ページトップ
  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2 節団体別の検査結果|
  • 第31 独立行政法人日本スポーツ振興センター|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

スポーツ振興投票等業務に関する契約について、会計規則等に基づく適正な手続により契約事務を行うとともに、契約に係る支払額の妥当性等を明らかにする体制を整備することなどにより、同業務の適正性及び透明性を確保するよう是正改善の処置を求めたもの


 スポーツ振興投票等業務に関する契約について、会計規則等に基づく適正な手続により契約事務を行うとともに、契約に係る支払額の妥当性等を明らかにする体制を整備することなどにより、同業務の適正性及び透明性を確保するよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 (投票勘定) (項)業務経費
部局等 独立行政法人日本スポーツ振興センター
契約名 スポーツ振興投票の業務の一部の発注に関する契約
契約の概要 独立行政法人日本スポーツ振興センターが行うスポーツ振興投票等業
務のうち、経営管理業務及びシステム開発等業務を専門の業者に外注
するもの
契約の相手方 (1) 日本ユニシス株式会社
(2) アビームコンサルティング株式会社
契約 (1) 平成17年2月(基本契約) 随意契約
(2) 平成22年9月(基本契約) 随意契約
実施契約件数及び支払額 (1) 100件 330億0280万余円 (平成17事業年度〜23事業年度)
(2) 2件   6億0217万余円 (平成22、23両事業年度)
102件 336億0497万余円  
適正な手続によらずに締結するなどした実施契約件数及び支払額 (1) 100件   330億0280万円 (平成17事業年度〜23事業年度)
(2) 2件    6億0217万円 (平成22、23両事業年度)
102件   336億0497万円  

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 スポーツ振興投票等業務における経営管理業務及びシステム開発等業務に関する契約について

(平成24年10月26日付け 独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 経営管理業務及びシステム開発等業務に関する契約等の概要

(1) 貴センターの概要

 貴センターは、独立行政法人日本スポーツ振興センター法(平成14年法律第162号)に基づき、スポーツの振興を図ることなどを目的として、スポーツ振興投票の実施等に関する法律(平成10年法律第63号)に規定する業務(以下「スポーツ振興投票等業務」という。)等を行っている。 スポーツ振興投票等業務は、スポーツ振興投票券(以下「スポーツ振興くじ」という。)の発売等を行うものであり、スポーツ振興投票等業務の収益(注) のうち、3分の1に相当する金額については国庫に納付しなければならないとされており、残る3分の2に相当する金額については地方公共団体又はスポーツ団体が行うスポーツの振興を目的とする事業に要する資金の支給その他の援助(以下「スポーツ振興くじ助成」という。)の財源に充てるため、スポーツ振興投票事業準備金として整理しなければならないとされている。

 スポーツ振興投票等業務の収益  売上金額(発売金額から返還金(開催試合数が規定の数に達しなかった場合等に発売されなかったとされたスポーツ振興くじの券面金額をスポーツ振興くじの購入者に返還する金額)を控除した金額)の50%(払戻金充当額。平成17年3月までは53%)、払戻金等の債権のうち1年間請求がなく時効となった額等の合計金額からスポーツ振興投票等業務に係る運営費の金額を控除した金額

(2) 貴センターにおける契約事務の概要

ア 契約方式等

 独立行政法人日本スポーツ振興センター会計規則(平成15年度規則第13号。以下「会計規則」という。)によれば、契約担当役は、売買、貸借、請負その他の契約をする場合においては、公告して申込みをさせることにより一般競争に付さなければならないとされている。ただし、契約の性質又は目的が競争を許さない場合等においては随意契約によるものとするなどとされている。
 また、独立行政法人日本スポーツ振興センター組織運営規則(平成15年度規則第2号。以下「組織規則」という。)によれば、契約に関する諸手続については、各種業務を実際に実施している部門(以下「実施部門」という。)からの申請等を受けて、契約等の実務を担当する部門(以下「契約部門」という。)が行うこととなっている。そして、契約部門は、会計規則等に基づき、契約方式の決定、予定価格の作成、見積書の徴取、契約書の作成・締結等の契約に関する諸手続を行っている。

