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独立行政法人国立病院機構が保有している土地及び建物について、利用状況を定期的に把握するとともに、有効に利用されていないものについて、具体的な処分計画又は利用計画を策定するよう改善の処置を要求したもの


 独立行政法人国立病院機構が保有している土地及び建物について、利用状況を定期的に把握するとともに、有効に利用されていないものについて、具体的な処分計画又は利用計画を策定するよう改善の処置を要求したもの

科目 固定資産
部局等 独立行政法人国立病院機構本部、37機構病院
37機構病院が管理している土地及び建物の平成24年3月31日現在の帳簿価額 土地 1090億8458万余円
建物 617億9370万余円
1708億7828万余円
上記のうち有効に利用されていない土地及び建物に係る帳簿価額 土地 67億0552万円
建物 2303万円
67億2856万円

【改善の処置を要求したものの全文】

 独立行政法人国立病院機構が保有している資産の利用状況について

(平成24年10月26日付け 独立行政法人国立病院機構理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 貴機構の保有資産の概要

(1) 貴機構の保有資産

  貴機構は、平成16年4月に厚生労働省所管国立病院特別会計に属する国立病院及び国立療養所のうち国立高度専門医療センター及びハンセン病療養所を除いた154国立病院等が移行して設立された独立行政法人であり、24年3月31日現在、国内の144か所に病院(以下「機構病院」という。)を設置している。
 貴機構は、機構病院における実物資産として、土地(病院用地、宿舎用地等。帳簿価額(24年3月31日現在。以下同じ。)計4726億余円)、建物(病棟、看護師等養成所、宿舎等。帳簿価額計3720億余円)等を保有しており、そのほとんどは、貴機構が設立された際に、病院運営を確実に実施するために必要な資産であるとして国からその他の資産及び負債とともに承継したものである。

(2) 保有資産の見直し

 独立行政法人は、22年の独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)の改正により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付するものとされている。
 そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)においては、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行い、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことなどを掲げている。

(3) 貴機構の資産管理

 貴機構は、独立行政法人国立病院機構会計規程(平成16年規程第34号)に基づき、土地、建物等の不動産を含めた固定資産の取得、維持、保存及び運用並びに処分について必要な事項を定めた独立行政法人国立病院機構固定資産管理細則(平成16年細則第8号。以下「管理細則」という。)等を定め、土地、建物等の固定資産の適正かつ効率的な運用を図ることとしている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、貴機構が保有している土地及び建物の利用状況の把握が適切に行われているか、土地及び建物が病院運営を確実に実施するという目的に沿って有効に活用されているか、利用していない土地及び建物について、売却等の処分計画や施設整備等の利用計画が策定されているかなどに着眼して、貴機構が24年3月31日現在で保有している土地及び建物を対象として検査を実施した。検査の実施に当たっては、貴機構本部及び14機構病院(注1) において、施設の配置図等の関係書類を確認したり、土地及び建物の現況等を確認したりするなどして会計実地検査を行うとともに、貴機構本部及び144機構病院から保有資産の利用状況についての調書を徴して分析するなどして検査した。

 (検査の結果)

 独立行政法人は、前記のとおり、基本方針において、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどが求められている。そして、貴機構は、前記のとおり、管理細則等に基づき、土地、建物等の固定資産の適正かつ効率的な運用を図ることとしている。
 そこで、貴機構における土地及び建物の利用状況を検査したところ、貴機構本部及び144機構病院のうち37機構病院(注2) (保有している土地の帳簿価額計1090億8458万余円、建物の帳簿価額計617億9370万余円)において、病院運営を確実に実施するために必要な資産であるとして国から承継した土地及び建物が、具体的な処分計画又は利用計画が策定されないまま23年度末現在で3年以上にわたり有効に利用されていない事態が、次のとおり、合計105件、帳簿価額67億2856万余円(土地:面積計217,830.83m2 、帳簿価額計67億0552万余円(土地の固定資産台帳の計数を、当該土地に所在する全建物の建築面積に対する有効に利用していない建物の建築面積の割合で案分するなどした計数)、建物:延べ面積計40,882.23m2 、帳簿価額計2303万余円)見受けられた。

