によらず、ファシリティーズ、共助会等と随意契約を締結している。

表1  貸付料収入等の状況 (単位:千円)
貸付先 契約方式 上段:自動販売機の台数
下段:売店等の箇所数
平成
21事業年度
22事業年度
ファシリティーズ 随意契約 411台 63,757 64,383 128,140
148か所
共助会 随意契約 649台 71,856 71,998 143,855
357か所
食堂業者等 随意契約
(一部公募)
2台 139,367 134,805 274,172
196か所
合計   1,062台 274,981 271,187 546,168
701か所
(注)
 自動販売機の台数及び売店等の箇所数は平成22事業年度のものである。

 そして、貴会から施設の貸付けを受けているファシリティーズ、共助会等における自動販売機及び売店等の設置及び運営の形態をみると、ファシリティーズ、共助会等が自ら自動販売機又は売店を設置して運営しているもの(以下、このような運営形態を「直営方式」という。)と自動販売機及び売店等の設置及び運営を飲食物、競馬新聞等の販売会社(以下「販売会社」という。)に委託しているもの(以下、このような運営形態を「委託方式」という。)がある。

(注4)
 JRAファシリティーズ株式会社  平成19年10月1日に、貴会の子会社である共栄商事株式会社等4社が共栄商事株式会社を存続会社として合併するとともに商号が変更されて設立された貴会の子会社である。貴会のファシリティーズに対する出資額は6000万円で、その持株比率は22事業年度末現在94.9%となっている。
(注5)
 貴会の関連一般社団法人等  日本中央競馬会法施行規則(昭和29年農林省令第56号)の規定により、貴会の事業報告書に名称、基本財産等の事項を記載しなければならない団体であり、貴会の業務の一部又は貴会の業務に関連する事業を行っていて、貴会が出資、人事、資金、取引等の関係を通じて財務及び事業の方針決定を支配しているか又はそれに対して重要な影響を与えることができるものをいう。
(注6)
 財団法人競馬共助会  昭和23年9月に中央競馬のきゅう舎関係者の福利厚生団体として設立され、競馬に関係する調教師、騎手、きゅう務員その他のきゅう舎関係者及びその遺族の福祉の増進を図るとともに、競馬愛好者の利便に資するための事業を行う団体である。そして、貴会は、毎事業年度、上記の事業に要する経費の一部に充てるための財源として助成金を交付している。

(3) 貴会の契約制度及び閣議決定により要請されている事業運営の効率化・透明化等

 貴会が行う契約については、日本中央競馬会会計規程(平成19年理事長達第52号)により、競争入札によることが原則となっており、競馬事業の公正及び中立性の確保に支障があると認める場合その他理事長が定める場合においては、指名競争に付し、又は随意契約をすることができることとなっている。そして、日本中央競馬会契約事務取扱要領(平成19年理事長達第55号)において、契約の目的又は性格が競争に適さないときなどに随意契約によることができるとされている。
 また、17年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」においては、「競争性のある契約のうち競馬の公正・中立性の確保上支障のない契約については、そのすべての契約を、平成22年までのできる限り早い時期に競争入札に移行させる」などとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、効率性等の観点から、施設の貸付けに係る契約は適切に行われているか、自動販売機及び売店等の設置及び運営による利益を貴会が享受しているかなどに着眼して、自動販売機及び売店等を設置するために貴会が施設の貸付けを行っている31場外発売所及び10競馬場を対象として検査した。検査に当たっては、貴会本部、22場外発売所及び7競馬場並びにファシリティーズ本社及び5競馬場に所在する同社事業所において、施設の貸付けに関する書類、販売会社から支払を受けている管理料又は販売手数料(以下「管理料等」という。)に関する書類等により会計実地検査を行うとともに、その他の9場外発売所及び3競馬場についても、貴会本部及びファシリティーズ本社に上記の書類の提出を求めるなどして検査した。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) ファシリティーズが設置及び運営している自動販売機及び売店等

ア 運営形態別の収支状況

 ファシリティーズは、貴会から自動販売機及び売店等の設置のために施設の貸付けを受け、自動販売機の設置及び運営は全て委託方式により、また、売店等の設置及び運営は4場外発売所の一部の売店で直営方式によるほかは29場外発売所及び8競馬場において委託方式により行っていた。
 直営方式による売店について、飲食物、新聞等の売上額を収入とし、その仕入原価、ファシリティーズが雇用等している販売員の賃金、貴会に支払っている施設の貸付料及び光熱水費を支出として設置及び運営に係る収支をみると、表2 のとおりとなっていた。