イ 予定価格の作成

 会計規則によれば、契約担当役は、契約の内容が軽易なもの又は契約の性質上予定価格の作成を要しないと認められるものを除いて、あらかじめ、契約をしようとする事項の予定価格を作成しなければならないこととされている。
 また、独立行政法人日本スポーツ振興センター契約事務取扱規程(平成15年度規程第49号。以下「契約規程」という。)によれば、契約担当役は、一般競争に付する事項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等によって予定し、その予定価格を記載した書面を作成しなければならないこととされており、予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないこととされている。そして、契約担当役は、随意契約によろうとするときは、あらかじめ一般競争の場合に準じて予定価格を定めなければならないこととされている。

ウ 貴センターにおける契約の審議体制

 貴センターは、契約の適正な執行及び履行の確保を図るため、平成15年10月に、独立行政法人日本スポーツ振興センター契約審議委員会規程(平成15年度規程第52号。以下「審議委員会規程」という。)を定め、独立行政法人日本スポーツ振興センター契約審議委員会(以下「審議委員会」という。)を設置している。審議委員会規程によれば、審議委員会は、一般競争入札における競争参加資格の決定に関する事項、プロポーザル方式等を実施する場合における技術提案書等の特定に関する事項、低入札価格調査制度に関する事項等について、契約担当役の諮問に応じて審議し、意見を述べることができるとされているほか、これら以外の事項で理事長が必要があると認めた事項について、審議を行うものとするとされている。

(3) スポーツ振興投票等業務の実施体制等

 貴センターは、スポーツ振興投票等業務のうち、当該業務を効率的かつ安定的に実施するための経営コンサルティング業務及び事務処理支援業務(以下、これらを合わせて「経営管理業務」という。)並びにスポーツ振興投票に係る情報処理システム及びスポーツ振興くじの発券端末機等の開発、運用、管理等に関する業務(以下「システム開発等業務」といい、経営管理業務とシステム開発等業務を合わせて「両業務」という。)については、民間のノウハウ等を活用するため、専門の業者に外注して実施している。
 貴センターは、両業務を外注するに当たり、受注を希望する業者から業務の実施方法及び内容に関する企画提案書(以下「提案書」という。)を提出させ、審議委員会において提案書の内容を審議して優先交渉権者を選定し、この者との間で協議するなどして契約する企画競争によることとした。そして、17年1月、受注希望者を公募し、翌2月に、応募のあった3者から日本ユニシス株式会社(以下「ユニシス」という。)を優先交渉権者として選定し、その後、ユニシスとの間で17年2月から25年3月までを契約期間とする両業務に関する基本契約(以下「ユニシス基本契約」という。)を随意契約により締結している。ユニシス基本契約によれば、両業務は、ユニシスから提出された提案書を基に貴センターとユニシスとの間で合意した実施計画に沿って実施することとされており、両業務の実施に当たっては、毎事業年度、当該事業年度における業務の実施に関する契約(以下「実施契約」という。)を別途締結することとされている。また、各事業年度の実施契約に定める両業務に係る支払額は、業務の実施に必要となる基本的な経費として設定した経費(以下「基本料金」という。)と、スポーツ振興くじの売上額の増加に伴い増加する業務量を処理するため別途発生する経費(以下「追加料金」という。)との合計額とするとされている。
 そして、両業務に係る17事業年度から23事業年度までの間の貴センターのユニシスに対する支払額は、表1 のとおり、計330億0280万余円となっている。

表1 両業務に係る貴センターのユニシスに対する支払額
(単位:百万円)

事業年度
業務
平成
17
18 19 20 21 22 23
経営管理業務(うち追加料金) 10
(—)
120
(—)
1,711
(393)
1,614
(419)
 653
(163)
617
(210)
426
(—)
 5,154
(1,186)
システム開発等業務 293 3,479 4,111 5,679 5,047 4,779 4,456 27,848
事業年度計 303 3,600 5,822 7,294 5,700 5,397 4,883 33,002
(注)
 システム開発等業務については、両者間の協議に基づいて追加料金を支払っていない。

