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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第35 独立行政法人水資源機構|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

水資源開発施設等について、保有の必要性について検証を実施し、不要と認められるものについては売却等の検討及び協議を行ったり、公道と兼用の管理用道路に係る管理費用について、道路管理者との間の標準的な負担方法等に係る協議方針を定め、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しの協議を行ったりなどするよう改善の処置を要求したもの


 水資源開発施設等について、保有の必要性について検証を実施し、不要と認められるものについては売却等の検討及び協議を行ったり、公道と兼用の管理用道路に係る管理費用について、道路管理者との間の標準的な負担方法等に係る協議方針を定め、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しの協議を行ったりなどするよう改善の処置を要求したもの

科目 固定資産、管理業務費
部局等 独立行政法人水資源機構(平成15年9月30日以前は水資源開発公団)
水資源開発施設等の概要 独立行政法人水資源機構が、産業の発展及び人口の集中に伴い用水を必要とする地域に対する水の安定的な供給の確保を図るため、水資源開発基本計画に従い新築等を行うなどしたダム、河口堰(ぜき)等の施設
検査の対象とした土地、構築物等の平成23事業年度末現在の帳簿価額 土地 511億8740万余円  
構築物等 1兆0495億7459万余円  
1兆1007億6199万余円  
上記のうち保有する必要がないもの 土地 49億8268万円  
構築物等 30億1924万円  
80億0192万円  
応分の負担となっていない構築物の管理費用の額   5億8695万円 (背景金額)

 【改善の処置を要求したものの全文】

 水資源開発施設等の保有及び管理について

(平成24年10月26日付け 独立行政法人水資源機構理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 水資源開発施設等の概要

(1) 水資源開発施設等の管理等の概要

 貴機構(平成15年9月30日以前は水資源開発公団)は、独立行政法人水資源機構法(平成14年法律第182号。以下「機構法」という。)等に基づき、産業の発展及び人口の集中に伴い用水を必要とする地域に対する水の安定的な供給の確保を図るため、水資源開発基本計画(注1) に従い、ダム、河口堰(ぜき)その他の水資源の開発又は利用のための施設及び当該施設と密接な関連を有する施設の新築又は改築(以下「新築等」という。)を行っている。また、貴機構は、新築等から生じた施設及び水資源開発公団の新築等の業務の実施により生じて貴機構が承継した施設並びに愛知用水公団が保有していたかんがい排水施設等で水資源開発公団から承継した施設(以下、これらの施設を合わせて「水資源開発施設等」という。)の操作、維持、修繕その他の管理(以下「管理」という。)を行っている。
 そして、管理に係る業務は、機構法に基づき施設ごとに定められた施設管理規程、水資源開発施設等の管理等に関する規程(水公規程平成6年第12号。以下「管理等規程」という。)等に基づき、水道事業者等負担金、国からの交付金、補助金等を財源にして行われている。
 また、水資源開発施設等について、貴機構以外の者から使用の承認申請があったときは、貴機構は、管理等規程に基づき、当該使用により水資源開発施設等の管理に支障が生じない場合等であって、かつ、必要やむを得ないと認める場合に、承認申請した者に水資源開発施設等を使用させることとする承認(以下「使用承認」という。)を行っている。

 水資源開発基本計画  水資源開発促進法(昭和36年法律第217号)に基づき、国土交通大臣が水資源開発水系を指定したときに関係各大臣に協議するなどして決定するもので、水の用途別の需要の見通し及び供給の目標や、供給の目標を達成するため必要な施設の建設に関する基本的な事項等が記載されたもの

(2) 兼用道路の管理

 水資源開発施設等のうちの管理用道路について、貴機構は、その一部を道路法(昭和27年法律第180号)の適用を受ける県道や市町村道の公道として地方公共団体に使用させている。公道の管理は、道路管理者が行うこととなっているが、貴機構は、公道と兼用の管理用道路(以下、このような道路を「兼用道路」という。)については、道路管理者である地方公共団体と協議して協定書を取り交わすなどして、個別に管理の範囲や兼用道路の管理費用の負担方法等を決定している。

