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(3) 学校施設環境改善交付金等の交付額の算定において、公立学校施設以外の施設は交付対象にならないことを周知徹底するなどするよう是正改善の処置を求め、及び法令適合工事等に係る実績報告時の交付対象工事費の減額を配分基礎額に反映させたり、交付対象工事費の上限額を実績報告時にも適用したりすることを明確に定めるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文部科学本省 (項)公立文教施設整備費 (項)東日本大震災復旧・復興公立文教施設整備費
部局等
文部科学本省、9県
交付の根拠
義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律(昭和33年法律第81号)
交付金事業者
(事業主体)
県1、市23、町1、計25事業主体
交付金事業の概要
公立の義務教育諸学校等の施設の整備に要する経費に充てるために、予算の範囲内で、地方公共団体に対して交付金を交付するもの
公立学校施設以外の施設等を交付対象に含めるなどしている事業主体数及び交付金事業数
15事業主体、18交付金事業
上記の15事業主体において過大に算定されている交付金の交付額(1)
3667万円(平成20年度~23年度)
交付対象工事費の減額を配分基礎額に反映させていない事業主体数及び交付金事業数
8事業主体、9交付金事業
上記の8事業主体において生じている交付金の交付額の開差額(2)
3463万円(平成21年度~24年度)
交付対象工事費の上限額を上回る金額を実績報告時に計上するなどしている事業主体数及び交付金事業数
4事業主体、5交付金事業
上記の4事業主体において生じている交付金の交付額の開差額(3)
7074万円(平成20、23両年度)
(1)から(3)までの純計
25事業主体 1億4204万円

【是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求したものの全文】

学校施設環境改善交付金等の交付額の算定について

(平成26年6月30日付け 文部科学大臣宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 交付金事業等の概要

(1) 交付金事業の概要

貴省は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、公立の義務教育諸学校等の施設(以下「公立学校施設」という。)の整備に関して地方公共団体が作成する施設整備計画に基づく施設整備事業に要する経費に充てるため、地方公共団体に対して、学校施設環境改善交付金(平成22年度以前は安全・安心な学校づくり交付金。以下「交付金」という。)を交付する事業(以下「交付金事業」という。)を実施している。そして、20年度から24年度までの間における交付金の交付額は、計6290億3952万余円と多額に上っている。

(2) 交付金の交付額の算定

貴省は、地方公共団体が主体的に地域の実情を踏まえた公立学校施設の整備を計画的かつ効率的に推進することができるよう、この交付金を事業主体である地方公共団体ごとに予算の範囲内で一括して交付することとしている。そして、交付金の交付額は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行規則」(昭和33年文部省令第21号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

すなわち、交付金の交付額は、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された耐震補強事業や大規模改造事業等の各種の施設整備事業のうち、交付金の算定の対象となる個々の施設整備事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに、文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗じて得た額の合計額と、交付対象事業ごとに要する経費の額(以下「交付対象工事費」という。)に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することとなっている。

そして、上記交付額の算定は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定)、「学校施設環境改善交付金の実績報告書等について」(平成23年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等に基づき、交付申請時に行うほか、実績報告時にも配分基礎額や交付対象工事費の変更を反映して再度行うこととなっており、再算定後の交付額と交付決定額とを比較して、いずれか少ない額により交付額を確定することとなっている。

(3) 配分基礎額の算定

配分基礎額は、「学校施設環境改善交付金の配分基礎額の算定方法について」(平成24年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長等通知。以下「算定通知」という。)等に基づき、交付対象事業の種別ごとに定められた配分基礎額を算定する際の基礎となる面積に、貴省が交付対象事業の種別ごとに定める単価を乗ずるなどして算定することとなっている。

一方、大規模改造事業のうち公立学校施設を消防法(昭和23年法律第186号)等の法令に適合させるための工事等(以下「法令適合工事等」という。)に係る配分基礎額については、上記の算定方法とは異なり、算定通知等に基づき、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定することとなっている。

(4) 学校建物内に公立学校施設以外の施設が設置されている場合の取扱い

近年の少子化等を反映して、学校建物内にクラスルーム等として使用されていない普通教室(以下「余裕教室」という。)が増加していることから、地方公共団体においては、既存施設の有効活用の観点から、これを放課後児童クラブ(児童福祉法(昭和22年法律第164号)の規定に基づき放課後における児童の健全な育成を図るために設置する施設。以下同じ。)等として活用することが推進されている。

このように、国庫補助金等の交付を受けて整備した公立学校施設を学校教育以外の用途で使用する場合には、地方公共団体は、その使用が学校教育に支障を及ぼさない範囲での一時的なものである場合を除き、原則として、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条等の規定に基づく文部科学大臣の承認(以下「転用の承認」という。)を受けることとなっている(以下、転用の承認を受けた当該施設を「公立学校施設以外の施設」という。)。

