ページトップ
メイン
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 |
  • 平成25年10月 |
  • 東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について

第2 検査の結果


1 東日本大震災に伴う被災等の状況

(1) 被害及び支援の状況

23年3月11日に、三陸沖を震源とする国内観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震(以下「東北地方太平洋沖地震」という。)が発生した。この地震により、宮城県北部で震度7を観測したほか、東日本を中心に北海道から九州地方にかけて震度1から6強を観測した。また、福島県で9.3m以上の津波を観測するなど、東北地方から関東地方北部までを中心に、太平洋沿岸の広い範囲で津波を観測した。さらに、同日、福島第一原発においては、全ての交流電源が失われ、冷却機能を喪失したことにより、大量の放射性物質が放出されるという重大な事故が発生した。政府は、東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害について、閣議において「東日本大震災」と称することに決定した。

東日本大震災は、東北3県を中心に広い範囲で甚大な被害をもたらした。東日本大震災による全国の被害等及び会計検査院が会計実地検査を行った8道県及び100市町村における被害等の状況は、以下のとおりである。

ア 人的被害等の状況

(ア) 人的被害

死者、行方不明者等の人的被害は、いまだ全容の把握に至っていないが、死者15,883人、行方不明者2,656人(25年8月9日現在)等となっている。都道県別の人的被害は、表1のとおりである。

表1 全国における人的被害

(単位:人)

都道県 死者  行方不明者 負傷者
北海道 1 0 3
東北 青森県 3 1 111
岩手県 4,673 1,145 212
宮城県 9,537 1,299 4,145
秋田県 0 0 11
山形県 2 0 29
福島県 1,606 208 182
東京都 7 0 117
関東 茨城県 24 1 712
栃木県 4 0 133
群馬県 1 0 39
埼玉県 0 0 45
千葉県 21 2 258
神奈川県 4 0 137
新潟県 0 0 3
山梨県 0 0 2
長野県 0 0 1
静岡県 0 0 3
中部 三重県 0 0 1
四国 高知県 0 0 1
15,883 2,656 6,145
(注)
宮城県沖を震源とする地震(平成23年4月7日、24年6月18日及び8月30日)、福島県浜通りを震源とする地震(23年4月11日)、福島県中通りを震源とする地震(23年4月12日)、千葉県北東部を震源とする地震(23年5月22日)、福島県沖を震源とする地震(23年7月25日、同月31日、8月12日、同月19日及び10月10日)、茨城県北部を震源とする地震(23年9月10日、11月20日、24年2月19日及び25年1月31日)、茨城県沖を震源とする地震(24年3月1日)、千葉県東方沖を震源とする地震(24年3月14日)及び三陸沖を震源とする地震(24年12月7日)による被害を含む。表5(全国における建物への被害)において同じ。

出典:警察庁「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」(平成25年8月9日公表)

また、復興庁によれば、このほか、東日本大震災による負傷の悪化等による震災関連死の死者数が1都9県で2,688人(25年3月31日現在)となっている。

(イ) 避難の状況

避難者数は、震災発生直後のピーク時において約47万人とされており、震災発生から1週間を経過した時点では、約38万人が避難所2,182か所に避難していたとされている。その後、避難所等から自宅へ帰宅したり、応急仮設住宅へ移ったりするなどして、学校等に設置された避難所は23年12月末までにほぼ解消されているが、25年6月末現在、親族・知人宅や応急仮設住宅等において生活している避難者は、全国で約29万8000人(参考:24年7月末現在34万3000人(24年報告))に上ることが把握されている。これを都道府県別にみると、岩手県約3万8000人、宮城県約10万1000人、福島県約9万3000人等となっており、全国の避難者数に占める東北3県の避難者数の割合は78.5%とその大多数を占めている。また、甚大な被害を受けた東北3県では、県外へ避難している住民も多く、岩手県では約1,000人、宮城県では約7,000人が県外に避難している。特に、福島県では、原子力発電所の事故等により、約5万3000人(同約6万人)もの住民が他県等における長期の避難を余儀なくされている。

全国における避難者数の推移

(注)
復興庁が公表している「全国の避難者等の数」を基に作成した。

会計実地検査を行った100市町村において被災した住民の避難の状況についてみると、表2のとおり、23年12月末現在で2,751人が避難しており、このうち応急仮設住宅等に入居している避難者が1,842人となっていた。そして、25年3月末現在で2,227人が避難しており、このうち応急仮設住宅等に入居している避難者は1,261人となっている。

表2 100市町村における被災した住民の避難の状況

(単位:人)

道県名 市町村数 平成23年12月末現在 25年3月末現在
避難先市
町村数
避難者数 避難先市
町村数
避難者数
うち仮設住宅等
への入居者数
うち仮設住宅等
への入居者数
北海道 4 0 0 0 0 0 0
青森県 4 3 261 245 2 204 198
茨城県 40 22 1,330 721 27 1,455 607
栃木県 17 6 145 85 4 88 38
埼玉県 1 0 0 0 0 0 0
千葉県 29 7 776 613 6 444 386
新潟県 3 3 87 70 2 25 25
長野県 2 1 152 108 1 11 7
100 42 2,751 1,842 42 2,227 1,261

