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  • 第2  検査の結果|2  復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(3) 復興特別区域制度における各種計画の実施状況等


東日本大震災は、未曽有の被害を各地域にもたらしており、被災の状況や復興の方向性は各地域により様々である。そして、これらの地域において復興を加速させるためには、前例や既存の枠組みに捕らわれず地域限定で思い切った措置を執ること、各地域における創意工夫を十分にいかすこと、被災した地方公共団体の負担を極力減らして、迅速な対応を可能とするために規制・手続の特例や税制上及び金融上の特例を一元的、総合的に適用することが必要であり、このような特例措置や経済的支援等に関する被災地からの提案を一元的かつ迅速に実現することを目的として、特区法に基づき復興特別区域制度が創設された。

同制度においては、震災により一定の被害が生じた特定被災区域において、特定被災自治体が、自らの被災状況や復興の方向性に合致して、活用が可能な特例を選び取る仕組みとなっている。そして、特定被災自治体は、個別の規制・手続の特例や税制上の特例等を受けるために復興推進計画を、土地利用の再編を図りながら復興に向けたまちづくり・地域づくりを進めることが必要な地域等において土地利用の再編に係る特例許可、手続の特例等を受けるために復興整備計画を、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域において復興交付金事業を実施するために復興交付金事業計画を、それぞれ作成できることとなっている。

そこで、復興特別区域制度により特定被災自治体が作成した復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画はどのように各地方公共団体の復興に活用されているかに着眼して、これらの計画の作成状況等について検査した。

ア 復興推進計画の認定状況等

復興推進計画は、道県、市町村が単独で又は共同して作成して、内閣総理大臣の認定を受けることにより、住宅、産業、まちづくり、医療・福祉等の各分野にわたる規制・手続に関する特例や、雇用の創出等を支援する税制上及び金融上の特例等、特区法等において規定されている21の特例の適用を受けることができるとされているものであり、25年7月31日現在、66の復興推進計画が認定されている。そこで、会計検査院は、復興庁が公表している上記の復興推進計画に記載された特例等について検査するとともに、復興庁や8道県において会計実地検査を行って、道県及び市町村における復興推進計画の認定状況等を検査した。

(ア) 復興推進計画に記載されている特例の状況

上記の復興推進計画66件に記載されている特例は、前記21特例のうち14特例であり、表42のとおり、青森県等7県に所在する特定被災自治体が作成して認定を受けた復興推進計画に記載された特例数は延べ75件、これらの特例の対象区域とされた市町村数は延べ817市町村となっていた。また、県別の特例件数についてみると、被害が甚大な東北3県において延べ58件の特例が復興推進計画に記載されている。

表42 復興推進計画の認定状況(平成25年7月31日現在)

県名 認定された
復興推進計画
左に記載された特例数
(件数は延べ数)
左の特例の対象区域と
された延べ市町村数
青森県 3 3特例に係る4件 9
岩手県 8 8特例に係る10件 156
宮城県 25 13特例に係る30件 245
福島県 18 7特例に係る18件 331
茨城県 10 5特例に係る11件 74
栃木県 1 1特例に係る1件 1
千葉県 1 1特例に係る1件 1
66 14特例に係る75件 817

上記の14特例についてみると、表43のとおり、多くの市町村が対象区域となっている特例は、復興産業集積関係の課税の特例等(延べ18件、延べ182市町村)や確定拠出年金に係る脱退一時金の特例(延べ4件、延べ167市町村)などとなっていた(巻末別表6参照)。

表43 21の特例別・四半期別の件数及び対象区域とされた市町村数(平成25年7月31日現在)

(上段:適用された特例の件数(延べ数)、下段:特例の対象区域とされた市町村数(延べ数))

特例 平成23年度 24年度 25年度
第4四半期 第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 第1四半期 第2四半期










漁業権の免許に関する特別の措置(法14
条関係)
- - - - - 1 - 1
- - - - - 1 - 1
建築基準法における用途制限に係る特例
(法15条関係)
- - 2 1 - - - 3
- - 2 1 - - - 3
特別用途地区における建築物整備に係る
手続の簡素化(法16条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
応急仮設店舗・工場等の存続可能期間の
延長の特例(法17条関係)
- - 1 1 1 4 1 8
- - 1 1 5 20 24 51
バス路線の新設・変更等に係る手続の特
例(法18条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
公営住宅等の整備に係る入居者資格要件
等の特例(法19~21条関係)
- - - - 1 - 1 2
- - - - 1 - 59 60
公営住宅の処分等の手続に係る特例(法
22条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
食料供給等施設の整備に係る特例(法23
~27条関係)
1 - - - - - - 1
1 - - - - - - 1
工場立地法及び企業立地促進法における
緑地規制の特例(法28条関係)
2 - 1 - - - - 3
33 - 9 - - - - 42
他の水利利用に従属する小水力発電に関
する河川法等の手続の簡素化(法29~32
条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
鉄道ルートの変更に係る手続の特例(法
33条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
確定拠出年金に係る脱退一時金の特例
(法34条関係)
- - 1 1 1 1 - 4
- - 59 40 35 33 - 167
財産の処分の制限に係る承認の手続の特
例(法45条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
都市公園の占用に関する制限緩和(法35
条関係)
- - - - - - - -
- - - - - - - -
医療機器製造販売業等の許可基準の緩和
(法35条関係)
2 1 - - - - - 3
92 35 - - - - - 127
医療機関・介護施設等に係る基準等の特
例(法35条関係)
1 2 - - - - - 3
33 94 - - - - - 127
仮設薬局等の構造設備基準の特例(法35
条関係)
1 1 - - - - - 2
12 17 - - - - - 29










復興産業集積関係の課税の特例等(法37
~40条、法43条)
7 2 2 3 2 2 - 18
87 76 12 3 2 2 - 182
復興居住区域における被災者向け優良賃
貸住宅の特別償却・税額控除(法41条関
係)
- - - - 1 - - 1
- - - - 1 - - 1
復興特別区域において地域の課題の解決
のための事業を行う株式会社に対する出
資に係る所得控除(法42条関係)
1 - - - - - - 1
1 - - - - - - 1

復興特区支援貸付事業を行う金融機関に
対する復興特区支援利子補給金の支給
(法44条関係)
1 2 - 3 19 - - 25
1 2 - 3 19 - - 25
16 8 7 9 25 8 2 75
260 224 83 48 63 56 83 817
(注)
「法」はいずれも特区法を指す。

復興産業集積関係の課税の特例等は、企業等の新規立地促進税制(新設企業を5年間無税とする措置)、事業用設備等の特別償却、被災者雇用に係る法人税等の特別控除、研究開発税制の特例等のほか、地方公共団体の地方税の課税免除又は不均一課税に伴う減収に対する補塡措置が適用されるものである。

また、確定拠出年金に係る脱退一時金の特例は、現行の確定拠出年金制度において原則として認められていない60歳に到達する前の中途の脱退について、震災により住居又は家財が全半壊等していることなどの一定の要件を満たした者に、同制度からの中途脱退を可能とするものである。

そして、特例が適用された時期についてみると、復興産業集積関係の課税の特例等や医療機関・介護施設等に係る基準等の特例等は復興特別区域制度が創設された直後の適用が多い一方、応急仮設店舗・工場等の存続可能期間の延長の特例は24年度第4四半期以降に多く適用されている。これは、震災により多くの医療機関等が被害を受けたことなどにより、同制度が創設された直後に、病院施設等における医師の配置基準の緩和等の特例を受けることとした市町村が多かったこと、また、東日本大震災発生後に応急仮設建築物として建設された店舗や公共施設等が、24年度第4四半期以降に2年を経過することとなったことから、建築基準法に定められた最長2年3か月の存続期間の延長を可能とする特例を受けることとしたことなどによると認められる。