(4) ユニシス基本契約終了後の経営管理業務

 貴センターは、ユニシス基本契約の終了後の経営管理業務について、22年6月、公募を行い、翌7月に、企画競争により応募のあった5者からアビームコンサルティング株式会社(以下「アビーム」という。)を優先交渉権者として選定し、アビームとの間で、22年9月から30年3月までを契約期間(ただし、22年9月から25年3月までの間は、ユニシス基本契約の終了後の経営管理業務実施に向けての準備期間である。)とする基本契約(以下「アビーム基本契約」という。)を随意契約により締結している。そして、アビーム基本契約では、事業年度ごとに締結する実施契約で定められた経営管理業務に係る基本料金を支払うこととされている。また、基本料金の支払に当たり、各事業年度の売上額があらかじめ定めた目標金額を超えた場合には、目標金額を超えた金額に基準料率を乗じて得た金額を加算し、売上額が目標金額を下回った場合には、目標金額を下回った金額に基準料率を乗じて得た金額を減算して支払うこととされている。
 そして、経営管理業務に係る22、23両事業年度における貴センターのアビームに対する支払額は、計6億0217万余円となっている。

(5) 独立行政法人における契約の適正化

 政府は、19年12月の「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定)において、独立行政法人の効率化に関する措置として、各独立行政法人は、契約が一般競争入札等による場合であっても、特に企画競争や公募を行う場合には、真に競争性及び透明性が確保される方法により実施するとしている。
 また、総務省は、20年11月に各府省官房長に宛てて「独立行政法人における契約の適正化について(依頼)」(平成22年総務省行政管理局長事務連絡)を発している。同事務連絡において、「独立行政法人は、業務運営の自立性を確保することとされており、契約方法については、原則として各法人の自立性に委ねられているものの、業務の公共性に鑑み、業務運営の効率性及び国民の信頼確保の観点から、業務運営の適正性・透明性を確保することが強く要請される」とされている。そして、その上で、独立行政法人が、予定価格の作成を省略する場合、省略する理由や対象範囲を会計規程等において明確かつ具体的に定めることなどの措置を講ずるよう要請されている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性等の観点から、貴センターにおいて、両業務の契約について、契約事務等が会計規則、契約規程等に基づき適切に行われているか、ユニシス及びアビームに対する支払額等は妥当なものとなっているかなどに着眼して、ユニシス基本契約及びこれに係る実施契約計100件(17事業年度から23事業年度までの間の支払額計330億0280万余円)、アビーム基本契約及びこれに係る実施契約計2件(22、23両事業年度の支払額計6億0217万余円)を対象として、基本契約書、実施契約書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 実施契約に係る予定価格の作成について

 契約規程によれば、前記のとおり、随意契約による場合であっても、一般競争の場合に準じて、あらかじめ、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に予定価格を定め、これを記載した書面を作成しなければならないこととされている。
 しかし、貴センターは、17事業年度から23事業年度までの間に、随意契約によりユニシスとの間で締結した経営管理業務に係る実施契約(10件、支払額計51億5415万余円)及びシステム開発等業務に係る実施契約(90件、支払額計278億4864万余円)の全ての契約(計100件、支払額計330億0280万余円)については、予定価格を定めないまま、ユニシスから提出された見積書に提示された金額と同じ金額で契約を締結していた。
 また、22、23両事業年度に、随意契約によりアビームとの間で締結した経営管理業務に係る実施契約(2件、支払額計6億0217万余円)については、契約部門において予定価格を作成していたものの、この予定価格は、その作成前に、実施部門とアビームとの間で基本料金としてあらかじめ合意していた金額と同額となっており、その額は、アビームが見積書に記載していた金額と同額であることなどから、取引の実例価格等を考慮して定めたものとはなっていなかった。
 以上のことから、両業務に係る実施契約は、予定価格が有するとされる契約相手方の提示額等の適否を判断する基準としての機能が全く果たされないまま締結されていたと認められる。

(2) 両業務に係る支払額の妥当性等について

ア 基本料金の妥当性等について

 各事業年度の実施契約に基づき、貴センターがユニシスに対して17事業年度から23事業年度までの間に支払った基本料金は計318億1672万余円、また、アビームに対して22、23両事業年度に支払った基本料金は計6億0217万余円となっている。
 しかし、これらの実施契約に関する諸手続については、組織規則により、スポーツ振興投票等業務に係る実施部門からの申請等を受けて、契約部門が会計規則等に基づき行うこととされているにもかかわらず、実際には、実施部門が行っていた。そして、実施部門とユニシス又はアビームとの間での見積書に関する協議の内容や契約額となる基本料金決定の経緯等に関する記録が残されていないことから、契約の締結に当たり、見積書に示された金額を基にどのようにして基本料金が決められたのかなどについての確認はできなかった。
 また、各事業年度の実施契約に基づいてユニシス又はアビームにより実施された業務が基本料金に見合ったものとなっていたかどうかについても、提供された業務等に関する記録等が残されていないことなどから、確認することは著しく困難な状況となっていた。
 これらのことから、基本料金の妥当性等については、検証できない状況となっている。