東日本大震災の被害は甚大で広範なものであることから、被災者は近隣の県や遠く全国に避難したり、家族が離れて避難したりしており、全国の市町村では避難者に対して応急仮設住宅を提供するなどして支援している。

これら市町村の中には、自らも被災する状況の下、他県からの被災者を受け入れている市町村も多く見受けられる。そこで、前記100市町村における他県からの避難者の受入状況についてみると、表3のとおり、23年12月末現在、岩手県からの避難者172人、宮城県からの避難者437人、福島県からの避難者7,254人等計7,895人を受け入れていた。その後、25年3月末現在、岩手県からの避難者が157人、宮城県からの避難者が409人とそれぞれ減少しているものの、福島県からの避難者は8,301人と増加していて計8,893人を受け入れている。また、茨城県や千葉県の比較的都市部の市町村が多くの避難者を受け入れていた。

表3 100市町村における他県からの避難者の受入状況

(単位:人)

道県名 市町村
岩手県 宮城県 福島県 その他の被災県
25年3月末現在 25年3月末現在 25年3月末現在 25年3月末現在 25年3月末現在
平成23
年12月
末現在
避難者
避難先
市町村
避難者
平成23
年12月
末現在
避難者
避難先
市町村
避難者
平成23
年12月
末現在
避難者
避難先
市町村
避難者
平成23
年12月
末現在
避難者
避難先
市町村
避難者
平成23
年12月
末現在
避難者
避難先
市町村
避難者
うち仮設
住宅等へ
の入居者
うち仮設
住宅等へ
の入居者
うち仮設
住宅等へ
の入居者
うち仮設
住宅等へ
の入居者
うち仮設
住宅等へ
の入居者
北海道 4 5 0 0 0 3 1 2 0 10 1 9 3 0 0 0 0 18 2 11 3
青森県 4 42 3 42 22 89 3 83 24 200 4 193 94 5 2 5 3 336 12 323 143
茨城県 40 19 9 27 17 64 12 55 15 2,858 38 3,751 1,849 4 2 5 3 2,945 61 3,838 1,884
栃木県 17 20 3 10 4 71 6 57 28 1,947 13 1,854 947 5 1 4 4 2,043 23 1,925 983
埼玉県 1 1 0 0 0 11 1 9 6 165 1 126 49 0 0 0 0 177 2 135 55
千葉県 29 84 13 78 15 188 18 195 32 1,826 22 2,190 1,228 18 5 12 2 2,116 58 2,475 1,277
新潟県 3 1 0 0 0 11 2 8 0 248 2 178 145 0 0 0 0 260 4 186 145
長野県 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
100 172 28 157 58 437 43 409 105 7,254 81 8,301 4,315 32 10 26 12 7,895 162 8,893 4,490
(ウ) 被災地の住民の減少等の状況

被災地、特に東北3県では、他県等に避難している住民も多く、様々な理由から避難先等に住民登録を移している住民も多く見受けられる。そこで、総務省が毎年公表している3月末現在の住民基本台帳に基づく人口動態により、特定被災自治体が所在する11道県の人口の増減状況をみると、表4のとおり、23年度末の11道県の人口は22年度末現在の人口と比較して10道県で減少しており、青森県、岩手県、宮城県及び福島県の増減率は全国平均を大幅に下回っている。

表4 全国における人口動態の状況

都道府県
等名
人口(千人) 23年度
増減率
(%)
24年度末
増減率
(%)
平成22年度末 23年度末 24年度末 うち
自然増減
うち
社会増減
うち
自然増減
うち
社会増減
北海道 5,498 5,474 5,444 △0.4 △0.3 △0.1 △0.5 △0.3 △0.1
青森県 1,395 1,383 1,368 △0.9 △0.5 △0.4 △1.0 △0.6 △0.4
岩手県 1,334 1,317 1,309 △1.2 △0.8 △0.4 △0.6 △0.5 △0.1
宮城県 2,318 2,302 2,304 △0.7 △0.4 △0.2 0 △0.1 0.2
福島県 2,036 1,991 1,971 △2.1 △0.5 △1.6 △1.0 △0.4 △0.5
茨城県 2,973 2,960 2,947 △0.4 △0.2 △0.2 △0.4 △0.2 △0.1
栃木県 1,995 1,988 1,981 △0.3 △0.2 △0.1 △0.3 △0.2 △0.1
埼玉県 7,140 7,149 7,156 0.1 △0.0 0.1 0 △0.0 0.1
千葉県 6,161 6,147 6,136 △0.2 △0.0 △0.1 △0.1 △0.0 △0.1
新潟県 2,378 2,364 2,348 △0.6 △0.4 △0.1 △0.6 △0.4 △0.2
長野県 2,153 2,145 2,134 △0.3 △0.3 △0.0 △0.5 △0.4 △0.1
上記以外
の都府県
91,534 91,433 91,290 △0.1 △0.1 0 △0.1 △0.1 △0.0
全国 126,923 126,659 126,393 △0.2 △0.1 △0.0 △0.2 △0.1 △0.0
(注)
総務省が公表している「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」を基に作成した。

特に、福島県は、図3のとおり、転入者数や転出者数等による人口増減を示す社会増減率が23年度マイナス1.6%、24年度マイナス0.5%と、東日本大震災発生後の減少が著しくなっていて、原子力災害が大きな影響を及ぼしていることが推察される。そして、これら被災地における住民の転出等が復興への合意形成や復興計画の策定、コミュニティの維持等に様々な影響を及ぼすことが懸念されている。