また、学校建物内に放課後児童クラブ(注1)のような児童福祉施設等の公立学校施設以外の施設が設置されている場合には、「平成23年度学校施設環境改善交付金の事業概要について」(平成23年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知。以下「概要通知」という。)等に基づき、当該施設を耐震補強事業及び大規模改造事業の交付対象に含めないこととなっている。

(注1) 放課後児童クラブの耐震化や大規模修繕に係る工事等については、平成25年度から、厚生労働省が実施している国庫補助事業(放課後児童クラブ整備費)の対象となっている。

(5) 交付対象工事費の上限額

概要通知等によれば、一部の交付対象事業については、施設整備計画に交付金の交付対象として計上することができる工事費に、大規模改造事業の場合は原則として2億円、屋外教育環境施設整備事業の場合は6000万円等の上限額が設けられており、これが交付申請時の交付対象工事費の上限額となっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性、効率性等の観点から、交付金の交付額は適切に算定されているか、交付金の交付額の算定方法は交付金事業の経済的かつ効率的な実施の面からみて妥当なものとなっているかなどに着眼して、貴省及び9県(注2)において、9県及びその管内の263市町村等が、20年度から24年度までに実施した1,415交付金事業(交付金の交付額計1779億4224万余円)について、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
9県  山形、群馬、神奈川、新潟、富山、福井、長野、大分、宮崎各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた((1)及び(2)の各事態には、事業主体が重複しているものがある。)。

(1) 公立学校施設以外の施設等を交付対象に含めるなどしているもの

15事業主体(注3)(18交付金事業)
(上記に係る交付金の交付額計58億9802万余円)

15事業主体は、余裕教室を活用して学校建物内に放課後児童クラブ等を設置していた。そして、このうち5事業主体(注4)は、放課後児童クラブ等の設置に当たり、当該余裕教室について転用の承認を受けていた。

しかし、5事業主体は、20、23両年度の5交付金事業(交付金の交付額計11億6495万余円)により実施した7耐震補強事業等において、公立学校施設以外の施設の面積を控除するなどして配分基礎額及び交付対象工事費を算定する必要があったのに、これを行わず、当該施設を交付金の交付対象に含めて交付額を算定していた。

また、残りの10事業主体(注5)は、余裕教室を放課後児童クラブ等として使用する時間帯が放課後や休日等であることから、これが一時的な使用に当たると判断するなどして転用の承認を受けておらず、20年度から23年度までの13交付金事業(交付金の交付額計47億3307万余円)により実施した23耐震補強事業等において、当該余裕教室を交付金の交付対象に含めて交付額を算定していた。

しかし、10事業主体は、当該余裕教室を、学校教育以外の用途で使用するために改修するなどした上で常態的に専用使用していることから、転用の承認を受けた上で、公立学校施設以外の施設として交付金の交付対象に含めずに交付額を算定する必要があったと認められる。

したがって、交付金の交付対象から、5事業主体の7耐震補強事業等については公立学校施設以外の施設を除外し、10事業主体の23耐震補強事業等については学校教育以外の用途で専用使用している余裕教室を除外して、それぞれ適切な交付金の交付額を算定すると、11億5928万余円、47億0206万余円、計58億6135万余円となり、前記の11億6495万余円、47億3307万余円、計58億9802万余円と比べて、566万余円、3101万余円、計3667万余円が過大に算定されている。

(注3)
15事業主体  山形、尾花沢、高崎、桐生、太田、みどり、横浜、相模原、平塚、秦野、高岡、氷見、大分、津久見、都城各市
(注4)
5事業主体  高崎、太田、みどり、平塚、津久見各市
(注5)
10事業主体  山形、尾花沢、桐生、横浜、相模原、秦野、高岡、氷見、大分、都城各市

(2) 法令適合工事等に係る実績報告時の配分基礎額の算定に当たり、交付対象工事費の減額を反映させていないもの

8事業主体(注6)(9交付金事業)
(上記に係る交付金の交付額計29億5874万余円)

8事業主体が21年度から24年度までの9交付金事業(交付金の交付額計29億5874万余円)により実施した法令適合工事等についてみたところ、8事業主体は、法令適合工事等に係る配分基礎額については事業箇所の実情に即して算定することとなっていることから、交付申請時には、当該法令適合工事等に係る交付対象工事費と同額とするなどしていた。一方、実績報告時には、交付対象工事費については実績報告時の減額を反映して計上しているのに、配分基礎額については特段の定めがなく、改めて算定することとはなっていないとして交付申請時と同額を計上していた。