なお、これまでに認定実績がない特例もあるが、復興庁は、認定実績がない特例の中には地方公共団体から相談を受けているものもあるほか、今後、復興の進捗に応じて活用されるものもあるとしている。

(イ) 復興産業集積関係の課税の特例等の実施状況

復興産業集積関係の課税の特例等は、21特例の中でも、多くの特定被災自治体が復興推進計画において特例の対象区域とされているものである。そこで同特例の実施状況について検査した。

同特例は、次の①から③までの手続を経て、その適用を受けることができることとなっている。

① 同特例の適用を受けようとする個人事業者又は法人(以下「事業者等」という。)は、設備投資予定額等を記載した実施計画を含む申請書を地方公共団体に提出し、地方公共団体は認定された復興推進計画の内容に照らして適正かつ確実な実施計画を有するなどの指定要件を満たす事業者等を指定する(以下、指定された事業者を「指定事業者等」という。)。

② 指定事業者等は、事業年度終了後に設備投資等を行った状況を実施状況報告書に記載して地方公共団体に提出する。

③ 地方公共団体は、指定事業者等が実施計画に記載した設備投資等を適切に実施していることを認定する。

そして、指定事業者等数についてみると、表44のとおり、25年5月末現在において、福島県復興推進計画(ふくしま産業復興投資促進特区)において423事業者等が指定されているなど計1,496事業者等が指定されている。

表44 復興産業集積関係の課税の特例等に係る指定事業者等数

県名 番号 計画名 認定日 区域 指定事業者
等数
青森県 青森第1号 青森県復興推進計画 平成24年3月2日 八戸市等4市町 145
岩手県 岩手第2号 岩手県産業再生復興推進計画 平成24年3月30日 岩手県の全域 210
岩手第6号 釜石市復興推進計画 平成25年3月26日 釜石市 2
宮城県 宮城第1号 復興推進計画 平成24年2月9日 仙台市等34市町 309
宮城第2号 仙台市復興推進計画 平成24年3月2日 仙台市 13
宮城第3号 塩竈市復興推進計画 平成24年3月23日 塩竈市 6
宮城第4号 復興推進計画 平成24年3月23日 石巻市 13
宮城第7号 復興推進計画 平成24年6月12日 仙台市等17市町 51
宮城第8号 復興推進計画 平成24年7月27日 石巻市 2
宮城第10号 復興推進計画(宮城県民間投
資促進特区(農業版))
平成24年9月28日 石巻市等11市町 4
宮城第12号 多賀城市復興推進計画(まち
づくり促進特区計画)
平成24年12月14日 多賀城市 1
宮城第13号 復興推進計画 平成24年12月14日 東松島市 0
宮城第18号 復興推進計画 平成25年3月26日 岩沼市 0
宮城第22号 仙台市復興推進計画 平成25年4月12日 仙台市 0
福島県 福島第2号 福島県復興推進計画(ふくし
ま産業復興投資促進特区)
平成24年4月20日 福島県の全域 423
福島第7号 いわき市復興推進計画(サン
シャイン観光推進特区)
平成24年11月13日 いわき市 23
茨城県 茨城第1号 茨城県復興推進計画(茨城産
業再生特区計画)
平成24年3月9日 水戸市等13市町
338
1,496
(注)
複数の県で指定を受けている事業者等があるため、指定事業者等の合計は「計」欄とは一致しない。

これらの復興推進計画のうち青森県八戸市が青森県及び3市町と共に作成した青森県復興推進計画における復興産業集積関係の課税の特例等の活用状況を示すと、次のとおりである。

<参考事例1>

青森県八戸市は、新たな企業の立地と産業集積の形成、産業集積による地域活性化及び震災解雇者の早期雇用機会の確保を目的として、事業者等が事業用設備等の特別償却等や被災者雇用に係る法人税等の特別控除等の適用を受けられるようにするために、青森県及び3市町と共同して青森県復興推進計画を作成し、平成24年3月に認定を受けた。八戸市の復興産業集積関係の課税の特例等については、臨海工業地帯等13の復興産業集積区域において、区域ごとに定められた環境リサイクル・環境配慮型素材関連産業等を集積させることを目的とすることとしている。

同市は、24年4月から事業者等の指定を始めて、25年3月末現在、事業用設備等の特別償却等について60件、被災者雇用に係る法人税等の特別控除について81件、計141件について計130事業者等を指定している。同市によれば、指定事業者等の実施計画に基づく27年度末までの設備投資予定額は計約240億円、維持される雇用者数は計約3,100人としており、事業年度終了後、指定事業者等から提出された実施状況報告書を基に、指定事業者等が実施した設備投資等の認定を実施することとしている。

(ウ) まとめ

前記のとおり、復興推進計画においては、被害が甚大となっていた東北3県を中心に、産業の集積を図り、雇用の機会を確保するなどのための復興産業集積関係の課税の特例等が多く活用されていた。今後、事業者等が同特例の効果により計画的に設備投資等を実施することにより、復興推進計画の効果が発現していくと思料され、これら地方公共団体の復興推進計画における取組やその効果は、他の地方公共団体の参考になることも考えられることから、復興庁においては、今後も、特例の活用事例や復興推進計画の効果等を把握して、周知するなどして、他の特例の活用を促したり、助言を行ったりして、地方公共団体に対する迅速かつ着実な支援に寄与することが期待される。

イ 復興整備計画の作成状況

東日本大震災は、津波による浸水や地盤の液状化等広範囲にわたる被害をもたらすとともに、地域によっては山間部で平地が少ないなど現地での再建が困難な場合も想定されることから、復興に向けたまちづくり・地域づくりを進めるに当たっては、周辺の農地や森林等も含めて、土地利用の再編を図る必要がある。

復興整備計画は、このような状況下において、市町村が一つの計画の下で、復興に向けたまちづくり・地域づくりを円滑かつ迅速に進めていくため、市街地の整備や農業生産基盤の整備等の各種事業を対象に、都市計画法(昭和43年法律第100号)、農地法(昭和27年法律第229号)等の個別法による許認可等の各種手続を一括して処理するとともに、集落単位での住居の集団移転等、必要な各種の特例を適用するものとして創設された。

復興整備計画は、市町村が単独で又は県と共同して作成して、復興整備協議会での協議を経るなどして、事業に必要な特例が適用される。復興整備計画には、復興整備計画の区域及び目標や土地利用方針のほか、復興整備計画の目標を達成するために必要な事業(以下「復興整備事業」という。)を記載することとなっている。復興整備事業には、特区法等において市街地開発事業等13事業が規定されており、復興整備計画には復興整備事業ごとに事業を実施する地区等を記載することとなっている。

そこで、会計検査院は、市町村が公表している復興整備計画を基に、復興整備協議会を設置した29市町村について、復興整備計画の作成状況や復興整備計画に記載された復興整備事業について検査した。

その結果、表45のとおり、復興整備協議会を設置した29市町村のうち、28市町村において復興整備計画が作成されていた。また、これらの復興整備計画には復興整備事業5事業に係る延べ事業実施地区612地区等が記載されており、これらはいずれも被害が甚大な東北3県に係るものとなっていた。

表45 復興整備計画の作成及び復興整備事業の活用の状況(平成25年7月31日現在)