図2 東北3県の自然増減率の推移 図3 東北3県の社会増減率の推移

東北3県の自然増減率の推移東北3県の社会増減率の推移

(注)
総務省が公表している「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」を基に作成した。

建物等への被害等の状況

(ア) 建物への被害

建物への被害については、津波により壊滅的な被害を受けた地域があり、全容の把握には至っていないが、全壊126,483戸、半壊272,287戸、一部破損742,425戸等(25年8月9日現在)となっている。都道県別の建物への被害は、表5のとおりである。

表5 全国における建物への被害

(単位:戸)

都道県 全壊 半壊 一部破損 非住家被害
北海道 0 4 7 469
東北 青森県 308 701 1,006 1,402
岩手県 18,370 6,558 14,146 5,412
宮城県 82,889 155,099 222,781 28,747
秋田県 0 0 3 3
山形県 0 0 21 96
福島県 21,190 73,022 166,752 1,117
東京都 15 198 4,847 1,101
関東 茨城県 2,625 24,225 185,332 19,846
栃木県 261 2,118 73,125 295
群馬県 0 7 17,246 0
埼玉県 24 199 1,800 33
千葉県 801 10,117 54,871 660
神奈川県 0 39 454 13
新潟県 0 0 17 9
山梨県 0 0 4 0
静岡県 0 0 13 9
中部 三重県 0 0 0 9
126,483 272,287 742,425 59,221
(注)
非住家被害とは、官公署、学校、病院等、住家以外の建築物に係る被害である。

出典:警察庁「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」(平成25年8月9日公表)

(イ) 地方公共団体が所有し、又は管理する施設等への被害

東日本大震災により、地方公共団体等が所有し、又は管理する庁舎や学校、保育所等の施設も甚大な被害を受けた。会計実地検査を行った8道県及び100市町村における被害状況についてみると、表6のとおり、25年3月末現在の被害額は、公共土木施設2928億余円、農林水産業関係2377億余円等計6423億余円と推計されている。

表6 8道県及び100市町村における地方公共団体が所有し、又は管理する施設等への被害状況(平成25年3月31日現在)

(単位:百万円)

道県名 庁舎等施設(警
察及び消防施
設を含む)
福祉施設 教育・文化
施設
公共土木施設 農林水産業
関係
商工業関係
北海道 857 0 6 1,391 22,764 415 25,435
青森県 1,449 389 697 44,124 53,009 1,202 100,873
茨城県 9,923 20,999 38,453 159,607 125,206 5,774 359,964
栃木県 1,769 2,771 10,940 6,970 7,359 889 30,701
埼玉県 61 1 122 510 0 5 701
千葉県 861 2,683 9,912 71,635 21,642 125 106,861
新潟県 16 85 244 3,364 1,342 70 5,123
長野県 83 180 360 5,291 6,470 294 12,681
15,023 27,111 60,737 292,896 237,796 8,777 642,342
(注)
各特定被災自治体には、表中の被害額のほかに推計できない被害が生じている。
(ウ) 災害廃棄物等の処理

大規模な地震及び津波により、東北3県の沿岸市町村を中心としてがれきと称される大量の災害廃棄物及び津波堆積物(以下、これらを合わせて「災害廃棄物等」という。)が発生した。

災害廃棄物等の量は、表7のとおり、25年6月末現在、岩手県532万t、宮城県1796万t、福島県482万t、東北3県以外の10道県148万t、計2960万tとなっており、その大多数を東北3県が占めている。

上記2960万tの処理・処分状況についてみると、岩手県293万t、宮城県1325万t、福島県212万t、東北3県以外の10道県141万t、計1973万tが処理・処分済みとなっていて、東北3県における処理・処分が完了していない災害廃棄物等が多い状況となっている。なお、災害廃棄物等の推計量については、処分が進むにつれて、より正確な数値へと見直しが行われている。

表7 13道県における災害廃棄物等処理の進捗状況(平成25年6月30日現在)

(単位:百万円)

県名 全体 災害廃棄物 津波堆積物
災害廃棄物
等推計量
(千t)
処理・処分
済み量
(千t)
災害廃棄物
等推計量
(千t)
仮置場搬入済み量 処理・処分済み量 津波堆積
物推計量
(千t)
仮置場搬入済み量 処理・処分済み量

(千t)

(%)

(千t)

(%)

(千t)

(%)

(千t)

(%)
A B B/A C C/A D E E/D F F/D
岩手県 5,324 2,939 3,836 3,666 95.5 2,419 63 1,488 1,407 94.5 520 34.9
宮城県 17,965 13,252 11,079 10,494 94.7 9,170 82.7 6,886 5,956 86.4 4,082 59.2
福島県 4,829 2,129 2,985 2,243 75.1 1,703 57 1,845 1,408 76.3 426 23
東北3県以外
の10道県
1,485 1,417 1,417 1,343 94.7 1,349 95.2 68 68 100 68 100
29,603 19,735 19,316 17,745 91.8 14,639 75.7 10,287 8,840 85.9 5,096 49.5
注(1)
環境省が公表している「災害廃棄物等処理の進捗状況」(平成25年7月26日)を基に作成した。
注(2)
福島県は避難区域を除く。
注(3)
東北3県以外の10道県は、北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、静岡、長野各県である。

