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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 予算経理

役務の調達等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成して契約を締結するなど不適正な契約事務処理を行っていたもの


(394) 役務の調達等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成して契約を締結するなど不適正な契約事務処理を行っていたもの

科目 営業費用、営業外収益
部局等 日本郵政株式会社宿泊事業部
不適正な契約事務処理により締結された契約に係る経費の概要 かんぽの宿等の宿泊事業に係る費用等
不適正な契約事務処理により締結された契約金額 1,083,310,136円 (平成19年度〜22年度)

1 契約事務処理の概要

 日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)は、役務、備品等の調達契約、工事請負契約等を民間事業者等(以下「業者」という。)と多数締結しており、これらに係る一連の契約事務を調達部等において行っている。そして、日本郵政株式会社職務権限規程により、かんぽの宿等の運営を行う宿泊事業部に係る契約のうち、契約金額2億円以上10億円未満(平成21年7月1日以降は1千万円以上2億円未満)の役務契約等の締結については宿泊事業部担当の執行役が、契約金額2億円未満(21年7月1日以降は1千万円未満)の役務契約等の締結については宿泊事業部長がそれぞれ行うこととなっている。また、宿泊事業部担当の執行役は、日本郵政株式会社経理規程に基づき、宿泊事業会計手続及び調達事務取扱要領(以下、これらを合わせて「会計手続等」という。)を定めており、契約責任者である同執行役又は宿泊事業部長は、契約、財務等の各担当(担当部長、グループリーダー及び担当者)におおむね次のとおり契約事務を分担させている。
〔1〕  契約担当は、予定価格調書を作成して契約責任者の承認を受けた後、業者から「入札書兼見積書」等を提出させ、予定価格の範囲内で最も有利な価格を提示した者を契約の相手方として決定する。
〔2〕  契約担当は、契約の相手方が提出した「入札書兼見積書」等の契約関係書類を添付し、契約締結の決定伺いを回付して、契約責任者に契約締結の承認を求める。この承認後、契約金額が500万円を超える場合等は契約書を作成し、契約書の作成を省略する場合は、契約の相手方に請書を提出させる。
〔3〕  契約担当は、業者から提出された請求書と契約書等に記載されている金額、請求者名、請求者の印影等に相違がないかを確認した上で、請求書に契約書等を添付して財務担当に提出する。
 そして、契約責任者は、契約原簿(注) を備えて、毎月末、自ら又は他の社員に命じ、契約原簿等により上記の契約事務の処理が適切に行われているかなどについて確認することとされている。また、契約担当の担当部長、グループリーダー等はそれぞれ、調達事務プロセス確認票により、契約締結の決定伺いが契約責任者まで決裁されているかなどについて確認することとされている。

 契約原簿  収入又は支出を伴う売買、貸借、請負及び委託契約に関し、品名又は件名、数量、単価及び合価、契約の相手方、契約書等の受領状況等を記載する原簿

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 22年12月に行われた日本郵政の内部監査において、宿泊事業部の契約担当の担当者Aにより契約関係書類が偽造されていたことが発覚し、同部において調査した結果、担当者Aが計45件の契約について不適正な契約事務処理を行っていたことが判明した。
 本院は、上記の不適正な契約事務処理について、日本郵政から報告があったことを受け、合規性等の観点から、23年3月及び6月の会計実地検査において、日本郵政の調査状況等について確認を行うとともに、会計手続等を遵守して契約事務が実施されているかなどに着眼して、宿泊事業部が19年10月から23年3月までの間に締結した契約を対象として、契約原簿と契約関係書類との突合や契約関係書類の精査を行うなどして検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、宿泊事業部が締結した契約45件(19年度6件、20年度12件、21年度15件、22年度12件)については、契約責任者、契約担当の担当部長及びグループリーダーによる契約事務の履行状況の確認が十分でなかったため、担当者Aによって、契約書を作成していないなどの会計手続等に違反した不適正な契約事務処理が長期間にわたり継続して行われており、これら45契約に係る契約金額1,083,310,136円が不当と認められる。
 これを態様別に示すと、次のとおりである(複数の態様に該当している契約がある。)。

ア 契約金額が500万円を超える契約で契約書を作成する必要があるのにこれを作成しないまま業者に業務を行わせていたもの

契約件数 13件  契約金額 315,221,377円

イ 契約締結の決定伺いを回付して契約責任者の承認を得ることなく契約を締結し、契約責任者等の印影を複写するなどして決定伺いを偽造していたもの

契約件数 21件  契約金額 405,390,030円

ウ 契約責任者に予定価格の承認を求めたかどうかが確認できなかったもの(うち予定価格調書に契約責任者印の押印漏れがあったため、契約責任者の印影を複写により偽造して押印したと見せかけていたもの6件、予定価格調書の存在が確認できなかったもの3件)

契約件数 9件  契約金額 419,390,333円

エ 「入札書兼見積書」、請書等について、契約者印等を複写するなどして偽造していたもの

契約件数 17件  契約金額 658,293,460円

オ その他(契約責任者が執行役であるのに宿泊事業部長の印を契約書に押印していたものなど)

契約件数 8件  契約金額 282,996,044円

 このような事態が生じていたのは、契約責任者等において会計手続等を遵守することの重要性の認識が十分でなかったこと、契約担当の担当部長及びグループリーダーが契約事務を担当者に一任し、その履行状況の確認を怠るなどしていて内部牽(けん)制が十分に機能していなかったことなどによると認められる。