ア 病棟の閉鎖や看護師等養成所の閉校等により利用を中止した後、建物及びこれに係る土地を有効に利用していないもの
計15件 土地:面積計 117,630.39m2 、帳簿価額計 45億7520万余円
  建物:延べ面積計 34,185.23m2 、帳簿価額計 2万余円

機構病院名 件数 面積
上段:土地面積
   下段:建物延べ面積
帳簿価額
上段:土地
下段:建物
霞ヶ浦医療センター 1 4,651.71m2
2,056.20m2
1億0231万余円
1円
茨城東病院 1 2,717.68m2
418.72m2
1407万余円
1円
宇都宮病院 1 3,676.25m2
279.33m2
8602万余円
1円
下総精神医療センター 1 5,087.60m2
1,373.55m2
5442万余円
1円
東京病院 1 24,749.89m2
6,005.92m2
15億5434万余円
11円
村山医療センター 1 3,377.08m2
572.00m2
2億2534万余円
2万余円
東長野病院 1 5,193.00m2
3,199.24m2
1億3031万余円
2円
天竜病院 2 11,479.12m2
2,430.28m2
1億6759万余円
4円
兵庫中央病院 4 46,013.63m2
13,619.49m2
20億7982万余円
19円
東広島医療センター 1 2,395.39m2
1,987.93m2
8300万余円
1円
宮崎病院 1 8,289.04m2
2,242.57m2
7791万余円
2円
15 117,630.39m2
34,185.23m2
45億7520万余円
2万余円

イ 職員宿舎の建物及びこれに係る土地を有効に利用していないもの
計74件 土地:面積計 44,187.55m2 、帳簿価額計 10億5444万余円
  建物:延べ面積計 6,697.00m2 、帳簿価額計 2301万余円

機構病院名 件数 面積
上段:土地面積
   下段:建物延べ面積
帳簿価額
上段:土地
下段:建物
函館病院 8 3,171.99m2
495.57m2
1億6147万余円
91万余円
旭川医療センター 3 951.92m2
219.66m2
3793万余円
6万余円
帯広病院 2 2,040.31m2
140.63m2
2318万余円
50万余円
八雲病院 3 1,485.84m2
292.52m2
2291万余円
68万余円
八戸病院 1 177.70m2
55.00m2
498万余円
1円
盛岡病院 8 1,444.18m2
454.08m2
4770万余円
115万余円
花巻病院 9 5,000.56m2
508.41m2
2146万余円
258万余円
宮城病院 2 1,799.41m2
150.60m2
569万余円
2円
下総精神医療センター 2 571.66m2
166.04m2
611万余円
2円
村山医療センター 1 338.35m2
129.28m2
2257万余円
216万余円
さいがた病院 7 4,035.92m2
466.70m2
2991万余円
1万余円
富山病院 4 3,241.75m2
256.71m2
1904万余円
4円
東名古屋病院 1 1,452.68m2
120.36m2
7118万余円
1円
舞鶴医療センター 1 711.38m2
129.29m2
3734万余円
66万余円
南京都病院 1 664.79m2
292.20m2
897万余円
1円
近畿中央胸部疾患センター 3 2,398.81m2
680.69m2
2億7343万余円
792万余円
大阪南医療センター 1 132.54m2
120.88m2
731万余円
285万余円
奈良医療センター 3 1,288.61m2
540.92m2
1億0058万余円
3円
南岡山医療センター 1 1,501.83m2
73.50m2
1673万余円
12万余円
高知病院 1 253.46m2
92.00m2
1693万余円
1円
熊本南病院 2 4,913.28m2
144.26m2
5355万余円
4万余円
熊本再春荘病院 2 1,885.38m2
255.96m2
2187万余円
24万余円
宮崎病院 5 3,251.30m2
309.86m2
3056万余円
304万余円
指宿病院 3 1,473.90m2
601.88m2
1294万余円
3円
74 44,187.55m2
6,697.00m2
10億5444万余円
2301万余円

ウ 病棟や職員宿舎を取り壊した跡地等を更地のまま保有していて有効に利用していないもの

計16件(土地面積計56,012.89m2 、帳簿価額計10億7587万余円)