ウ 被災者への支援の状況

(ア) 応急仮設住宅の状況

東日本大震災により、多くの人が住む場所を失い、避難生活を余儀なくされることとなった。国は、災害救助法の規定に基づく救助として、応急仮設住宅の設置を推進した。応急仮設住宅の供与期間は原則として2年以内とされているが、24年4月に、災害公営住宅等の恒久住宅の整備になお時間を要する状況にあることなどを踏まえて、1年間延長することとされた。また、25年4月に、地域の実情を踏まえて、応急仮設住宅の供与期間を延長する必要がある場合は、更に延長ができることとされた。

一方、避難者が自主再建するなどして転居することにより、今後応急仮設住宅に空き住戸が発生することも予想されることから、23年8月、空き住戸を弾力的に活用することとされ、コミュニティの形成や交流の促進に資するための集会や談話等のスペースとして利用することなどが可能となり、24年1月には、他の地方公共団体からの応援職員等の宿泊利用についても可能とされた。

国土交通省によれば、応急仮設住宅は、東北3県において53,312戸、その他の4県を合わせて計53,627戸の設置が必要とされており、25年4月1日現在、必要戸数の99.8%が完成したとしている。

また、前記100市町村における25年3月末現在の応急仮設住宅の状況は、表8のとおり、必要戸数315戸の全てが完成している。このうち、入居戸数は167戸、空き戸数は148戸となっており、空き戸数148戸のうち59戸は閉所となっていた。

表8 100市町村における応急仮設住宅(設置によるもの)の戸数(平成25年3月31日現在)

(単位:戸)

道県名 市町村数 設置済み
市町村数
必要戸数 着工済戸数 完成戸数 入居戸数 空き戸数
うち閉所戸数
北海道 4 0 0 0 0 0 0 0
青森県 4 0 0 0 0 0 0 0
茨城県 40 1 10 10 10 10 0 0
栃木県 17 1 20 20 20 9 11 11
埼玉県 1 0 0 0 0 0 0 0
千葉県 29 2 230 230 230 147 83 0
新潟県 3 0 0 0 0 0 0 0
長野県 2 1 55 55 55 1 54 48
100 5 315 315 315 167 148 59
(イ) 災害弔慰金、災害障害見舞金及び災害援護資金の支給等の状況

東日本大震災により生命又は身体に被害を受けた被災者等に対しては、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき、自然災害により死亡した住民の遺族に対する災害弔慰金、精神又は身体に同法で定める重度の障害を受けた住民に対する災害障害見舞金をそれぞれ支給するとともに、被災世帯の世帯主に対しては生活の立て直しに資するための災害援護資金を貸し付けている。災害弔慰金の支給額は、生計維持者の住民が死亡した場合は500万円、その他の住民が死亡した場合は250万円、災害障害見舞金の支給額は、生計維持者の住民が障害を受けた場合は250万円、その他の住民が障害を受けた場合は125万円となっている。また、災害援護資金は、被害の程度、世帯人員の所得等に応じて貸し付けられるもので、その限度額は350万円等とされている。災害弔慰金等は、住民やその遺族の申請に基づき、当該住民が災害時に住所を有する市町村が支給等することとされており、国は、災害弔慰金及び災害障害見舞金に係る支給額の2分の1を負担し、災害援護資金に係る貸付原資の3分の2を貸し付けることとされている。

厚生労働省は、東日本大震災に係る25年3月末までの災害弔慰金等の件数、支給額等について、表9のとおり、災害弔慰金19,257件、支給額573億余円、災害障害見舞金72件、支給額1億余円、災害援護資金26,833件、貸付額461億余円としている。

表9 全国における災害弔慰金の支給額等(平成25年3月31日現在)

(単位:百万円)

都道府県名 災害弔慰金 災害障害見舞金 災害援護資金
件数 支給額 左のうち国庫
負担金
件数 支給額 左のうち国庫
負担金
件数 貸付額 左のうち国庫
貸付金
北海道 8 27 13 - - -
青森県 14 50 25 - - - 37 88 59
岩手県 5,507 16,647 8,323 14 25 12 664 1,571 1,047
宮城県 10,593 31,505 15,752 25 46 23 22,233 37,257 24,838
福島県 2,952 8,507 4,253 29 43 21 2,763 5,033 3,355
茨城県 64 217 108 2 2 1 734 1,404 936
栃木県 6 20 10 - - - 29 56 37
埼玉県 16 50 25 - - -
千葉県 31 102 51 1 1 0 345 687 458
新潟県 2 5 2 - - - - - -
長野県 3 10 5 - - - 4 7 4
その他16都府県 61 197 98 1 2 1 24 45 30
全国計 19,257 57,340 28,670 72 121 60 26,833 46,151 30,767
注(1)
その他16都府県は、東京都、大阪府、秋田、山形、群馬、神奈川、石川、岐阜、静岡、愛知、滋賀、兵庫、広島、佐賀、熊本、鹿児島各県である。
注(2)
災害援護資金は、災害救助法が適用された東京都、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野各県が対象とされている。
注(3)
災害弔慰金及び災害障害見舞金に係る国庫負担金は、厚生労働省により示された支給額の値に国庫負担割合である2分の1を乗じて算出したものであり、また、災害援護資金に係る国庫貸付金は、同省により示された貸付額の値に国庫貸付割合である3分の2を乗じて算出したものである。
(ウ) 被災者生活再建支援金の支給状況