県名 市町村名 復興整
備計画
の作成
の有無
復興整備事業(13事業)に係る地区等数(延べ数)
市街地
開発事
土地改
良事業
復興一
体事業
集団移
転促進
事業
住宅地
区改良
事業
都市施
設の整
備に関
する事
津波防
護施設
の整備
に関す
る事業
漁港漁
場整備
事業
保安施
設事業
液状化
対策事
造成宅
地滑動
崩落対
策事業
地籍調
査事業
その他
施設の
整備に
関する
事業
地区等
数計
(延べ
数)
岩手県 宮古市 2 - - 3 - 2 - - - - - - 5 12
大船渡市 1 - - 6 - 2 - - - - - - 1 10
久慈市 - - - - - 4 - - - - - - 12 16
陸前高田市 2 - - 5 - 2 - - - - - - - 9
釜石市 5 1 - 11 - 12 - - - - - - 17 46
大槌町 6 - - 6 - 12 - - - - - - - 24
山田町 3 - - 3 - 13 - - - - - - 1 20
岩泉町 - - - - - - - - - - - - 5 5
田野畑村 - - - - - 1 - - - - - - 9 10
野田村 1 - - 2 - 1 - - - - - - 2 6
岩手県計 10 20 1 - 36 - 49 - - - - - - 52 158
宮城県 仙台市 - - - 13 - - - - - - - - 2 15
石巻市 12 - - 48 - 6 - - - - - - 1 67
塩竈市 - - - 2 - - - - - - - - 2 4
気仙沼市 3 - - 50 - 7 - - - - - - 11 71
名取市 1 - - 1 - 3 - - - - - - 1 6
岩沼市 - - - 2 - - - - - - - - 5 7
東松島市 2 - - 7 - - - - - - - - 7 16
亘理町 - - - 5 - 1 - - - - - - 10 16
山元町 - - - 3 - 3 - - - - - - 4 10
松島町 - - - - - - - - - - - - - - -
七ヶ浜町 4 - - 5 - - - - - - - - 7 16
利府町 - - - - - - - - - - - - 1 1
女川町 1 - - 21 - - - - - - - - 1 23
南三陸町 1 - - 28 - 5 - - - - - - 5 39
宮城県計 13 24 - - 185 - 25 - - - - - - 57 291
福島県 いわき市 6 - - 4 - 42 - - - - - - 6 58
相馬市 - 1 - 7 - 3 - - - - - - 8 19
南相馬市 - 5 - 36 - - - - - - - - 9 50
広野町 - - - - - 4 - - - - - - 1 5
新地町 1 - - 7 - 18 - - - - - - 5 31
福島県計 5 7 6 - 54 - 67 - - - - - - 29 163
合計 28 51 7 - 275 - 141 - - - - - - 138 612

また、事業別に地区等数が多い事業は、図14のとおり、集団移転促進事業、都市施設の整備に関する事業、その他施設の整備に関する事業の順となっている。

図14 復興整備事業の活用状況

復興整備事業の活用状況

上記事業のうち、集団移転促進事業は、23市町村の延べ275地区で実施が計画されている。集団移転促進事業は、津波被害が著しいなど災害危険区域内で一定の要件を満たす住居の集団的移転を促進するものであり、復興整備計画を活用することにより集団移転促進事業に係る事項のうち、土地造成経費や住宅団地の関連施設など特例を受けることが可能になる。

都市施設の整備に関する事業は、19市町村における道路、公園、下水道、津波復興拠点等延べ141地区等で実施が計画されている。その特例の内容は、震災により被害を受けた幹線街路の道路法線、幅員等の変更や、津波により被害を受けた地区の海岸部に津波のエネルギーを減衰させる防災緑地を整備するに当たり、復興整備計画により一括して都市計画の変更を行うものなどとなっている。

その他施設の整備に関する事業は、上記の集団移転促進事業等12の復興整備事業以外で地域の円滑かつ迅速な復興を図るために必要となる施設の整備に関するものであり、26市町村、延べ138地区等で実施が計画されている。その特例の内容は、集団移転促進事業の移転先に災害公営住宅を整備するに当たり、復興整備計画により一括して農地転用の許可を受けるものなどとなっている。

なお、復興整備事業13事業のうち、特定被災自治体が作成した復興整備計画に全く記載されていない復興整備事業は、25年7月31日現在で、復興一体事業、住宅地区改良事業、津波防護施設の整備に関する事業、漁港漁場整備事業、保安施設事業、液状化対策事業、造成宅地滑動崩落対策事業及び地籍調査事業の8事業であるが、復興庁は、これらの事業についても、今後、復興の進捗に応じて活用されるものであるとしている。

ウ 復興交付金事業計画に基づく復興交付金の交付状況及び事業の状況

復興交付金事業計画は、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の市町村が単独で又は市町村と道県が共同して作成する計画であり、市町村において実施される事業を記載した復興交付金事業計画を市町村ごとに作成して、復興庁に提出することにより、予算の範囲内で、事業の実施に要する経費に充てるための復興交付金の交付を受けることができるものである。

復興庁は、24年3月から25年7月までに計6回の復興交付金事業計画を市町村及び道県から受け付けており、市町村及び道県から提出された各年度ごとの事業費が記載された復興交付金事業計画に基づき、事業を実施する年度別の交付可能額を市町村及び道県に通知するとともに、これを公表している。そこで、会計検査院は、復興庁が公表している第1回復興交付金から第6回復興交付金までの交付可能額通知を基に、復興交付金の交付可能額、復興交付金による基金造成等の状況等について検査した。

(ア) 復興交付金の交付可能額及び復興交付金による基金造成等の状況

復興庁が通知した計6回の交付可能額は、表46のとおり、23年度2510億余円、24年度計1兆3191億余円、25年度527億余円、合計1兆6228億余円と多額に上っている。また、事業別にみると、基幹事業に係る交付可能額は1兆4731億余円、効果促進事業に係る交付可能額は1497億余円となっている。

表46 復興交付金交付回数別交付可能額(平成25年7月31日現在)

(単位:百万円)

交付
年度
区分
(通知日)
基幹事業 効果促進事業
交付対象
事業費
復興交付金
〔国費〕
交付対象
事業費
復興交付金
〔国費〕
交付対象
事業費
復興交付金
〔国費〕
平成
23
第1回
(24年3月2日)
299,487 246,215 6,001 4,801 305,488 251,016
24 第2回
(24年5月25日)
264,420 219,624 52,117 41,567 316,538 261,192
第3回
(24年8月24日)
164,067 130,246 16,517 13,214 180,585 143,460
第4回
(24年11月30日)
809,547 658,537 70,729 56,260 880,276 714,797
第5回
(25年3月8日)
220,006 172,590 33,833 27,065 253,839 199,655
24年度計 1,458,041 1,180,999 173,198 138,106 1,631,239 1,319,106
25 第6回
(25年6月25日)
54,689 45,907 8,511 6,809 63,201 52,717
合計 1,812,219 1,473,122 187,711 149,717 1,999,930 1,622,840

交付可能額を事業を実施する年度別にみると、図15及び表47のとおり、23年度実施分204億余円、24年度実施分5605億余円、25年度実施分7478億余円、26年度実施分2936億余円、27年度実施分4億余円となっており、25年度実施分が最大となっている。

図15 復興交付金年度別・交付回数別交付可能額(平成25年7月31日現在)

復興交付金年度別・交付回数別交付可能額(平成25年7月31日現在)

