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  • 平成23年度|
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独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進の委託費に係る経理が不当と認められるもの


 (327) 独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進の委託費に係る経理が不当と認められるもの

科目 一般勘定  (項)企業化開発関係経費
部局等 独立行政法人科学技術振興機構
契約名 独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進の研究開発課題実施に伴う委託研究開発契約
契約の概要 研究機関の研究成果を基に医療機器を開発するもの
契約の相手方 学校法人松本歯科大学
契約 平成15年12月、16年4月、17年4月
支払額 86,190,000円(平成15年度〜17年度)
不当と認める委託費の支払額 10,562,319円(平成15年度〜17年度)

1 契約の概要

(1) 独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進の概要

 独立行政法人科学技術振興機構(以下「機構」という。)は、平成15年度から国が交付する運営費交付金を原資として、国立大学法人、学校法人等に委託して、15年度に大学発ベンチャー創出事業を、16年度に大学発ベンチャー創出推進事業を、17年度に独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進を、それぞれ実施している(以下、これらの事業を「委託事業」という。)。
 委託事業は、大学等の研究機関の研究成果を基に起業が実現されるために必要な研究開発を推進することにより、研究機関の研究成果を社会・経済に還元することを目的として実施するものである。
 委託事業の実施に当たっては、機構が定めた「大学発ベンチャー創出推進公募要領」(平成15年制定。以下「公募要領」という。)により、研究開発の遂行に関して技術面での全ての責任を持つ大学等の研究者(以下「開発代表者」という。)と起業を予定する者とが共同で申請することとされている。そして、研究開発の遂行に当たって必要となる場合には、開発代表者と共同して研究開発を行う研究者(以下「分担開発者」という。)を参加させることができることとされている。

(2) 委託費の経理等

 機構は、公募により採択された研究開発課題について、開発代表者が所属している研究機関と委託研究開発契約を締結し、委託研究開発費(以下「委託費」という。)を支払うこととされている。
 委託費は、公募要領により、研究で使用する機械装置、消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の研究開発の遂行に直接必要な経費(直接経費)と研究開発の実施に伴い研究機関において必要となる経費(間接経費)とされている。
 そして、研究機関は、事業全体の経理責任者として、研究開発費全体の適切かつ円滑な経理管理が行われるよう努めなければならないとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、委託費が研究機関において公募要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、機構及び2研究機関において会計実地検査を行った。そして、上記の研究機関が行っている5研究開発課題について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、研究機関に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり不適正な経理処理を行っている事態が見受けられた。
 機構は、15年度から17年度までに、学校法人松本歯科大学(以下「松本歯科大学」という。)に所属する教授を開発代表者とする研究開発課題について、松本歯科大学と委託研究開発契約を締結し、委託費計86,190,000円(直接経費計66,300,000円、間接経費計19,890,000円)を支払っていた。
 しかし、本件委託事業に参加していた松本歯科大学に所属する分担開発者B(注) は、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより松本歯科大学に購入代金計8,124,860円を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理するなどしていた。
 したがって、上記の購入代金計8,124,860円は、本件委託事業に要した経費とは認められず、委託費計10,562,319円(直接経費計8,124,860円、間接経費計2,437,459円)が過大に支払われていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、分担開発者Bにおいて、委託費の原資は税金等であるにもかかわらず事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、委託費を管理する松本歯科大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、及び機構において、研究機関等に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。

 分担開発者B  松本歯科大学に所属する分担開発者Bについては本件以外にも不当事項を掲記しており、同一の研究者については同一のアルファベットで表示している(後掲参照 )。