しかし、法令適合工事等に係る配分基礎額については、前記のとおり、事業箇所の実情に即して算定することとなっていることから、実績報告時に交付対象工事費の減額があった場合には、これを配分基礎額にも反映させることが適切であると認められる。

したがって、8事業主体について、実績報告時の交付対象工事費の減額を反映させて配分基礎額を算定し、適切な交付金の交付額を算定すると計29億2410万余円となり、前記の計29億5874万余円と比べて3463万余円の開差を生ずることとなる。

(注6)
8事業主体  宮崎県、長井、新潟、魚沼、氷見、小浜、茅野、大分各市

<事例>

新潟県魚沼市は、平成22年度に同市立A小学校において実施した法令適合工事等の一つであるアスベスト除去工事に係る交付対象工事費を概算設計金額に基づいて10,810,000円とし、配分基礎額をこれと同額としていた。

しかし、同市は、交付申請後に設計変更があったことを受けて、実績報告時において、交付対象工事費を6,136,000円に減額する一方で、配分基礎額については、この交付対象工事費の減額を反映させておらず交付申請時と同額としていた。

(3) 交付対象工事費の上限額を上回る金額を実績報告時に計上するなどしているもの

4事業主体(注7)(5交付金事業)
(上記に係る交付金の交付額計17億8525万余円)

4事業主体は、20、23両年度の5交付金事業(交付金の交付額計17億8525万余円)により実施した大規模改造事業及び屋外教育環境施設整備事業において、工事費が交付対象工事費の上限額を上回っていることから、交付申請時の交付対象工事費については上限額を計上していた。一方、実績報告時の交付対象工事費にはこの上限額を適用することとはなっていないとして、4事業主体は、実績報告時の算定額が上限額を上回っているのに、これをそのまま計上するなどしていた。

しかし、交付申請時の交付対象工事費の上限額は、限られた予算の中で公立学校施設の整備を効率的に実施するために貴省が設定しているものであることから、実績報告時にも適用することが適切であると認められる。

したがって、4事業主体について、実績報告時にも交付対象工事費の上限額を適用するなどして、適切な交付金の交付額を算定すると計17億1451万余円となり、前記の計17億8525万余円と比べて7074万余円の開差を生ずることとなる。

(注7)
4事業主体  南陽、藤沢、燕各市、金山町

(是正改善及び改善を必要とする事態)

公立学校施設以外の施設を交付金の交付対象に含めて交付額を算定したり、公立学校施設を学校教育以外の用途で使用していて転用の承認を受ける必要があるのにこれを行っておらず、当該施設を交付金の交付対象に含めて交付額を算定したりしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。また、法令適合工事等において実績報告時の交付対象工事費の減額を配分基礎額に反映させていなかったり、交付申請時の交付対象工事費の上限額を実績報告時にも適用していなかったりしている事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 事業主体において、公立学校施設以外の施設を交付金の交付対象に含めないことについての理解が十分でないこと、貴省において、公立学校施設を学校教育以外の用途で使用する場合において、転用の承認が必要となる場合の基準等を事業主体に対して明確に示していなかったり、学校建物内に公立学校施設以外の施設が設置されている場合の交付金の交付額の算定方法について、事業主体及び実績報告書の審査を行う県への周知が十分でなかったりしていること

イ 貴省において、法令適合工事等に係る配分基礎額について、実績報告時の交付対象工事費に減額があった場合には、これを当該配分基礎額にも反映させることを定めていないこと

ウ 貴省において、交付申請時の交付対象工事費に上限額を設定している交付対象事業について、実績報告時にも当該上限額を適用することを定めていないこと

3 本院が求める是正改善の処置及び要求する改善の処置

貴省は、今後も引き続き、交付金事業により公立学校施設の耐震性及び安全性の確保や教育環境の質的向上を図ることとしている。

ついては、貴省において、交付金の交付額が適切に算定され、公立学校施設が経済的かつ効率的に整備されるための処置を講ずるよう、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求する。

ア 公立学校施設を学校教育以外の用途で使用する場合において、転用の承認が必要となる場合の基準等を明確に示すとともに、交付金の交付額の算定に当たり、学校建物内に公立学校施設以外の施設が設置されている場合には、当該施設は交付対象にならないことを事業主体及び実績報告書の審査を行う都道府県に周知徹底すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)

イ 法令適合工事等に係る配分基礎額について、実績報告時の交付対象工事費に減額があった場合には、これを当該配分基礎額にも反映させる必要があることを明確に定めること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)

ウ 交付申請時の交付対象工事費の上限額について、実績報告時にも適用する必要があることを明確に定めること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)