表47 復興交付金年度別・交付回数別交付可能額(平成25年7月31日現在)

(単位:百万円)

区分 平成23年度 24年度 25年度
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回
23年度実施分 20,413 20,413
24年度実施分 181,700 166,894 99,028 109,922 2,957 560,503
25年度実施分 48,901 93,264 44,431 369,027 154,658 37,549 747,834
26年度実施分 607 235,794 42,040 15,167 293,609
27年度実施分 426 52 478
累計 251,016 512,208 655,669 1,370,467 1,570,123 1,622,840

上記の交付可能額計1兆6228億余円は、特定被災区域である227市町村のうち98市町村及び98市町村と共同で復興交付金事業計画を作成した8道県に対して通知されており、道県別にみると、図16及び表48のとおり、宮城県及び同県内の22市町に対して計9065億余円(交付可能額全体に占める割合55.8%)、岩手県及び同県内の14市町村に対して計4624億余円(同28.4%)、福島県及び同県内の32市町村に対して計2103億余円(同12.9%)、東北3県以外の5道県及び8道県内の30市町村に対して計434億余円(同2.6%)となっており、宮城県及び同県内の22市町に対する交付可能額が全体の半分以上を占め、甚大な被害があった東北3県及び東北3県内の68市町村に対する交付可能額計1兆5794億余円は、全体の97.3%を占めている。

図16 復興交付金交付可能額の道県別内訳(平成25年7月31日現在)

復興交付金交付可能額の道県別内訳(平成25年7月31日現在)

表48 復興交付金の道県別・年度別交付可能額(平成25年7月31日現在)

(単位:百万円、%)

道県名 道県及び市町村数 平成23年度
(第1回)
24年度
(第2回~第5
回)
25年度
(第6回)
交付可能額
全体に占め
る割合
北海道 道及び1町 - 15 58 73 0.0
青森県 県及び4市町 1,566 1,621 230 3,418 0.2
岩手県 県及び14市町村 79,763 364,328 18,376 462,468 28.4
宮城県 県及び22市町 116,231 766,462 23,874 906,568 55.8
福島県 県及び32市町村 50,513 149,917 9,944 210,375 12.9
茨城県 県及び12市町村 2,188 27,338 132 29,658 1.8
栃木県 1市 614 - - 614 0.0
埼玉県 1市 - 223 - 223 0.0
千葉県 県及び9市 138 7,766 94 7,999 0.4
新潟県 1市 - 86 6 92 0.0
長野県 県及び1村 - 1,345 - 1,345 0.0
8道県及び98市町村 251,016 1,319,106 52,717 1,622,840 100.0
東北3県 3県及び68市町村 246,509 1,280,708 52,195 1,579,413 97.3
東北3県以外の
道県
5道県及び30市町村 4,507 38,397 521 43,427 2.6
(注)
道県及び市町村数は、「計」欄に係る交付可能額通知を受けた道県及び市町村の数である。

復興交付金の交付可能額通知には、市町村が単独で又は市町村が道県と共同で作成して復興庁に提出する復興交付金事業計画に基づき、事業ごとに、交付を受ける団体として市町村又は道県が記載されている。市町村又は道県は、交付可能額の通知を受けた後、復興庁を経由して、関係5省がそれぞれ定める交付要綱等に基づき、交付申請を行い、関係5省は、交付申請を審査の上、交付決定して、復興交付金を市町村又は道県に交付することとなっている。

そして、復興交付金の交付を受けた市町村又は道県は、単年度で復興交付金事業を実施する(以下、このような実施方法を「単年度型」という。)か、基金を造成し、復興交付金事業計画の計画期間内にこれを取り崩して復興交付金事業を実施する(以下、このような実施方法を「基金型」という。)かを選択することができることとされている。

そこで、23、24両年度の交付決定額についてみると、表49のとおり、8道県及び95市町村に対する交付決定額1兆5701億余円のうち、単年度型は3道県及び12市町の計7億余円、基金型は7県及び88市町村の計1兆5693億余円となっていて、ほとんどが基金型となっている。

表49 復興交付金の実施方法別・年度別交付可能額及び交付決定額

(単位:百万円)

区分 平成23年度 24年度
道県及び市
町村数
交付可能額 交付決定額 道県及び市
町村数
交付可能額 交付決定額 道県及び市
町村数
交付可能額 交付決定額
単年度型 1県及び3市
243 243 3道県及び9
市町
492 471 3道県及び
12市町
736 715
基金型 4県及び55
市町村
250,772 250,640 7県及び87
市町村
1,318,614 1,318,746 7県及び88
市町村
1,569,386 1,569,386
5県及び58
市町村
251,016 250,884 8道県及び
93市町村
1,319,106 1,319,217 8道県及び
95市町村
1,570,123 1,570,102
注(1)
道県及び市町村数は、「交付決定額」欄に係る交付決定通知書の送付を受けた道県及び市町村の数である。なお、福島県伊達郡川俣町、同県東白川郡塙町及び茨城県水戸市に係る交付可能額には市町村交付分がないため、交付決定通知書の送付を受けた市町村数は交付可能額に係る98市町村から上記の3市町を除いた95市町村となる。
注(2)
年度途中に単年度型から基金型に変えて交付決定を受ける場合があるので、単年度型の道県及び市町村数と基金型の道県及び市町村数を合計しても、計の道県数及び市町村数とは一致しない場合がある。
注(3)
平成24年度の基金型において交付決定額が交付可能額を超えているのは、環境省の事業に係る23年度の交付可能額1億余円が24年度に交付決定されたことによるものである。

23、24両年度における道県別の基金造成状況についてみたところ、表50のとおり、23年度に2506億余円が、24年度に1兆3187億余円が県及び市町村に造成されていて、24年度末における基金造成額は7県及び88市町村で計1兆5693億余円となっている。また、県別にみると、宮城県及び同県内の22市町で計8826億余円(基金造成額全体に占める割合56.2%)、岩手県及び同県内の13市町村で計4439億余円(同28.2%)、福島県及び同県内の27市町村で計2003億余円(同12.7%)、東北3県以外の4県及び6県内の26市町村で計424億余円(同2.7%)となっており、宮城県及び同県内の22市町における基金造成額が全体の半分以上を占め、甚大な被害を受けた東北3県及び東北3県内の計62市町村における基金造成額計1兆5269億余円は、全体の97.2%を占めている。

表50 復興交付金(基金型)の県別・年度別基金造成状況

(単位:百万円、%)

区分 道県及び市
町村数
平成23年度 24年度 23、24両年
度の基金造
成額計
23、24両年度
の基金造成額
全体に占める
割合
交付可能額 交付決定額 基金造成額 交付可能額 交付決定額 基金造成額
青森県 県及び4市町 1,504 1,504 1,504 1,597 1,597 1,597 3,101 0.1
岩手県 県及び13市町村 79,581 79,453 79,453 364,320 364,447 364,447 443,901 28.2
宮城県 県及び22市町 116,231 116,227 116,227 766,462 766,467 766,467 882,694 56.2
福島県 県及び27市町村 50,513 50,513 50,513 149,840 149,840 149,840 200,353 12.7
茨城県 県及び11市町村 2,188 2,188 2,188 27,338 27,338 27,338 29,526 1.8
栃木県 1市 614 614 614 - - - 614 0.0
埼玉県 1市 - - - 187 187 187 187 0.0
千葉県 県及び8市 138 138 138 7,638 7,638 7,638 7,776 0.4
長野県 県及び1村 - - - 1,229 1,229 1,229 1,229 0.0
7県及び88市町村 250,772 250,640 250,640 1,318,614 1,318,746 1,318,746 1,569,386 100.0
東北3県 3県及び62市町村 246,326 246,194 246,194 1,280,623 1,280,754 1,280,754 1,526,949 97.2
東北3県
以外の県
4県及び26市町村 4,445 4,445 4,445 37,991 37,991 37,991 42,437 2.7
(注)
県及び市町村数は、「23、24両年度の基金造成額計」欄に係る基金が造成された県及び市町村の数である。