表2  直営方式の収支状況 (単位:千円)
場外発売所 支出
(うち貸付料)
収入 収入−支出 比率
(B)/(A)
  事業年度
(平成)
21 22 計(A) 21 22 計(B) 21 22
新白河 16,137
(117)
14,457
(133)
30,595
(250)
17,354 15,612 32,967 1,217 1,154 2,372 1.07
立川 1,767
(100)
2,542
(136)
4,310
(237)
1,748 2,614 4,363 △19 72 52 1.01
米子 20,049
(140)
18,344
(141)
38,394
(281)
21,656 19,912 41,568 1,606 1,567 3,174 1.08
佐世保 7,610
(112)
6,372
(116)
13,983
(229)
7,939 7,159 15,098 328 787 1,115 1.07
45,565
(471)
41,717
(526)
87,283
(998)
48,698 45,299 93,998 3,133 3,581 6,715 1.07

 また、委託方式による場合は、各場外発売所又は各競馬場における販売品目ごとの売上額の0.5%から55%相当額等が毎月又は競馬開催ごとに、管理料等として販売会社からファシリティーズに支払われていた。
 そこで、委託方式による自動販売機及び売店等については、販売会社から支払を受けている管理料等を収入とし、貴会に支払っている施設の貸付料を支出として設置及び運営に係る収支をみると、表3 のとおりとなっていた。

表3  委託方式の収支状況 (単位:千円)
  支出 収入 収入−支出 比率
(B)/(A)
事業年度
(平成)
21 22 計(A) 21 22 計(B) 21 22
(場外発売所)
室蘭 26 26 53 612 513 1,125 585 487 1,072 21.22
釧路 43 44 88 1,256 1,291 2,548 1,212 1,247 2,460 28.90
津軽 819 586 1,405 4,547 4,210 8,757 3,728 3,623 7,351 6.22
新白河 553 651 1,205 9,726 8,754 18,480 9,172 8,103 17,275 15.33
銀座 98 142 240 3,837 3,676 7,514 3,739 3,534 7,274 31.25
新橋 101 137 239 2,200 2,014 4,215 2,098 1,876 3,975 17.57
汐留 9,274 9,177 18,452 17,865 17,247 35,113 8,591 8,070 16,661 1.90
新宿 195 213 408 3,205 3,059 6,265 3,010 2,846 5,856 15.34
後楽園 13,125 13,380 26,506 33,705 30,227 63,932 20,579 16,846 37,426 2.41
浅草 2,945 3,066 6,011 15,179 14,626 29,805 12,234 11,559 23,794 4.95
錦糸町 4,257 4,093 8,351 16,802 15,632 32,435 12,544 11,539 24,083 3.88
渋谷 293 396 689 1,854 1,671 3,525 1,560 1,275 2,835 5.11
立川 215 28 244 2,982 1,645 4,627 2,766 1,616 4,383 18.94
田無 97 95 192 1,405 1,417 2,822 1,307 1,322 2,629 14.67
横浜 1,648 1,787 3,436 14,927 14,621 29,549 13,278 12,833 26,112 8.59
伊勢佐木 1,929 1,898 3,827 9,588 9,550 19,139 7,659 7,652 15,311 5.00
新横浜 2,336 2,393 4,730 22,479 22,870 45,350 20,143 20,476 40,620 9.58
石和 3,560 3,626 7,186 8,358 8,266 16,624 4,798 4,639 9,438 2.31
名古屋 5,134 5,231 10,366 27,019 27,195 54,214 21,884 21,963 43,848 5.23
京都 299 277 577 595 522 1,117 295 244 540 1.93
難波 1,602 1,616 3,219 29,378 26,147 55,525 27,775 24,530 52,305 17.24
梅田 143 294 437 613 1,677 2,291 470 1,383 1,853 5.23
神戸 338 340 679 1,701 1,451 3,153 1,363 1,111 2,474 4.64
米子 2,218 2,245 4,463 19,812 18,611 38,424 17,593 16,366 33,960 8.60
小郡 182 184 366 4,599 4,255 8,855 4,417 4,070 8,488 24.13
高松 4,988 4,942 9,931 8,930 9,100 18,030 3,941 4,157 8,099 1.81
八幡 2,996 3,046 6,043 8,400 8,560 16,960 5,403 5,513 10,916 2.80
博多 171 176 348 3,158 2,969 6,127 2,986 2,792 5,779 17.57
佐世保 2,080 2,139 4,220 4,909 4,476 9,385 2,829 2,336 5,165 2.22
(競馬場)
福島 143 144 288 1,625 1,420 3,045 1,481 1,275 2,757 10.56
新潟 35 28 63 1,314 1,183 2,497 1,279 1,155 2,434 39.40
中山 414 421 836 1,950 1,535 3,486 1,535 1,113 2,649 4.16
東京 372 379 751 7,458 7,002 14,461 7,086 6,623 13,710 19.25
中京 63 64 128 1,822 2,880 4,702 1,758 2,815 4,574 36.60
京都 392 392 785 3,366 3,387 6,753 2,973 2,994 5,968 8.59
阪神 40 40 80 615 569 1,185 575 529 1,104 14.74
小倉 142 142 285 1,177 1,045 2,223 1,034 902 1,937 7.78
63,285 63,856 127,142 298,986 285,289 584,276 235,700 221,433 457,134 4.59