(3) 貴機構における保有資産の見直し

 19年12月に閣議決定された「独立行政法人整理合理化計画」(以下「合理化計画」という。)において、独立行政法人の見直しに関して講ずべき横断的措置として、〔1〕 保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を着実に推進して、適切な形で財政貢献を行うこと、〔2〕 上記〔1〕 の売却等対象資産以外の実物資産についても、引き続き、資産の利用度等のほか、本来業務に支障のない範囲での有効利用の可能性の多寡、効果的な処分、経済合理性といった点に沿って、保有の必要性について不断に見直しを実施することなどが定められた。
 貴機構は、合理化計画等を踏まえ、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)の規定に基づき、20年3月に認可を受けた第2期中期計画(20年4月1日から25年3月31日までの期間)において、適正な資産管理に取り組むとともに保有資産の見直しを行うこととしている。そして、保有資産のうち、宿舎及び会議所については、集約化や売却等の処分を行うこととしている。
 また、22年12月に閣議決定された「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(以下「基本方針」という。)において、独立行政法人の保有する施設等については、そもそも当該独立行政法人が保有する必要があるか、必要な場合でも最小限のものとなっているかについて厳しく検証すること、貸付資産等も含めた幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどの取組を進めることとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点)

 貴機構が保有し管理を行っている水資源開発施設等の23事業年度末帳簿価額は、3兆0254億余円と多額に上っており、水路の改築事業が完了したことなどに伴い、22事業年度末帳簿価額(2兆9975億余円)に比べて、278億余円増加している。
 そこで、本院は、合理化計画、基本方針等を踏まえて、貴機構の水資源開発施設等について、経済性、有効性等の観点から、貴機構が保有する必要があるか、適切な管理を行っているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 貴機構本社、11管理所等(注2) において、23事業年度末時点において保有している水資源開発施設等(23事業年度末帳簿価額土地511億8740万余円、構築物及び建物(以下「構築物等」という。)1兆0495億7459万余円)を対象として会計実地検査を行った。検査に当たっては、水資源開発施設等に係る管理台帳等の書類及び現地の状況を確認するなどして検査した。

 11管理所等  沼田総合、千葉用水総合、草木ダム、愛知用水総合、長良川河口堰、味噌川ダム、琵琶湖開発総合、旧吉野川河口堰、香川用水各管理所、筑後川局、朝倉総合事業所

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 保有する必要がないもの

土地 計7件  面積509,210.4m2 23事業年度末帳簿価額 49億8268万余円
構築物等 計4件  橋りょう等延長1,893.4m、建物面積288.6m2
      23事業年度末帳簿価額 30億1924万余円

 貴機構が水資源開発施設等として保有し管理を行っているもののうち、水の安定的な供給の確保を図るという貴機構の業務の目的に沿った用途に供されておらず、使用承認等により貴機構以外の者が使用していたり、遊休していたりなどしていて、今後、貴機構が使用する見込みがないことから、保有する必要がないと認められる土地、構築物等が、6管理所(注3) において見受けられた。

 6管理所  沼田総合、千葉用水総合、愛知用水総合、長良川河口堰、琵琶湖開発総合、香川用水各管理所

 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 琵琶湖開発総合管理所は、琵琶湖周辺に「湖岸堤・管理用道路」を整備する一環として、昭和55年度から平成2年度までの間に、洪水時の消波効果を有する前浜用及び浚渫(しゅんせつ)土の処理場用として、旧水資源開発公団琵琶湖開発事業建設部が取得した同湖東岸の烏丸半島の土地(368,108.9m2 )を保有して管理を行っている。
 しかし、この土地は、元年度から3年度までの間に基盤整備が行われるなどした結果、当初の目的であった前浜としての位置付けがなくなり、このうち大半の土地及びこの土地の護岸等の構築物(土地の面積359,174.5m2 、23事業年度末帳簿価額44億5975万余円、構築物の23事業年度末帳簿価額14億5451万余円)については、現在、同管理所の使用承認等により、滋賀県が博物館、土砂仮置場等の敷地として、同県草津市が植物園、道路等の敷地としてそれぞれ使用するなどしており、同管理所が業務の目的に沿って使用しているのは、「湖岸堤・管理用道路」等の敷地の8,934.4m2 のみとなっている。