東日本大震災の発生を受けて、11都県において、被災者生活再建支援制度が適用された。同制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対して、生活の再建を支援して、住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的として、被災した世帯主に対して支援金を支給するもので、国は、都道府県が拠出した基金が支給する支援金の2分の1(東日本大震災分は5分の4)に相当する額を補助することとされている。支援金には、住宅の被害程度に応じて50万円又は100万円を支給する基礎支援金と、住宅の再建方法に応じて50万円、100万円又は200万円を支給する加算支援金(世帯人数が1人の場合は、いずれも該当する金額の4分の3の額)とがある。

内閣府は、東日本大震災に係る25年3月末までの被災者生活再建支援金の支給世帯数、支給額について、表10のとおり、基礎支援金186,491世帯、1480億余円(国庫補助金相当額1184億余円)、加算支援金98,319世帯、1163億余円(同930億余円)、延べ284,810世帯、計2643億余円(同2115億余円)としている。

表10 11都県における被災者生活再建支援金の支給額(平成25年3月31日現在)

(単位:百万円)

都県名 基礎支援金 加算支援金
世帯数 支給額 左のうち国庫
補助金相当額
世帯数 支給額 左のうち国庫
補助金相当額
世帯数
(延べ数)
支給額 左のうち国庫
補助金相当額
青森県 512 405 324 343 375 300 855 780 624
岩手県 22,801 20,130 16,104 5,943 8,029 6,423 28,744 28,159 22,527
宮城県 120,459 94,907 75,925 65,693 73,730 58,984 186,152 168,638 134,910
福島県 26,860 20,991 16,793 14,802 19,090 15,272 41,662 40,082 32,065
茨城県 9,006 6,869 5,495 6,275 8,398 6,718 15,281 15,267 12,214
栃木県 852 760 608 691 1,142 913 1,543 1,902 1,521
埼玉県 73 50 40 62 74 59 135 124 99
千葉県 5,672 3,717 2,973 4,360 5,261 4,208 10,032 8,978 7,182
東京都 24 22 17 24 14 11 48 36 29
新潟県 124 109 87 56 94 75 180 203 163
長野県 108 96 76 70 116 93 178 212 169
186,491 148,058 118,446 98,319 116,327 93,061 284,810 264,385 211,508

上記の国による支援のほか、被災者や遺族には、義援金の受付団体等から地方公共団体を通じて、被災の程度に応じた義援金が配分されるなどの支援が行われている。

(2) 国の復旧・復興への取組

ア 東日本大震災発生直後から23年度末までの取組

24年報告に記載したとおり、国は、23年3月11日の東日本大震災発生直後から、応急対応や応急仮設住宅の建設等を実施する一方、23年6月24日に施行した復興基本法に基づき、復興基本方針を決定して、復興財源確保法、特区法等を制定した(10004_1_224年報告参照)。

このうち、復興基本方針においては、実施する施策として、国は、①「被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策」、②「被災者の避難先となっている地域や震災による著しい悪影響が社会経済に及んでいる地域等、被災地域と密接に関連する地域において、被災地域の復旧・復興のために一体不可分のものとして緊急に実施すべき施策」、③「上記と同様の施策のうち、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策」を各府省一体となって実施するとされた。

そして、復興施策として、①災害に強い地域づくり、②地域における暮らしの再生、③地域経済活動の再生、④大震災の教訓を踏まえた国づくりの4項目を総合的かつ計画的に実施することとし、原子力災害からの復興として、①応急対策、復旧対策、②復興対策、③政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進の3項目について、その迅速な対応を図ることとした(10004_1_3_3_3同参照)。

また、国は、復興基本法の基本理念にのっとり、復興に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けること及び主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ることを任務とする復興庁を24年2月10日に開庁し、復旧・復興施策に全力を挙げて取り組むこととした(10004_1_3_6同参照)。

さらに、福島第一原発における事故による原子力災害については、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)等に基づき、警戒区域等が設定されるとともに、福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号。以下「福島特措法」という。)が24年3月31日に公布され、同日施行されて、福島特措法に基づく福島復興再生基本方針(以下「福島基本方針」という。)が同年7月13日に閣議決定された(10004_1_2_7同参照)。

イ 主として24年度以降の取組

(ア) 東日本大震災復興特別会計

東日本大震災からの復旧・復興に係る財源及び予算については、復興基本方針において、復興債の発行の在り方について十分検討するとともに、従来の国債とは区分して管理すること、また、復興債の償還財源となる時限的な税制措置は、償還期間中に行い、その税収は、全て復興債の償還を含む復旧・復興費用に充て、他の経費には充てないことを明確化するために、他の歳入とは区分して管理することとされている。そして、復興財源確保法の附則の規定を踏まえて、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)を改正して、24年度に東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)が設置された。