復興交付金事業には、25年3月末現在で、関係5省が所管する40の基幹事業と基幹事業と一体となってその効果を増大させるために実施する効果促進事業がある。そこで、基幹事業と効果促進事業の別に市町村等への交付状況、市町村が実施する事業等の状況について検査した。

(イ) 基幹事業

40基幹事業の所管別内訳は、国土交通省が23事業、農林水産省が9事業、文部科学省が4事業、厚生労働省が3事業、環境省が1事業となっている。

これらの基幹事業に係る計6回の復興交付金交付可能額は、8道県及び11道県内の98市町村で計1兆4731億余円となっており、これを所管別にみると、表51のとおり、国土交通省所管の基幹事業が1兆2651億余円(基幹事業に係る交付可能額全体に占める割合85.8%)、農林水産省所管の基幹事業が2017億余円(同13.6%)、その他の3省所管の基幹事業が619億余円(同0.4%)となっていて、国土交通省所管の事業が基幹事業数、交付可能額共に突出している。

表51 基幹事業の所管別・年度別交付可能額

(単位:百万円、%)

区分 道県及び市町村数 平成23年度
(第1回)
24年度
(第2回~第5
回)
25年度
(第6回のみ)
全体に占め
る割合
文部科学省所管4事業 3県及び41市町村 1,065 3,559 231 4,857 0.3
厚生労働省所管3事業 2県及び5市町 14 72 - 86 0.0
農林水産省所管9事業 7道県及び52市町村 26,649 172,123 3,001 201,774 13.6
国土交通省所管23事業 7県及び94市町村 218,354 1,004,146 42,649 1,265,151 85.8
環境省所管1事業 20市町村 131 1,097 24 1,254 0.0
40基幹事業計 8道県及び98市町村 246,215 1,180,999 45,907 1,473,122 100.0
(注)
道県及び市町村数は、「計」欄に係る交付可能額通知を受けた道県及び市町村の数である。

このように基幹事業数及び交付可能額からみると、国土交通省が基幹事業の中心となっており、基幹事業別の交付可能額についても、図17及び表52のとおり、同省所管の災害公営住宅整備事業(事業番号D-4)、防災集団移転促進事業(同D-23)及び道路事業(同D-1)が多額となっている。

なお、40基幹事業のうち、復興庁から市町村及び道県に交付可能額が通知されていない事業は、厚生労働省所管の医療施設耐震化事業(同B-1)、国土交通省所管の公営住宅等ストック総合改善事業(同D-7)、住宅地区改良事業(同D-8)、住宅市街地総合整備事業(同D-10)及び都市再生区画整理事業(同D-18)の5事業となっていて、これらの事業は、国庫補助事業により補完されていたり、工法等の検討に時間を要していたり、先行する面的整備事業の完了以後に実施されたりするものであり、25年7月までの状況をみると、上記のとおり、住宅やまちづくりのための道路を整備する基幹事業が主に実施されている。

図17 復興交付金の交付可能額の基幹事業別内訳(全道県分)

復興交付金の交付可能額の基幹事業別内訳(全道県分)

表52 基幹事業の所管別・東北3県及び東北3県以外の道県別の交付可能額

(単位:百万円、%)

所管省庁 事業
番号
基幹事業名 東北3県 東北3県以外の道県
市町
村数
交付可能額 全体に占
める割合
市町
村数
交付可能額 全体に占
める割合
市町
村数
交付可能額 全体に占
める割合
文部科学省 A-1
公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新
増築・統合)
9 944 0.0 1 6 0.0 10 951 0.0
A-2 学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 12 1,054 0.0 5 524 1.3 17 1,578 0.1
A-3 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 4 67 0.0 - - - 4 67 0.0
A-4 埋蔵文化財発掘調査事業 33 2,259 0.1 - - - 33 2,259 0.1
厚生労働省 B-1 医療施設耐震化事業 - - - - - - - - -
B-2 介護基盤復興まちづくり整備事業 (「定期巡回・随時対
応サービス」や「訪問看護ステーション」の整備等)
1 30 0.0 - - - 1 30 0.0
B-3 保育所等の複合化・多機能化推進事業 4 56 0.0 - - - 4 56 0.0
農林水産省 C-1 農山漁村地域復興基盤総合整備事業 (集落排水等の集
落基盤、農地等の生産基盤整備等)
28 40,055 2.7 4 420 1.0 32 40,475 2.7
C-2 農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業 (被
災した生産施設、生活環境施設、地域間交流拠点整備
等)
13 2,367 0.1 2 18 0.0 15 2,385 0.1
C-3 震災対策・戦略作物生産基盤整備事業 (麦・大豆等の
生産に必要となる水利施設整備等)
1 123 0.0 - - - 1 123 0.0
C-4 被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 25 31,468 2.1 3 312 0.7 28 31,780 2.1
C-5 漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生
活基盤整備等)
19 27,052 1.8 1 53 0.1 20 27,106 1.8
C-6 漁港施設機能強化事業(漁港施設用地かさ上げ、排水対
策等)
20 4,952 0.3 - - - 20 4,952 0.3
C-7 水産業共同利用施設復興整備事業 (水産業共同利用施
設、漁港施設、放流用種苗生産施設整備等)
24 83,129 5.8 5 3,142 7.8 29 86,271 5.8
C-8 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 8 5,224 0.3 - - - 8 5,224 0.3
C-9 木質バイオマス施設等緊急整備事業 7 3,451 0.2 - - - 7 3,451 0.2
国土交通省 D-1 道路事業(市街地相互の接続道路等) 34 150,023 10.4 12 13,933 34.6 46 163,957 11.1
D-2 道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) 9 16,428 1.1 - - - 9 16,428 1.1
D-3 道路事業(道路の防災・震災対策等) 4 590 0.0 4 568 1.4 8 1,159 0.0
D-4 災害公営住宅整備事業 (災害公営住宅整備事業、災害公
営住宅用地取得造成費等補助事業等)
46 406,640 28.3 11 7,128 17.7 57 413,768 28
D-5 災害公営住宅家賃低廉化事業 21 1,160 0.0 7 113 0.2 28 1,273 0.0
D-6 東日本大震災特別家賃低減事業 21 194 0.0 7 16 0.0 28 211 0.0
D-7 公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベー
ター改修)
- - - - - - - - -
D-8 住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) - - - - - - - - -
D-9 小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住
宅の建設等)
4 638 0.0 1 534 1.3 5 1,173 0.0
D-10 住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) - - - - - - - - -
D-11 優良建築物等整備事業(市街地住宅の供給、任意の再開
発等)
1 126 0.0 - - - 1 126 0.0
D-12 住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震
改修事業)
3 42 0.0 - - - 3 42 0.0
D-13 住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険
住宅移転事業)
22 18,364 1.2 - - - 22 18,364 1.2
D-14 造成宅地滑動崩落緊急対策事業 18 26,978 1.8 4 3,705 9.2 22 30,683 2.0
D-15 津波復興拠点整備事業 17 33,161 2.3 - - - 17 33,161 2.2
D-16 市街地再開発事業 4 1,353 0.0 - - - 4 1,353 0.0
D-17 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事
業等)
20 100,149 6.9 - - - 20 100,149 6.7
D-18 都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) - - - - - - - - -
D-19 都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) - - - 12 7,792 19.3 12 7,792 0.5
D-20 都市防災総合推進事業(津波シミュレーション等の計画
策定等)
51 9,217 0.6 16 1,366 3.3 67 10,583 0.7
D-21 下水道事業 24 35,466 2.4 1 532 1.3 25 35,999 2.4
D-22 都市公園事業 15 20,734 1.4 - - - 15 20,734 1.4
D-23 防災集団移転促進事業 27 408,159 28.4 1 27 0.0 28 408,186 27.7
環境省 E-1 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 20 1,254 0.0 - - - 20 1,254 0.0
68 1,432,926 100.0 30 40,196 100.0 98 1,473,122 100.0
(注)
市町村数は、「交付可能額」欄に係る交付可能額通知を受けた市町村又は道県のうち市町村の数である。