 これらによれば、ファシリティーズは、全ての場外発売所及び競馬場において、自動販売機及び売店等の設置及び運営により、貴会に支払う施設の貸付料を上回る収入を得ており、21、22両事業年度の合計額で支出額に対する収入額の比率をみると、直営方式は4場外発売所の合計で1.07となっていたのに対して、委託方式は29場外発売所及び8競馬場の合計で4.59となっていた。また、場外発売所又は競馬場ごとにみると、直営方式の最高は1.08となっていたのに対して、委託方式では最高39.4、最低でも1.81となっていて、委託方式により設置及び運営している自動販売機及び売店等については、直営方式に比べて、より多くの利益を得ている状況となっていた。
 委託方式による自動販売機及び売店等の設置及び運営の例を示すと、次のとおりである。

<事例>

 貴会は、平成21、22両事業年度に新横浜場外発売所(横浜市所在)の施設の一部計134.88m をファシリティーズに貸し付けており、21事業年度233万余円、22事業年度239万余円、計473万余円の貸付料の支払を受けている。そして、ファシリティーズは、販売会社2社に委託して、同施設に自動販売機29台及び売店5箇所を設置及び運営させており、販売会社との契約において自動販売機については売上額の3%、35%又は55%、売店については売上額の10%又は15%の管理料等の支払を受けることを定めて、21事業年度2247万余円、22事業年度2287万余円、計4535万余円の管理料等の支払を受けていた(表3参照)

イ ファシリティーズとの随意契約等

 貴会は、場外発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置させるため、前記のとおりファシリティーズに対して随意契約により施設の貸付けを行っているが、その理由について、ファシリティーズは、貴会から他の業務も請け負うなどしており、競馬開催日に各場外発売所に職員を配置しているため、自動販売機及び売店等の設置及び運営を効率的に行うことができること、また、ファシリティーズが直営方式により設置及び運営を行っている4場外発売所の一部の売店に関しては、従前の販売会社が経営不振を理由に撤退したという事情があったことなどによるとしている。
 しかし、委託方式により自動販売機及び売店等を設置及び運営を行っているファシリティーズの業務は、一又は複数の事業年度ごとの販売会社の選定及び契約手続、並びに毎月又は競馬開催ごとの管理料等の請求、収受等であり、自動販売機に係る機械の設置、商品の補充、売上金の回収、釣銭の補充、機械及びその周辺の清掃等や売店等の営業は販売会社が行っている。したがって、ファシリティーズが競馬開催日に職員を場外発売所に配置していることにより自動販売機及び売店等の設置及び運用が効率的に行われているとは認められない状況となっていた。
 また、ファシリティーズが委託方式により設置及び運営を行っている自動販売機及び売店等についてみると、場外発売所又は競馬場1か所当たりの販売会社数は1社から6社であり、29場外発売所及び8競馬場で延べ85社の販売会社に委託していた。そして、前記のとおり、貴会は、競馬場に食堂を設置させるための施設の貸付けについては一部において公募により相手方を選定している。
 以上のことから、ファシリティーズが委託方式により自動販売機及び売店等の設置及び運営を行っている場合については、貴会は、原則として競争により直接委託先を選定して、契約することができると認められることから、貴会が自動販売機及び売店等を設置及び運営させるために、ファシリティーズに対して随意契約により施設の貸付けを行っているのは適切とは認められない。
 また、競争を実施してもファシリティーズ以外に貴会から委託を受けようとする者がないため、直営方式によらざるを得ない場合には、ファシリティーズに生じた利益を貴会が享受できるようにすることなどを考慮する必要があると認められる。