復興特会は、復興財源確保法において規定された復興特別税及び復興債の発行収入金を主な歳入項目とし、復興事業に要する費用、復興債の元利償還金等を主な歳出項目としている。また、特会法の附則において、23年度に発行した復興債の償還に係る債務等を復興特会に帰属させることなどが規定されている。

平成24年度東日本大震災復興特別会計当初予算(以下「24年度当初予算」という。)は、図4のとおり、3兆7753億余円となっており、その内訳は、復興庁所管予算計2兆0432億余円と各省各庁所管予算計1兆7320億余円となっている。復興庁所管予算のうち主なものは、復興関係事業費を復興庁が一括して要求し確保する一括計上予算1兆7429億余円及び東日本大震災復興交付金(以下「復興交付金」という。)2867億余円である。

また、25年2月26日に、日本経済再生に向けた緊急経済対策の一環として東日本大震災の被災地の復興の加速を最優先とするために、平成24年度東日本大震災復興特別会計補正予算(以下「24年度1次補正」という。)1兆1952億余円が成立した。その内訳は、復興庁所管予算1240億余円、その他各省各庁所管予算1兆0712億余円となっている。

図4 24年度当初予算の内訳

24年度当初予算の内訳

(注)
復興庁が公表している「復興の現状と取組」を基に作成した。
(イ) 財源フレームの見直し

復興基本方針においては、当初5年間の「集中復興期間」の事業規模は少なくとも19兆円程度と見込んでいること、また、復興期間の一定期間経過後に事業の進捗等を踏まえて復旧・復興事業の規模の見込みと財源について見直しを行い、集中復興期間後の施策の在り方も定めることとされている(10004_1_3_324年報告参照)。これについては、25年1月に、復興推進会議において「今後の復旧・復興事業の規模と財源について」(平成25年1月復興推進会議決定)が決定された。

上記の見直しでは、事業規模については、23、24両年度に予算に計上された施策・事業の規模約17.5兆円(国と地方(公費分)を合わせたもの)に加えて、25年度予算における施策・事業の規模が3.3兆円程度であり、決定時点で26、27両年度に確実に実施が見込まれる施策・事業の規模が2.7兆円程度であるため、「集中復興期間」に実施する施策・事業の規模は、合わせて少なくとも23.5兆円程度と見込まれるとしている。一方、復旧・復興に充てる財源については、これまで確保されている19兆円程度に加えて、日本郵政株式会社の株式の売却収入として見込まれる4兆円程度、23年度の決算剰余金等による2兆円程度を確保することにより、計25兆円程度を確保することとしている。

見直し後の集中復興期間における復旧・復興対策の財源内訳を示すと、図5のとおりである。

図5 見直し後の集中復興期間における復旧・復興対策の財源内訳

見直し後の集中復興期間における復旧・復興対策の財源内訳

注(1)
復興庁が公表している「復興の現状と取組」等を基に作成した。
注(2)
原子力損害賠償法、原子力損害賠償支援機構法に基づき、事業者が負担すべき経費等は含まれていない。

 

(ウ) 復興庁における福島対応体制の強化

復興庁は、25年2月1日に、福島対応体制の抜本的な強化策として、福島復興再生総局(以下「福島総局」という。)及び福島復興再生総括本部(以下「総括本部」という。)を設置した。

このうち、福島総局は、福島現地に設置されたものであり、原子力災害からの福島の復興関連施策に関して、現地での実施機能を強化し、福島復興局、福島環境再生事務所、原子力災害現地対策本部の連携強化、被災地の現場における施策の迅速化を進めることとされている。

また、総括本部は、現地の福島総局だけでは解決できない課題を迅速かつ確実に処理できるよう、原子力災害からの福島の復興及び再生に関して、関係省庁の諸施策を総括し、総合的かつ強力に推進するために、復興庁に設置されたものである。

図6 福島復興再生総局及び福島復興再生総括本部の体制

福島復興再生総局及び福島復興再生総括本部の体制

注(1)
復興庁が公表している「福島対応体制の強化について」等を基に作成した。
(エ) 復興交付金事業計画

復興特別区域制度は、特区法に基づき、震災により一定の被害を生じた区域である227市町村の特定被災区域(巻末別図1参照)において、その全部又は一部の区域が特定被災区域である特定被災自治体が、特例を活用したり、事業等を実施したりするための復興推進計画、復興整備計画又は復興交付金事業計画の作成を行うことができるとするものである(10004_1_3_524年報告参照)。

このうち、復興交付金事業計画は、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の市町村が単独で又は市町村と道県が共同で作成する計画で、市町村又は道県は、目標を実現するために必要となる事業として復興交付金事業を同計画に記載し、内閣総理大臣に提出するなどして、復興交付金の交付を受けるものである。復興交付金事業には、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省(以下「関係5省」という。)が所管する40の基幹事業と、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために実施する効果促進事業とがある。

復興交付金は、24年3月から25年7月末までの間に、計6回の交付可能額が通知されており、この間、特定被災自治体からの要望等を踏まえて、基幹事業及び効果促進事業について見直しが行われている。

すなわち、24年5月25日に通知された第2回復興交付金においては、復興交付金の使い勝手を向上させて、市町村の自由な事業実施による被災地の漁業集落や市街地の再生を加速するために、40の基幹事業のうちの漁業集落防災機能強化事業、津波復興拠点整備事業、市街地再開発事業、都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)及び防災集団移転促進事業に係る各事業費の20%を効果促進事業に係る分の一部として一括配分して、市街地整備のコーディネート費等東日本大震災復興交付金制度要綱に定められた特定の事業(以下「ポジティブリスト」という。)は事前の計画提出や承認を経ずに実施できることとされた。