東北3県における各基幹事業に係る計6回の復興交付金の交付可能額についてみると、図18のとおり、いずれも国土交通省所管の防災集団移転促進事業(事業番号D-23)、災害公営住宅整備事業(同D-4)及び道路事業(同D-1)が多額となっている。

東日本大震災の津波により甚大な被害を受けた東北3県では、住民の居住に適当ではないと認められる地域において、防災集団移転促進事業により、被災者の集団移転を促進したり、災害公営住宅整備事業により、住居を失うなどした被災者の居住の安定確保を図ったりなどしており、住宅に関する事業が主要なものとなっている。そして、これらの事業と共に、復興計画等に位置付けられた市街地相互の接続道路等を整備する道路事業を実施して、復興に向けたまちづくりを進めている。

一方、東北3県以外の8道県における基幹事業に係る計6回の交付可能額についてみると、図19のとおり、国土交通省所管の道路事業(同D-1)、都市防災推進事業(同D-19)及び災害公営住宅整備事業(同D-4)が多額となっている。これらの事業のうち、道路事業及び災害公営住宅整備事業は、東北3県と同様に主要なものとなっているが、両事業の交付可能額は、東北3県の交付可能額の3.7%にすぎない。また、東北3県以外の8道県では、宅地の液状化により著しい被害を受けた地域において、都市防災推進事業により、再度の災害の発生に対して被害を抑制するための対策を講じており、額の多寡はあるものの、東北3県と同様、住宅に関する事業が主要なものとなっている。

図18 基幹事業の交付可能額の事業別内訳 図19 基幹事業の交付可能額の事業別内訳
(東北3県分) (東北3県以外の道県分)

基幹事業の交付可能額の事業別内訳(東北3県分)基幹事業の交付可能額の事業別内訳(東北3県以外の道県分)

(ウ) 効果促進事業

a 効果促進事業の概要

前記のとおり、復興交付金事業には、関係5省が所管する40基幹事業と、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために実施する効果促進事業とがある。

効果促進事業は、復興交付金制度の創設に当たり、使途の自由度の高い資金の確保により、ハード・ソフト事業に係るニーズに対応するために設けられたものであり、地方公共団体がその創意工夫を発揮して、復興のための地域づくりを推進することとされている。

効果促進事業に係る復興交付金は、基幹事業と同様、市町村が単独で又は市町村が道県と共同して効果促進事業を記載した復興交付金事業計画を作成して、内閣総理大臣に提出するなどすることにより、交付を受けることとされている。そして、交付額の算定に当たっては、基幹事業の交付対象事業費の合計額から市町村又は道県以外の者が負担する額の総額を控除した額に35%を乗じて得られる額を効果促進事業費の総額の上限としている。

効果促進事業には、個別の事業ごとに基幹事業との関連性の有無を判断して事業費が配分される効果促進事業(以下「①効果促進事業(個別配分)」という。)、特定の基幹事業に係る事業費の一定割合を先渡しにより一括配分する②漁業集落復興効果促進事業及び③市街地復興効果促進事業の三つがある。

このうち、効果促進事業(個別配分)は、23年度の復興交付金制度の創設当初から40基幹事業に関連するものを対象として設けられているものであり、市町村が単独で又は市町村が道県と共同して、個別の事業ごとに事業の概要や基幹事業との関連性等を記載した復興交付金事業計画を復興庁に提出し、復興庁はこれを基にするなどして個別の事業ごとに基幹事業との関連性の有無を判断して、市町村又は道県に対して事業ごとに交付可能額を通知している。

漁業集落復興効果促進事業は、復興交付金の使い勝手を向上させて、市町村の自由な事業実施による被災地の漁業集落の再生を加速するために、第2回復興交付金において導入されたものであり、基幹事業である「漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生活基盤整備等)」に係る各事業費の20%を、この基幹事業を実施する市町村に一括配分するものである。

市街地復興効果促進事業は、漁業集落復興効果促進事業と同様に、復興交付金の使い勝手を向上させて、市町村の自由な事業実施による被災地の市街地の再生を加速するために、第2回復興交付金において導入されたものであり、基幹事業である津波復興拠点整備事業、市街地再開発事業、都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)及び防災集団移転促進事業(以下、これらの4事業を「市街地整備事業」という。)に係る各事業費の20%をこれらの基幹事業を実施する市町村に一括配分するものである。

なお、漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業については、第5回復興交付金から、道県ごとの効果促進事業の事業費の上限の範囲内で、道県の要望を踏まえて、内閣総理大臣が定める額を、道県に一括配分することとなっている。

b 効果促進事業に係る交付可能額

効果促進事業に係る計6回の復興交付金の交付可能額は、前記のとおり、1497億余円となっている。この内訳をみると、図20及び表53のとおり、効果促進事業(個別配分)に係る交付可能額は300億余円(効果促進事業に係る交付可能額全体に占める割合20.1%)、漁業集落復興効果促進事業に係る交付可能額は、市町村分57億余円(同3.8%)、道県分4億余円(同0.3%)、市街地復興効果促進事業に係る交付可能額は、市町村分1038億余円(同69.3%)、道県分95億余円(同6.3%)となっている。

図20 効果促進事業の交付可能額内訳

効果促進事業の交付可能額内訳

表53 効果促進事業の交付可能額内訳

(単位:百万円)

道県名 道県及び市町村
①効果促進事
業(個別配
分)
②漁業集落復興効果促進事業 ③市街地復興効果促進事業
市町村分 道県分 市町村分 道県分
北海道 1町 20 - - - - 20
青森県 3市町 567 - - - - 567
岩手県 県及び13市町村 10,644 4,302 367 33,128 3,154 51,596
宮城県 県及び22市町 10,412 1,467 124 59,412 5,294 76,710
福島県 県及び20市町村 5,814 1 - 11,273 1,090 18,178
茨城県 県及び10市町村 1,223 - - 5 - 1,229
栃木県 1市 138 - - - - 138
千葉県 5市 1,128 - - - - 1,128
新潟県 1市 8 - - - - 8
長野県 1村 139 - - - - 139
4県及び77市町村 30,095 5,771 491 103,819 9,539 149,717
(注)
道県及び市町村数は、「計」欄に係る交付可能額通知を受けた道県及び市町村の数である。

c 効果促進事業(個別配分)の活用状況

上記交付可能額のうち、効果促進事業(個別配分)に係る交付可能額計300億余円について、関連する基幹事業別にみると、表54のとおり、77市町村における25基幹事業に関連する568件の効果促進事業(個別配分)に係るものとなっている。