<事例2>

 沼田総合管理所は、平成2年度に、奈良俣ダムにおける積雪期間の緊急時等の連絡・宿泊施設として、旧水資源開発公団奈良俣ダム建設所が同建設所と同ダムとの間に設置した大沢連絡所(土地面積541.4m2 、23事業年度末帳簿価額992万余円、建物延べ床面積288.6m2 、23事業年度末帳簿価額6790万余円)を保有して管理を行っている。
 しかし、同管理所から同ダムまでの間の幹線道路の除雪体制が整備され、積雪期間の移動が容易になったことなどから、連絡・宿泊施設を存置する必要がなくなり、同管理所は、水の供給契約を打ち切るなどして、22年度に同連絡所の緊急時等の連絡・宿泊施設としての用途を廃止している。

(2) 兼用道路に係る管理費用が応分の負担となっていないもの

構築物(橋りょう) 計22橋 延長1,745.2m

応分の負担となっていない管理費用の額 5億8695万余円

 貴機構が水資源開発施設等として保有し管理を行っている兼用道路については、前記のとおり、貴機構は道路管理者と協議して協定書を取り交わすなどしてその管理費用の負担方法等を決定している。そして、貴機構は、一般的には、兼用道路の舗装から上の部分(舗装、防護柵等)の管理費用については、舗装等が公道としての構築物であることなどから道路管理者の負担とし、舗装よりも下の部分の管理費用については、盛土部等が堤防等として貴機構の業務の目的に沿った用途に供されるものであるなどとして貴機構の負担とすることとした協定書を取り交わすなどしている。
 しかし、橋りょうの舗装よりも下の部分(床版、桁、橋台、橋脚等)については、堤防等のように貴機構の業務の目的に沿った用途に直接供されるものではなく、公道と一体の構築物であることや大規模な工事等において多額の費用が発生することが見込まれることなどから、同部分の大規模な工事等に係る費用については、貴機構が全額負担するのではなく、道路管理者にも応分の負担を求めるべきと認められる。そして、このように、管理費用が応分の負担となっていない橋りょうが、琵琶湖開発総合管理所において見受けられた。
 上記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

 琵琶湖開発総合管理所は、滋賀県道等として利用されている琵琶湖の「湖岸堤・管理用道路」を平成4年度から保有して管理を行っている。そして、同管理所は、兼用道路の橋りょう22橋について、16年度から20年度までの間に、管理の一環として落橋防止対策工事(工事費計5億8695万余円)を実施していた。
 しかし、これらの費用は、協定書等に基づき同管理所の全額負担となっていた。

 (改善を必要とする事態)

 以上のように、貴機構の業務の目的に沿った用途に供されておらず、使用承認等により貴機構以外の者が使用していたり、遊休していたりなどしていて、今後、貴機構が使用する見込みがない土地、構築物等を貴機構が水資源開発施設等として保有し管理を行っている事態及び兼用道路に係る管理費用が応分の負担となっていない事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴機構において、次のことなどによると認められる。

ア 水資源開発施設等の保有の必要性について、使用実態等を踏まえた見直しを適時適切に実施していないこと及び不断に見直しを行う体制を整備していないこと

イ 水資源開発施設等の管理に関して、兼用道路の橋りょうに係る管理費用について、大規模な工事等を実施する場合の道路管理者との間の費用の標準的な負担方法等に係る協議方針を定めていないこと

3 本院が要求する改善の処置

 貴機構は、第2期中期計画において、適正な資産管理に取り組むとともに、国の資産債務改革の趣旨を踏まえ保有資産の見直しを行うこととしている。
 ついては、貴機構において、第2期中期計画等を踏まえた保有資産の見直し及び適正な資産管理に資するよう、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 機構法等に基づき、水資源開発施設等の保有の必要性について検証を実施し、不要と認められるものについては、その使用の実態等を踏まえて、地方公共団体や使用承認により使用させている者等への売却等の検討及び協議を行うとともに、水資源開発施設等の必要性について不断に見直しを行う体制を整備すること

イ 兼用道路の橋りょう等の大規模な工事等を実施する場合の道路管理者との間の費用の標準的な負担方法等に係る協議方針を定め、貴機構の関係部署への周知徹底を図るとともに、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しについて協議等を行うこと