また、25年3月8日に通知された第5回復興交付金においては、被災地からの様々な要望を踏まえて運用の柔軟化を図ることとして、基幹事業については、今後の新たな課題に対応し、復興を加速させるために、採択の範囲が拡大され、効果促進事業については、ポジティブリストを廃止して市町村が自由に事業を実施できることなどとする見直しが行われた。

(オ) 復興基金

復興基本方針では、地域において、基金設置等により、制度の隙間を埋めて必要な事業の柔軟な実施が可能となる資金を確保できるよう、必要な支援を実施することとしている。それを受けて、平成23年度一般会計第2次補正予算(以下「23年度2次補正」という。)で増額された特別交付税を基に、東日本大震災からの復興に向けて、被災団体が、地域の実情に応じて、住民生活の安定やコミュニティの再生、地域経済の振興、雇用維持等について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的かつきめ細かに対処できる資金として、「取崩し型復興基金」(総額1960億円。以下「復興基金」という。)が創設された。

そして、復興基金の設置についての特別交付税措置は、特定被災地方公共団体である青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県及び長野県を対象とし、復興基金の使途及び運用については、各県の判断に委ねられている。

また、24年度1次補正において、津波による被災地域における安定的な生活基盤(住まい)の形成に資する施策を通じて住民の定着を促して、復興まちづくりを推進する観点から、被災団体が、地域の実情に応じて弾力的かつきめ細かに対応することができるよう、震災復興特別交付税の増額により1047億余円が措置されている。

(カ) 事故繰越手続の簡素化及び執行の見直し

平成23年度補正予算(第1次から第3次まで)で措置された事業について、事業量の増加に伴う人手や資材の不足、用地取得の難航等により事業の進捗に遅れが生じていて、24年度に明許繰越し(財政法(昭和22年法律第34号)第14条の3の規定に基づき、あらかじめ繰越明許費として国会の議決を経て翌年度に繰り越したものをいう。)を行ってもなお24年度内に完成しない事業が多数ある現状と、被災地からの要請等を踏まえるなどして、24年11月に、復興推進会議における合意を受けて、東日本大震災からの復興を着実に進めるために、復興事業の円滑な執行に資するよう、財務省は「被災地域における事故繰越事務手続について」(平成24年事務連絡第2595号)を発した。

同事務連絡によれば、平成23年度補正予算(第1次から第3次まで)で措置された事業の事故繰越しに係る事務手続について、繰越理由書の簡略化、財務局等の審査のために提出していた事業概要等の添付資料の全廃及び財務局ヒアリングの全廃を行うとされている。

また、復興予算の計上及び使途に関して、同会議において「今後の復興関連予算に関する基本的な考え方」(平成24年11月復興推進会議決定。以下「基本的な考え方」という。)が決定された。これによれば、復興庁が所管する予算及び被災地向け予算については、引き続き復興特会に計上すること、全国向け予算については、一部を除き、復興特会には計上しないことなどとされ、また、平成23年度一般会計第3次補正予算(以下「23年度3次補正」という。)及び24年度当初予算において措置された復旧・復興予算に係る事業のうち、35事業(168億余円)の執行を停止することとした。

ウ 原子力災害に対する各種対応

(ア) 原子力発電所の事故発生に伴う避難指示区域の見直しの状況

福島第一原発の事故を受け、国は、福島第一原発から半径20㎞圏内を警戒区域(災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りの制限若しくは禁止を実施し、又は当該区域からの退去を命ずることができる区域)に設定するとともに、計画的避難区域(年間積算線量が20mSv(注2)に達するおそれのある区域)を設定した。また、緊急時避難準備区域(緊急時に退避のため立ち退き又は屋内への退避をする必要がある区域、23年9月に解除)を設定した(10004_1_2_724年報告参照)。

その後、国は、23年12月の原子力災害対策本部決定に基づき、順次警戒区域を解除するとともに、放射線量の水準に応じて新たな避難指示区域への見直しを進めた。その結果、2市6町3村の一部が避難指示解除準備区域(年間積算線量が20mSv以下となることが確実であると確認された地域)に、1市4町3村の一部が居住制限区域(年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から、引き続き避難の継続を求める地域)に、1市4町2村の一部が帰還困難区域(事故後6年間を経過してもなお、年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがある、年間積算線量が50mSv超の地域)にそれぞれ再編された(25年8月末現在、図7参照)。

(注2)
Sv(シーベルト) 人体の被ばくによる生物学的影響の大きさ(線量当量)を表す単位。なお、1時間被ばくを受け続けた場合に、どの程度の線量当量を受けるかを表す線量率の単位が「Sv/h」である。1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4倍)のある木造家屋)に16時間滞在したと仮定して、1年間の追加被ばく線量(自然界からの被ばく線量及び医療被ばくを除いた被ばく線量)1mSvを1時間当たりに換算すると0.19µSv/hとなり、これに自然界からの放射線のうち大地からの放射線に係る線量率0.04µSv/hを加えると、0.23µSv/hとなる。