表54 関連する基幹事業別の効果促進事業(個別配分)に係る交付可能額

所管省庁 事業
番号
基幹事業名 市町村数 事業数 交付可能額
(百万円)
交付可能額全体に
占める割合(%)
文部科学省 A-1 公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新増築・統合) 5 13 1,304 4.3
A-2 学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 7 11 360 1.1
A-3 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 3 3 125 0.4
A-4 埋蔵文化財発掘調査事業 13 15 290 0.9
厚生労働省 B-1 医療施設耐震化事業 - -
B-2 介護基盤復興まちづくり整備事業(「定期巡回・随時対応サービス」
や「訪問看護ステーション」の整備等)
- - - -
B-3 保育所等の複合化・多機能化推進事業 4 4 243 0.8
農林水産省 C-1 農山漁村地域復興基盤総合整備事業(集落排水等の集落基盤、農地
等の生産基盤整備等
13 17 307 1.0
C-2 農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業(被災した生産施
設、生活環境施設、地域間交流拠点整備等)
7 14 495 1.6
C-3 震災対策・戦略作物生産基盤整備事業(麦・大豆等の生産に必要と
なる水利施設整備等)
- - - -
C-4 被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 14 22 397 1.3
C-5 漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生活基盤整備
等)
6 13 979 3.2
C-6 漁港施設機能強化事業(漁港施設用地かさ上げ、排水対策等) 1 1 100 0.3
C-7 水産業共同利用施設復興整備事業 (水産業共同利用施設、漁港施
設、放流用種苗生産施設整備等)
14 28 3,435 11.4
C-8 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 - - - -
C-9 木質バイオマス施設等緊急整備事業 7 7 142 0.4
国土交通省 D-1 道路事業(市街地相互の接続道路等) 23 40 2,178 7.2
D-2 道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) - - - -
D-3 道路事業(道路の防災・震災対策等) 1 1 3 0.0
D-4 災害公営住宅整備事業 (災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取
得造成費等補助事業等)
50 165 4,044 13.4
D-5 災害公営住宅家賃低廉化事業 - - - -
D-6 東日本大震災特別家賃低減事業 2 2 11 0
D-7 公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修) - - - -
D-8 住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) - - - -
D-9 小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等) - - - -
D-10 住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) - - - -
D-11 優良建築物等整備事業(市街地住宅の供給、任意の再開発等) - - - -
D-12 住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業) - - - -
D-13 住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険住宅移転事
業)
- - - -
D-14 造成宅地滑動崩落緊急対策事業 11 15 428 1.4
D-15 津波復興拠点整備事業 4 4 510 1.6
D-16 市街地再開発事業 1 4 526 1.7
D-17 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 15 35 4,675 15.5
D-18 都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) - -
D-19 都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) 5 5 44 0.1
D-20 都市防災総合推進事業(津波シミュレーション等の計画策定等) 31 83 3,506 11.6
D-21 下水道事業 11 20 2,254 7.4
D-22 都市公園事業 10 13 414 1.3
D-23 防災集団移転促進事業 19 33 3,314 11.0
環境省 E-1 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 - -
25基幹事業 77 568 30,095 100
(注)
市町村数は、「交付可能額」欄に係る交付可能額通知を受けた市町村又は道県のうち市町村の数である。

関連する基幹事業別に効果促進事業(個別配分)に係る交付可能額についてみると、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)、災害公営住宅整備事業 (同D-4) 及び都市防災総合推進事業(同D-20)に係る効果促進事業(個別配分)が多額となっている。

このうち、都市再生区画整理事業は、広範かつ甚大な被災を受けた市街地の復興に対応するために、被災市街地復興土地区画整理事業等により緊急かつ健全な市街地の復興を促進する基幹事業であり、これに係る効果促進事業(個別配分)35件の主な事業内容についてみると、津波により著しい被害を受けるとともに地盤が沈下した地区について、宅地や市街地等面的な整備を実施するために、内水排除対策、環境・衛生対策等として、地盤のかさ上げを実施したり、地盤沈下地域の浸水対策のための水中ポンプを臨時に設置したり、埋蔵文化財の本調査を実施したりするものなどであった。

災害公営住宅整備事業は、東日本大震災による被災者の居住の安定確保を図るため、災害公営住宅の整備等に係る費用を支援する基幹事業であり、これに係る効果促進事業(個別配分)165件の主な事業をみると、災害公営住宅に附帯する駐車場の整備を実施したり、既存建物を撤去したり、公営住宅を管理するシステムを改修したりするものなどであった。

都市防災総合推進事業は、避難行動調査等により科学的知見に裏付けられた計画策定、住民の合意形成等のコーディネートに対する支援、計画に位置付けられた市街地の防災性の向上のための地区公共施設整備等に対する支援等を行う基幹事業であり、これに係る効果促進事業(個別配分)83件の主な事業内容についてみると、基幹事業において検討する津波ハザードマップの改定により指定避難施設の建て替え整備を実施したり、防災備蓄倉庫の設置、防災備蓄用品の購入等を実施したり、移動系防災行政無線を整備したり、災害記録を整理したりするものなどであった。

これらの事業のうち災害公営住宅整備事業に関連する効果促進事業(個別配分)の活用状況について示すと、次のとおりである。

<参考事例2>

茨城県高萩市では、東日本大震災において、震度6強が観測されて、市内全域において甚大な被害を受けており、建物被害は全壊204件等約5,000件に上り、津波による床上浸水も10件あった。

同市は、被災者に係る応急仮設住宅の借上期間終了後の住居について、既存の公営住宅に空きがなく、十分に対応できないことから、災害公営住宅整備事業 (災害公営住宅整備事業、災害公営住宅用地取得造成費等補助事業等)によって、津波の影響が及ばないと見込まれる高台に災害公営住宅26戸を新設することとした。しかし、既存の公営住宅が沿岸部に集中しており、全ての住民が高台の公営住宅に移って居住することはできない状況となっていたことから、既存の公営住宅やその周辺に居住する多数の住民等の安全を確保するために、効果促進事業(個別配分)(平成25年7月末までに通知された交付可能額1億余円)により、既存の公営住宅を緊急避難ビルとして活用できるよう外階段を設置して、屋上を一時的な避難施設として整備することとしている。

d 漁業集落復興効果促進事業の活用状況

漁業集落復興効果促進事業は、前記のとおり、漁業集落防災機能強化事業の事業費の20%に係る復興交付金を一括配分するもので、事前の計画提出や承認を必要とせず、ポジティブリストに記載された事業を実施できることとして、復興交付金の使い勝手を向上させている。

漁業集落復興効果促進事業のポジティブリストに記載された事業は、コミュニティの立ち上げ・再生、水産業の再生・漁村の活性化及び漁村における防災体制の強化に係るもので、当初36事業であったものが、その後45事業にまで拡充されたが、25年3月に、ポジティブリストが廃止され、市町村等が自由に事業を実施できることとするなどの見直しが行われた。

市町村は、漁業集落復興効果促進事業を実施する場合、農林水産省が定めた東日本大震災復興交付金(復興交付金基金)交付要綱による漁業集落復興効果促進事業使途内訳提出書を復興庁を経由して農林水産省に提出することなどとされている。

そこで、会計検査院は、24年度末までに各市町村が農林水産省に提出した漁業集落復興効果促進事業使途内訳提出書等の内容を集計し分析するなどしてこれらの使途について検査した。