機構病院名 件数 土地面積 帳簿価額
霞ヶ浦医療センター 2 3,509.00m2 7718万余円
茨城東病院 1 864.00m2 447万余円
宇都宮病院 1 7,000.00m2 1億6379万余円
東京病院 1 812.16m2 3719万余円
石川病院 1 300.00m2 308万余円
天竜病院 1 9,469.56m2 1億3825万余円
東尾張病院 2 2,942.09m2 1億0297万余円
紫香楽病院 1 600.00m2 1077万余円
東広島医療センター 2 8,000.00m2 2億7999万余円
柳井医療センター 1 11,000.00m2 1億3199万余円
肥前精神医療センター 1 3,000.00m2 4608万余円
宮崎病院 2 8,516.08m2 8005万余円
16 56,012.89m2 10億7587万余円

 上記の事態のうち、事例を示すと次のとおりである。

 <事例>

 天竜病院(浜松市所在)は、結核病棟の閉鎖により、平成13年に建物を取り壊して更地とした土地(面積9,469.56m2 、帳簿価額1億3825万余円)を、独立行政法人化の際に、病院運営を確実に実施するために必要な資産であるとして国から承継していた。
 しかし、同病院は、24年3月31日現在、具体的な売却等の処分計画や施設整備等の利用計画を策定しないまま、当該土地を更地のまま保有していて有効に利用していなかった。

 (改善を必要とする事態)

 前記のように、貴機構において、病院運営を確実に実施するために必要であるとして国から承継した土地及び建物が、有効に利用されておらず、また、それらの土地及び建物について具体的な処分計画又は利用計画が策定されないまま保有している事態は、通則法改正の趣旨及び基本方針等にのっとっていないものとなっていて適切ではなく、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴機構において、次のことなどによると認められる。

ア 貴機構本部において、各機構病院の土地及び建物の利用状況を定期的に把握して、自主的な見直しを不断に行うなどの体制が整備されていないこと

イ 37機構病院において、有効に利用されていない土地及び建物について、不断の見直しや、具体的な処分計画又は利用計画を策定することについての認識が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置

 貴機構が保有している土地及び建物は、そのほとんどが独立行政法人化に伴って国から承継した資産である。したがって、有効に利用されていない資産については、処分計画又は利用計画を策定し、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなった資産については国庫納付等の処分を着実に行うことが必要である。
 ついては、貴機構本部において、有効に利用されていない土地及び建物の処分又は利用を図るために、次のとおり改善の処置を要求する。

ア 各機構病院の土地及び建物の利用状況を定期的に把握して自主的な見直しを不断に行うための体制を整備すること

イ 前記の37機構病院に対して、有効に利用されていない土地及び建物について、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる場合には、具体的な国庫納付等の処分計画を策定させ、必要があると認められる場合には、具体的な施設整備等の利用計画等を策定させること

ウ イの37機構病院を含む各機構病院に対して、今後、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要と認められない資産が生じた場合等には、イと同様の処置を速やかに講ずることの必要性について周知徹底を図ること

(注1)
 14機構病院  帯広病院、下志津病院、東京病院、信州上田医療センター、小諸高原病院、静岡医療センター、姫路医療センター、兵庫青野原病院、南岡山医療センター、広島西医療センター、四国がんセンター、九州がんセンター、大牟田病院、熊本南病院
(注2)
 37機構病院  函館病院、旭川医療センター、帯広病院、八雲病院、八戸病院、盛岡病院、花巻病院、宮城病院、霞ヶ浦医療センター、茨城東病院、宇都宮病院、下総精神医療センター、東京病院、村山医療センター、さいがた病院、東長野病院、富山病院、石川病院、天竜病院、東名古屋病院、東尾張病院、紫香楽病院、舞鶴医療センター、南京都病院、近畿中央胸部疾患センター、大阪南医療センター、兵庫中央病院、奈良医療センター、南岡山医療センター、東広島医療センター、柳井医療センター、高知病院、肥前精神医療センター、熊本南病院、熊本再春荘病院、宮崎病院、指宿病院