イ ユニシスとの間の実施契約における追加料金の妥当性等について

 前記のとおり、貴センターのユニシスに対する支払額には、基本料金のほかに、追加料金が含まれており、貴センターが19事業年度から22事業年度までの間に支払った追加料金は、表2 のとおり、計11億8607万余円となっている。

表2 各事業年度における目標金額、売上額、追加料金等
(単位:百万円)

事業年度
区分
平成
17
18 19 20 21 22 23
目標金額 25,000 26,225 40,000 63,000 63,000 63,000  /
売上額 14,905 13,470 63,711 89,741 78,547 84,811 82,673  /
超過額 △11,529 37,486 49,741 15,547 21,811 19,673  /
経営管理業務に係る追加料金 393 419 163 210  1,186

 両業務の追加料金については、ユニシス基本契約において実施計画の基とされている提案書では、「「(スポーツ振興くじの)売上の増加に伴い増加する業務量を処理する費用」について当初設定した売上高に対して売上増加分の1%を上限とし、別途センターと協議し決定することとする」などとされており、これを受けて、各事業年度の実施契約に基づき、スポーツ振興くじの売上額が目標金額を超えた場合は、目標金額を超えた金額に別途定める料率を乗じて得た金額を上限としてユニシスと協議して決定するなどとされていた。
 しかし、追加料金に係る目標金額の設定、追加料金の料率、実際の支払額に関する協議等の契約に係る諸手続についても、基本料金と同様に、契約部門ではなく実施部門が行っていた。
 また、貴センターは、提案書に記載された「売上の増加に伴い増加する業務」の内容や業務量等について把握しておらず、追加料金の支払に当たっても、実際に売上げが増加したことに伴って増加した業務の内容や業務量及びこれを処理するために追加で要した経費の内容、実績等について確認していなかった。さらに、基本料金と同様に、実際の支払額に関するユニシスとの協議内容等の記録が残されていないことから、どのようにして追加料金が決められたのかなどについての確認はできなかった。
 これらのことから、追加料金の妥当性等については、検証できない状況となっている。
 なお、貴センターの実施部門は、追加料金について、ユニシスが経営管理業務を実施したことに起因してスポーツ振興くじの売上げが増加したことに対する成功報酬であるとの合意があったとしているが、合意に関する記録等が残されていないため、その事実は確認できなかった。
 このように、ユニシス又はアビームとの間の実施契約において、契約に係る諸手続を実施部門が行っていたり、基本料金及び追加料金の決定等に関する記録が残されていないことなどから、これらの支払額の妥当性等を検証することができない状況となっていたりなどしている事態は、収益のうちの3分の1に相当する金額が国庫に納付され、残る3分の2に相当する金額がスポーツ振興くじ助成の財源に充てられるスポーツ振興投票等業務の運営の適正性及び透明性を著しく損なうものであると認められる。

(3) 審議委員会での審議の状況について

 貴センターは、両業務の契約をスポーツ振興投票等業務を実施する上で特に重要な契約と位置付けている。また、17事業年度から23事業年度までのスポーツ振興投票等業務に係る運営費から貴センターの職員に係る人件費等を控除するなどした「スポーツ振興投票業務運営費」に対する両業務の実施契約計102件に係る支払額の割合をみても、表3 のとおり、34.6%となっており、大きな割合を占めている。

表3 スポーツ振興投票業務運営費に対する両業務に係る支払額の推移
(単位:百万円、%)