図7 避難指示区域の設定状況(概念図)

避難指示区域の設定状況

注(1)
経済産業省が公表している「避難指示区域の概念図」等を基に作成した。
(イ) 避難解除等区域復興再生計画等

24年3月31日に公布され、同日施行された福島特措法は、避難解除等区域(避難指示が全て解除された区域及び近く解除される見込みであるとされた区域をいう。以下同じ。)の復興及び再生のための特別の措置、原子力災害による被害を受けた産業の復興及び再生のための特別の措置、新たな産業の創出等に寄与する取組の重点的な推進等について定めている。そして、上記の措置や取組を推進するため、避難解除等区域復興再生計画、重点推進計画及び産業復興再生計画の各計画を、福島基本方針に即して作成、認定することとしている。

上記の各計画は、25年5月末までに全て作成され、認定されており、その概要は次のとおりである。

① 避難解除等区域復興再生計画は、福島基本方針において、国が定めることとされており、25年3月19日に内閣総理大臣により決定された。同計画は、計画期間を10年とし、インフラ、生活環境、産業再生等の分野ごとに中長期的な取組方針及びそれに基づき実施する事業を示している。

② 重点推進計画は、福島基本方針において、福島県が作成することとされており、福島県知事からの申請を受けて、25年4月26日に内閣総理大臣により認定された。同計画は、主に福島県が実施する再生可能エネルギー、医薬品及び医療機器に関する研究開発拠点の整備や企業立地の促進等を通じて、福島県全域における新たな産業の創出や産業の国際競争力の強化のために重点的に推進すべき取組を示している。

③ 産業復興再生計画は、福島基本方針において、福島県が作成することとされており、福島県知事からの申請を受け、25年5月28日に内閣総理大臣により認定された。同計画は、福島県の基幹産業である農林水産業、商工業及び観光産業の復興及び再生に向けた取組を加速し、福島県の新たな時代をリードする産業と雇用を創出することを目標として、福島県の魅力や正しい情報を伝える通訳案内士の育成等の福島特措法に基づく規制の特例措置を活用した事業等を実施することとしている。

そして、国、福島県、関係市町村それぞれの主体は、今後、これらの計画に示された「避難解除等区域の復興及び再生」、「新産業の創出及び国際競争力の強化」、「産業の復興及び中長期的な発展」等の目標に向けた取組を一体となって着実に推進していくこととしている。

(ウ) 除染に対する取組

東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的として「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)が23年8月30日に公布されて、同日一部施行され、国は、同法に基づき計画的かつ抜本的に除染等を推進することとなった。放射性物質汚染対処特措法には、放射性物質による環境の汚染への対処に関する基本方針の策定、監視及び測定の実施、放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等、費用負担等が定められたが、技術基準の策定等に一定の期間を要することから、全面施行は24年1月からとされた。

一方で、除染は直ちに取り組む必要のある喫緊の課題であることから、23年8月26日に、原子力災害対策本部において「除染に関する緊急実施基本方針」(以下「緊急実施基本方針」という。)が策定され、国は、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染等の措置等が実施されるまでの間、緊急実施基本方針に即して除染を推進することとし、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染の枠組みが立ち上がり次第、緊急実施基本方針に定められた内容を、順次その枠組みに移行することとした。緊急実施基本方針では、除染の進め方として、放射線量の水準に応じて、国が主体的に実施する地域と市町村が除染計画を策定して実施する地域を設定して対応すること、除染に伴って生ずる土壌等の処理として、当面の間、市町村ごとに仮置場を持つことが現実的であるとされた。そして、国は市町村の取組に対して、財政支援、専門家派遣等を通じて全面的に協力を行うこととされた。

また、放射性物質汚染対処特措法に基づき講じられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)の規定により関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担の下に実施されることとされており、当該関係原子力事業者は、放射性物質汚染対処特措法に基づく措置に要する費用について請求又は求償があったときは、速やかに支払うよう努めなければならないこととされている。

(エ) 原子力災害の被災者に対する支援

国は、東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による災害の影響により、多数の住民がその属する市町村の区域外に避難し、又は住所を移転することを余儀なくされた事態に対処するため、23年8月12日に、「東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律」(平成23年法律第98号)を公布して、同日施行した。同法の施行により、避難住民に係る事務を避難先の地方公共団体において処理することができる特例が設けられ、避難住民が避難先の地方公共団体から医療、福祉、教育等の行政サービスを受けることが可能となった。

また、福島の復興及び再生を一層推進するため、25年5月10日に、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律(平成25年法律第12号)が施行された。この改正により、長期避難者の生活拠点を形成するための災害公営住宅やインフラ整備等を行う地方公共団体を支援する交付金制度の創設、公共インフラの復興・再生のために国による道路や河川等の公共事業の代行や公共施設の清掃等の生活環境整備事業の実施区域の拡充、企業立地の更なる促進のために税制優遇措置の対象区域や対象事業者の拡充等の措置が定められた。

国は、原子力災害の被災者に対する支援として、上記のような法制度を整備するほか、復興基本方針や福島基本方針を踏まえて、災害公営住宅の入居資格の特例措置による居住の安定確保、健康不安対策、風評被害対策、住民意向調査等の各種の取組を実施している。