その結果、市町村に一括配分された漁業集落復興効果促進事業に係る24年度の交付可能額についてみると、交付可能額が通知されてから年度末までの期間が短かったものが大半であることなどから、表55のとおり、通知を受けた19市町村に係る56億余円のうち、使途が決まっているのは11市町村に係る2億余円(4.6%)となっていた。

表55 市町村に一括配分された漁業集落復興効果促進事業に係る交付可能額の使途

区分 交付可能額
が通知され
た市町村数
交付可能額通知
(第2回~第5回)
(百万円)(A)
使途内訳書等
を提出した市
町村数
使途が決まって
いる額
(平成24年度末)
(百万円)(B)
使途が決まって
いる交付可能額
の割合(B/A)
(%)
漁業集落復興効果
促進事業
19 5,665 11 262 4.6

また、上記の使途が決まっている2億余円に関する事業内容についてみると、図21のとおり、被災地復興のための土地利用計画策定促進事業等、被災前のコミュニティを維持するとともに、再整備される漁村の生活環境を整えることで漁村の立ち上げなどを図るために必要なコミュニティの立ち上げ・再生に係る事業が0.8億余円(使途が決まっている額に占める割合30.7%)、地域資源の利活用のための施設整備事業等、漁業者の就業の場を確保するとともに、安全な水産物提供の実現と水産業の持続的発展を図るために必要な水産業の再生・漁村の活性化に係る事業が1億余円(同44.6%)、避難誘導施設整備事業等、今後、同様な被害を経験することがないよう、今回の被害状況を正確に把握するとともに、強力かつ効率的な予防対策を図るために必要な漁村における防災体制の強化に係る事業が0.6億余円(同24.5%)となっていた。なお、前記のとおり、25年3月にポジティブリストが廃止されるなどの見直しが行われ、漁業集落復興効果促進事業は、市町村等が自由に実施できることとなり、復興地域づくり加速化事業と称されることとなったが、24年度末現在で、この事業について使途が決まっているものはなかった。

図21 市町村に一括配分された漁業集落復興効果促進事業の交付可能額の使途

市町村に一括配分された漁業集落復興効果促進事業の交付可能額の使途

e 市街地復興効果促進事業の活用状況

市街地復興効果促進事業は、前記のとおり、市街地整備事業の事業費の20%に係る復興交付金を一括配分するもので、事前の計画提出や承認を必要とせず、ポジティブリストに記載された事業を実施できることとして、復興交付金の使い勝手を向上させている。

市街地復興効果促進事業のポジティブリストに記載された事業は、市街地整備事業の効率的促進、まちの立ち上げ促進及び産業、観光等の復興の促進に係るものであり、当初36事業であったものが、その後42事業にまで拡充されたが、25年3月に、漁業集落復興効果促進事業と同様に、ポジティブリストが廃止され、市町村等が自由に事業を実施できることとするなどの見直しが行われた。

市町村は、市街地復興効果促進事業を実施する場合、国土交通省が定めた東日本大震災復興交付金基金交付要綱による市街地復興効果促進事業使途内訳提出書を復興庁を経由して国土交通省に提出することなどとされている。

そこで、会計検査院は、24年度末までに各市町村が国土交通省に提出した市街地復興効果促進事業使途内訳提出書等の内容を集計し分析するなどしてこれらの使途について検査した。

その結果、市町村に一括配分された市街地復興効果促進事業に係る24年度の交付可能額についてみると、漁業集落復興効果促進事業と同様、交付可能額が通知されてから年度末までの期間が短かったものが大半であることなどから、表56のとおり、通知を受けた29市町村に係る1006億余円のうち、使途が決まっているのは23市町村に係る139億余円(13.8%)となっていた。

表56 市町村に一括配分された市街地復興効果促進事業に係る交付可能額の使途

区分 交付可能額
が通知され
た市町村数
交付可能額通知
(第2回~第5回)
(百万円)(A)
使途内訳書等
を提出した市
町村数
使途が決まって
いる額
(平成24年度末)
(百万円)(B)
使途が決まって
いる交付可能額
の割合(B/A)
(%)
市街地復興効果促
進事業
29 100,669 23 13,922 13.8

また、上記の使途が決まっている139億余円に関する事業内容についてみると、図22のとおり、複数事業のコーディネートや災害廃棄物等の除去等、早期復興に向けて、基幹事業である市街地整備事業の進捗を効率的に促進するための事業が101億余円(使途が決まっている額に占める割合72.6%)、応急仮設住宅生活者を含む被災者の生活を支援して、コミュニティの維持を図り、市街地の早期復興に向けたまちの立ち上げを促進するための事業が29億余円(同21.1%)、市街地整備事業地区又は隣接地において行われる産業立地や観光資源開発等を促進するために必要な地域振興・産業誘致に向けた調査や観光PR等、産業、観光等の復興の促進に係る事業が6億余円(同4.8%)となっていた。なお、前記のとおり、25年3月にポジティブリストが廃止されるなどの見直しが行われ、市街地復興効果促進事業は、市町村等が自由に実施できることとなり、復興地域づくり加速化事業と称されることとなったが、この事業の使途をみると、市が取得する移転促進区域に存する建物の基礎等を撤去するものや都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等)に関連して実施する集団墓地の移転に係るものとなっていた。

図22 市町村に一括配分された市街地復興効果促進事業に係る交付可能額の使途

市町村に一括配分された市街地復興効果促進事業に係る交付可能額の使途

このように、市町村に一括配分された漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業に係る交付可能額については、24年度末までに使途が未定となっているものも多い状況となっていたが、漁業集落復興効果促進事業に係る復興交付金については水産業の再生・漁村の活性化に係る事業、市街地復興効果促進事業に係る復興交付金については市街地整備事業の効率的促進に係る事業が多く実施されていた。

前記のとおり、市町村に対する漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業に係る復興交付金は、25年3月以降、市町村等が自由に事業を実施できることとされており、復興庁によれば、復興地域づくりに伴う幅広い用途に活用されているとしている。今後本格化する復興地域づくりにおいて、市町村が創意工夫を発揮して、市町村に対する漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業に係る復興交付金が有効に活用されることが求められる。

(エ) まとめ

24年3月から25年7月までの計6回の復興交付金に係る交付可能額は計1兆6228億余円となっており、これを県別にみると、そのほとんどは甚大な被害があった東北3県及び東北3県内の68市町村に対して配分されていた。また、基幹事業についてみると、住宅やまちづくりのための道路を整備するものが多額となっていた。効果促進事業についてみると、効果促進事業(個別配分)は、地盤のかさ上げを実施する事業や災害公営住宅の駐車場を整備する事業、指定避難施設を建て替え整備する事業等が多く見受けられた。また、漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業では、使途が未定となっているものも多い状況となっていたが、水産業の再生・漁村の活性化に係る事業や市街地整備事業の効率的促進に係る事業が多く実施されていた。

特定被災自治体においては、今後も、復興交付金事業計画に記載された各事業が実施され、本格的な復興に向けて、まちづくり・地域づくりが進められることが見込まれる。

したがって、国においては、各被災地域の被害や復興の実情を踏まえて、今後もより一層、地域が主体となった復興を強力に支援するものとして活用されるよう、制度の運用に当たっては、各被災地域の被害や復興の実情に応じて柔軟に対応するとともに、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、情報提供、助言その他必要な協力を行い、地方公共団体の迅速かつ着実な復興の支援に努める必要がある。