ウ 貴会が得ることができた増収額

 ファシリティーズが委託方式により行っている自動販売機及び売店等の設置及び運営の業務について、貴会が直接販売会社に委託することとしていれば、ファシリティーズから施設の貸付料の支払を受けることができなくなるものの、販売会社からの管理料等の支払を受けることができることから、21事業年度2億3570万余円、22事業年度2億2143万余円、計4億5713万余円の増収を図ることができたと認められる。

(2) 共助会及び食堂業者等が設置している自動販売機及び売店等

 貴会は、場外発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置させるため、ファシリティーズのほか、前記のとおり随意契約により共助会に対して、また、公募により選定するなどした食堂業者等に対して施設の貸付けを行っている(前掲表1参照)
 共助会及び食堂業者等は、国又は貴会の出資等がないために本院の検査権限が及ばないが、共助会及び食堂業者等が場外発売所及び競馬場に設置している自動販売機及び売店等は、ファシリティーズが委託方式により設置及び運営を行っている自動販売機及び売店等と差がなく、同様の形態で運営等がなされていると思料される。
 そこで、本院は、貴会に対して、貴会の関連一般社団法人等である共助会が設置及び運営している自動販売機及び売店等に関する契約の状況等について、貴会が調査して報告するよう求めた。
 そして、貴会から提出のあった自動販売機及び売店等の設置及び運営に係る契約書の書式例によると、共助会は、ファシリティーズと同様に、自動販売機及び売店等の設置及び運営を委託方式により行ったり、仕入れた商品を自動販売機及び売店等で販売する直営方式により行ったりしていると認められた。
 このため、ファシリティーズと同様に、共助会が委託方式により自動販売機及び売店等の設置及び運営を行っている場合には、原則として、競争により貴会が直接委託先を選定することとして、販売会社から管理料等の支払を受けることとし、また、直営方式により行っている場合は、生じた利益を貴会が享受することなどができるようにする必要があると認められる。

 (是正改善を必要とする事態)

 上記のとおり、場外発売所及び競馬場に設置される自動販売機及び売店等については、その設置及び運営が委託方式により行われ多数の販売会社が存在するなどしており、競争により相手方を選定して、貴会が自ら契約を行うことができると認められるのに、委託方式により自動販売機及び売店等の設置及び運営を行っているファシリティーズ及び共助会に随意契約により施設の貸付けを行っている事態、また、競馬開催に伴う来場者を販売の対象としているのに、それによる利益がファシリティーズ、共助会等に帰属していて、貴会が享受していない事態は、いずれも適切でなく、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴会において、来場者の便宜のために自動販売機及び売店等を場外発売所及び競馬場に設置するに当たり、競争性及び透明性を十分に確保した契約とすることの重要性についての認識が十分でなかったこと、自動販売機及び売店等の設置及び運営による利益を貴会が享受することについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 場外発売所又は競馬場への来場者の便宜のための自動販売機及び売店等は、今後も引き続き設置することが見込まれる。また、貴会が行う契約については、できる限り競争契約に移行するとともに透明性を確保することが求められている。
 ついては、貴会において、自動販売機及び売店等の設置及び運営のための契約を抜本的に見直すことにより、契約の競争性及び透明性を確保するとともに、自動販売機及び売店等の設置及び運営による利益を享受することができるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア ファシリティーズ及び共助会に対する随意契約による施設の貸付けを廃止し、原則として競争により選定した自動販売機及び売店等の設置及び運営を自ら行う販売会社等と貴会が契約を行うものとすること
イ 販売会社等との契約に当たっては、貴会が売上額の多寡を反映した管理料等の支払を受けることができるようにすること