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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第9 厚生労働省|不当事項|補助金

(12)緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](237)―(245)


9件 不当と認める国庫補助金 99,671,713円

緊急雇用創出事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「緊急雇用創出基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、平成20年度から25年度までに計1兆5,798億余円が交付されている。

また、ふるさと雇用再生特別交付金は、同省が定めた「平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130002号)に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、ふるさと雇用再生特別基金(以下「ふるさと基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、20年度に2500億円が交付されている。

そして、各都道府県及び各市町村等(以下「都道府県等」という。)は、同省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号)等に基づき、緊急雇用創出基金を財源として失業者に対する短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業を、また、同省が定めた「ふるさと雇用再生特別基金事業実施要領」(平成21年職発第0130005号)等に基づき、ふるさと基金を財源として地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会を創出するふるさと雇用再生特別基金事業を、それぞれ実施している(以下、緊急雇用創出事業とふるさと雇用再生特別基金事業とを合わせて「基金事業」といい、また、緊急雇用創出事業実施要領とふるさと雇用再生特別基金事業実施要領を合わせて「実施要領」という。)。なお、ふるさと雇用再生特別基金事業の実施は23年度に終了している。

基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等へ委託し、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業を実施する場合は、委託費相当額をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、管内の市町村等が委託事業等を実施する場合は、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10)を交付している。

実施要領等によれば、委託費の対象経費は、受託者に新規に雇用された者に係る賃金等の人件費及びその他の経費とされている。そして、事業実施の要件は、新規に雇用する予定の労働者の募集に当たり、より多くの求職者に対して当該事業への応募の機会を提供する観点から、公共職業安定所への求人申込みなどにより公募を図ることなどとされている(以下、公募により雇用された失業者を「新規雇用失業者」という。)。

本院が、12道県において、12道県及びこれらの道県から補助金の交付を受けた管内の134市町村を対象に会計実地検査を行った結果、6県(注1)及び13市町(注2)が実施した基金事業において、受託者等が、新規雇用失業者を雇用しないで事業を実施したり、支払の事実がない経費を計上したりなどしていたため、計99,671,713円(交付金相当額同額)が、9道県(注3)に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の9道県及び13市町において市町又は受託者から提出された委託事業に係る実績報告書等の内容の調査確認が十分でなかったこと、6道県(注4)において13市町に対する指導監督が十分でなかったこと、厚生労働省において9道県に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
6県  山形、栃木、鳥取、山口、徳島、高知各県
(注2)
13市町  米沢、新潟、浜松、伊東、下関、岩国、光、周南、山陽小野田、鳴門各市、白老、田上、上勝各町
(注3)
9道県  北海道、山形、栃木、新潟、静岡、鳥取、山口、徳島、高知各県
(注4)
6道県  北海道、山形、新潟、静岡、山口、徳島各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

山口県下関市は、緊急雇用創出基金を財源とした委託事業として、平成24年度に、求職者等を地域福祉活動コーディネーターとして雇い入れて、各種推進事業を総合的に行う「下関市地域福祉推進事業委託業務」を18,000,000円でA法人に委託し、同法人が当該事業を実施したとして同額を支払っており、山口県は同市に対して、緊急雇用創出基金を財源として同額の補助金を交付していた。

しかし、同法人が同市に提出した実績報告書において新規雇用失業者とされていた7名は、同法人に直前まで雇用されていて、本件委託事業の実施に当たって緊急雇用創出事業実施要領で定められた公募によらず再度雇用された者であり、新規雇用失業者に該当していなかった。

したがって、本件委託事業は、失業者に対する短期の雇用・就業機会を創出して提供する緊急雇用創出事業としての目的を達していないことから、基金事業の対象とは認められず、本件委託費全額(18,000,000円)は、同県から同市に交付される補助金として緊急雇用創出基金から過大に取り崩され、補助の目的外に使用されていた。

これを事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 基金造成額 左に対する交付金交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円
(237) 厚生労働本省 北海道 緊急雇用創出基金 20~25 53,490,000 53,490,000 4,439 4,439
(238) 山形県 20~25 26,977,000 26,977,000 3,917 3,917
(239) 栃木県 ふるさと基金 20 4,660,000 4,660,000 2,069 2,069
(240) 新潟県 20 6,060,000 6,060,000 9,156 9,156
(241) 静岡県 緊急雇用創出基金 20~25 43,347,500 43,347,500 13,297 13,297
(242) 鳥取県 20~25 13,961,200 13,961,200 4,940 4,940
(243) 山口県 緊急雇用創出基金 20~25 16,105,100 16,105,100 25,915 25,915
ふるさと基金 20 3,400,000 3,400,000 3,637 3,637
小計   19,505,100 19,505,100 29,552 29,552
(244) 徳島県 緊急雇用創出基金 20~25 17,604,800 17,604,800 22,354 22,354
ふるさと基金 20 4,660,000 4,660,000 7,270 7,270
小計   22,264,800 22,264,800 29,624 29,624
(245) 高知県 緊急雇用創出基金 20~25 16,724,700 16,724,700 2,675 2,675
(237)―(245)の計 206,990,300 206,990,300 99,671 99,671