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貿易一般保険の保険金の査定に当たり、確実に物流を確認できる書類を徴取して保険対象である取引の存在を確認することをマニュアルに明記することなどにより、的確な査定を行うための体制を整備するよう是正改善の処置を求めたもの


貿易一般保険の保険金の査定に当たり、確実に物流を確認できる書類を徴取して保険対象である取引の存在を確認することをマニュアルに明記することなどにより、的確な査定を行うための体制を整備するよう是正改善の処置を求めたもの

科目 経常費用
部局等 独立行政法人日本貿易保険
事業の根拠 貿易保険法(昭和25年法律第67号)
事業の概要 本邦法人等の輸出、仲介貿易等に係る船積不能や代金回収不能等の危険を填補するもの
取引の存在が確認できない保険契約件数及び支払保険金額 9件  9126万円(平成18年度〜20年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

  貿易一般保険の保険金の査定について

(平成23年10月28日付け 独立行政法人日本貿易保険理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 貿易保険事業等の概要

(1) 貿易保険事業の概要

 貴法人は、貿易保険法(昭和25年法律第67号)等に基づき、外国貿易その他の対外取引において生ずる為替取引の制限等、通常の保険によって救済することができない危険を填補する貿易保険事業を実施している。
 また、貴法人と国とは、会計年度ごとに再保険契約を締結し、貴法人は経済産業大臣が定める再保険料率に基づき再保険料を国に支払い、保険事故が発生した場合に、国は保険金の額に経済産業大臣が定める割合(平成18年度から22年度までは一部の保険を除き100分の90)を乗ずるなどした額を、貿易再保険特別会計から再保険金として貴法人に填補している。
 そして、平成18年度から22年度までの貴法人による引受保険金額は計50兆9094億余円、支払保険金は計424億余円となっている。

(2) 貿易一般保険の概要

 貿易保険は、貿易保険法第22条により、9種類(注1) に区分されている。これらのうち、普通輸出保険、輸出代金保険及び仲介貿易保険の3種類については、貿易一般保険として、貴法人が定めた貿易一般保険約款(以下「約款」という。)により保険の内容が定められている。貿易一般保険は、被保険者である本邦法人等が締結した輸出契約や仲介貿易契約(注2) 等の取引について、戦争・内乱など輸出契約等の契約当事者の責めに帰すことができない非常事由又は破産など輸出契約等の相手方の事情に帰すべき信用事由により、保険事故(貨物が船積不能となる船積前事故又は貨物を船積みして輸出した後に貨物代金が回収不能となる船積後事故をいう。以下同じ。)が発生した場合に生じた損失を填補する保険である。

(注1)
 9種類  普通輸出保険、輸出代金保険、為替変動保険、輸出手形保険、輸出保証保険、前払輸入保険、仲介貿易保険、海外投資保険及び海外事業資金貸付保険
(注2)
 仲介貿易契約  本邦法人等が仲介者となり、外国において生産・加工又は集荷される商品等を仕入れ、当該国から他の外国の輸入者に輸送して販売等する契約