事業年度
区分
平成
17
18 19 20 21 22 23
スポーツ振興投票業務運営費
(a)
7,274 7,241 15,542 17,862 15,468 16,243 17,345 96,979
  うち経営管理業務に係る支払額 10 120 1,711 1,614 653 772 874 5,756
うちシステム開発等業務に係る支払額 293 3,479 4,111 5,679 5,047 4,779 4,456 27,848
両業務に係る支払額計
(b)
303 3,600 5,822 7,294 5,700 5,552 5,330 33,604
スポーツ振興投票業務運営費に対する両業務に係る支払額の割合
(b)/(a)
4.1 49.7 37.4 40.8 36.8 34.1 30.7 34.6

 これらを踏まえて、ユニシス基本契約及びこれに係る実施契約計100件並びにアビーム基本契約及びこれに係る実施契約計2件について、貴センターにおける審議委員会の審議の状況等について確認した。その結果、審議委員会は、審議委員会規程においてプロポーザル方式等を実施する場合に技術提案書等の特定に関する事項を審議することができると明記されていることから、ユニシス基本契約又はアビーム基本契約の締結に当たって、公募に応じた複数の者から提出された技術提案書等の特定に関する事項を審議し、優先交渉権者としてそれぞれユニシスとアビームを選定していたものの、実施契約の内容等については、審議を行う事項に該当しないとして、審議の対象としていなかった。
 しかし、これらの契約は、貴センターが、スポーツ振興投票等業務を実施する上で特に重要な契約と位置付けているものであり、かつ、その支払額も多額となっていることから、契約の適正な執行及び履行の確保を図るために設置するとしている審議委員会の目的及びスポーツ振興投票等業務の適正かつ透明な運営を確保するためにも、審議の対象とすべきであったと認められる。特に、各事業年度の実施契約は、価格について競争性が確保されていない随意契約によっていることから、これらの契約に係る見積額が市場価格や他の取引実例等に照らして妥当なものとなっていたかなどについて審議すべきであったと認められる。

 (是正改善を必要とする事態)

 貴センターにおいて、〔1〕会計検査院の規定に反して、作成しなければならないとされている予定価格を適正に作成していない事態及び実施部門が契約に係る諸手続を行っている事態、〔2〕支払額の決定に関する記録や提供された業務に関する記録等が残されていないことなどから、これらの妥当性等を確認できない事態、〔3〕両業務のように貴センターにとって重要な契約が審議委員会における審議の対象となっていない事態は、いずれも適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴センターにおいて、次のことなどによると認められる。

ア 会計規則、契約規程等を遵守して契約事務等を行わなければならないことについての認識が欠けていること

イ 契約に係る支払額の妥当性等を確保するためには、支払額等の決定に関する記録や提供された業務に関する記録等を残しておく必要があるにもかかわらず、このような体制の整備が行われていないこと

ウ 審議委員会規程において、貴センターの事業運営にとって重要な契約等が審議委員会の審議の対象とされていないことなどから、両業務の契約に関して、審議委員会が十分に機能していないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 貴センターは、スポーツの振興を図ることなどを目的として設置された独立行政法人であり、この目的を達成する上でスポーツ振興投票等業務は重要な業務の一つである。そして、スポーツ振興投票等業務の収益のうち、3分の1に相当する金額については国庫に納付し、残る3分の2に相当する金額についてはスポーツ振興くじ助成の財源に充てなければならないこととされている。このため、スポーツ振興投票等業務に係る運営費の節減は、収益の増加に貢献し、国庫納付及びスポーツ振興くじ助成の金額にも影響を与えることになることから、両業務については、適切な履行を確保するとともに適正な価格により契約を締結することが必要である。
 ついては、貴センターにおいて、今後も引き続き両業務を専門の業者に外注して実施していくこととしていることから、適正な手続に基づいて契約を行うとともに、スポーツ振興投票等業務の公共性に鑑み、契約に係る支払額の妥当性等を明らかにすることにより、同業務の適正性及び透明性を確保するよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 会計規則等に基づき、予定価格を作成するなど、契約事務等を適切に行うこと

イ 支払額等について、協議の内容、経緯等に関する記録や基礎資料等によりその妥当性等を明らかにすることができるよう体制を整備すること

ウ 審議委員会規程について、審議を行う事項等を見直すとともに審議の対象とする契約及び契約額の範囲を定めるなどの所要の改定を行うなどして、貴センターの業務運営にとって重要な契約については、審議委員会において適切に審議するようにすること