(3) 保険金の査定

 貴法人は、約款によれば、被保険者から保険金支払請求があった場合は、調査のため特に時日を要する場合を除き請求から2月以内に保険金を支払うこととしている。
 貴法人は、保険金の査定に当たり、約款及び貴法人が定めた貿易一般保険手続細則に基づき、被保険者が作成した保険金請求書及び保険金請求経緯書に加え、被保険者から保険事故を確認できる書類、輸出契約書等の写し、船積の内容等を確認できる書類の写しなどの査定に必要な書類を徴取することとしている。そして、貴法人が具体的な査定方法等を定めた「業務マニュアル(査定)」(以下「マニュアル」という。)によれば、貴法人の査定担当者は上記の書類により、保険契約と輸出契約等との整合性、保険事故の内容、被保険者の損失額等を確認することとされている。
 貴法人は、上記の査定により損失額を確定し、これに填補率等を乗ずるなどして支払保険金の額を決定している。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性等の観点から、保険金の査定は約款等に基づき的確に行われているかなどに着眼して、18年度から22年度までに貴法人が保険金を支払った貿易一般保険653契約のうち、信用事由による保険事故であり、かつ、同一被保険者に複数回保険金を支払っているなどの92契約、支払保険金額計6億2457万余円を対象として、貴法人本店及び大阪支店において、保険金請求書等の保険関係書類により会計実地検査を行った。また、物流の実態等の事実関係について貴法人に調査を求め、調査結果が判明したものの内容を確認するなどの方法により検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、18年度から20年度までの間に同一被保険者に保険金を支払った保険契約計9件(支払保険金額計9126万余円)について、取引の相手方の業者や貨物を輸送した運送業者の存在が確認できなかったり、存在していても被保険者との取引を否定していたりしていて、保険の対象である取引の存在が確認できない状況となっていた。
 そこで、上記9件の保険金の支払に係る査定内容についてみたところ、査定担当者は、約款等で例示されている売買契約書や船荷証券等の写しを被保険者から徴取して、マニュアルに記載された確認項目について、被保険者からの請求内容と突合するなどして取引の存在等を確認したとしていた。しかし、貴法人のマニュアルにおいて、確実に物流の存在を確認できる貨物の輸出入許可や関税納付に係る通関関係書類(以下「通関書類」という。)等の徴取が必要となる場合や通関書類等を利用した確認方法が示されていないことから、査定担当者は、これらの書類の徴取や確認を行っておらず、結果として貴法人は、上記のような取引の存在が確認できない保険契約に対して保険金を支払っていた。
 上記の事態について、事例を示すと以下のとおりである。

<事例>

 貴法人は、平成18年3月に株式会社Aから、Aを仲介者とし、Tシャツを対象貨物とする仲介貿易に係る貿易一般保険を引き受けていた。そして、Aは、信用事由による船積後事故が生じたとして、19年2月に保険金支払請求を行っていた。
 査定担当者は、約款等に例示されている売買契約書の写しなどをAから徴取し、マニュアルに記載された確認項目について確認を行っていたが、通関書類等については徴取していなかった。貴法人は、その査定により取引の存在等が確認されたとして、Aに対して、19年3月に保険金18,193,005円を支払っていた。
 しかし、会計実地検査において、売買契約書に対象貨物の特定に必要な品番の記載がないなどの不自然な点が見受けられたため、貴法人に調査を求めた。そして、その調査結果を確認したところ、対象貨物の販売先とされる業者、貨物を輸送したとされる運送業者及び対象貨物の仕入先とされる業者のいずれについても存在が確認できず、保険対象とした取引の存在が確認できない状況となっていた。

 (是正改善を必要とする事態)

 貴法人において、保険金の査定に当たり、確実に物流の存在を確認できる通関書類等を徴取する必要がある場合や通関書類等を利用した確認方法をマニュアルに示しておらず、その結果、取引の存在が確認できない保険契約に対して保険金を支払っていた事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴法人において、保険金の査定に当たり、輸出契約書等の記載内容等から保険対象である取引の存在が疑われる場合には、通関書類等の確実に物流を確認できる書類を徴取し、これらの書類により物流を確認することをマニュアルに示していないなど、的確な査定を行うための体制が十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貿易保険は、被保険者である企業等に信用を供与することにより我が国の貿易の健全な発展に資するものであり、22年度の引受保険金額は8兆5千億円超となっていて、その必要性は近年高まってきている。特に、貿易一般保険は上記の額のうち85%を占め、その保険金の支払に当たっては的確な査定を行うなど保険事業の適切な運用が求められている。
 ついては、貴法人において、貿易一般保険に係る保険金の支払に当たり的確な査定を行うための体制を整備するよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 保険金の査定に当たり、輸出契約書等の記載内容等から保険対象である取引の存在が疑われる場合には通関書類等の確実に物流を確認できる書類を徴取することとし、これらの書類により保険対象である取引の存在を確認することとするようマニュアルに明記すること
イ 保険金の査定担当者に対し研修を行うなどして、通関書類等を徴取して保険対象である取引の存在を確認する具体的な方法について周知徹底を図ること